殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

愛人道

2008年12月03日 11時30分25秒 | 不倫…戦いの記録
彼女の家から病院まで、車で5分とかかりません。

その間私は、昔の早回しの8ミリフィルムみたいに

頭の中でいろいろな想像を巡らせていました。


妻だと名乗ってイヤミのひとつも言えば、さぞ爽快でしょう。

しかし、子供の前です。

母親の行状がどうであれ、子供は無関係なのです。

寝てくれればいいものを

夜更かしに慣れているのか二人は元気いっぱいでした。


それに相手には、動けないというハンディがあります。

戦えない相手に何か言って去るというのは

武士道?に反するような気がしました。


会社によく、さまざまな宗教の勧誘の人が来ます。

忙しかろうが来客中であろうが、お構いなしです。

家ならドアを閉めれば終了ですが

いつも開放状態の会社だとそうはいきません。


家でも迷惑は迷惑ですが

閉じられない場所にやって来て

その場から逃げられない相手に自分の言いたいことだけ言う…

それはとても卑怯な行為だと、前々から軽蔑していました。


そんなにすばらしい宗教なら

いちいち訪問して伝えなくても自然と信者は増えると思います。


          彼らと同類になってしまうではないか…



着替えを持って来ると伝えてあったので

病院の玄関は開けてありました。

「あ、来てくれたのね。良かった。

 貸した検査着のストックが、もう無いのよ。

 でも、そろそろ落ち着いたから」

同年代の夜勤の看護師は、こぼしました。

「家で全部出してしまってから、来てくれれば良かったのに」

まったくです。


あと何週間かで、ここは救急病院ではなくなるのです。

この数日入院患者はおらず、夜勤も形式的だったので

彼女にとってその夜はとんだ災難でした。


「ねえ、ねえ、あの人…誰よ」

白衣の天使も、この手のことには興味しんしんです。

         「この子たちのママよ」

「な~んだ」

子供を連れていたことで、詮索の気持ちは消えたようです。
      
      迷惑料がわりにサービスしたいのはやまやまですが

           あしからず…


まず夫の部屋へ行き

動けるようなら子供と一緒に届けさせ

私は待っているつもりでしたが

とてもそんな状態ではありません。


子供たちは、声をかけるでもなく、パパと呼ぶでもなく

入り口に立って、ただ凝視しているだけでした。


ママの部屋は隣です。

M岡C子と書いたプレートがありました。

部屋へ入ると、やはり子供です。

「ママー!」

枕元に駆け寄るのでした。


C子もやはり死にそうな形相で、子供も目に入らないようです。

携帯を握りしめ、うつろな表情をして横たわっています。


   「初めまして。私、姉です。

    弟に頼まれたので…」


大嫌いな女になりすますのは抵抗がありましたが

この際しかたがありません。


C子の着ている物もベッドも

ほとんど水みたいなものですが悲惨な状態でした。


二人でホテルへしけ込むというスケベ心を起こさなければ

各自の家でそれぞれ出す物を出してから

対策を講じる手段があったでしょう。

気の毒なことです。


C子は動けないので

看護師と一緒に敷き布団とシーツを交換し、着替えさせました。

すでにおむつをされていたので

例のパンツは必要ありませんでした。

退院の時にでも使ってもらいましょう。


血の気の引いた毛深い足に

塗り立ての真っ赤なマニキュアが毒々しく浮かんでいました。


ネイルより、脱毛が先だろう…と思いながら

このちぐはぐ感が、案外男性には可愛いのかも…

などとひそかに研究する私でした。

今さらその成果を発揮する予定は無いのですが。

来世があれば、頑張ろうと思います。


私が誰であろうが、子供がどうしていようが

それどころではない様子なので、早々に立ち去ることにしました。

ずいぶん気を使ったつもりでしたが、まったくの杞憂に終わりました。

「気にならない…」愛人道には重要な素質かもしれません。


子供たちは、我が家へ連行です。

うちの子たちは夏休みの旅行中だったので

ちょうどよかったと思いました。


「ここがおまえのアジトか~!

 おれが爆破してやる!ババババババ…」
    
    
    「はいはい、爆破でもなんでもしてくださいよ~。

     中身はとっくに崩壊してるんだから~」     
コメント (6)
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