殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

代用主義

2010年01月30日 13時50分08秒 | 前向き論
結婚以来、夫が恋した女性は十指に余る。

夫は、男性の夢を現実にした数少ない人間だということにしておこう。


私は我が身に次々と降りかかる理不尽な出来事に対応するかたわら

周囲をつぶさに観察して生きてきた。

単に興味本位で眺めていただけとも言えるが

興味本位も30年続ければ、一種の研究になると自負している。


小さな田舎町のことではあるが

中でも自分の身の上と似通った状況…

浮気者の亭主に翻弄されながら、それでも別れない女房というのを

興味深く観察してきた。


自分のことは横に置いといて言わせてもらう。

結婚生活にこの手の苦悩がつきまとう女性は

元々ある程度以上の容姿と社交性を生まれながらに保有している人が多い。

もしも明日、亭主が女の所へ行ってしまっても

子供を抱えて如才なく生きて行ける。

本人は「自信が無い」と謙遜するが

そういった能力に裏打ちされた安心感が漂っている。

言わば就職の面接に受かりやすいタイプだ。


愛想が良く、気も回るが、口もよく回る。

そして人に対する情が、良くも悪くも深い。

「とてもじゃないけど、これはよそへは回せないだろう…」

みたいな女性のほうが、身持ちの堅い男と一緒になって大事にされ

ぬくぬくと暮らしている。


能力があるのでプライドが高い。

旦那に浮気されるなんて、もってのほかの大恥。

自分の人生に、あってはならないことの最高峰だ。


よって、浮気の事実を受け止めるよりも先に

運命を呪ったり、悪者を探したり、激しい怒りや羞恥心にあらがう作業に忙しく

臨戦態勢を整えるまでに、長い時間がかかる。


起きたことを受け入れる気になれず

「なんで隣の家でなくて、うちなの?」

そんなことをいつまでも考えている。

考え悩むことが、むしろ好き。

だから悩みがいつまでも続く。

悩みというのは、悩んでいるうちは解決しないものだ。


根がまじめなので、他人の目が気になる。

妻として落ち度があったと思われるのを恐れ

自分が悪くないのを証明する方に重点を置く。


かく言う私も「妻失格」の汚名をまとって幾年月

身の潔白を証明するのに躍起になっていた。

最終的に義母ヨシコが

「ヒロシは本当にインランだったのねぇ」

と言うまでに、長い年月を要した。

その言葉を聞いた時は、ある種の達成感を味わったものの

かわいいのは自分の子…またすぐ「嫁が悪い」に戻って、元の木阿弥さ。


そっちに神経をすり減らしつつ

言われたこと、やられたことにいちいち一旦傷ついてから

旦那を責めたり、泣いたり、人に聞いてもらったりしたあげく

またくよくよ考えるので、対応が後手後手になる。


「この人ダメ!」と結論を出してさっさと別れたり

「私は私。離婚はしないけど、これからは自由にやらせてもらうわ」

という方向になかなか行けず、切り替えのタイミングを逃す。

そのうち疲れて自信を無くし、憎しみに支配された生活で人相まで変っていく。


なぜこのような苦しみを背負わなければならなかったか。

運命や宿命を論じるつもりは無い。

カルマやら因縁というのも、そのスジの人に任せよう。

賛否はあろうが、私の出した結論はこうだ。

相手がそうならなかったら、自分がそうなっていた…ということである。

そういう素質を持った男女が出会い、惹かれ、結婚するのだ。


色事の渦に巻き込まれる妻というのは、自分もその要素を持っている。

もちろん、血とか遺伝子などの無意識下においてである。

その要素を持ちながら、そこそこの容姿と社交性

深い情を合わせ持っていたらどうなるか。

その気になりさえすれば、男に不自由はしないはずだ。
 

亭主の方が、その気になるのが早かっただけ。

相手が先んじてやって見せてくれるもんだから、余計に腹が立つ。

必要以上に頭に来る。

意識の奥底に隠れている要素が、強く反応するのだ。

相手が先にやったからには

自分は品行方正な良い子の側に回って、激しく糾弾するしかない。


浮気癖さえ治ったら…と言う人は多い。

しかし、本当にそうだろうか。

「なぜ?私はただ普通の温かい家庭が欲しいだけよ」

いやいや、普通と思っていることは、実は普通ではない。


代わりに別の問題だったら、喜んで受け止められるだろうか。

どんなに良い夫でも、重病だったら…

子供の体調が思わしくなかったら…

親きょうだいが、しょっちゅうお金をせびりに来たら…

肉親が犯罪者になったら…

それでも浮気でさえなかったらと言えるだろうか。

温かい家庭を手に入れたと喜べるだろうか。


以前、私はこの手の考えが大嫌いだった。

代用品で妥協する、ごまかしのような気がした。

こんなはずじゃない…自分はもっと幸せになれるはずだ…

ああ、幸せになりたい、幸運が欲しい…と思った。
   
そのためのスタートラインに過ぎない家庭で、まずコケてるじゃないか。

人生の補欠感満載だ。


それでも年を重ねるにつれ、自分はしょせんこの程度…とわかってくる。

なんぼ未来は白紙といっても、白紙のページは少なくなっている。

さすがに今から学校へ行ったり、起業するなんて気は起きず

未知の自分に投資する金があるなら、老後に取っておきたくなる。

友人知人の訃報や病気の話も、チラホラ出てくれば

明日は我が身を実感する。


そのあたりでやっと、補欠でもありがたい…なにしろ走れる足がある…

と思えるようになる。

すると、人生の残りのページを、自分好みの極彩色で彩りたくて

絵の具が足りない、絵筆が少ないと、ぼやいていただけなのかも…

なんてことをうっすら考えられるようになる。


何色でもいい、自分らしい色でいいじゃないか…いや、自分色がいい…

この地点に達すると、今まで長年

ただのスタートラインだと甘く見ていた温暖家庭は

実はオリンピックで金メダル級の最終目標だったと知る。

だから神社の祈祷にも家内安全の項目がある。

一家がつつがなく暮らせますように…

これは“つつがある”家庭がいかに多いかということであり

神に頼むランクの、だいそれた願いなのだ。


浮気されるのは、確かにつらい。

しかし、それで他の不幸を免れているという気にはなれまいか。

浮気者のお父さんのいる家庭が

他の決定的な不幸に見舞われてないことが多いのは、私の周囲だけなのか。


自ら人に笑われ、後ろ指をさされながら

厄除けをしてくれる奇特な男が一人、家に居る。

給料もくれるし、かわいい子供までプレゼントしてくれた。

これはもしや、ありがたいのではなかろうか。


人はそれぞれ、背負って運ぶ荷物の中身が違う。

自分の荷物には、たまたま亭主の浮気が入っていた。

残念だが、こういうのには一番イヤなものが入っているものだ。

同じ運ぶなら、笑顔で運びたいものである。
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不倫の王道

2010年01月28日 10時53分31秒 | 前向き論
昨日友人と、不倫の王道について語り合った。

やはり「王道」としては

女性が独り身、男性が家庭持ちというのがいいかも…そしてモメて…みたいなこと。


楽しい蜜月期間を経て、やがては

「いつ奧さんと別れてくれるの?」に至る。

「いずれ」「そのうち」「折を見て」

言い訳を繰り返してごまかす男に、女は不審を抱きながらも

希望的観測でそのXデーを待ちわびる。


口論は激化していき…といっても

まだか、まだか、とまくしたてるのは女のほうで

男はのらりくらり。

「ああ言ったじゃない」「こう言ったじゃない」

の繰り返しに、男はうんざりする。


男だって、本当は言いたい。

「高望みはしないわ…

 こうして時々会えれば、他は何もいらない…」

なんてつぶやいてたかわいい口は、どこへ行ったのだ…と。


すでに妻にはバレている。

別れる切れるの修羅場を経て、家でも妾宅でも針のムシロ。

仕方がないのだ。

妻と愛人を丸く収める器量もゼニも無いくせに

殿様のマネをするからだ。


ぶたれたり、泣いたり

なぐさめられたり、突き放されたり。

そして激昂した女はナイフを…。

または男の家に灯油を持って…。

それとも、男がうるさい女の首に手を…。


行き着くところまで行き着いて

最後に二人を引き離すのは、生死か警察。

これが不倫の王道であろう。

王道を極める者は、幸いなことにまだ少数である。


当事者の三角関係だけなら勝手にやればいいけど

一般庶民の不倫は、どうしても無関係の人間を泣かせることになる

狭い家の中で、無い金と愛をめぐって戦争が勃発するからだ。


子供は知っている。

不倫の事実を知っていても知らなくても

お父さんが自分を見ていないことは、はっきりわかっている。

そのことがお母さんを苦しめているのも、よくわかっている。


子供服やおやつになるはずのお金が、よそへ流れる経済面から始まり

夜になってもお父さんは帰らない…

お母さんは機嫌が悪くて時々泣いてる…

両親は顔を合わせると喧嘩してる…。

さながら嵐の中をさまよう家庭内孤児。

彼らは気を使いながら、気づいていないふりをしてじっと我慢してる。


妻はそんな子供がふびんでならない。

自分さえしっかりしておけば、子供は大丈夫なのはわかっているものの

顔が濡れたアンパンマンよろしく、力が出ないのだ。

出ない力を振り絞るのは、ものすごく苦しい。


そういうしんどい時に限って

家族の病気や子供の学校などで、色々問題が起きるのだ。

「こうなったのもあの女のせい…」

ということになり、やはりナイフや灯油系の思考に至る。


あの女の血を見たり、ボーボー燃えて断末魔の叫びを聞けば

さぞかし気持ちがよかろう…そう考えるだけでゾクゾクしちゃう。

これを実行すれば、浮気された妻の王道であろう。


子供を道連れにあてつけ心中なんてことも、頭をかすめるが

苦しそうなので早々にあきらめる。

第一そんな在庫一掃セールをしたら、喜ぶのはあの女だ。


子供とセットで受け入れOKの実家のある人や

充分な収入のある人は、たいていここでリタイヤする。

正しい判断だと思う。


結婚する時は、病める時も健やかなる時も…と誓い合う。

しかしこの状況は、病院に行くほど病んでもいないし

かといって健やかでもない中間だから、誓いを破ったことにはならない。


私みたいなのはどうするか。

今、自分に何が出来るか考える。

出来ることはただひとつ。

憎い亭主と女が喉から手が出るほど欲しがっているものを

与えないことである。

それが戸籍だ。


「主人とは絶対に別れません!」と断言する妻のほとんどは

「オマエの欲しいものだけはくれてやらんぞ」と言っているのだ。

「オマエが一瞬たりとも喜ぶ場面は与えない。

 そのために自分がどうなろうとかまわない」という所存なのだ。


それは愛人が考えているような、愛する者を奪われた怒りではない。

「邪恋に狂うおのれらが、なぜにえらそうにアタシの身の振り方を指定する」

という、色恋で頭がいっぱいな者には想像もつかない

あさっての方向の怒りである。

自分の運命について、水面下で構想を練られた無礼に対する怒りなのだ。


愛人にはこれがわからない。

それほど妻が離したがらないとなれば、もっと欲しくなる。

離したくないんじゃなくて、プライドや尊厳の問題なのだ。


「愛し合っていないのに、結婚しててもむなしいだけじゃん」

愛人は言う。

オマエもいずれそうなる。

母親は、それが自身にとってどんなに過酷な屋根の下であろうと

子供を雨露にさらしはしないのだ。

雨の中をしとしとぴっちゃん…なんて、子連れ狼だけだ。


別れないと言い放ったからには、妻はそこから修羅の道を歩くことになる。

いったんよその女と寝た亭主が

家庭に戻ってきても嬉しいわけがない。

「取り戻した、良かった」とは、生涯思わないであろう。


楽しそうに子供と戯れる亭主を見ても

「フン、父親ぶりやがって。捨てようとしたくせに」

と思う。

浮気が発覚する以前のように、自分に親しく話しかける亭主に

「これで終わったと思うなよ」

と思う。


浮気は、一回こっきりのほうが周囲もつらい。

一人の女と、それによろめいた亭主を生涯ピンポイントで

憎み続ける羽目になりやすいからだ。


うちのように、それを何度も繰り返すと

怒りや憎しみが分散され、しまいにゃどうでもよくなる。

前の女と別れ、新型に夢中になると

あれほど憎かった前の女が不思議とかわいくなる。

「生意気な口きいてたけど、淋しかったのかもねぇ」

「前のコのほうが、顔も性格も良かったんとちゃう?」

などと思ってしまう。


そうこうしているうちに子供も大きくなり

肩の荷が下りた安堵感は、忌まわしい過去を吹き飛ばす。

亭主が誰と寝ようが、どうでもよい。

この子たちを私に与えてくれてありがとう…という感謝すら湧いてくる。

邪道にそれるのも、なかなかの気分である。
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全員集合?

2010年01月26日 09時39分21秒 | みりこんぐらし
昨日、正月に行われた夫の同窓会の写真が届いた。

パッパと写真を見ると、夫はそれを私に手渡して

散歩に出てしまった。


   「んまあ!伊達メガネなんかしちゃって!」

どこで調達したのか、夫はこじゃれたメガネなんてかけてんの。

視力2・0を誇っていた夫も

ここ1~2年は新聞を読む時に老眼鏡をかける。

しかし鍋をつつく場で、わざわざメガネはないだろう。


「下心ありと見たね」

長男はニヤリと笑う。

「おばさんばっかりだから、不発に終わったかもね」

次男もほくそ笑む。


夫は、メガネをかけると自分が知的に見えると

昔から信じているのだ。

でも、そこに写っているのは

皆と同じ、ただのメガネのおじさん。


「あ!」

長男が叫んだ。

「なんか変…」

集合写真2枚とスナップ2枚で、計4枚。

その集合写真の2枚に、あるものが写っていた。


オーブというらしい。

白くて丸くて、透けている。

そしてそれぞれに、ラーメンのドンブリの底にあるような

細密で美しい模様がある。

大中小、合計3個。

一番大きいのは、夫の胸のあたりにある。

その写真がこれ。


夫は紺色のジャンパーを着ていたので

コントラストがはっきりして、肉眼で見ると模様がもう少し鮮明だ。

直に写したのでなく、写真を写真に撮ったので

私の実力の問題もあり、この程度のものになってしまった。


こういうことに、とりわけ興味のあるほうではないし

意味を考えて悦に入るつもりもない。

ただ、悪いものではないような気がする。

心霊写真と呼ぶには、ほのぼの過ぎる雰囲気が漂っている。

デジカメだと、こういうものが映り込みやすいそうだ。


心当たりがあるとすれば、今回の同窓会で

すでに他界した3人のクラスメイトも、写真と位牌で参加した。

早いうちに鬼籍に入った同級生は、本当はもっと多い。

しかし今回、家族に連絡が取れ

なおかつ写真と位牌を貸してもらえたのが、この3人であった。


3人の家族は喜び「息子の分です」「娘の分です」と

会費まで払おうとしたという。

集合写真を撮る前に、僧侶の同級生がお経を上げて

皆で供養したそうだ。


同級生がその遺影を持って写っている2枚の集合写真のうち

1枚に2個、もう1枚に1個、オーブが現われている。

こじつけがましいが、二人分の遺影が一緒に写っている集合写真には

夫の胸と、壁に大小2個のオーブがあり

遺影がもうひとつ加わって3人分ある集合写真には

天井あたりに中くらいのオーブが1個写っている。

つい遺影とオーブが無関係ではないような気がしてしまう。


帰って来た夫に見せる。

「老眼鏡、老眼鏡…」

と夫は探す。

    「この写真に写ってるメガネかけりゃいいじゃん」

「あれは伊達メガネじゃ!」


はいはい、静かに、静かに…

長男が手を叩いて言う。

「これを検証しましょう…3人の亡くなった友達が出席していた…

 僕はそう思うのですが」

「はい、そうだと思います」

「もし違っていたとしても、そう思いたいです」

「なんてすてきな同窓会なんでしょう」

各自うなづく。


亡くなった友達に声を掛ける友情…

会費まで払おうとする親心…

これが真心というものであろう。

ここまでされて、参加せずにおらりょうか。

そう考えるほうが、この写真には似合っているように思う。

なんだかしみじみとした夜であった。
    
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じじばばんど

2010年01月24日 15時01分17秒 | みりこんぐらし
我らが同級生バンド…

その名もオシャレでラブリーな「じじばばんど」は

順調に活動を重ねている。

本当の名前はまだ決定していないので

とりあえず「じじばばんど」と呼んでいるのだ。


慣れるまでは、誰でも知っている演歌を

ジャズ風にアレンジしたものをやろうという方向性も決まり

ちらほら合わせたりしている。


昨夜はメンバーの一員であるナツエの店で新年会をした。

老人介護施設にいる彼女のお母さんも

昨日は帰っていて

我々が集まるのを楽しみに待ってくれていた。

ナツエによると、老人特有の症状が始まっているというが

座ってニコニコしているのを見ると元気そうだ。


    「おばちゃん、お元気そうでなにより!」

「みりこんちゃんかい?まあまあ、よく来てくれたねぇ!」

このお母さんは、うちの祖父とも古い知り合いで

私も赤ん坊の時から知っている。


「お父さんは元気かい?近頃見ないけど」

    「ええ!元気よ!」

「そうかい、そうかい。

 大事にしておあげよ」

    「は~い!おばちゃんも長生きしてよ!」


みりこんちゃん…ナツエは言う。

「お父さん、亡くなったじゃん…」

はっ!

うっかりしていた。

    「ごめん!おばちゃん、うちのお父さんはもう死んだんだった」

「ええっ?いつ?」

お母さん、葬式に来てくれていたけど…そこが老人特有の症状なのであろう。  


    「もう5年になるよ」

「ああ、そうかい…」

お母さんは泣きだす。

涙もろくなってるだけだから、気にしないで…ナツエは耳打ちする。


お母さんは涙をぬぐいながら言った。

「みりこんちゃん、親が死んだのがわからなくなったんだねぇ…

 かわいそうに…かわいそうに…」

      「…」

「頑張るんだよ…ちょっと忘れやすくてもね

 みんなそうなるんだからね…気にしないようにね」

    「は…はいっ!」

ナツエ、笑いまくってるし。

ま…いいか。


これから練習なんだろ…楽しみに聞いてるからね…

そう言いながら、お母さんは奥の部屋へ行った。

美しい音楽を聴かせてさしあげたいのはやまやまであるが

ピーだのブーだのばっかりだ。

体に悪いんじゃないだろうか。

頑張って練習します。
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ペアドッグ

2010年01月21日 13時16分43秒 | みりこんぐらし
同じ親から生まれた子犬を

愛の証としてそれぞれの家庭で飼っている

ダブル不倫のカップルがいる。


ペアリングならぬ、ペアドッグ。

夕方になると散歩がてら二人で落ち合い、仲良く歩く。

散歩は数年続いており、子犬も成犬になっていった。


二人とも私と同年代で、女のほうは古い知り合いだ。

人ゴミに紛れたら、探索はまず困難であろうと思われる平凡なお母さん。

男のほうも同じく、ごく普通の小柄なお父さん。

見た目を松竹梅で言うと、梅の上くらいの二人だ。

その意味ではお似合いといえよう。


昔は男も女も、いかにも…な人が中心となって

華やかな噂を散布していたものだが

最近は、まさかのタイプが席巻している。

しかも、まさかのタイプのほうが大胆なことをする。

慣れぬ興奮に舞い上がってしまって

噂になったら…子供が知ったら…というところまで考えが及ばないようだ。


まさかのタイプというのは、この方面では「地味期」が長かったもんで

ひとたび開花すると始末に負えない。

ひっそりと喜んでいればいいものを

必ず人に知らせるように持って行く。


その気は無くても、一度はやってみたかったほうを選択していくと

どうしてもそっちへ行ってしまうようだ。

ごく若い頃に卒業してしまうことを

年を取ってから初めてやろうとするので、無理が生じる。


さらに自分のしていることを人にしゃべりたがる。

地味期が長かった分、恋バナとやらも聞くばっかりだった。

そこで制御不能になるのだと思う。

相手構わず、すぐに「実は私ね…」とニヤケて告白開始。

話し慣れてないので、その内容も面白くない。


これには苦い経験がある。

高校の同級生が近くに住んでいることがわかり

よく遊びに来るようになった。

同級生といっても、人数の多い高校のこと

同じ女子として顔ぐらいは知っていたが

おとなしくてほとんど口をきいたことのない子である。


妻子持ちの男性に交際を申し込まれたとかで

その話ばかりするのに辟易した。

「こう言われたんだけど、私、愛されてるのかなぁ…」

細い目はうるみ、乾燥肌で粉を吹く頬は紅潮する。

…見苦しい。

私のことが懐かしかったのではなく

この話がしたいばっかりに、懐かしさを装って近付いてきたのだ。


私は言いたい…そりゃあ言いたい。

バツイチで子供も巣立ち、現在一人暮らし…

ホテル代がいらないから言い寄られたのだと。


現に男の質を問わないなら、一人暮らしをしてみるといい。

一人だと知れれば、必ず男は現われる。

しかし、そんなことを言っても地味期が長い者にはわからない。

うらやましがって水を差そうとしているとしか、思わないのだ。


結局その男性とは、2~3度遊ばれただけで終了。

別れた途端にうちへ来なくなり、ホッとした。


前出の犬女と私は、長らく疎遠だったが

これも偶然の再会をきっかけに

一時期おノロケ聞かされ隊の一員にされてしまった。

聞くほうは最初びっくりして食いつくが

それは「おめぇ、なんでそのツラで?」のびっくりだ。


そりゃ、顔は関係ないっすよ。

でもね…美しくないヒロインは、観客にとってキワモノでしかないのよ。

長時間の鑑賞には向いてないのよ。


いつも似たような堂々巡りの話なので、何回も続くと飽きてくる。

「へぇ…」「ほお…」「ふ~ん…」の他に

どんな反応の仕方があるというのだ。

話をそらしても無駄。

いつの間にか元の話に戻る魔法の話術。

聞いてるこっちがバカに思えてくる。


いや、本当にバカにされているのだ。

話さえ聞いてくれたら、目の前の相手じゃなくても誰でもいいからだ。

自分のノロケ…つまり自慢のために、他人の貴重な時間を平気で食いつぶす。


私は問いたい。

何が悲しくて、あんな小汚いおっさんと寝にゃあならん?

…問いたいが、やはり妬まれていると思われたら心外なので黙っている。


ノロケも尽きてくると、必ず旦那の悪口になる。

「こうなのよ…だから無理もないでしょ」

という方向へ持って行く。

「よその旦那の前でパンツ脱ぐのが好きです」

と言ってくれたほうが、よっぽどさっぱりする。


バレるきっかけすらわからないので

秘密の関係と思い込んでいるのは自分たち二人だけ。

聞くところによると、男の妻も早くからこの事実を知っているそうだ。

子供への影響を考えて、ひたすら忍の一字だという。

元々細身だったのに、ますます痩せて痛々しい。


家族が知っているとなれば、周囲からだんだん人はいなくなる。

この手の人間は、自分がかわいいばっかりだ。

いざとなったら必ず人を裏切るのを

皆、本能で知っている。

深入りは禁物なのだ。

遠くで眺めるぶんには、なかなか滑稽で楽しめる。


ところで最近、彼らが連れて歩く犬の種類が変わったのじゃ。

シーズー?

なんか、毛が長い小さいの。

やはりペアだ。

前の犬はどうなったのであろうか…

聞いてみたいが、またエロ話のゴミ箱にされてはたまらないので

このまま放置する。
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誇大広告

2010年01月18日 23時11分32秒 | みりこんぐらし
知人のノブコは、娘の就職を探していた。

どこか無いかしら、と私にも連絡してきた。

勤めていたデパートが閉鎖になり、退職して以来

6年間、家でブラブラしている。

もう30をとうに過ぎた娘さんだ。


「それが最近、週に何回かスナックで

 こっそりバイトしてたみたいなの」

      「ほお~」

「まあ、親の私が言うのもナンだけど

 きれいだからってスカウトされたらしいわ…」 

      「すごいじゃん」

「こないだ、飲酒運転の検問でつかまって、わかったの」

      「あら~!」

「罰金が払えないもんで、白状したのよ。 

 びっくりしちゃった。

 どこでも勤まる子だから、ちゃんとした所に就職させたいのよ」


きちんとした子だから、罰金は働いて返すと言うんだけど

就職してないんじゃあ、どうにもならないでしょ…ノブコは言う。

きちんとした子が飲酒運転なんかするかどうか疑問だが

そう言うのだから、そういうことにしておこう。


ノブコはずっと以前から、ことあるごとに娘の優秀性を強調してきた。

メイクや服装のコーディネイト、礼儀作法を先生について習った…

パソコンも英会話も人並み以上…


その娘さんをチラッとしか見たことはないが

かなりケバいおかただ。

人は見かけによらないんだなぁ…と思っていた。


折良く、夫が取引先から事務員を探してほしいと頼まれた。

工事終了までの期間限定のパートだが

優秀な人物なら正社員、または系列会社への推薦も考えるという。

条件はエクセルとワードとやらができるのと

外国人労働者がいるので、英会話が少しできれば、なおありがたい…

というものであった。

ピッタリじゃん!


喜び勇んでノブコに伝える。

「さあ…あの子がどこまで出来るか…」

意外にも浮かない返事。

    「大手だし、断ったらもったいないよ」

「あの子の気持ちも聞いてみないと…」

それきり返事が来ないので、その話は別の人の所へ行ってしまった。


ノブコが私に腹を立てている…

友人からそう聞いたのは、しばらく後のことであった。

「フフフ…娘に恥をかかせたと言ってたよ」

         「え~?なんで?」

「何でも出来るって言ってるけどさ

 あの娘さん、デパートに入った時にざっと研修受けただけらしいよぉ。 

 それももう、大昔の話よ。 

 親が言うほど優秀なら、とっくにどこかへ就職してるわよ」

        「誇大広告かいっ!」

「そうよ~。 

 母親って、娘がかわいいじゃない?

 いいことは大げさに言うのよ。

 本当にそんな話が来て、困ったと思うよ。

 スカッとしちゃった」


友人もうちと同じで、子供が男の子ばかり。

以前ノブコに

「男の子しかいないんじゃあ、老後が不安ねえ!いいわよ~!娘は!」

と言われ、それを根に持っていた。

「娘を異常に過大評価する母親ってさ、たいていダメな息子もいるよね」

     「いる、いる…息子がダメな分、娘にゲタはかせてんの」

「あれじゃ、娘自慢というより、ただのウソつきじゃん」


そういえば、そんな母娘が私の身近にもいたような…。

うちの誇大広告、夫の姉カンジワ・ルイーゼは

例の女性経営者の会で取り組んでいる婚活のお世話で大忙しだ。

生き生きと、お見合いパーティーに参加させる男性を勧誘して回っている。


義母が言うには「人気者」で「気配りのある」ルイーゼを慕って

独身男性…つまりもらいそびれている男たちからの

婚活の申し込みも順調だと言う。


そのパーティーで披露するという

ナントカ音頭の踊りの練習にも余念がない。

「踊りの練習で疲れたと言って、忙しい日に休みやがった。

 婚活の申し込み~?

 気の弱いのを二人脅して、無理矢理名前書かせたぞっ」

夫は機嫌が悪い。

ま、これにかまけているうちは、平和といえよう。

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脱皮

2010年01月15日 09時24分10秒 | みりこんぐらし
夫と出かけた時、車から

すごくプロポーションのいい中年女性を見かけた。

美人は田舎にもいるが、プロポーションのいい人というのは

めったにお目にかからない。


着ているものも、さりげなくおしゃれで

太すぎず、細すぎず、長身のメリハリボディによく映える。

ひと目でこのあたりの住人でないことがわかる。

ま、血とか遺伝子からして別世界のおかたである。


「わ~!ステキな人!私、もうちょっと体をしぼる!」

夫は、また始まった…と言いたげな顔。

「痩せさえすれば、ああなれると思うなよ」

フン。


五十肩になってから、あまり積極的に動かなかったので

体の肉がダラッとしているのがわかる。

もはや私の辞書にクビレという文字は無い。


このままでは取り返しのつかないことになってしまうわっ!

すでに取り返しどころの問題ではないかもしれないが

せめて一矢報いたいではないか。


なんか運動でも始めよう…

とりあえず近所を歩こうと、ジャージ姿もいさましく家を出る。

…100メートルで挫折。

さ…寒いやんけ。

肩が冷える…日焼けする…などと

もっともらしい理由をつぶやきながら、急いで家に帰る。


努力せずにどうにかならないものかと考える、根性無しの私。

「そうそう、あれがあったわい」

ジャ~ン!

以前つきあいで買ったまま、放置していた矯正下着。

ヨロイみたいなコルセットと、きついガードルの上下だ。


一時期、巷でこれを売るのが流行り

知り合いに「着ているだけで痩せる」「プロポーションが変わる」

とそそのかされて、ついフラフラと買ってしまった。


さっそく身に付ける。

…苦しい。

でも高かったんだし、美のために耐えるわっ!


2時間経過…締めつけられて、お歳暮のハムになった気持ち。

そして思い出してしまったのだ。

長年このタイプの下着を愛用していた人の裸を。


矯正下着には、胸の下からお腹まで

1センチ幅くらいの“つっかい棒”みたいなものが数本入っている。

その部分の摩擦で肌が色素沈着を起こし

おなかに黒い縦スジが4本ついていた。


上下が合流するウエストの周辺も黒く変色し

その部分をぐるりと取り巻く無数の小さなイボ!

そして体が下着に依存してしまうのか

肉がつきたての餅のように流れて波打っていた。


一緒に旅行してそれを目撃し

細身の外見からは想像もつかないありさまに驚愕したものである。

これを着てからでないと、洋服も入らなかった。

そうそう、あれがショックで買ったまま着なかったのだ…。


人は無意識のうちに、他人のサイズを胸の幅で

年齢を胸の高さで計測する習性がある。

だからこれさえ着ていれば、胸が横に流れず前方に突き出し

位置が胸一個分上に上がる。

目の錯覚によって現状より細く、そして若く見えるのだ。

しかし、愛用後の体の保証まではしてくれない。


こんなモンに頼っちゃいかん!

締めつけられて、なんだか頭も痛くなってきたし!


急いで脱ごうとするが、脱ぎ方がよくわからない。

背中の部分にズラズラ~ッと何十個も鍵ホックがついており

着る時は、前で鍵ホックを留めて後ろに回した。

同じように今度は後ろから前に回してはずせばいいはず。


しつこいようだが五十肩なので

左手があてにならないため、右手だけではうまくいかない。

前のものを後ろに回すのは、勢いで出来ても

後ろのものを前に持ってくる動作が困難なのだ。


じたばたするうちに

寄せてたたんで目一杯持ち上げた胸肉(すでにチチとは呼べず)が流出し

最初よりきつくなったような気が…。


わ~ん!

「矯正下着で主婦窒息死」

なんて見出しが頭をよぎる。


のたうち回って必死に脱出を試みる。

頑張るのよ、みりこん…

心は引田天功よ…

イリュージョンなのよ…

が、気分はなんだかヘビやセミに近い。

七転八倒の末、からくも脱出成功。


後で説明書を読んだら、脱ぐ時は二つに折って

決まった方向に回せばホックが前に来る…と書いてあった。

さっきの苦しみは何だったのだ…放心状態でおのれの抜け殻をながめる。

脱皮したって、美しく変身するとは限らなかった。
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謙遜

2010年01月12日 16時49分32秒 | 前向き論
先日、初対面の若い女性たちとお話しする機会があった。

「ええのぅ~!若いコは!」

オヤジのような心境になって

若いエキスを吸い取ろうとたくらむ私よ。


自営業者の二代目と婚約中の子がいて

あれこれたずねられたので、いつもの調子で答える。

「いえいえ、うちはそんなものでは…

 吹けば飛ぶような会社じゃないです。

 吹くと本当に飛びます」

「もし倒産したら?

 逃げなければどうってことないです。  

 いよいよどうしようもなくなったら、あきらめて野外生活。

 食べられる草とか、探すの」

ええ~?と不安そうな顔を見てほくそ笑む、悪質なオバタリアンの私。


帰りに一人の女の子が追いかけて来て、真剣な面持ちで言う。

「あの…もしものことがあったら

 うちに農機具を入れてる倉庫があるので

 そこに住んでください…」

頑張ってください…そう励まされて家路につく私よ。


なんて純粋なんだ…。

お気持ちはありがたい。

ありがたいが…本当に大変なら、こんな所に来ないわよっ。

あんないいコにいらぬ心配をさせてしまい

ちょっと言い過ぎたか…と反省する。


最近、こういう現象が増えてきたように思う。

謙遜したつもりが、本気で同情されるのだ。


若いコだけではない。

こないだは、同い年くらいの人が嘆いていた。

「医者を目指していた子供が挫折して

 今はアルバイトをしている。

 ちゃんと育てられなかった自分がなさけない」


充分ちゃんとしているではないか…と励ますが

「この子を殺して自分も死のうと何度思ったか…」

話しているうちに本人もムードに酔うのか

どんどん深刻になっていく。


そこで

「うちの子はぽ~っとしていて、ジャンケンであいこになると

 グーチョキパーを順番に出す子供だったんですよ。

 “おばちゃん…この子、大丈夫?”

 と親戚の子供に心配されながらも

 どうにか大人になったんですけどね…ははは

 何になろうと、無事に大きくなったことを喜びましょうよ」

というようなことを話す。


その人は真面目な顔をして言った。

「あの、私…いい施設を知っていますので、ご紹介しましょうか?」

       「は…?」

脳のトレーニングで改善した例もあるそうですよ…

と、がぜん生き生きしてくるそのおかた。

うちの子の頭という尊い犠牲は払ったが

ま、元気が出たようなので良しとする。


初対面の人と馴れ馴れしく話す私も悪いんだろうけど

なんだかねぇ…会話のパターンが変わってきている気がするんですね。


「こうなのよ~、ほんと困っちゃうわ」(謙遜)

「そんなことないわよ~、だってこうじゃん…」(否定)

「そんなこと言ってくれるのはあなただけよ~」(謙遜)

「よく言うわよ~、あははは~」(結論無し)

で、他愛のない話題とおしゃべりはどこまでも続く…

という古典的行程が、はしょられつつある。


「こうなのよ~」(謙遜)

「それは大変ですね、お気の毒に」(結論)

で終了。

簡潔ではあるが、こんなせちがらい世の中になった一因は

そこらへんにもあるのではないかと思ってしまう私である。


個々の人間業の営業部門が不振なのだ。

もちろん営業に向かない人は昔からいた。

勘違いしたまま育った王様体質。

その人数が今、すごい勢いで増加しているように感じる。

KYなんていう言葉も、その増加から

生まれるべくして生まれたのではないか。


「うちも不景気でねぇ」(謙遜)

「そうですか~?お顔にはそう書いてございませんよ」(否定)

「ははは、もう溺れる一歩手前なんだよ、キミィ」(謙遜)

「何をおっしゃいますやら、お客様が溺れたら

 そこら中、溺死体の山ですよ」(否定)

そうやって円滑な会話が続き

相手に自分を知ってもらい、安心してもらって初めて物が売れる。


「うちも不景気でね~」(謙遜)

「じゃあうちの品物は買えませんね、さようなら」(結論)

では、売れる物も売れない。


人間業の売り物は自分自身だ。

売り込みが苦手だと

この世は生きにくい…ということになり

世間が悪い、家族が悪い、あの人さえいなければ…

の方向へ行ってしまうのではないだろうか。

それとも、こういう人はあまりものを考えないので

どうってことないのだろうか。


いずれにしても、営業が苦手な人が増えているからには

私も気をつけなければならない。

もはや謙遜は美徳ではなくなりつつあるのだ。


草とかバカなことを言って誤解させておいて

相手の反応に対して機微の無さを憂い

心のヒダの本数が少ないなどと憤慨するよりは

最初から余計なことは言わないようにしよう。

自信ないけどね。
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同窓会

2010年01月09日 15時51分59秒 | みりこんぐらし
「初夢で、県会議員に当選した夢を見た…」

この正月、夫は私にそう打ち明けた。


県会!中途半端な!

どうせ夢なら、総裁選とか衆院選にせい!

…と思うが、そんなことは言わない。

「すごい!

 何にしても、当選ってのは気分いいよね」

すこぶる満足そうな夫。


「政治絡みの夢を見たのは初めて。

 なんで見たんだろう」

潜在意識なんてのは、私には興味が無い。

しかし聞かれたからには、日頃思っていることを答える。

     「…父さんは、本当は誰よりも野心があるのよ」

「そうかな?そんなことは無いと思うけど」

     「誰よりも成功を望んで、誰よりも賞賛を浴びたい…

      野心と現実とのギャップが大きすぎて

      あらぬ方面でデキる男を演じる…それがキミだよ」


初夢を見る日の夕方、夫は中学時代の同窓会に出席したのだった。

今まで、夫はこの類のものに出席することはなかった。

これが初めて。

正月はたいていデートに忙しく

数年に一度ある同窓会どころではなかったのだ。


それに、私が許可しなかった。

たいていのことは黙認するが

同窓会に関してだけは、いい顔をしなかったのだ。

しかし今回から解禁した。

相手も分別のつく年ごろだろうし、もう妊娠しないからである。

夫の同級生なら、アガってるもんね。


同級生との不倫そのものが問題なのではない。

それなら以前にあった。

取引先の事務員が同級生で、しばらくいい感じだった。


その時はたまたま自然消滅だったものの

毎回こうとは限らない。

なにしろ、後のもめぶりに関しては定評のある夫…

相手の人数が一人、また一人と増えたら

本人同士だけでなく、他の同級生とも気まずくなる。


同級生というのは生涯続く関係だ。

特にここらへんは、親や本人の葬式で

同窓会が大きな役割りを果たす。


弔問客の接待や駐車場の案内などの雑用は同級生がやるし

祭壇の横には、同窓会の会旗を立てるならわしだ。

同級生に不義理をしたら、葬式もまともに出せない。

無法地帯の我が家でも、ここだけは…という厳しい掟があった。


どんな小さなチャンスも逃さない夫である。

それは下戸だからこそ使える手口…

「送ってあげる」から始まることが多い。

同級生とどうにかなってもめるくらいなら

他の女とデートしてくれたほうが、よっぽどマシであった。


夫は初めて出席した同窓会で、初めて自分の半生を考えたらしい。

夫の年齢になると、管理職に付いている男性も多い。

遠い土地で出世している者など

故郷の友が懐かしいのと、おのれの立派になった姿を見せたいのとで

同窓会と聞けば這ってでも来る。


その出世組からことごとく

「どう?景気は」

と聞かれ、嫌気がさしたという。

「人に景気を聞いてくるヤツは、結局自分のことを話したいヤツなんだよな」

景気なんて、いいわけないだろうが…

ジャンパーとサンダルで行ってんのに、見りゃあわかるだろうよ…

自分よりみすぼらしそうなのを選んでは聞きやがる…

夫は苦笑しながら話し、私は爆笑した。


だからおしゃれして行けと言ったのに

「町内の居酒屋だし、幼なじみばっかりだからこれでいい、いい」

と着の身着のまま行くからじゃ。


しかしなぁ…と夫は言う。

「みんな一生懸命頑張ったんだよな…。

 オレ、いろんなこと考えちまったわ」


そうよ…女の尻ばっかり追ってたから

じじいになってもうだつが上がらないのよ…と言いたいが、我慢。

「いいんじゃない?父さんも父さんなりに頑張ったと思うよ」


その晩、議員当選の夢を見て

コンプレックスを帳消しにしたと思われる。

なんと便利に出来ていることよ。


「次の同窓会も出ていい?

 おまえが同級生、同級生と言う気持ちがわかったよ」

「いいよ。もうずっと出ていいよ」

次は3年後だ。

生きているかどうかもわかりゃしない。
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マツコ注意報

2010年01月06日 23時26分23秒 | みりこんぐらし
年末年始はテレビを見る機会が増える。

増える…と言ったら、普段あんまり見てないようなので

いちだんと増える…にしておこう。


別室で一人テレビを見ている夫は、ある人物が登場するたびに

私の所まで走って来てチャンネルを変える。

「おまえが出てるぞ!」


マツコ・デラックス。

顔つきも、毒を含んだしゃべり方も

ふてぶてしい態度や威圧感までそっくりだと言うのだ。

完全否定および断固抗議ができないところがつらい。

夫を見る目つきなんか、自分でも似ていると思う。


夫の前では営業、営業と

できるだけ笑顔で優しく接しているつもりだが

時折本心が顔と態度に出てしまう。

気をつけねば。

体重まで似てしまったら危険だ。


私と、姑のヨシコはよく似ていると言われる。

顔の部品というより、雰囲気や笑い方がそっくりだという。

夫の姉カンジワ・ルイーゼが嫁で

私のほうが娘だと思い込んでいる人も多い。

人から「似ている」と言われるたびに

その昔、美貌とうたわれたヨシコは、ものすごくイヤな顔をする。


しかし、ヨシコより似ているのが夫の祖母である。

義父の母親タキエ(故人)だ。

お世辞にも美しいとは言えないタキエの若い頃の写真は

私と生き写しと言ってもいい。


まだ幼かったうちの子供たちは、完全に私と間違え

「母さんと一緒に写ってる子供は、僕らじゃない!」

と泣いた。

そこに写ってる子供は、あんたらのお祖父さんだ。


おそらく、タキエの顔とヨシコのイメージを合わせ持ったのが

私なんだと思う。

この三代の嫁は、亭主の浮気に翻弄されるという共通点の他に

キツい性格や生い立ちもまことに類似している。

嫁ぐことで実家が絶えたのも同じだ。


浮気は夫婦双方の相性や性格にも問題はあろうが

私にはもうひとつ「送り込まれた」という感触がある。

よそのお宅のことは知らないけど

夫の家系は、もしやあの世で居心地が悪いんじゃなかろうかと思うのだ。


夫を始め、親族の男性諸君を眺めていたら

だいたいこんな人たちの多い家系であろうと推測するのは容易だ。

快楽至上主義に徹した結果

売り上げ目標を達成出来なかったダメなセールスマンのように

冥土カンパニーで肩身の狭い思いをしているんじゃないかと思えてくる。


生前の行い…つまり営業成績がふるわなかったため

冷暖房不完備の暗い部屋で、席はりんご箱にムシロ。

コーヒー?ダメダメ、これは清らかに生きて

人に親切だったかたがたの飲みものです…とか言われてんの。


そこで似たようなステージを用意し、似たような女を送り込んでは

問題を解消してくれるのを待つ。

宿題がクリアできなければ次の代に持ち越され

居心地の悪さは続く…。


タキエは早いうちに亭主をあきらめた。

ヨシコはいまだに、80近い亭主の女性関係に目を光らせる

愛の迷い子続行中。

私は先輩二人のいいとこ取りをして

伸縮性のあるゴムひもで結わえた夫婦二人三脚を目指している。

それが正解か否かは不明だ。

子供たちがまだ独身なので、確認ができていない。

彼らが結婚して、もしも夫と同じことをしたらペケ…な~んてね。


霊だの因縁だのを言い訳にして

自分の至らなさを責任転嫁する気はさらさら無いが

勝手にそんなことを考えていると、けっこう楽しめる。


私が死んだら、ぜひ聞いてみたいと思っている。

「どうっすかね~?」

「あ~、まあまあじゃないの?」

満点とはいかないまでも

せめて及第点は取りたいものである。


ところで子供たちは普段、私のことをよく「おそのさん」と呼ぶ。

『魔女の宅急便』に出てくる“パン屋のおその”である。

「母さんが出てる!」

初めてその映画を見た時、かなり興奮していた。

以来十何年、続いている。


マンガ!しかも妊婦!

ま、私の欲するところの形容詞…優雅、ゴージャスとは遠くかけ離れた

下町のおっかさんには間違いない。

最近は呼ばれる回数が減ったように思う。

年を取って、外見や勢いが衰えたからだろう。


パン屋のおその経由、マツコ・デラックス行き…。

そして老婆となったあかつきには、あの二人のようになるのだ…

ああ…。
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組長・7

2010年01月04日 12時45分44秒 | 組長
自治会の組長の仕事も、残すところあと3ヶ月となった。

実はあれからも細かいイザコザが何度かあったのだが

あまりにも馬鹿馬鹿しくて面倒なので書かなかった。

かいつまんで言うと、問題が起こるたびに

Sじじい一味は人数を減らし、最終的には2人になった。


Sじじいに荷担し、自治会を牛耳ろうとたくらむ最後の友…

飲み仲間のOじじいは

下品な巻き舌で、我々役員に精一杯の威嚇を試みていた。

しかし元ヤンの若妻たちと

“日常会話オール喧嘩腰”の義父に慣れきっている私のこと…

そんなのは痛くもかゆくもない。


いくらワーワー言ってもこたえないので

Oじじい、そのうち疲れたのか病気になってしまった。

近所どころか、この世の住人でなくなる日も近いと思われる。


ひとりぼっちになったSじじい、仲間がいないとチュン太郎。

共に戦った役員仲間や近隣住民は、今回のことで一層親しく結束し

静かな日々が続いていた。


さてそんな年末のある日、面白い出来事があった。

なんと、Sじじいが社交ダンスのクラブに入会しているというのだ。

あのツラと、優雅な社交ダンスがマッチしない驚きもあったが

入会したのが義母ヨシコと同じ、公民館のものであったことにも驚いた。


クラブは高齢化で存続の危機に瀕しているという。

そこで、町内の経験者に片っ端から声をかけているそうだ。

やはり平均寿命の差であろうか、男性が不足しているということで

Sじじいにも声がかかったらしい。


去年の夏から、ヨシコがよくこぼしていた。

「誰が誘ったのか、小汚いへたくそなおっさんが入会した」

「みんな、誘った人の人間性まで疑ってんの」

それがSじじいのことだとは、夢にも思っていなかった。


ステップを間違えてはヤケになって投げ出す…

汚れた作業着のまま平気で来る常識知らず…

会話のキャッチボールが成立しないトンマ…

昔は一流店の板前だったなどと大ボラを吹く…


「あんれまあ、うちの近所の変なおっさんとそっくり!」

私もそう言ったものだが

それが同一人物と立証されたのは

社交ダンスクラブの忘年会であった。


忘年会で、くじ引きにより

ヨシコとSじじいは隣り合って座った。

そこでヨシコの胸の名札を見たSじじいは

「うちの近所にも同じ名字の悪魔みたいな女がいてなぁ」

と話し始めたそうである。


背がやたら高くてオカマみたいな女…

年下のくせに目上の自分の言うことを聞かん…

旦那までデカい図体してワシを見下ろしやがって

にらみつけやがるから住みにくい…


うちの名字は、この地方では珍しい。

市内で同じ名字を名乗る者は一族のみである。

ヨシコは着火した。

「あんたっ!そりゃうちの息子と嫁だがねっ!」

「ええっ?!」

Sじじいは顔を真っ赤にして絶句したという。


ヨシコは追撃する。

「あの子たちが何したって言うのよっ!

 こんな所で人に悪く言われるような夫婦じゃないわよっ! 

 あんたが悪いんじゃないのっ?」


Sじじい…そこでどうしたかというと

「あ~、酔った酔った」

と席を立ち、逃げようとしたという。

いかにもヤツらしい。


「待てっ!卑怯者!言ったことの責任取れ!」

ヨシコはSじじいをふんづかまえ

回りにいた人たちも加勢して

Sじじいにさんざん文句を言いまくったそうだ。


「これであの人はもう、クラブには来られないわっ!」

ヨシコは私にすべてを報告し終えると、勝利の笑みを浮かべた。


それにしても…と、再びキッと宙を見つめるヨシコ。

ヒロシのことまで言うなんて!

何がヒロシの図体がデカいよっ!

あの人がチビなんじゃないのっ!


嫁のアクマもオカマも聞き流すが

息子の悪口は許せないヨシコであった。


でかした!ヨシコ!
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やったもん勝ち

2010年01月01日 09時19分02秒 | 前向き論
明けましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いします。


いつもながら楽しませてもらっている検索キーワード。

『いちご大福ってスケベ』 『札幌で裸の女の居る店』 『角が立った女』

『かわいい妻 今夜包まれる』 『昔美人 今おばはん』

『考えの古い夫がうざい』…フフッ。


『教師を首にする方法 不倫』

不倫した教師を首にしたいのか…

それとも首にしたい教師を不倫のワナにっ?…

懐かしい火曜サスペンスのテーマ音楽が流れてしまうではないか。


教師を聖職者と思うから、おかしなことになる。

彼らは勉強も出来て、友達ともそこそこうまくやって

これといった困難も無くすくすくと大きくなり

学校が楽しくて好きだから教職を選んだ、経験値の低い人々だ。


そもそも教師になろうかと考える人には、体力がある。

溢れるスタミナをどう配分するかが、教師としての値打ちだ。

人間だもの…スケベの方向へ多く配分される人もいる。

経験値が少ないので、慣れぬ色ごとにうつつを抜かした場合

体力があるだけに厄介なことになりやすい。


この界隈でも、教え子に性的いたずらを繰り返していた教師

痴情のもつれで教え子を殺害した教師

ホテルで同僚教師と密会中に腹上死した校長の話など

この関連の話は豊富だ。


教え子の父親と熱愛の末、職を辞した新人教師の話も

20年近く経った今でも語り伝えられている。

この教え子の父親というのが自分の夫でなく、他人だったら

さぞや楽しくうわさ話に加わろうに…ああ、残念、残念。


相変わらず奧さんを苦しめる旦那さんもいるようだ。

『夫 スーツ上着 ファンデ 浮気』 『夫 事務員 不倫』 

『不倫をした夫へ』 『夫 ネックレス 不倫』…  

上着にファンデーション…残念ながらまず浮気だと思う。

浮気とはいかないまでも、それに近い誘惑は甘受した…

または自ら抱き寄せたということだ。

もしも偶然の事故だったとしたら、かなり珍しい体験なので

宝くじを買ってみるのもいいかもしれない。


『浮気夫 悟り 自立』

自立というからには、現在自立していないのであろう。

悟りも自立も急ぐ必要はない。

焦って自己嫌悪に陥り、苦しくなる。

いまどきは、立派な資格を持っていても出遅れた者には厳しい。


自立と一口に言うが

浮気夫の収入をあてにしない妻となるのも一種の自立だろうし

離婚して実家を頼り、母子手当をもらいながら生活するのも自立と呼ぶなら

自立の意味はかなり広範囲なものとなる。

漠然としたものでなく、自分はどの程度の自立を望んでいるのか

条件は整っているかをよく考えたほうがいい。


その意味ではまったく自立しておらず

ニート妻の私が申し上げるのもナンだが

仕事やお金よりも先に、自立しなければならないのは心だ。

亭主からの精神的自立だ。


亭主を自分のものと思うから、気に入らないことをすると腹が立つ。

借り物、預かり物と思う。

これがいいと思ったけど不良品だったというのは珍しいことではない。


車でも電化製品でもそうだけど

一度ミソがついたら、ずっと故障し続けるものだ。

リコールも無い。

故障の部位が致命的なものか、だましだまし使えるものかを

じっくり観察し、吟味する。

主導権は妻にあることを忘れてはならない。

衝撃や慟哭と引き換えに与えられた、強い権利である。


憎しみ、悔しさ、みじめさ、悲しみ…

それらを忘れて楽になることを悟りと表現するならば

裏切られたと思っているうちは苦しみが続く。

非難しながら、どこかで

「受けた傷を治して欲しい」「つぐなって欲しい」

という依存が発生しているのだ。


妻の心の傷を癒せるような丁重な男なら

それがいかに困難な所業であるか知っているので

自制心を働かせて浮気などしない。


妻はこのさいと思って、高いハードルを用意する。

「これくらいイケるでしょう」と、今か今かと飛ぶのを待つ。

しかしそんな亭主は、どんな低~いのだって飛べない。

で、妻は落胆。

これを繰り返していては、開ける運も閉じてしまう。

つまり、自立と悟りは連動しているといえよう。

このキーワードで検索した人は、すでにそれに気づいている。

夜明けは近い。


今、自分は“亭主に浮気される妻”

という役が回ってきていると思ってほしい。

サスペンスにするもコメディにするも自由だ。

降板して違う役を待つことも出来る。

せっかくの大役が書かれたフダを首から下げたまま

被害者として鬱々と過ごすだけではもったいない。

熱演を期待する。


私はショーガールになったつもりで人生舞台に立っている。

人から見れば地味でショボい人生…拍手もスポットライトも無い。

それでも同じやるなら華やかに美しく、そして楽しく…もうヤケである。

やったもん勝ちというやつだ。
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