殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

手抜き料理・夏祭り編

2024年06月10日 12時25分38秒 | 手抜き料理

6月某日、同級生ユリちゃんの実家のお寺で

恒例の夏祭りがあり、私はいつもの料理番仲間…

同級生のマミちゃん、モンちゃんと一緒に料理をした。

もう一人の料理番、公務員OGの梶田さんも手伝ってくれたので

大変助かった。

 

お祭りの料理は、もはや惰性。

メインは昨年、一昨年と同じくカレーじゃ。

カレー制作中の私と、右側はカレーに入れるニンジンを炒めてるマミちゃん。

私は小さい鍋を抱え、大鍋の中身の一部を移して

カサ増しを狙っているところみたい。

 

 

それから、適当な物を並べたオードブル。

年々体力が落ちて、もはやメニューを考えるのも面倒くさい。

今年のオードブルは鶏の唐揚げ、ハンバーグ、卵焼き

ポテトサラダ、それから冷凍の枝豆という手抜き祭り。

 

センターはフキと油揚げの煮物。

前日、台所の裏庭にフキが群生しているのをユリちゃんが獲って

「お祭り料理の一品にして欲しい」

と言ったけど、フキって下処理が厄介なので断固拒否。

そしたらユリちゃんの兄嫁さんが、煮てくれてた。

フキが一番美味しかった。

 

鶏の唐揚げは、5キロ分。

下味をつけて揚げればいいので、決めた。

味付けは市販の塩麹に、ショウガとニンニクを加えただけ。

酒も醤油も入れず、塩麹だけなのに

けっこう美味しくてびっくりした。

自分が言い出しておいて、我ながら無責任なものよ。

 

ハンバーグは合挽ミンチ5キロで、小ぶりなのを120個作った。

去年作ったミンチカツの衣付けが大変だったので

小麦粉、卵、パン粉を見捨て、裸のまま焼いただけ。

肉汁が滲み出て、食べる人の服を汚したらいけないと思い

硬めに仕上げたらカッチカチのパッサパサ。

 

卵焼きは、お祭りを手伝うのは男性が多いということで決めた。

うちに余っていた卵を持ち込んで、適当に焼いただけ。

 

ポテトサラダは、マミちゃんが家から作って来てくれた。

人に作って持って来させるのは、最高の手抜き。

 

冷凍枝豆もマミちゃんのアイデア。

国産の良い枝豆で、よく太っていて美味しいものだった。

 

これで万全!とタカをくくっていた我々を、予想外のアクシデントが襲う。

2升釜で1升と8合炊いた、カレーのごはん。

規定量いっぱいの2升を炊くと

“釜が張る”といって、ごはんがパサパサするので

ちょっと少なめに炊くのが常識なんだけど

今回はお米の芯が残って、ひどくパサパサだった。

 

米と水を計量したモンちゃんが、間違ったらしい。

彼女は普段、こんなに大量に炊くことは無いので、無理もない。

スイッチを入れたのは私。

その時、水加減をちゃんと確認すればよかったと思ったが

あとの祭り。

 

けれども対処法はある。

生煮えのごはんに茶碗一杯ぐらいの日本酒を回しかけて

もう一度、炊飯スイッチを入れれば何とかなるものだ。

何とかならなければバターで炒め

上からカレーをかけて誤魔化そう…と思いながら

恐る恐る日本酒投入後の炊飯器を開けてみたら

何とかなっていたのでホッとした。

 

1升8合のごはんは昼食のカレーでほとんど無くなったので

午後になると、同じく1升8合をもう一回炊き直し

小さい1升釜でも8合を2回炊いた。

カレーのごはんもだが、大量のおむすびも必要だからだ。

 

こうして頑張ったお祭り料理だが、今年は大学生の大軍が来ず

我々ぐらいの年代の爺婆が多かったので

ごはんもカレーもオードブルも大量に余り

持ち帰りの折り詰めを作る方が忙しかった。

打ち上げの夜食なんて、大学生がいないということで

生ビールなどの酒類が出たため、食事に取り組む者とていなかったのだ。

若者がいないと、こんなに余るのか…改めて驚いた。

 

ところで今年は梶田さんが朝から終わりまで手伝ってくれたので

一緒にいる時間が長かった。

我々4人は人の耳を気にしつつ、色々なことを話したが

梶田さんも、お寺料理にはかなりの不満をお持ちの様子。

 

お祭りの翌々日も、「義姉が疲れているから」という理由で

ユリちゃんから昼ごはんを作って欲しいと頼まれているそう。

我々がお寺料理を拒否した時は、優しい彼女に頼むのが

近年の習慣になっていた。

「シブシブ引き受けたけど、ホントは嫌。

疲れが残るから、息子にもいい加減にしろって言われてる。

私はあんたたちより三つも年上だし、しんどいのよ」

 

翌日じゃなくて翌々日の理由、我々にはすぐわかる。

翌日はお祭り料理が残っているので、お寺人はそれで食いつなぐのだ。

そして食べ尽くした翌々日、梶田さんの料理で再び食いつなぐ寸法。

こういう下心が透けて見えるのを見えないフリするのが

お寺料理の面倒くさいところなのよね。

 

特に梶田さんが納得できないのは、ガソリン代なんだそう。

彼女はユリちゃんの嫁ぎ先のお寺と実家のお寺の

ちょうど中間にある町に住んでいて

二つのお寺までは、どちらも車で30分かかる。

「気軽に呼び出してくれるけど

こっちはガソリンは使ってるんだからね。

やってられないわよ。

だから最近は材料費を請求するようにしたけど

今までの習慣が染み付いてるから

後で渡すと言って、そのままのことも多いんだわ」

なるほど…。

 

彼女は美しい料理を作るだけでなく

こだわりの食器まで持ち込んで飾り立て

使った食器はそのまま持って帰って家で洗うシステムを取っている。

そしていつも明るく楽しそうで、周りに気を使う。

そんな彼女を、我々は聖人君子と崇めていた。

心いやしき我らに彼女の真似はできないと、いつも言っていたのだ。

が、聖人君子にも色々と思うところがあったと知って

ホッとした次第である。

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手抜き料理・宅配弁当

2024年05月22日 10時19分49秒 | 手抜き料理

お風呂から上がって真っ先に顔を拭いたら、すぐ化粧水をつける…

これ、何十年も前から知っていた。

私のような乾燥肌の人には特にいいというのも知っていた。

だけどやらなかった。

理由は、浴室に化粧水を持ち込むのを忘れるから。

百回思い出して、百回忘れた。

 

絶対に忘れない方法として

最初から化粧水を1本、風呂場へ置いておく方法もあるが

それには抵抗があった。

浴室の湿気と気温で、変質の恐れがあるからだ。

さらに忘れっぽい私の場合

化粧水を浴室に置いたことすら忘れる恐れ濃厚。

 

しかし、そうも言っていられなくなった。

栄養クリームを置き薬の物に変えて以来、肌砂漠はひとまず終わったが

そうなると欲が出て、もっと潤いたくなる。

10キロ痩せた喜びと引き換えに

目の下のクマやら額のシワを入手してしまったが

そんなのは老眼が進めば無いのと同じさ。

欲しいのは触感でわかる潤いなのさ。

 

欲にかられた私は、いよいよ風呂場化粧水を実践することにした。

水もしたたる髪も身体も後回しにして

まず顔だけの水分を軽くタオルドライしたら

間髪入れず化粧水を手に取って顔にパシャパシャ。

 

結果…すごく潤ってびっくり。

風呂上がりに髪や身体を拭いたりパジャマを着たり

基礎化粧品の置いてある部屋へ移動する間も

顔は刻々と乾燥し続けている。

その前に化粧水でフタをすれば

その後のスキンケアもみずみずしく続行でき

翌日もしっかり潤って化粧のりもいい。

 

欲深い私は、なんならスキンケア御一行様を全部

浴室に持ち込んで済ませてしまおうかとも考えた。

が、これから暑くなる。

汗で流れてしまうだろうから、思い止まった。

また冬になったら、やってみようと考えている。

 

 

さて、潤いは手に入れたが、自由は未だ手に入らない私よ。

人間、一番欲しい物は手に入りにくいもの。

そうよ、実家の母に弁当を届ける習慣は、今も続いている。

この先も続くと思う。

これは、ある日の弁当。

左上からサバの生姜煮、アコウの煮付け

焼き豚と、その隣はエノキと梅干しの炒め物

お好み焼き。

 

またある日は、左から高野豆腐の煮物とナスの揚げ浸し

ミンチカツとポテトサラダ、冷凍たこ焼き

それから塩サバの焼いたの。

 

「またまた…自慢げに見せびらかしちゃって。

これのどこが手抜き料理なのよ」

と言われそうだけど、私にとっては立派な手抜き料理。

 

まず、3日か4日に一度のペースでやっているのが最大の手抜き。

実家通いを減らそうとして、一度にたくさん持って行ったら

老人のことだから、次に届くまで持たそうとするだろう。

それで食中毒になったら厄介だ。

少しは自炊もしないとボケるだろうから

だいたい2日で食べ終わる量に調節している。

 

実家は同じ市内とはいえ、車で15分かかる。

弁当を渡してすぐ帰るわけにもいかないから

なんやかんやで半日仕事になってしまう。

毎日だと息切れして続かないのはわかっているため

自分のペースを崩さない、つまり言いなりにならない決意は大事だ。

 

それから、うちの晩ごはんのおかずを午前中に作ってしまい

午後、それを詰めて持って行くシステムを確立しているので

思ったほど負担にはならない。

むしろ自分とこの晩ごはんが、すでにできているという安心感は大きく

実家へ行った帰りに、同じ町内にあるマミちゃんの洋品店に寄ったり

スーパーで買い物をして帰ったり

先月打撲したヒザのリハビリに行ったりと

やりたいことが色々とできて、午後から夕方までを有効に使える。

 

宅配弁当の品目は基本的にうちの晩ごはんのおかずだけど

他には老人が作りたがらない揚げ物や

調理に時間がかかるので絶対に作らないであろう物

買うことはほとんど無いであろう冷凍食品など

老人にはご無沙汰がちの食品を見繕って詰めている。

 

他には母が魚好きなので、息子たちの釣果の消費に貢献。

焼きゃあいい、煮りゃあいい魚料理は、ほんに早くて便利。

うちのおかずに、これら魚料理を加えて3〜4パックに増やせば

いかにもあれこれとたくさんに見えるではないか。

 

よって、人が思うほど大変ではないのだ。

親に弁当を届けていると言ったら

いかにも大層な慈善をやっているみたいに聞こえるけど

手軽にとらえて楽しくやれば、それは手抜き料理になる。

 

が、こんなにいい加減な私にも、一つ問題が。

母は時々、この宅配弁当にお金を払うと言うけど

私は自分の家のついでだし、プレッシャーになるからと受け取らない。

そこで、町内にあるカフェで奢ってくれようとする。

町外在住の料理好きで美しい奥様が

無人になった古民家を借りて道楽でやっている店よ。

値段はちょっとお高め。

 

母は、このカフェで出されるランチやスイーツが好き。

しかしそこは田舎のお婆さん、一人で入る勇気は無いので私を誘うわけ。

コーヒーが美味しいし、カフェのママさんは私の知り合いだし

それは構わないんだけどカフェのメニューがつらいのさ。

 

細くて美人って、野菜と酸っぱい物が好きみたいね。

日替わりのランチには、てんこ盛りの野菜サラダに

舌を刺すほど酸っぱい手作りのレモンドレッシングがたっぷり。

メインにも柚子ソースやら、バルサミコソースやら

ブルーベリーソースやらの酸っぱいソースがかかっていて

付け合わせの温野菜もツンツンと酸っぱい味付け。

スイーツも、レモンの登場多しの似たり寄ったり。

口内炎ができた時なんか、ちょっとした地獄だったわよ。

 

私、酸っぱい物が嫌いってわけじゃないけど

大量の生野菜に酸味のオンパレードだと

身体が冷えてお腹が痛くなっちゃうのよ。

母にもママにも言えないけどさ。

メルヘンなカフェで酸味と戦いながら

もう何百メートルか先にある和食店に思いを馳せる私。

だから弁当を届ける時は、カフェの定休日に合わせるよう努力している。

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手抜き料理・久々の寺

2024年05月12日 15時13分54秒 | 手抜き料理

会社のことをお話ししているうちに、1ヶ月が経ってしまった。

その間、家でも色々なことがあったので

お話ししたいと思う。

 

とりあえずは4月の始め、同級生ユリちゃんの実家のお寺で

久しぶりに料理をしたことをお話ししたい。

この日はお花見と銘打って、招集がかかった。

 

お花見の料理は去年も作った。

ユリちゃんの身内と仲良しさんだけのために働いた私とマミちゃんは

忸怩たる思いを抱えつつ何とかやり過ごし

「来年はもうやるまい」

と言い合ったが、敵もさるもの…

今年は「主人のため」と、コンセプトを変更してきた。

ユリちゃんのご主人モクネン君は去年の2月

心不全で倒れて生死の境をさまよった。

その後、復活は遂げたものの、今年に入ってから

また元気が無くなってきたという。

 

「みんなで楽しく食事をしたら、元気が出ると思うの」

彼女は電話でそう言った。

人の旦那なんか知るか…と思ったが、もはやユリちゃんは

我々料理番が彼女のために動かないと悟ったらしい。

だから目的を変えてきたのだ。

 

その努力に免じ、そして6月に迫ったお祭料理のウォーミングアップとして

私は承諾した。

マミちゃんとモンちゃんに出欠をたずねると

マミちゃんはやると言い、モンちゃんは年度始めなので

去年と同じく欠席すると言った。

 

その後、ユリちゃんとの連絡で

もう一人の料理番、梶田さんも来ると聞いた。

梶田さんにはこのところ、嫁ぎ先のモクネン寺で

何度も料理を作ってもらっているという。

お花見は、その慰労も兼ねたいそうだ。

 

そうはいくか…

来るんなら働いてもらうぞ…

ということで

「梶田さんに、おむすびだけ作って来てと伝えて」

と言った。

モンちゃんがいないため、おむすびまで手が回らない…

と言ったら聞こえはいいけど

米を研いだりおむすびにするのが、かったるいのだ。

梶田さんは親切なので、二つ返事で引き受けてくれるはず。

 

こうして我々も含め、総勢8人のお花見と元気付けと慰労の会は

当日を迎えた。

お寺で作業を開始したが

本当に去年の秋だか冬だか以来の久しぶりなので

カンが鈍っているのがわかる。

いいもんね〜。

量が少なければ我慢してもらい、時間に遅れれば待ってもらい

無償の奉仕は年相応。

マミちゃんと私はそう決めたのだ。

 

この日のメインは

『マミちゃん作・ビーフシチュー』

缶詰のブラウンソースを使うと簡単だそう。

 

『マミちゃん作・春キャベツ入りのペペロンチーノ』

 

『みりこん作・関西風お好み焼き』

夏祭りのメニューにどうかと思い、試験的に作ってみたけど

キャベツを荒みじんに切るのと、焼くのに時間がかかるのでボツ。

 

『大葉とチーズ入り味噌カツ』

これも夏祭りにどうかと思って作ってみた。

豚肉はショウガ焼き用の薄切りを2枚使い

間に大葉と溶けるチーズを挟んで揚げる。

 

チーズは、マミちゃんの提案でシブシブ挟んだ。

手間だったわりには、チーズの存在が豚にかき消され

大葉の香りはチーズでかき消されていたので不要と思った。

ソースは田楽用の味噌を買って胡麻をぶち込み、かけただけ。

こっちはお祭り料理として、まあまあイケそう。

ただしチーズは却下。

 

『みりこん作・スズキの刺身』

前日、息子が釣ってきたので、お寺で刺身にした。

 

『みりこん作・スズキのバターソテー』

刺身の余りに塩コショウと小麦粉をまぶして焼いただけ。

仕上げに醤油。

 

 

『梶田さん作・ルーロー飯』

ルーロー飯て、どこか暑そうな国の煮豚ぶっかけ飯のこと。

頼んだのはおむすびのはずだけど、こうなっていた。

ユリちゃん夫婦は梶田さんのルーロー飯が大好物なので

作ることになったようだ。

 

八角の香りが強烈で、私はちょっと苦手かも。

白っぽい長方形の物は豚じゃなくて厚揚げ。

豚肉も近頃は高い。

梶田さんは材料費をもらわない主義なので

少ない豚肉に厚揚げでカサ増ししたそう。

私は代用品を使うくらいならレパートリーから除外するタイプだけど

梶田さんは豊富なアイデアで突き進むタイプ。

 

梶田さんはデザートに

チーズケーキとパンナコッタも作ってくれていた。

「豊かな食卓でした!まんぷくぷく!」

ユリちゃんの口癖。

じゃかましいわ!

さあ、来月のお祭り料理、手抜きで頑張るぞ。

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手抜き料理・茶色祭

2024年01月19日 15時53分19秒 | 手抜き料理
同級生ユリちゃんのお寺で料理を作る習慣は

昨年の10月以来、ご無沙汰。

20年前に父が他界して以来、一人暮らしを続けできた実家の母が

90才を迎えた途端に衰えたため

そっちが忙しくなったことに遠慮しているらしい。


口では忙しいとナンボでも言えるが、私の場合、見た目が証明している。

何だかんだで結局、10キロ痩せた。

その姿を見て、厚かましいユリちゃんもさすがに何も言えないようだ。


そうよ、本当に忙しければ痩せる。

「働くのは私ばっかりで、寝る暇も食べる暇も無い」

ユリちゃんの訴えを信じて同情し

「うちら同級生がやらねば誰がやる!」

そう思って始めたお寺料理だが、あれから5年…

ユリちゃんは順調に太り続けている。

そのありさまをドラム缶と表現していたけど、撤回させてもらう。

ドラム缶の方が縦長で、スラッとしてるぞ。



で、一回り細くなってご満悦の私だけど、問題は顔よっ!

急激に痩せたので、肌は小ジワ祭、目の下はクマ祭。

スキンケアを頑張っても、64才じゃ効果が出ないのよね。

スタイルを手に入れたら、顔が悲惨…

やはり何かを得るには、何かを失わないといけないみたい。

虚しいわ〜(ここ、笑うところ)。



さて、寒くなったので、おでんでもどうです?


忙しさを免罪符に、煮込み料理が多くなった。

この日のおでんの出汁は、牛テール。

こってりした良い出汁になる。

具は大根、こんにゃく、ジャガイモ、厚揚げ、練り物に

私の暮らす瀬戸内ではタコを入れることもある。

タコを入れると、なぜか男どもが喜ぶ。



豚の角煮


角煮を簡単に美味しく、そしてさっぱり仕上げたくて

長年研究していたけど、やっと作り方が確定。


①鍋に水を張り、豚バラをブロックのまま入れて強火で1時間煮る

②1時間後に火を止め、そのまま冷ます

③完全に冷めると豚から出た脂が白い膜になるので

それをすくい取って捨てる

④残った透明の汁はそのままにして

肉をフライパンに移し、全面を焼きつける

⑤肉と汁を圧力鍋に入れ替え、酒、ニンニクひとかけ

ショウガひとかけ、白ネギの葉を数本入れて煮る

圧力鍋が無ければ、普通の鍋でコトコト煮る

⑥圧力鍋から蒸気が出たら火を止め、冷めるまで放置

普通の鍋なら強火で1時間程度煮て、フタをして放置

⑦肉が冷めたら再び脂が膜になっているので、すくい取る

この時、ニンニク、ショウガ、ネギも取り除く

⑧砂糖大さじ1、少しの醤油を入れ、また煮てから火を止め放置

※醤油は最初にたくさん入れて煮ると肉が硬くなるので

この時は少しにしておく

⑨冷めたら味と柔らかさを確認し、醤油が足りなければ足して汁を煮詰め

また冷めるまで放置してから切り分ける

※冷めていないと、切る時にバラバラになる


脂をすくい取り、味を決めて煮詰めたものがこれ

ちょっと食べたので、減ってる


工程を言葉にすると長ったらしくて嫌気がさすけど

実際にやるのは放置祭。

ブロックのまま冷蔵庫に入れておくと数日は保存がきくので

おかずのない時、切って温めてから生野菜の上に置き

煮詰めた汁をかければ立派な一品。

細かく切ってチャーハンの具にしたり、ラーメンのお供にしたり

汁と一緒にご飯にかければ焼き豚丼。

この焼き豚丼に目玉焼きを乗せたら

焼き豚卵飯(やきぶたたまごめし)といって

愛媛県だったかの名物B級グルメになる。

私は年寄りなのでやらないけど、若い人は喜ぶ。



椎茸マヨ


生椎茸をサッと洗って水分を拭き取り

マヨネーズと塩胡椒をかけたらオーブントースターで焼くだけ。

これがあなどれない美味しさ。

しかも早い。

私はパセリをかけてみたけど、無くても大丈夫。


気づけば茶色のおかずばっかりね。

美しくて洒落たお料理は苦手どす。

すんませ〜ん。



『しおやさんへ』

前記事のコメント欄でお話ししてくださった前立腺癌の話。

昨日、経験者から詳しい話を聞いたのでご報告いたします。

その人は同窓会の会長、通称モトジメ。

4年前、同窓会の還暦旅行でカニの本場、城崎温泉に行きながら

カニを注文し損ねた男。


別件で久しぶりに電話をかけてきたんだけど

実は俺…ということで、闘病絵巻を聞くことになりました。

しおやさんと話したばかりなので、あまりの偶然に驚いた次第です。

ヤスヒロのケースと違うので

詳しくはコメント欄へお越しくだされば幸いです。
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手抜き料理・過去最高

2023年10月15日 11時14分22秒 | 手抜き料理
魔の懐石料理教室が終わった翌週

同級生ユリちゃんのお寺で、恒例のお寺料理を作った。

お盆行事で熱中症になって以降、初めての料理番だ。


お寺では危険防止のためにエアコンが付いたが

あれから季節は移り、秋になったので出番は無い。

ユリちゃんを始め、お寺の人たちは得意げな一方

病み上がり?の私に気を使っている様子だ。


「結局付けるんなら、こんなことになる前にやらんかい…」

台所の壁に高々と祀られたエアコンを見て、私はいまいましく思った。

こっちはずっと後遺症に苦しんでいたのだ。

私の夏を返せ。


一方、料理番仲間の同級生マミちゃんは張り切っている。

前の週にやった懐石料理の教室で、さんざん働かされた恨みが

彼女を燃えさせていた。

「お金を取られて働かされるより、タダ働きがわかってるお寺の方がまだマシ」

だそう。


とはいえマミちゃんも、お寺料理から足を洗いたいと思っている。

しかし、ユリちゃんと気まずくなるのは困る。

狭い田舎町で、お寺は人の口に上りやすい。

特にユリ寺は、住職が常駐していないことや跡取りがいないこと

檀家がひどく少ないこと、住職の夫婦仲が険悪なことなど

お寺にとって不利な条件が揃っているため、何かと噂の的である。

“そして誰もいなくなった…”という結末になるその日を

町の人々は興味本意で見守っているのが正確な現状。


そのように注目を集めている対象との関係がこじれたら、噂はすぐに広まる。

客商売40年のマミちゃんは、そうなると面倒くさいことを知っていた。

主観でしか物を見られない年寄りは、とんでもないことを言いふらすものだ。

“あのユリ寺で同級生が仲間割れ”

噂にそんな見出しが付いたら、みっともないではないか。

先はどうあれ、今の関係を自ら壊すわけにはいかない…

この縛りがマミちゃんを引き留め

私は彼女の縛りに付き合っているという格好である。


ともあれ今回は、宗派の開祖の命日を記念した、“御会式(おえしき)”。

めでたさと規模では、夏祭りの次に重い行事だ。

参加者が少ないとはいえ、それなりの格は必要。

スンドゥブチゲやチーズダッカルビでランチというわけにはいかない。


ということで、私が思いついたのが

《みりこん作・レンコン饅頭》


言わずと知れた、あの恐怖の懐石料理に対する反抗だ。


懐石料理で作ったレンコン饅頭は、蒸したものだった。

ボケた味で、ちっとも美味しくなかった。

私にとってのレンコン饅頭といえば

以前勤務していた病院の厨房で作っていた名物料理である。


これは以前、レンコン団子という名称でご紹介したことがある。

レンコン、ギンナン、ニンジンをそれぞれフードプロセッサーで粉砕した物と

大葉のみじん切りを鶏ミンチに混ぜ込み

卵、酒、ショウガ汁、塩、薄口醤油を加えて

小さいハンバーグ状に丸めて揚げたもの。

材料さえ揃えればすごく簡単で、油はねが無く平和に揚がる。


レシピは50個から60個分と、多いのが申し訳ないけど

鶏ミンチ1キロ、くずレンコン1キロ、ギンナンの缶詰中型2缶

ニンジン3本、大葉50枚、ショウガ5センチ大1個分の汁

卵3個、酒大さじ1、塩小さじ2、薄口醤油80CCってところか。


こうして揚げたレンコン饅頭を汁椀に置き

昆布とカツオ節で取った出汁に酒、薄口醤油、塩で吸い物状に味付けして

片栗粉で緩やかなトロミを付けた汁をヒタヒタにかけ

スダチでもミツバでもカイワレでも飾れば

ハイ、何やら上品そうな椀ものの出来上がり。

しかも香ばしくて美味い。

デキる女の名声は欲しいままである。



《みりこん作・イカ大根》


我が家の魔境、冷凍庫から

いつぞや息子の釣ってきたイカが発掘されたので煮て持って行った。

私の料理はこれだけなので、すごく楽。

今回から、マミちゃんと誓い合ったのだ。

「これからは、あんまりようけ作るまぁや。

ようけ作ってもアレらが喜ぶだけで、こっちは洗い物や持ち帰りの土産が増えて

自分の首を絞めるだけじゃけん」


一方、マミちゃんは春巻き特集。

お盆行事で倒れた私がほとんど食べられなかったため

改めて作ってくれた。

春巻きは生も揚げたのも好物なので、嬉しかった。

《マミちゃん作・海老入り生春巻き》



《マミちゃん作・キムチ入り生春巻き》



《マミちゃん作・揚げ春巻き》



《マミちゃん作・生リンゴと溶けるチーズの揚げ春巻きハチミツ添え》



《マミちゃん作・シイタケの肉詰め》


この料理もヘビーローテーションだが、私の好物なので作ってくれた。



この行事ではユリちゃんと兄嫁さんが作った精進の炊き込みご飯が土産に付くので

主食は凝らずにおむすびを作る予定だった。

が、お天気がパッとしなかったのもあって参加者のキャンセルが続き

結局、檀家は3人だけ。

料理番はマミちゃんと私とモンちゃん、そして公務員OGの梶田さんの4人。

あとはユリちゃん夫婦に兄嫁さん

それからユリちゃんの従姉妹夫婦がランチに訪れて5人。

総勢12人、身内とスタッフの方が多いという安定のメンバー構成。

檀家が少ないので、焼香など法要の手順が早く終了してしまい

昼食が早まったため、おむすびを作る時間が無くなって白ごはんになった。


他に、ゼンザイを作ってジプロックに入れて持って行った。

冷凍の白玉団子も買って行った。

冷凍白玉は凍ったまま、鍋に移したゼンザイに入れて温めればいいので楽ちんだ。


今回は料理をあえて少なく作ったため

残り物は多めに作っていたレンコン饅頭だけ。

カラシ醤油を付けて食べるとカジュアルな居酒屋風になり

汁ものとは違ってまた美味しい。

水分に気を使わなくていいので土産の折り詰めも早くできて、とても楽だった。


マミちゃんは材料費が8千円近くかかったと気にしていたが

構うもんか。

私も躊躇なく、7千円ほど買った。

量の少なさと予算の高さは過去最高となり、満足だった。
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手抜き料理・料理教室・2

2023年10月10日 08時42分23秒 | 手抜き料理
翌朝は、珍しく足腰が痛かった。

台所仕事には慣れているつもりだったが、人の指示…

特に行き当たりばったりの気まぐれで仕事を振られ

余計な筋肉を使ったみたい。

しかもタダ働きとくれば、痛みが増すような気がする。


しかしこの日は、早出を要請されていた。

予定より1時間早い9時出勤だ。

前日が予定通りに行かなかったため

お客様に料理を出す12時には到底間に合わないからである。


そうなってしまったのには、明確な理由があった。

料理教室の開催前日、真っ先に食器を出して

二つある作業台の一つを潰してしまったからだ。

すると残り一つの作業台しか使えなくなり

切るのも、食材や料理を置くのもそこしか無くなる。

作業台の上は物でひしめき

何をするにも物をどこかへよけてからでないと進まない。

そして皆が作業台を取り囲んで仕事をすることになるため

人の交差すら難儀。


2人からせいぜい5人程度の少人数を相手に

細やかな接待をするのが懐石料理というもの。

調理場の我々を含めた30人分弱の料理を作るのは

先生も初めてだとおっしゃっていたが

いつもの習慣で食器を先にお出しになったのだ。

予定通りに進まないのは、こういった手順の問題なのであった。


ともあれ、身体のあちこちに湿布を貼った私は

昨日と同じく迎えに来てくれたマミちゃんの車に乗り込み

重い足取りで再び会場へ赴いた。

「今日も労働…」

「次は誘われても絶対断ろうね」

車中で話していると、マミちゃんが思い詰めたように言った。

「ねぇ、今日来るお客さんて、食べるだけなんじゃろ?

その人らの会費は半額の5千円じゃん。

座って食べてお金は半額なら、そっちの方がいいよね」

「うちもそう思うよ」

「私らは倍のお金出して働くって、おかしいんじゃないん?」

「しょうがないが…誘いに乗ったうちらが悪いんよ」

「うちらってさ、どこ行っても働かされるよね」

「うちらのようなおバカさんは、そういう人しか付き合ってもらえんのよ」

「かわいそうじゃね、うちら」

「ほうじゃね」


価格設定に疑問は残るが、これも経験。

はるばる東京から来る二人の旅費と宿泊費を捻出するには

物好きな田舎のお人好しからぼったくるしか無いだろうよ。

お客の方も、5千円の会費に見合った料理が出てくるなんて

夢にも思わない方がいい。

大半は旅費宿泊費と講師代に回される。


お寺に到着して、また働いた。

本番が近づいた先生は、昨日にも増して気が立っているみたい。

が、それも今日で終わり。

あとあとまで語り草になるネタを拾ったと思えば

これは良いイベントである。


やがて昼が近づき、人が集まってきた。

大半が70〜80代のおばあちゃんだけど

とっても期待しておられるご様子なのは、華やいだ服装でわかる。

その人たちに、また先生の自己紹介、そしてお経と講話が終わったら

いよいよお食事会の始まりだ。


これから、ごはんを盛るところ。

平たい皿は、《鯛の昆布〆》


昆布〆は、鯛を前日から昆布で巻き、ラップにくるんで冷やしておいた。

同量の酢と醤油に浸しておいた海苔を添えると

醤油をたらさなくても刺身が食べられる格好。


汁物は、ちぎった海苔にカラシを一滴たらした味噌汁。

味噌はもちろん、自然醗酵のもの。

が、昆布〆のワサビは市販のチューブだった。

自然を食すというコンセプトは、どうなっとるんじや。


作法としては、ごはんと汁の一回目が終わったら

向付(むこうづけ)、つまりなま物に箸を付ける。

最初にごはんと汁を先にいただくのが鉄則で

食べ終わったら、ごはんと汁のお代わりを補充する。


《碗盛…レンコン饅頭》


レンコンとトロロ芋をすりおろし、ヒジキとニンジンを混ぜて蒸したもの。


《焼物…イワシのオーブン焼き》

生のイワシの開きに大葉を乗せ、梅味噌を塗って巻いてある。

お客様には、これが一番好評だった。

味、姿ともにわかりやすかったからだと思う。


《煮物…冬瓜(とうがん)のあんかけ》


湯で煮た冬瓜に、鶏ミンチのあんをかけたもの。


《八寸…サーモンの油漬け・栗きんちゃく》


懐石料理って、私の推奨?する手抜き料理とは

一番遠い所にあると思っていた。

しかし、これは見事な手抜き料理じゃないのか。

なぜならサーモンの油漬けは通販だそうで

それをスダチの上に乗せただけ。

レインコートの生地みたいな

水分を通さない懐紙(かいし)に置かれ、もはや皿すら無い。

ちなみに懐紙は、二つに折った折り目の方をお客様に向ける。



一緒に座って食べるように言われたが、懐石料理はお給仕が頻繁。

椅子を温める暇は無い。

料理は一品ずつ、次々に出さないといけないし

味噌汁は2回、ごはんは3回つぎ直す。

本当の懐石料理は、もっと頻繁なつぎ直しがあるそうだけど

立ったり運んだり配ったり座ったり食べたりを繰り返していたら

昨日に引き続き、胃がおかしくなった。


《菓子…じょうよ饅頭》



食後のお抹茶と饅頭が終わると、お客様は満足してお帰りになった。

夕方まで後片付けをして、ようよう終わり。

いや〜、どんなすごい料理に出会えるかと思ったけど

普通のおかずだったというのが正直な感想よ。


が、ダシ巻き卵のコツだけは掴んだ。

初日の賄いでレンコン饅頭の下ごしらえをしたんだけど

卵の白身を使ったので黄身が余り、それを消費するために卵を足して

先生がダシ巻き卵を作ってくださったのだ。

わたしゃダシ巻き卵はよく作るんだけど

時間が経ったら卵焼きからジャブジャブとダシが滲み出て

皿が水浸しになるのが悩みだった。


あれはあらかじめ、砂糖と塩で味付けしたダシに片栗粉を入れて混ぜておき

それを生卵と合わせたら、時間が経っても水気が出ないのね。

さすがプロ。

これを知り得ただけでも、参加した甲斐があった。

重労働に身を挺してゲットした、一生役に立つコツだ。

もっと色々知りたいのは山々だが、我々に次は無い。

《完》
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手抜き料理・料理教室・1

2023年10月06日 09時11分16秒 | 手抜き料理
先日、仲良し同級生のマミちゃんと私は

ある共通の知人Aさんに誘われて料理教室に参加した。

東京から講師を招いた講習は2日間。

参加費1万円。

会場は市外のお寺。

即決で参加を決めたのは、それが懐石料理の講習だったから。

普通の料理なら、行ってない。


お寺でやる理由は、我々を誘ってくれた世話人のAさんが

お寺の奥さんと懇意なのもあったが

広い座敷に台所、趣きのある食器が豊富という条件も欠かせない。

そして何より、懐石料理の雰囲気とお寺の風情がマッチしているから。

味気ない公民館では、やりにくいだろう。


さて、懐石料理は茶道に由来する。

本格的なお茶席の前に

長い時間をかけて出される特別なおもてなし料理だ。

つまり我々のように茶道に興味の無い者にとっては、別世界のこと。

教室では料理の作り方だけでなく

懐石料理の作法や精神も教えてもらえるという。

そこで一生に一度ぐらいは、敷居の高い未知の領域に触れてみたくなった。

それを“血迷った”と言うのはともかく、二人は午前中からいそいそと出かけた。


東京からやって来た先生は懐石料理の店を経営する、我々と同年代の女性。

助手は10才ぐらい年上の、やはり女性。

そして生徒はAさんと、40代後半らしきお寺の奥さんにその友だち一人

それから我々の計5人だ。


先生と助手の自己紹介が終わり、お寺の台所でいよいよ料理教室が始まる。

1日目は昆布とカツオ節を使った出汁の取り方だ。

『出汁の取り方など』

予定表にも、そう書いてある。

で、実演を見たが、コツは昆布とカツオをたっぷり使うくらいで

まあ、普通だった。


で、メモを片手のお勉強はこれで終了。

出汁の講習が終わると、いきなり労働が始まった。

食材の下ごしらえ、洗い物、道具の出し入れ、雑用…

休憩無しの立ちっぱなし。

病院の厨房とユリ寺は労働量が同じぐらいだと認識していたが

ここもなかなかどうして、それを上回るハードっぷりである。


あまりの人使いの荒さに

1日目の予定表にあった『出汁の取り方など』

の文字を虚しく思い出す。

『など』の方が、断然多過ぎるぞ。


というのも2日目はお寺の座敷に

20人余りのお客様をお呼びして料理を出す。

メンバーは、そのお寺の檀家さんや地元のお友だち。

5千円のお食事代で懐石料理の作法と精神を学びつつ

料理を味わえるそうだ。


よって1日目は、その準備をするらしい。

それが『など』の正体。

『など』とは翌日の本番のために行う労働であり

その労働の中に時折、サービスとして

懐石料理のレクチャーが挟まるということらしい。

要するに我々は、生徒という名の人足なのであった。


とはいえ労働基準法もタジタジの労働に次ぐ労働は

仕方のないことかもしれない。

先生は普段、東京で懐石料理の店を経営しておられる。

料理教室の講師をするのは初めてで、あんまり余裕が無さそう。

こう言ってはナンだけど段取りが良くないもんで

全てが行き当たりばったり。

慣れない場所というのもあるだろうけど

ボールにバット、フライパン、味噌こし、すりこぎなど

次々と必要になる備品の所在、数、サイズを

未確認のままで作業を進めたら

まずそれを探したり調達することから始めるので

どうしてもバタバタしてしまう。

周囲が忙しくなるのは当たり前だと思った。

言わないけどね。


さらに、先生と助手の自己紹介が長過ぎた。

先生は今回の料理教室をとっかかりに

地方への出張教室や出張料理を模索しておられるご様子。

そして助手の方は手芸の先生で、やはり今回の広島行きをとっかかりに

地方の生徒を増やしたいご様子。

自己紹介が長く、結果的に時間が押したのは

この目的のためというのが私の個人的見解である。


参加者としては、一緒に講習を受けるお寺の奥さんとその友だちの

せめて苗字ぐらいは知りたいと思った。

名前すらわからんのでは、労働するのに不便じゃないか。

しかし先生たちは田舎者に興味が無いご様子で

二人分の長い自己紹介が終わると、次は先生の人生苦労絵巻が始まる。

長い自分語りで時間が押したため、後の予定がハードになるのは当然なのだ。


そして午後3時、翌日の本番で使う食材のおこぼれや

出汁を取った後の昆布とカツオ節を使って作った昼食の時間。



ごはんだけ、懐石風の“一文字盛り”というやつ。

小鳥が食べるくらいしか無いけど、お代わりはできない。

多めに作った他の賄い料理と一緒に、お寺のご家族のお夕食になるんだそう。

ブッ…どこのお寺も一緒なのね。

だけどこのお寺の奥さんは、よく働きなさるわ。


おかずの方は翌日に出す鯛の昆布〆で余った鯛アラと

レンコン団子に使うレンコンのおろし汁でトロミを出した潮(うしお)汁。

出汁を取った後のカツオ節を細かく刻み、鯛アラからせせり出した身と一緒に

醤油とミリンで炒めてフリカケ状にしたもの。

それから、やはり出汁を取った後の昆布で佃煮。

差し入れのソウメン瓜で作った生酢。

卵焼き。

明日使う四角豆で梅和え。

明日使う厚揚げを炒めて醤油をかけたもの。

明日出す栗きんちゃく用の茹で栗。


が、疲れ過ぎの空腹過ぎで、あんまり食べられなかった。

醤油味と酸味が多く、胃が受け付けない。

自然の中に食を見い出す…

いただいた生命に感謝して何一つ無駄にしない…

懐石料理はこのコンセプトが大前提なので

賄い料理にも当然、その方針が適用される。

大いなる自然や生命が対象だもんで

疲労困憊したオバさんへの優しさなんか、ありゃしないのだ。

立ち仕事に慣れてないマミちゃんは、食事もそこそこに目を閉じて

うつむいたきりである。


食事の後片付けと明日の準備が終わったら、午後4時半。

我々はほうほうのていで、逃げ出すようにお寺を後にした。

「どこが料理教室じゃ!」

「お金を払って働くなんて変!」

「騙された気分!」

「詐欺よ!」

帰りの車では、これで盛り上がった。


「明日も働かされるんなら、もう行きたくない!」

お互いに本音を言い合うものの、すでに支払った1万円は惜しい。

本物の懐石料理となると、何万円もする高級料理だ。

真似事とはいえ、1万円の会費で匂いだけでも嗅げるなら…

そう思って申し込んだ料理教室、ここでリタイヤするわけにはいかない。

いや、明日こそ美味いモンが食べられるかも。

その期待を胸に

「あと一日、何とか頑張ろう!」

最終的にはそう誓い合う二人だった。

《続く》
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手抜き料理・エアコン問題

2023年09月29日 09時58分44秒 | 手抜き料理
この8月にあったお寺料理のことは、すでにお話しした。

とうとう熱中症になり、倒れた件だ。

頭痛、吐き気、目まい、胸と背中を圧迫されるような痛みに耐え

料理を出し終えて横になった私に、ユリちゃんは言い放ったものである。

「エアコンを付ける経済力は、うちのお寺にはありません!」


その声は、かすかに震えていた。

自身にとって都合の悪い状況になったことを認めたくない時

人は怒りに似た感情が湧き起こり、つい声が震えるものだ。

まったく、恐ろしい女じゃ。

けれどもその時、ホッとしたのも確か。

“根性無し”として、ユリちゃんに見限られたのを確信したからだ。

ラッキー!


その後、私は熱中症が癖になった。

一度なったら後を引く…それが熱中症の怖さ。

前にも何回かなったことがあるけど、予後は平気だった。

しかし今回は加齢と体重減少で、回復力が衰えたらしい。

朝はピンピンしているのに、夕方になると胃が痛くなって

胸が押しつぶされるように苦しくなり、吐き気をもよおす。


大丈夫な日は一日も無かったが、歯を食いしばって耐えた。

苦節1ヶ月余り、ようやく解放されたのは

朝晩が涼しくなってきた最近のこと。


私が熱中症の後遺症に苦しんでいる間、ユリ寺でも色々あったらしい。

ユリちゃんの兄嫁さんからたびたび連絡があり、流れを把握した。

たびたび連絡があったのは、私の体調を気遣ってのことではない。

お盆行事で出した鯛そうめんや、他の料理の作り方をたずねる内容だ。


それをたずねていたのは、私より3つ年下で還暦のTさん夫妻。

ご主人のほうは同級生の弟だから、全然知らない人ではない。

彼らは分限者の家系で、その昔、ユリ寺はT家の全額出資により建造された。

その功績を示すため、ユリ寺の瓦にはT家の家紋が付いている。

よって檀家の長である総代は、代々T家の当主が務めるならわし。

つまりはユリちゃん一族にとって、T家はダントツのお得意様なのだ。


けれども時代は変わり、もはやT家は泣く子も黙る分限者ではなくなった。

細々と自営業を営む今の当主、T夫婦にとって総代の地位は魅力が無いらしく

一方的に辞めると通告してきたのが5年前。

以来、T夫妻は行事に参加しなくなっていた。

ユリ寺は、唯一のスポンサーから見捨てられたのである。


先祖代々の総代に逃げられて以降のユリ寺は

檀家の中から手当たり次第に総代を立ててやり過ごした。

しかしその人たちは高齢だからか、次々に他界してしまう。

任期半ばで亡くなれば、急きょ兄嫁さんが引き継ぎ

新年度にまた別の人を総代に当てがう作業を繰り返していた。


このような末期症状に苦しむユリ寺の行事に

T夫妻が再び出席するようになったのは去年から。

彼らが料理、特に夏の鮎を楽しみにしているのは私にもわかっていた。

鮎は、T夫妻の大好物なのである。


今回もお盆行事に出席したT夫妻は後日、ユリ寺を訪れた。

その来意は料理のお礼と、作り方を教えて欲しいというもの。

鮎は入手も料理も太刀打ちできないので調理法を聞く気は無いが

鯛そうめんは家でも作るそう。

が、どうしてもうまくいかず

製作者に連絡を取って欲しいと熱心におっしゃる。

夫妻がこんなに食いつくのは初めてだった兄嫁さんは、感激しきり。

私に作り方をたずねてきたのだった。


それまではユリちゃんも兄嫁さんも

私が抜けたってかまわないつもりでいたと思われる。

マミちゃん得意のカタカナ料理さえあれば、彼女らは幸せなのだ。

が、T夫妻が絡んだとなると、話は別。

若手の彼らが総代にカムバックしてくれるかも…寺はその可能性に燃えた。

夫妻の好きな鯛も鮎も、私がいなければ出てこんじゃないか。

みりこん株は急上昇、勝手なものだ。


お寺の人々は、私の引き留め作戦に出た。

その作戦とは、台所にエアコンを付けるというもの。

ユリちゃんは以前から我々がエアコン設置の要望を口にするたび

「建物が古くて付けられないと思う」、「旦那がウンと言わないはず」

などと言い訳していたが、今回、彼女のご主人モクネン君はあっさり許可。

エアコンはすぐに付いた。


「エアコンが付きました!」

ユリちゃんからは証拠の画像と共にグループLINEで報告が来たが

反応する者は誰もいなかった。

犠牲者が出て、しかも夏が終わってからそんなもん見せられても

かえって腹が立つばかり。

マミちゃんもモンちゃんも、同じ気持ちだったと思う。


LINEでは、続いて10月の行事のことに触れ

「よろしくお願いします」

と言ってきたが、これにも皆、無反応。

冷た…。


返事が無いまま数日が経過…

ユリちゃんから、檀家さんに送る行事の案内ハガキまで届いた。

こんなことは初めてだ。

これにも「よろしくお願いします」と自筆で書いてある。

が、無視。

マミちゃんにも届いたと思うが、彼女はどうだか知らない。


さらに数日後、ユリちゃんから電話があった。

マミちゃんもハガキに無反応だったそうで、不安になったらしい。

やっぱりあの子も同じ気持ちだったのね。


だから、ちょっと厳しいことを言ってやった。

うちらは使用人ではない…

人をタダで使うなら、最初に環境を整えるべきだった…

その上、手土産や晩ごはんまでとなると重労働だから続かない…

この際、言いたいことを言ってやるもんね。


「わかってる、それはよくわかってるのよ」

ユリちゃんはそう答え、やんわりと仏教の教えを語ってケムに巻くのが常套手段。

それから必ず言うのだ。

「だけどみりこんちゃんも経営側の人だから、私たちの難しさもわかるでしょ?」


今回はその件に厳しく突っ込んだ。

「うん、少しはわかるつもり。

うちらを使うのも、経費をかけずに安く上げるためじゃん。

なおかつ手作りのオリジナリティが出せたら、言うことないよね。

じゃけど人が離れていくのは、経営のやり方が間違っとるけんよ。

仏教と経営は両極にあるものじゃん。

その間を取り持つのが坊守の存在価値じゃないん?

仏の道より先に人間の心を理解せんと、現代の経営は成り立たんよ」


ウンウン、そうなんじゃね…

ユリちゃんはつぶやくように言うが、聞いてないし。

とりあえず彼女が私に聞きたいのは、10月の行事で料理をしてくれるかどうか。

我々の代わりに公務員OGの梶田さんを使えばいいようなものの

この日は御会式(おえしき)といって

宗派の開祖の命日を祝うだか悼むだかの大きな行事なので人数が多い。

上限8人、折り詰めの手土産無しという条件で料理をする彼女では回せない。


だから引き受けた。

言いたいことを言ってスッキリしたし、暑くさえなければ私はかまわない。

ユリちゃんは9月も遠慮したらしく、一度も呼び出しは無かった。

久しぶりなので、やってもいい。

ただし年末の大掃除の日と、お雑煮を作る1月3日はもう行かないと言った。


年末はそれでなくても忙しいし、正月早々、働くのはしんどい。

大掃除なんて、檀家の人数は年々減って、今じゃ一人か二人だ。

そのためにわざわざ何日も前から準備して、結局作っているのは

ユリちゃん一族の昼ごはんと晩ごはんなんだからバカバカしい。

こうして出動回数を減らすもんね。


というわけで、清々しい気持ちで行事の料理番に臨むワタクシ。

熱中症の病後?を免罪符に、家のごはんは手抜き三昧。

例えばマツタケごはんとか、豚汁とか。


マツタケごはんは前にもご紹介したことがある。

マツタケはもちろん、1本千円ぐらいの外国産。

2本使って4合炊けば、あれこれ材料を買って料理を作るより

安くて簡単にできて家族が喜ぶため、うちでは手抜き料理の扱い。

昔はこれに鶏モモを入れていたけど、年齢と共に鶏の脂が鼻につくようになり

今じゃマツタケと油揚げだけになったので、さらに安くつく。


タコ刺し


長男が釣ってきたので、切るだけでいいお刺身。

難しいと思われがちだけど、よく切れる包丁があったら意外と簡単なんよ。

大きいタコの方がやりやすいけど、これは小ぶりのタコだったので

ちょっと時間がかかった。

吸盤は生だとお腹が痛くなることがあるので、サッと茹でて適当に切って添える。

人に配ったら、喜ばれた。

刺身はそのまま食べられるんだから、喜ばれるのは当たり前か。
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手抜き料理・熱中症のその後

2023年08月21日 19時06分43秒 | 手抜き料理
前回の記事で、私がお寺料理の最中に

熱中症でダウンしたことをお話ししたら

5人の方から、優しいお見舞いのコメントをいただいた。

それぞれ表現は異なるものの、どなたもおっしゃっている。

「お寺料理なんか辞めてしまえ」

肉親であれば、きっと同じことを言うだろう。

温かい親心が嬉しかった。

本当にありがとうございました。


で、すっかり気を良くして元気になった私。

懲りもせずに後日談をお話ししたくなったので

胸クソ悪いだろうけど聞いてちょ。


一昨日、同級生5人で結成する通称5人会のLINEは

16日にあったお寺料理のことで盛り上がった。

まずマミちゃんが倒れた私の体調を問い、欠席したモンちゃんが心配し

横浜のけいちゃんが驚き…という順序。


私が「ありがとう、元気です、心配かけてごめんね」と返した時点で

ユリちゃんからお礼のLINEがある。

ここで連絡が行ったのだろう、しばらくしてユリちゃんの兄嫁さんからも

丁寧なお礼のLINEが届いた。

いつもは当日の夜か翌朝、ユリちゃんと兄嫁さんからお礼のLINEをもらうが

今回は3日ほど音沙汰なし。

別にお礼を言ってもらいたいわけではないので全くかまわないが

私の具合が悪くなったもんだから、二人は様子をうかがっていたらしい。


ともあれユリちゃんも兄嫁さんも言葉を尽くして礼は言うものの

体調を気遣うフレーズは無い。

うっかり体調の件に触れたら最後

「クーラーをつけてくれないと、もうやらない」

と言われたり、今後の体制について変更を提案される恐れがあるからだ。

これをブロックするため、義理の姉妹は連携している。


「お礼はいいから、料理の写真を送ってくれよ」

と思ったが、都合の悪い過去には触れたくない彼女ら。

こっちも蒸し返す気は起きず、そのままだ。


で、私が普段と変わらない様子なのを見て取ったユリちゃん…

「みんながいてくれなかったら、お盆行事はカレーしか作れなかったわ。

本当にいつも助かってます」

とたたみかけてくる。

彼女のプログラムでは、ここで私の謝罪と決意表明が述べられる予定。

「迷惑かけてごめんね。

次回から、また頑張ります」

「ありがとう、頼りにしてます」

これで全てが終わるはずだった。


が、私はプログラム通りにしなかった。

「カレーもええじゃん。

これがほんとのボン・カレー」

そう返したら、返事は無かった。



ところでこれ、何だと思う?


『オクラの花』という物体。

この夏、マミちゃんが時々くれる。

家庭菜園を始めた彼女、今のところ人にあげられるのは

これだけなんだって。


「成長を待って、オクラにしないの?」

私はたずねたわよ。

私だって、いつぞやオクラを育てようとしたことがあるもの。

途中まで調子良かったけど、毛虫に葉っぱを食べられて

茎だけになって終わったわ。


でも違うんだって。

この花が進化したらオクラになるわけじゃなくて

花そのものを食べる品種なんだって。

そういえば昔、料理屋で食べたことがあるのを思い出したわ。


調理法は超簡単。

洗って半分ぐらいに切ったらポン酢を付けて食べるだけで

火なんて使わない。

無味無臭なので、ポン酢の味しかしなくて

噛むとオクラみたいな粘りが少し出てくる。

マミちゃんは、サッと湯通ししてもいいと言ってたけど

湯をかけたら変色しちゃって汚くなったわ。


そうパクパク食べられる物じゃないし、美味しいわけでもない。

特に真ん中の雌しべ?だかは、食べるのに何だか勇気がいるから

最初に切り落としちゃう。

家では私しか手をつけないので夏の料理の参考にはならないけど

淡い黄色が美しくて、食べる時は森の妖精になったような気分なので

ご紹介してみました。


ついでに『キュウリの辛子漬け』


知人から教えてもらった漬物。

超簡単。

①キュウリ1キロ(10本ぐらい)を乱切りでも何でもテキトーに切る

②市販のカラシ粉(スーパーに売ってる)大さじ2杯

塩30グラム(大さじ2杯)

砂糖200グラム(計量カップ1杯)

ホワイトリカー(果実酒を作るお酒で、酒屋に売ってる)100CC

以上を大きめのジプロックに入れ、そこに切ったキュウリを入れて

一昼夜、冷蔵庫に放置したら出来上がり


けっこう水分が出るから、ジプロックの口はしっかり閉めてね。

食べる時は、水分を捨ててください。


これ、甘くて冷たくて美味しくて、後を引く。

初めてもらった時、うちの義母ヨシコがすごく気に入って

また食べたいと言うのでレシピを聞いた。

キュウリを10本も食べられないから5本でいいわ…

とおっしゃる方は、全ての分量を半分にしてください。


ホワイトリカーは1.8リットル入りが多いから

他に使い道が無いと思って買うのを躊躇するかもしれないけど

お酒なので腐りにくいし

美味しくて何回もリピートするようになると思うので大丈夫。

できあがったら、人に分けてあげても喜ばれる。

ホワイトリカーを使うと言ったら、何やら特別な感じが漂うものよ。

卑怯者の私にとって、その満足感はプライスレス。



さらについでに『糸コンニャクの明太子炒め』


冷たい料理に飽きたら、たまにはどうぞ。

①糸コンニャクはサッと茹で、明太子は中身を出す

②フライパンに油を小さじ1杯入れ

糸コンニャク、明太子、酒少々を入れてサッと炒めたら

仕上げに薄口醤油を好みで適当にかけて出来上がり


油は、天ぷら油でもゴマ油でもオリーブオイルでも何でもいい。

どうってことない一品だけど、箸休めやお弁当のおかずにおすすめ。

食欲が出るかもよ。
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手抜き料理・今年も寺で地獄を見る

2023年08月17日 13時55分28秒 | 手抜き料理
昨日は、恒例のお寺料理があった。

お盆の施餓鬼供養という行事だ。

日本列島に被害をもたらした台風7号の置き土産により

(こちらは少し雨が降った程度でしたが、皆さんの地域は大丈夫でしたか?)

すっごい猛暑。 

クーラーの無い寺の台所で働くには、かなりの覚悟が必要だ。


そこで服装は冷感スポーツシャツに半ズボン

エプロンは薄手のコットンで背中の開いている物を選択。

持参品は氷のう各種、塩飴に塩タブレット

ウィーダーインゼリー、それから空調ベストも持参。

どれもコメント欄で教えていただいた暑さ対策のグッズである。

皆さん、ありがとう。


体力勝負なので、朝ごはんもたっぷり食べた。

ヤクルト1000も飲んだ。

そして献立は、この日のために万全を期している。

とにかく室温を上げない…

この大前提のもと、準備は3日前から始めた。


寺の台所で極力煮炊きをしたくないので

献立は昨年と同じく巻き寿司と、鮎の甘露煮。

どちらも作りたいわけではない。

しかし、家で作って持って行ける特典は大きい。


巻き寿司…去年は卵、カニカマ、キュウリ、タクアン、ゴマの入った

名付けて「貧乏寿司」を作ったが、今年はこれに焼肉をプラス。

炒めた牛肉に焼肉のタレをたっぷりぶっかけ

汁気が無くなるまで煮た佃煮状のものだ。

先日、牛ロースを使って家で作ったら

手間は貧乏寿司とあまり変わらず、美味しかったので決めた。


牛肉を使うと高いので、ユリちゃんは機嫌が悪いが、構うもんか。

もう予算のことは考えない。

あいつらに作らせたら金がかかってかなわん!と思われるぐらいで丁度ええんじゃ。

そう言いながら、お寺用には安いコマ切れ肉を買っちゃう根性無しの私よ。


それから、これも昨年と同じく鯛ソウメン。

鯛は家で焼いて持って行くので、寺で火を使うのはソウメンを茹でる時だけだ。

できればソウメンなんか茹でたくないけど、高齢の檀家に人気なのではずせない。


マミちゃんは、生春巻きを作ると言う。

おお!よくぞ言ってくれた!

生野菜や茹でた海老などの材料を持ち込んで寺で巻くだけなので

煮炊きは必要無い!ラッキー!


それから、もらったカボチャで煮物

ジャガイモもたくさんもらったそうで

ポテトサラダを作って来てくれることになっている。

あと、彼女の妹がゴーヤとツナのマヨネーズ和えと

オカラを作って持たせてくれるという。

フフ…完璧…ほくそ笑む私だった。



が、甘かった。

圧力鍋を使う鮎の甘露煮は、前日までに仕上げればいいけど

傷みやすい巻き寿司はそうはいかん。

中の具は全て当日の朝、作らないといけないので午前3時半から作業開始だ。

20本の巻き寿司を巻き終えると、9時。

この時点で、すでに疲れ果てた。

去年より、明らかに体力が違う。


そして10時、マミちゃんが迎えに来てくれたので寺へゴー。

この日はモンちゃんが仕事で欠席だったので

公務員OGの梶田さんが手伝いに来てくれた。

料理に詳しくて、よく動く梶田さんが来てくれると楽なのでホッとした。


さっそく支度を始めると、マミちゃんの荷物から何やら怪しき物体が…。

「ジャガイモ、まだたくさんあって無くしたかったから

コロッケとジャーマンポテト揚げる〜」

大きなタッパーから出てきたのはパン粉をまぶしたコロッケと

丸めたジャーマンポテトの生の姿。

消費したいジャガイモをありったけ使ったらしく、大量だ。

ガ〜ン!


かくして延々と揚げ物が始まった。

室温は容赦なく上がり続ける。

マミちゃんは体力作りのためにジムへ通い始めたそうで

今回はものすごく元気だ。


品数を増やすと食べる人は喜ぶだろうが

室内温度だけでなく、調理器具や皿の片付け、食べ残しも増えて

我々の負担はどんどん増していく。

料理は共生…作り手と食べ手がお互いに笑顔でいられ

同時に次回の楽しみへと繋がるように

ほどほどの所でセーブするのも技術のうちなのだが

善人のマミちゃんにそれを理解しろというのは難しいのかもしれない。


やがて11時半、ソウメンを茹でる頃には、室温も私の疲労もマックスだ。

こうならないように、早くから巻き寿司を作ったというのに

何もかも水の泡よ。

私は密かにマミちゃんの善意を恨んだ。


今年は初盆の檀家が二組あったので、会食をするのは我々を含めて22人。

あの寺にしては大盛況、一昨年の記録21人を超えたニューレコードだ。

座る場所が足りないため、先にお客様に食べていただくことになり

食事を出したところで本格的に気分が悪くなった。


頭痛、目まい、吐き気に耐えかね

台所の奥にある三畳ほどの小座敷で横になってみるが

寝たって起きたって暑いのは同じ。

しかもこの寺は掃除が行き届いてないので

畳に何か怪しい虫が棲息していそうで落ち着かない。


で、力なく横たわる脱落者を発見したユリちゃんの第一声がこれ。

「台所にクーラーをつける経済力は、うちのお寺にはありません!」

普通は「大丈夫?」だろうが。

身体の方はともかく、お陰で心は冷えたわ。


日頃は優しい兄嫁さんも

「熱中症じゃないのぉ?暑さに弱いのね」

だとよ。

正真正銘の熱中症に決まっとろうが!

お前らみたいに、ノークーラーに慣れてないんだよっ!


しかし彼女らが、安易にいたわりの言葉を口にできないのはわかる。

病人を病人と認めてしまったら、猛暑の中で料理をさせた寺に責任が生じるじゃんか。

万が一、人命にかかわる事態になれば、うちの家族も黙ってはいまい。

業務上の過失を問われる恐れが出てくるため

あくまで倒れた本人の落ち度という方針を貫くしかなかろう。

すげない態度は、お寺にとって危機管理の一端なのだ。


こっちも、心配してもらおうとは露ほども思っていない。

継子道、嫁道の長い私は、同じ状況に慣れている。

私を気遣いながら洗い物を続けるマミちゃんと梶田さんに

申し訳ない気持ちだけだ。


塩飴を舐め舐め、しばらく休んだら回復したので

また前線に復帰。

歯を食いしばって片付けを終え、何とか地獄からの生還をはたした。

やれやれ、手抜き料理どころか、魂が抜けるところだったわい。


『焼肉巻き寿司20本』


巻き寿司の断面



『鯛ソウメンの鯛』



『鮎の甘露煮』



これらは家で撮影した。

お寺では撮影する時間が無かったので、料理の写真は無い。

檀家さんが次々に料理を運んでくれるため、仕上がりを撮影する暇が無いのだ。

先に檀家さんたちと食事をした兄嫁さんに撮影してもらい

後でユリちゃんを介して送信してくれる手はずになっていたが

未だに送られてこない。

前から知ってるけど、お寺にとって

うちらも、料理も、その程度なのよ。


今回、私がお寺料理のために立て替えた買い物は8千円弱。

米や卵は自分ちのを使った。

清算の時、いつもユリちゃんは言う。

「お返しできるお金があるかしら?」

これを聞いて最初の頃は申し訳ない気持ちになり

時には寄付ということにして、もらわなかったりしたものだが

手の内がわかった今は、何が何でももらう。

そしたらユリちゃん、1万円札を出したので

「おっ?太っ腹じゃん」と思ったら、「2千円、お釣りちょうだい」だって。


とまあ、後味の悪さが増していく一方のお寺料理。

とりあえず来年のお盆行事は断るかも。

理由はできたじゃないか。

「また倒れて迷惑をかけたらいけないから。

ほら、私って暑さに弱いじゃん」

ホ〜ホッホ!
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手抜き料理・男メシ女メシ

2023年08月07日 09時12分28秒 | 手抜き料理
夏になると、野菜の頂き物が増える。

特にキュウリ、トマト、ナス…そして私の敵、ズッキーニ。

一度にたくさん実が成るので、家庭菜園を楽しむ人々から

お裾分けが押し寄せるのだ。


そんな野菜たちがダブついてきたため

ガッツリした男メシが主流の我が家でも

チマチマした女メシを作らざるを得なくなった。

我が家で言う男メシとは、男にわかりやすくて取り組みやすく

腹にドカンとおさまる“おかず”のこと…

女メシとは、味が微妙でおかずにならならいが

彩りだけは良い“ままごと”的な料理のことである。


『女メシ・貰い物サラダ』


①貰い物のミニトマトどんぶり1杯を半分にカットし

砂糖小さじ1杯、塩少々をまぶして下味をつけておく

②貰い物のタマネギ1個、貰い物のミョウガ数本

貰い物の大葉数枚をみじん切りにしてトマトに混ぜる

③オリーブオイル、酢、砂糖、醤油、塩コショウを

テキトーにかけて全体を混ぜる


夏野菜がたくさん食べられる、目にも美しいサラダである。

酸っぱいのがお好きなら、トマトの下味は不要。

味付けがかったるければ、オリーブオイルと調味済みのカンタン酢だけ

あるいは市販のドレッシングを使ってもいい。



『女メシ・貰い物スパゲティ』


①貰い物のニンニク、貰い物のトマト、貰い物のタマネギ

貰い物のズッキーニ、貰い物のピーマンをそれぞれみじん切りにし

オリーブオイルで炒める

②粉末のスープの素かコンソメ、あとは塩コショウで味付け

③そこへ茹でたスパゲティを入れ

野菜から出た水分に絡めるように軽く炒めたら出来上がり


男どもの怪しむズッキーニがたんまり入っているが、秘密だ。

炒める時、ピーマンの一部を色が変わらないうちに取り出しておき

仕上げに粉チーズと共に飾ると美しい。



『男メシ・焼きおむすび』


①塩むすびに味付けのりを巻く

②フライパンにバター大さじ1杯程度を入れ

溶けきらないうちに、おむすびを入れる

③弱火でおむすびの全面、あるいは面積の大きい二面をじっくり焼く

④醤油をおむすびにかからないよう(かかったら崩れやすい)

フライパンの端に回しかけ、おむすびの一面だけに醤油が少し付いたら出来上がり


以前、ここでご紹介したことがあるけど

写真は載せなかったので再度ご紹介したい。

写真では醤油が付いた面を表にしてあり、裏は白い。

箸でつついたり、ひっくり返す回数を最小限にとどめるのが綺麗に焼くコツ。

食欲が無い時でも食べられる一品なので、夏の昼ごはんにいかが?



料理とは関係ないけど、最近の驚きはこのコットン。


私にとってコットンは、化粧前に拭き取り化粧水を使う時や

化粧水を付ける時に欠かせないアイテム。

化粧用のコットンは、いつも同級生のマミちゃんの店で

資生堂のを買っていた。


しかしこのほど、コットンの在庫が切れる。

先月の末、彼女の店に行ってあれこれ買い物をしたというのに

買うのを忘れた。

次に彼女と会うのはお盆のお寺料理なので、完全に間に合わない。


「コットンが無いわ〜」

そうつぶやいたのを聞いていたらしく

夜、ドラッグストアへアイスクリームを買いに行った夫が

ついでにコットンも買って来てくれた。

それがこれ。

化粧水をあんまり吸い込まない新種らしい。


化粧水を付ける時、手よりコットンを使った方が

肌の調子は断然いい。

コットンに化粧水をたっぷり含ませ、顔が冷たくなるまでパタパタしたら

年寄りの肌でも明るくなり、化粧乗りが良いのだ。


が、コットン使いの難点は、化粧水が早く無くなること。

最初の2プッシュは、完全にコットン様への貢ぎ物。

しっかり吸っていただいて、ご満足なされたら

3プッシュ目からようやく人間に回してもらえる。


が、それも束の間、コットン様はすぐに喉がお乾きになり

パサパサになって追加を要求なされるので

何度も容器をプッシュし、化粧水を補充してはパタパタ。

つまり化粧水を1本買っても、半分はコットン様の獲物になるので

何だかボッタクリ商法に引っかかっているような気分になるのである。


不況や値上げの影響か、この製品はそこに目をつけたらしい。

コットンが謙虚で遠慮深いため、化粧水の吸収量が少ない。

コットン様のご機嫌をうかがうことなく

そのまんま肌に供給できる明朗会計だ。

化粧水の使用量は確実に減った。

みずみずしい使用感もさることながら、気持ち的にも感じが良い。


夫が、それを知っているわけがない。

たまたま手に取った物を買ったのは明白。

もしも私が自らコットンを買いに行っていれば

年寄りにありがちな保守的心理によって

「化粧水、半分いただきます」の従来タイプを買っていただろう。

夫の大手柄だ。
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料理番組

2023年07月29日 10時05分26秒 | 手抜き料理
家事をしながらテレビの料理番組を見るの、わりと好き。

人が作るのを見ているうちに、ちょっとやる気が出て

全然違う物を作るという奮起用。


が、テレビに出てくる料理の先生には、私の好みが全開。

見る見ないは、先生によって決めると言ってもいい。


何が基準かというと、まず声。

声が高くて時々裏返る人は、こっちがしんどくなるので避ける。

だからこの数年、あちこちの料理番組で引っ張りダコの

京都弁の着物美人は無理。

それから、いつもキャッキャとハイテンションで

近年は息子の嫁と一緒に活躍している可愛いおばちゃんも無理。


私のワガママは、声だけでなく話し方にも及ぶ。

そのためキューピー3分クッキングに出てくる

おかっぱ頭の細い女性が苦手。

「……を……して、これを……ます」

繋ぎの言葉だけは大きくはっきりとおっしゃるんだけど

肝心の名詞や動詞を言う際の声がいたずらに小さい。

料理ってカチャカチャとかジャージャーとか、音が出るじゃん。

フライパンで炒め物なんて紹介するシーンでは

神経を集中させて聞かなければならず、疲れるのだ。


かたや同じキューピー3分クッキングに出てくる

ぽっちゃりした女性が先生の時は好んで見る。

さっきまで家に居ました〜…みたいな自然体で

無表情かつ淡々と流れるように話すので、頭に入りやすい。


それから、先生が左利きなのも無理。

韓国系の名前の素敵な男性はすごく有名で

低めの落ち着いた声が魅力だけど、残念ながら左利きだ。


決して左利きを差別しているのではない。

料理人にも左利きは多いし、うちの長男も外では右利きだが、家では左利き。

私も長男ほどではないものの、本来は右利きでありながら

ほんの少しだけ左利きのケがある。


だからなのかは不明だが、料理を教える立場の人が左利きだと

当たり前だが左手で包丁や箸を扱う。

その状態でテレビの画面越しに向かい合わせになると

私の古びた頭に入って来ないのだ。

よって参考にならないため、見ても仕方がないという身勝手な理由。

先出の京都弁の着物美人も左利きなので、どうあがいても私には無理。


さらに、ご自分で個性的な四文字熟語の飲食店を経営し

斬新なアイデアで視聴者を驚かせる中年男性。

芸人みたいなしゃべりが人気で、たくさんの料理番組に登場している人だ。


最初のうちは楽しく見ていたが、途中から苦手になった。

ある時、冷やし中華を紹介した番組で

「冷やし中華はじめました」と書いた自筆の書を披露されたが

冷やしの“冷”の右側のツクリが、“今”になっておったんじゃ。


もちろん、間違いは誰にでもある。

それがどうした、という類いのミスだ。

しかし本人は自信満々、周りのスタッフもそれに気づかないまま

収録して放送する神経に失望。

こんな男の言うことなんぞ聞いとられんわい…

ということでお別れ。

我ながら、ひどい仕打ちである。


そんな私はこのところ、ほぼ毎日

LINEで同級生ユリちゃんの料理の相談に乗っている。

僧侶であるご主人のモクネン君は

現在、1年で一番忙しいお盆シーズンを迎えていて

そのサポートのためである。


お盆に忙しいのは毎年のことだが、今年の彼らは去年とは違う。

2月、モクネン君が突然意識不明になり、本物の仏様になりかけたのだ。

心臓らしい。


数日の入院で生還したが、それ以来ユリちゃんは

モクネン君の身体を気遣うようになった。

憎しみ合った夫婦とはいえ、彼に亡くなられたら

マジで困ることを知ったからである。


なぜなら僧侶の資格を持たないユリちゃんは

モクネン君が亡くなった途端、お寺に住み続ける権利を失う。

「坊主丸儲け」と人は安易に言うが、その分、掟は厳しいのだ。


さらにモクネン君がリアル仏様になりそうだった時

元々ソリの合わない彼の弟夫婦はものすごく張り切り

次期当主としての行動を開始したという。

兄嫁のユリちゃんが彼らに追い出されるのは、決定事項と言ってよかろう。

そうなると、お寺の仕事を手伝うユリちゃんの給料も途絶えてしまう。

憎い旦那がいなくなった途端、家と収入を失って

どうやって暮らすというのだ。


そして最も深刻なのは

モクネン君が面倒を見ているユリちゃんの実家のお寺。

あのいい加減な弟が

兄のようにこまめに通って盛り立ててくれるとは思えない。

するとユリ寺は消滅するしかなく

その上、ユリ寺の仕事を手伝うことで給料を得ていた

ユリちゃんの兄嫁さんまで路頭に迷ってしまう。


家と収入を失ったユリちゃんが実家に帰ったとしても

兄嫁さんと二人、どうやって食べて行くのだ。

どちらも外で働いたことが一度も無いので

当然、厚生年金の支給は無く、仕事を探すしかない。

60半ばになって初めて働きに出るとなると、大変だ。


このように、伴侶を失うことで生じる様々な現実を

ユリちゃんは思い知った。

それを回避する方法は、ただ一つ。

とにかくモクネン君を長生きさせること。

そこで体力を付けさせるため、食事に気を使うようになったのだった。


「色々教えてほしい」

ユリちゃんは言うが、この人は料理が一番の苦手。

登場する食材はできるだけ少なく

調理法は焼くかチンするかの簡単な料理しか受け付けない。

それでいながら、神経質な子供のように食欲の波の大きいモクネン君が

飛びついて食べそうな料理を望む。

料理の苦手な人って、最小限の手間で最大限の評価を欲しがるものなのよね。


そこで提案したのが、主菜は肉屋か惣菜屋で買うか

レンジでチンの冷凍食品でやり過ごし、副菜を手作りして誤魔化す案。

先日、ここでご紹介したエリンギとベーコンのマヨネーズ炒めや

万願寺とうがらしのジャコ炒め、モヤシと焼き豚のゴマ和え…などなど。


が、簡単な物となると、だんだん伝える物が無くなっていく。

直近のはこれ。

市販の調味酢をかけるだけの酢の物。


ほぼ投げやり。

モクネン君の好物、大葉とミョウガで釣る作戦だ。

錦糸卵はそうめんの残り。

ボリュームを出したければ、ハムまたは焼き豚、ツナなどの

動物性タンパク質をプラスする。

または鶏ササミに酒を振り、ラップをかけてレンジでチン…

冷めたら手で裂いて加えても美味しい。


「あの人、酢の物は苦手なのよね」

これを紹介するとユリちゃんは否定したが

モクネン君、お寺の会食では酢の物をけっこう食べている。

こってり料理の好きなユリちゃんが、酢の物を嫌いなのだ。

嫌いな物を作りたくないから、旦那が嫌うと言っているのだ。

自分の好物しか作りたくなくて錯覚を押し通すのも、料理嫌いの特徴である。


それから、オクラの和え物。


茹でて刻んだオクラ、ネギ、カツオ節、ゴマに

醤油をかけて混ぜるだけの病院メニューだ。

モクネン君の好物、ミョウガと大葉を混ぜても美味しい。


サイドメニューばっかりではナンなので、牛丼も紹介。


牛肉とタマネギを炒め、市販のすき焼きのタレをかけたら

すぐできる。

私はダシと酒、砂糖、醤油で味付けをするが

彼女の場合、すき焼きのタレの方が簡潔で良いだろう。


今時分はキュウリのお裾分けも押し寄せているだろうから

浅漬けも紹介。


キュウリ小2本か大1本を3ミリぐらいのスライスにして

そのままビニール袋へ入れたら

そこへ顆粒の昆布ダシを一パック、塩昆布をひとつかみ

あれば七味か唐辛子を少々投入してビニール袋の空気を抜き

口を縛って冷蔵庫へ。

朝作ったら、夜には美味しい浅漬けになっている。


実は彼女の魂胆はわかっている私。

簡単で効果の高い料理を伝えることに辟易した私が

実物を届けるのを待っているのだ。

現に公務員OGの梶田さんは、お得意のグリーンカレーを

すでに彼女の元へ届けたそうだ。


ユリちゃんは料理を教えてと言いながら

毎日、梶田さんの立派な行いを伝える。

私のライバル心を刺激したいらしい。

が、残念ながら何とも思わない。

その手に乗るか…と思いながら、連日のレクチャーに勤しんでいる。
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手抜き料理・お暑うございます

2023年07月17日 08時41分50秒 | 手抜き料理
いよいよ本格的に暑くなってきましたね。

年のせいか、今年はまた一段と暑さがこたえるわ〜。

ごはん作るのもおっくうよ〜。

というわけで卑怯者の私が作る、卑怯なおかずをご紹介します。


どこが卑怯なんだって?

あのね、メインのおかずはどうにでもなるの。

食べたい物を作ればいいんだから。

自分の食べたい物だったら何とか作れるし、嫌なら買えばいいじゃん。

だけど副菜を真面目に作るのは、しんどいものよ。

だから、少ない材料で短時間で作れる野菜のおかず。

私なんて、ごはん作りたくない時は副菜から取り組む。

その方が、すんなり作れたりするのよ。


『ズッキーニのカナッぺ』

 
①ズッキーニを薄めの輪切りにする

②マヨネーズと醤油を適当に混ぜる

③マヨネーズソースをスプーンでズッキーニに塗り

魚焼きレンジかオーブントースターで焦げ目が付くまで焼く


以前にもご紹介したことがあるけど、写真は無かったと思うから

改めて載せました。

ズッキーニ、うちでは評判良くないの。

だけど夏になったら、家庭菜園をやってる人からもらってしまう。


そりゃあね、色々やりましたよ。

サラダ、ラタトゥイユ、グラタン…

だけどズッキーニを怪しむ家族が

少しは食べてくれる調理法といったら、これ一択。

簡単で本当に美味しいから、やってみて。



『エリンギとベーコンのマヨネーズ炒め』


①フライパンでベーコンの細切りを軽く炒める

②拍子木切りにしたエリンギを加えて軽く炒める

③そこへ塩胡椒、マヨネーズ大さじ1杯、醤油小さじ1杯

たっぷりのネギを入れてサッと炒めたら出来上がり


またマヨネーズ味で申し訳ないけど、これは夫の大好物。

エリンギをサクサクと切るのも小気味良い。

食欲が出るので、季節を問わず作っとる。



『モヤシと焼き豚の和え物』


茹でて絞ったモヤシと適当に切った焼き豚を麺つゆで和えて

ゴマを振りかけただけ。

ちょっくらオシャレげな器に盛って出せば

チープな和え物も、何だか良さげに見えるという卑怯。

切った茹で卵でも添えたらボリュームが出るし

トマトで飾れば、気分だけは和風サラダ。

焼き豚は特別な物でなくても

お中元のハムのセットに入ってるようなので十分です。



『シシトウとチリメンジャコの炒め物』


①フライパンに油を小さじ1杯入れ、シシトウを弱火で炒める

②シシトウに焦げ目が付いて柔らかくなったら

チリメンジャコを適量加え、醤油とミリンで味付けしたら終了


これは病院の厨房メニュー。

シシトウはまだ売ってなかったので、これは辛くない唐辛子で作った。

シシトウはさておき、カリカリになったチリメンジャコが美味しい一品。

弱火で炒めるのは、音がうるさいから。

シシトウは箸であんまりかき混ぜなくても、ほっとけば焼ける。

味付けは、醤油とミリンの代わりに麺つゆでもOK。



『パック入りの生野菜』


実は、こういう物に偏見を持っていた私。

仕事で忙しいわけじゃないのに

生野菜までインスタントな物に頼るわけにはいかない…

とカタクナに思っていたわけよ。


だけど少し前に仕事で

こういう野菜を育ててパック詰めする工場の建設に関わったんよ。

ゲンキンなもので、それ以来、急に親近感が湧いて

このような完全手抜き食材を買うようになったんじゃ。


洗わなくていいのは、何と言っても楽ね。

葉っぱが柔らかいし、濡れてないからドレッシングの絡みも良くて

家族の食べっぷりも良好。

しょっちゅう使うようになった。

これはおすすめ。



『番外…お茶漬け』


これは、とあるお店でメインの料理の後に出される物で

私の作ったモンじゃありません。

タラコ、塩昆布、鮭、梅干し、海苔、漬物…

この組み合わせがすごく美味しい。


実はこれで、お茶漬けに目覚めた私。

市販のお茶漬けの素は、あんまり好きじゃないのよ。

で、家で一人の食事の時はやってる。

一人で食べること?ありますよ。

朝ね。

誰もいない台所で、一人お茶漬けをすする幸せといったら!


タラコと塩昆布は必須。

鮭はいちいち焼くの大変だから、瓶詰めの鮭フレーク。

梅干しと海苔と漬物は、登場したり、しなかったり。

だって、食が進んでおかわりしたくなると困るもの。

暑くて食欲の無い時にどうぞ。
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手抜き料理・夏バージョン

2023年07月05日 08時30分47秒 | 手抜き料理
気がつけばもう7月。

雨は大丈夫でしたか?

何だか心配な夏になりそうです。


夏と言えば、料理が好きなほうの私でも

夏の料理は年々きつくなる一方よ。

だけど今年の夏は、一歩前進したかも。

だって、ナスの画期的な料理を知っちゃった。


義母ヨシコはナスが好き。

ナスは偏食女王の彼女が食べられる、数少ない野菜の一つ。

だから夏は、冷たく冷やした焼きナスの出番多し。


だけど、焼きナスを作るのは面倒よ。

切れ目を入れたナスを丸ごと、魚焼きのレンジで焼けばいいんだから

取りかかるのは簡単。

でも、丸こげになったナスの皮を熱いうちに剥がして

身だけにするのが厄介。

手が熱いじゃん。


丸コゲのナスを冷ましてから、皮を剥がせばいいのはわかってる。

だけど熱いうちでないと、皮が薄く剥けないのよね〜。

熱々の皮を剥がした時、ちょっとだけ焦げて色づいた

グリーンの身が出てくる。

あれが香ばしくて美味しいのよ。


それを適当に切って冷やし

カツオ節やおろしショウガを乗っけて醤油で食べる…

ヨシコでなくても、美味いと思うわよ。

ショウガを食べないヨシコの焼きナスは、ショウガ抜きだけどね。


そのヨシコ、ナスへの情熱が年々増してきて

最近は焼きナスを酢味噌で食べたいと言い出した。

オッケー…ということで作るようになったんだけど

皮を剥いたナスに、トロッと酢味噌をかけたら

ナスの水分が出て味噌汁みたいになるんだわ。


酢味噌は食べる直前にかけるなんて常識は、通用しない。

食べるのが遅い彼女が焼きナスに取り組む頃には

味噌汁に変わり果て、「これ何?」状態。


そうこうしていたら、いつもの女子会があり

突き出しに酢味噌をかけたナスが出てきた。

ナスは皮ごと、蒸してある。

だから色の方は淡い緑色じゃなくて、地味な茶色だけど

カラシを効かせた酢味噌が無事じゃん。

しかも美味しい。


で、真似してみた。

《蒸しナスの酢味噌がけ》


わざわざナスを蒸したのかって?

ノー!

蒸し器を出そうと手をかけたけど、かったるくなってやめた。


ヘタを取ったナスに一ヶ所、ブスッと切れ目を入れて

1本ずつラップで巻いて電子レンジへ。

切れ目を入れておかないと、破裂するかもしれないからね。


レンジにかける時間は、1本につき2分ぐらい。

レンチンが終わったら、すぐにラップを外して放置すると

皮の紫色が残る。

ラップを外さずに放置すると、地味な茶色になる。


冷めたら縦半分に切り、1センチぐらいの厚さで斜めにスライス。

台所も暑くならないし、簡単じゃ〜ん!

しかもナスの皮でブロックされるので、酢味噌が味噌汁にならない。

トロリを保った酢味噌がナスによく絡み、オツな一品になった。


酢味噌は白味噌、酢、カラシ、酒、砂糖、ミリン、ゴマを

好みで適当に混ぜ合わせて完了。

あれこれ材料を混ぜるのがかったるければ

「そのまんま酢の物」みたいな味付け酢に

白味噌とカラシ、ゴマを混ぜてもいいし

市販の酢味噌を買ってもいい。

ヨシコの反応も上々で、この夏のナスはこれに頼るつもり。


《豚バラの味噌漬け》


5ミリくらいの厚さの豚バラを味噌漬けにして焼いた一品。

これは前に、お寺料理で作って評判が良かった。

親切な梶田さんが炭火で焼いてくれたけど、味噌は焦げやすい。

思い切り焦げていて、何だか残念だったので

先日、家で作ったのをごらんください。


今回は、いただき物の味噌が家族に不評だったため

迷わず味噌漬けに使った。

田舎って、手作り味噌が横行してるのよ。

美味しい手作り味噌というのに当たったことは無いんだけど。


味噌ダレは味噌、砂糖、酒、ミリン、ニンニク、少量の醤油を好みで。

味噌ダレに漬けたら数日間、冷蔵庫で保存。

焼く時は味噌を拭き取り、フライパンで裏表を軽く焼けばできあがり。


炭火でなくフライパンで焼く時は脂がたくさん出るので

キッチンペーパーに脂を吸わせながら焼く。

人はどうだか知らないが、うちでは家族が大好きな一品。

焼く時は当然暑いが、脂っこいのでそうたくさん食べられないため

量が少なくて済む。



しかし料理については、もっと涼しくて楽な方法を発見した。

きっかけはこの春に起きた、卵の不足。

「スーパーへ行ったら、卵がひとパックしか買えなかった」

「高くなった」

実家通いが日課で、結婚以来42年

毎日来る夫の義姉カンジワ・ルイーゼがぼやくようになった。

何事も計画で動く彼女は、不測の事態が起きると人一倍こたえる性分である。


優しい!私は、すかさず卵のパックを彼女に差し出す。

だってうちは生協の宅配で、週に40個の卵を買っている。

ダブついた時は注文を控えて、調整しながらやってきた。

卵が不足するようになってからは

値段は上がったものの、変わらず供給されているので

ルイーゼに分けてやるぐらい何ともない。


すると彼女はお礼のつもりか、翌日、前の晩の残り物を持って来た。

残り物を持ち込む習慣は、以前から細々と続いているが

月に数回、母親一人分だった。

しかし今回は我々のことも考えてか、量が多い。

塩分を憎む彼女の料理は味が無く

しかも前夜の残り物なので味が落ちているため、誰も喜ばない。

それでも、その気持ちが嬉しいではないか。


私は毎週、生協が届いた日には

ルイーゼに1パックの卵を捧げるようになった。

卵の心配が無くなったルイーゼは、料理を持って来る回数が増えた。

非常にありがたい。

義母ヨシコは娘の持って来た物を珍重し

そちらを主に食べるので、彼女の特別食を作る回数が減ったからだ。


偏食の多いヨシコには、家族と別の料理を作って出すことがほとんど。

やった人でないとわからんだろうが、そりゃもうしんどい。

頭の中にはいつも、ヨシコ用の別メニューが引っかかっている。

メンタルの弱い人や、料理の仕事をしたことのない人だったら

生きる意味すら見失うほどの苦行だと思う。


何でそこまで姑を甘やかすのか…

同居したことの無い人は、そういった疑問を抱くと思う。

私だってやりたくない。


が、生き残るのはワガママな人と相場は決まっている。

「私の食べる物は無いのね」

低い声で言い捨て、ふくれっつらで冷蔵庫を引っかき回して肉を探し

これ見よがしに一人分のしゃぶしゃぶなんか作って

無言で食べられてごらんよ。

一緒に食事をする他の者は、どんな気持ちか。

毒気で胃をやられるよ。

何度か経験して懲りたので、この状況を避けるためにやっている。

家族の健康と平和のためには、主婦が負担を背負うしかないのだ。


これが卵1パックで少しでも軽くなれば、言うことは無い。

娘が作ってくれた、届けてくれたと大袈裟に言いながら

皆に食べろ食べろと執拗に勧めるのはうるさいが

ふくれて毒を撒き散らされるよりはマシだ。


私は、この卵作戦を続けるつもりだった。

しかし最近、卵の量も価格も元通りになりつつある。

それはとても良いことだと思うが、もう卵と料理の物々交換は終了かも。

なにげに残念だ。
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手抜き料理・続 あとの夏祭

2023年06月26日 10時06分22秒 | 手抜き料理
カレー、ミンチカツ、エビパン、マカロニサラダ

そら豆、ナス・バンジャン…

お祭の料理は以上のメニュー。

もうね、目新しい物にチャレンジとか、手間をかけた料理はしないの。

我々の気力と体力は、年々確実に衰えている。


その一環として今年からコロッケをやめ

作業工程の少ないミンチカツに変更した。

ジャガイモを蒸し、皮を剥いて潰し

炒めた挽肉とタマネギを合わせるコロッケより

挽肉と生のタマネギをいきなり混ぜるミンチカツの方が

早くできると考えた私は、“楽”をテーマに乗り切るつもりだった。

私らだってずっと台所にこもらずに

一目でいいから外の祭を見たいじゃないのさ。


が、手抜きのはずのミンチカツには、思わぬ罠が…。

タネを作って丸め、パン粉をつけたら昼が来てしまったので

ユリちゃん一族や、早くから来ている数人の近しいスタッフと一緒に

昼ごはんを食べようということになった。


私はこのまま一気にミンチカツを揚げてしまいたかったが

120人分ともなると、ものすごい量だ。

寺の冷蔵庫は例のごとく、缶ジュースや麦茶

ユリちゃんの兄嫁さんの手作りデザートでいっぱいのため

ミンチカツのタネを冷蔵する余地など無い。

しかも「みんなで楽しく食べよう」、「少しは休憩した方が…」

という声に、それもそうだと思ってつい従ってしまい

生のミンチカツを常温で放置したまま昼の会食をしてしまった。


そりゃ暑くなってきた時期だから、常温放置は気になるさ。

できるだけ急いで食べて片付け

それからいよいよミンチカツを揚げる作業に入ったが

タネは室温で温まって緩み、ダランとした塊に変化していた。

揚げるハシから挽肉の脂がどんどん溶け出し

サラダオイルと混ざって、すぐにドロドロの液体と化す。

サラダオイルをガンガン継ぎ足しても

肉の脂の方が勝つので焼け石に水。

揚げるというより、ドロドロの粘液で煮る感じだ。

時間がかかって、ちっとも手抜きにならなかった。


結果、脂の抜けたカチカチのミンチカツになったが、あとの祭。

ミンチカツはパン粉を付けたらすぐ揚げるという鉄則を

無視した天罰だ。

これなら、温度変化に強いコロッケの方がマシだった。


エビパンも同じ身の上さ。

昼の会食の間、これも放置していた。

常温になったエビパンのタネからは、泉のごとく水分が湧き出ている。

せっせとキッチンペーパーで吸い取っても

永遠に雨上がりの甲子園球場。

仕方なく、さらに片栗粉を足し

パンに塗って無理矢理揚げたら、油がハネるのなんの。

人間も台所も、ちょっとした地獄絵図よ。


そうだった…1年ぶりなので忘れていたが

エビパンのタネを作ったら、エビから水分が出ないうちに

速攻で揚げないとハネるんだったわ。

結果、思いっきり水分の抜けたエビのすり身はミイラのように縮み

硬いフリカケ状と化してガリガリの食感。

やっぱり会食をしないで、さっさとエビパンを揚げればよかった…

激しく後悔したが、これもあとの祭。


ミンチカツもエビパンも昨年同様、大人気だったが

それは誰かが作った物をタダで食べられるからに過ぎない。

料理としては水準が低く、料理番一同の手をわずらわせてしまって

無駄な疲労を与えたと反省しきりである。


会食が長引いたのも、良くなかったかもね。

ハッちゃんや嶋田さん、リッくんにシノブさん

他にも新顔が何人かいたため、ユリちゃんのご主人モクネン君が

食後に一人ずつ自己紹介する場面を設けたのだ。

主催者としては、もっともな行為である。


最初に指名された私は、一刻も早く台所へ戻りたいので

「飯炊き1号、みりこんです」とだけ言い

マミちゃんもモンちゃんも2号、3号と続いた。

が、モンちゃんの隣に座っていたリッくんがいけなかった。

張り切って演説を始めてしまったのだ。


「え〜、私は◯◯と申しまして、茶道◯◯流の師範を務めております。

本日は献茶をさせていただくということで…」

そこからが長いのなんの。

流派の説明、茶道との出会い、現在の活動状況…

もはや講演会の様相。


10分ほど経過して、やっと終わったので

他の人たちも名前だけ言って終わり…かと思いきや

あの意地悪な嶋田さんが、また長い。

何やら仕事に必要な資格を取得したそうで、拍手の要請の後はご自慢が続く。


こっちが焦ってるからなんだけど

こういう場面で長くしゃべるのって腹立つわ。

同じ長く聞くなら、この日に初めて会った若い大学教授の話や

いつもの芸術家の兄貴の話を聞きたかったけど

兄貴なんて時間が長引いたから、自己紹介すらしなかった。


ともあれカジュアルな会食で講演会をしたリッくんに

この後、不幸が訪れる。

モクネン君は、彼を生意気とジャッジしたらしい。

午後にあった献茶の打ち合わせの時に

モクネン君特有のブラックジョークを何か言われたようで

「みりこんちゃん、俺、もうダメ…帰る」

と涙ぐんでいた。


メンタルの弱い人がうっかりモクネン君と話したら

メゲるのはよくわかる。

言われた人はきつく感じるけど

モクネン君はそれをジョークと思っているからタチが悪い。

この寺に関わる者は、これに耐えなければならないのである。


涙を拭いて落ち着いたリッくんが話すには

色々言われたけど、一番ショックだったのはこの言葉だそう。

「今年は建物の中を通って本堂へ行くのではなく

一旦外に出て、境内を歩いて本堂へ上がってください。

そしたら、より大勢の目に触れてバエるでしよ?」


な〜んだ…たいしたこと無いじゃん。

むしろ宣伝して弟子を増やしたいリッくんを思いやった

優しい配慮じゃんか。

こういうのは、モクネン君の良い所だ。

もっと別のことに反応しろよ。

「バエるって、何なんだよ…茶道に対する冒涜だよ」

しかしリッくんは傷ついているのだった。


ゲイのメンタルはようわからんが、今年になってから

リッくんには弟子が一人できた。

その頃から師範としてのプライドがものすごく高まり

何だか高慢ちきになった気がしていたのだ。


弟子の男性は、祭で師範の行う献茶を見学する予定だったが

直前になって急に遠方へ転居し、いなくなったのはともかく

昼の会食で立場もわきまえず、長々と講演をしたのはその現れだし

祭の前、ユリちゃんに

「今年も献茶を行う予定でよろしいですか?」

と上から目線のLINEを送って怒らせたのもそうだ。


去年のリッくんは、もっと謙虚だった。

ユリちゃんはリッくんのために

「やらせてあげる」というスタンスで

リッくんは「やらせてもらう」というスタンスだったのだ。


そして今年、ユリちゃんの「やらせてあげる」は変わらないが

リッくんの方は「やってあげる」に変化していた。

ユリちゃんはそれが気に入らず、祭の当日もリッくんに冷たかった。

坊主憎けりゃ袈裟までを地で行くつもりか

シノブさんにも、あからさまにそっけない態度を取った。


もちろんシノブさんは気づいていて

「お台所は楽しいけど、来年はもう無いかな?」

と笑っていたものだ。

私は二人を誘った手前、申し訳ない気持ちになった。

 
ともあれ「来年以降のことはどうでも、今年はやり遂げなさい!」

シノブさんと私にゲキを飛ばされて

その日のリッくんは何とか献茶を終えた。

しかし祭が終わった後も、彼の心はメゲたままだったらしい。

ユリちゃんに電話をして、モクネン君の発言を訴えたそうだ。


そしてユリちゃんは、憎い旦那へのクレームを

上から目線で延々と言うリッくんに怒り心頭。

二人は見事に決裂した。


後日、両方から話を聞いた私。

二人とも同じレベルだと思い、密かに苦笑した。

そして両方に「今回はリッくんが悪い」と言い、その理由を述べた。

茶道は謙虚を重んじる世界…

お情けでよその座敷へ行って活動しておきながら

そこで自分のプライドを尊重するようでは茶人とは言えない…

謙虚が無ければ、一期一会も侘び寂びもあったもんじゃない…。


今回は結果的にユリちゃんの味方をする形になったので

彼女はもっともだと言ったが、リッくんの方は当然、気に入らない。

モヤモヤした気持ちを抱えて

東京に住む茶道の師匠の所へわざわざ相談に行ったそう。

が、師匠にも全く同じことを言われて厳しく叱られたと

私に言ってきた。

来年の献茶は無いかもしれないけど、あとの祭。

《完》
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