とあるレストランのイベントで知り合った「料理屋の女将」。
霊感があるという、人なつこい初老の女性だ。
紫の作務衣、数珠ブレスのいでたちに
少々きな臭さは否めないものの
袖ふり合うも多生の縁と、後日彼女の店に行く約束をする。
「古民家の重厚な雰囲気の中でいただく古器に盛られた癒やしの自然食」
そう言われれば、行きたくなるではないか。
友に声をかける。
言われたとおり「古民家の…」と伝える。
遠すぎるだの、自然食より肉がいいだのとほざくが、無視。
カーナビは例のごとく「その周辺」で案内を終了。
いつもながら、冷たいやつだ。
山奥のそのあたりには、ボロボロの農家らしき建造物しか無い。
今にも倒れそうな、お化け屋敷…。
誰かに聞いてみよう…と車を降りたら
反対側の駐車場にバイクや車がたくさん並んでいる。
ここがあの女将の店なのだ。
「どこがぢゃ、どこが古民家の重厚な雰囲気ぢゃ」
…相方がうるさいが、無視。
中へ入ると意外や意外、大盛況だ。
いろりの前で十数人の若者に囲まれた彼女は
笑顔で迎えてくれた。
これは案外、隠れた名店なのかも知れんぞ…。
若者と一緒くたでは落ち着かないので
いろりとは離れたテーブルに着き
「山野草の会席コース」を注文…というか、それしか無い。
出て来るもの…草のおひたし、草のゴマ和え、草の天ぷら。
大きいのは皿だけ。
ちっとも腹の足しにならんじゃないか。
「どこがぢゃ、どこが癒やしの自然食ぢゃ」
厳しい指摘に耐える。
その時、トイレの横に生えている雑草を摘む女将を目撃。
目の前にある草と同じやつだ。
うう…。
デザートもあるというので、それに望みをつなぐ。
「有機栽培のアズキを使ったおゼンザイよ」
女将はテーブルに来て言う。
運ばれて来たそれは、おちょこに入っていた。
「私が有機栽培の米粉を擦って作ったお団子が入ってるのよ」
確かに入っている。
一個。
色あせ、古びたおちょこはそれで満タンだ。
「どこがぢゃ、どこが古器に盛られたぢゃ」
またもや、しつこくつぶやく。
このありさまで、なぜに若者が次から次へ訪れるのか…
私は、あのレストランでの会話を思い出した。
彼女は、某有名タレントの親と友達だという話を。
ここに集まっているのは、そのタレントのファンなのだ。
彼女が若者たちに囲まれて話しているエピソードは
レストランで聞いた話とまったく同じだ。
「昨日電話がかかった」
「小さい頃はこうだった」
女の子たちはキャーキャー言いながら
時には涙ぐみながら、熱心に耳を傾ける。
ひととおり話し終えると、今度は霊感の部。
「あなたはねぇ、ちょっと優しすぎるところがあるのね…」
女将が微笑みながら諭すように言うと、ワッと泣き出す子もいて
おうおう、これはこれでなかなかの盛り上がり。
2500円の「山野草懐石コース」には
これらお楽しみの料金も含まれているに違いない。
低コストの上、集客力抜群、リピート確実。
おそるべし、女将。
我々は、そそくさと立ち去った。
「ぼったくりだ」と言いながら家路につく。
しかし、口とは裏腹に心は満たされている。
老い先短い身の上、おいしいものは金さえ出せば食べられるが
後々まで話のタネになりそうな場所へはなかなか行けない。
帰る途中で釜揚げうどんを食べた。
霊感があるという、人なつこい初老の女性だ。
紫の作務衣、数珠ブレスのいでたちに
少々きな臭さは否めないものの
袖ふり合うも多生の縁と、後日彼女の店に行く約束をする。
「古民家の重厚な雰囲気の中でいただく古器に盛られた癒やしの自然食」
そう言われれば、行きたくなるではないか。
友に声をかける。
言われたとおり「古民家の…」と伝える。
遠すぎるだの、自然食より肉がいいだのとほざくが、無視。
カーナビは例のごとく「その周辺」で案内を終了。
いつもながら、冷たいやつだ。
山奥のそのあたりには、ボロボロの農家らしき建造物しか無い。
今にも倒れそうな、お化け屋敷…。
誰かに聞いてみよう…と車を降りたら
反対側の駐車場にバイクや車がたくさん並んでいる。
ここがあの女将の店なのだ。
「どこがぢゃ、どこが古民家の重厚な雰囲気ぢゃ」
…相方がうるさいが、無視。
中へ入ると意外や意外、大盛況だ。
いろりの前で十数人の若者に囲まれた彼女は
笑顔で迎えてくれた。
これは案外、隠れた名店なのかも知れんぞ…。
若者と一緒くたでは落ち着かないので
いろりとは離れたテーブルに着き
「山野草の会席コース」を注文…というか、それしか無い。
出て来るもの…草のおひたし、草のゴマ和え、草の天ぷら。
大きいのは皿だけ。
ちっとも腹の足しにならんじゃないか。
「どこがぢゃ、どこが癒やしの自然食ぢゃ」
厳しい指摘に耐える。
その時、トイレの横に生えている雑草を摘む女将を目撃。
目の前にある草と同じやつだ。
うう…。
デザートもあるというので、それに望みをつなぐ。
「有機栽培のアズキを使ったおゼンザイよ」
女将はテーブルに来て言う。
運ばれて来たそれは、おちょこに入っていた。
「私が有機栽培の米粉を擦って作ったお団子が入ってるのよ」
確かに入っている。
一個。
色あせ、古びたおちょこはそれで満タンだ。
「どこがぢゃ、どこが古器に盛られたぢゃ」
またもや、しつこくつぶやく。
このありさまで、なぜに若者が次から次へ訪れるのか…
私は、あのレストランでの会話を思い出した。
彼女は、某有名タレントの親と友達だという話を。
ここに集まっているのは、そのタレントのファンなのだ。
彼女が若者たちに囲まれて話しているエピソードは
レストランで聞いた話とまったく同じだ。
「昨日電話がかかった」
「小さい頃はこうだった」
女の子たちはキャーキャー言いながら
時には涙ぐみながら、熱心に耳を傾ける。
ひととおり話し終えると、今度は霊感の部。
「あなたはねぇ、ちょっと優しすぎるところがあるのね…」
女将が微笑みながら諭すように言うと、ワッと泣き出す子もいて
おうおう、これはこれでなかなかの盛り上がり。
2500円の「山野草懐石コース」には
これらお楽しみの料金も含まれているに違いない。
低コストの上、集客力抜群、リピート確実。
おそるべし、女将。
我々は、そそくさと立ち去った。
「ぼったくりだ」と言いながら家路につく。
しかし、口とは裏腹に心は満たされている。
老い先短い身の上、おいしいものは金さえ出せば食べられるが
後々まで話のタネになりそうな場所へはなかなか行けない。
帰る途中で釜揚げうどんを食べた。