殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

近時事・旧統一教会のことやら、あれこれ…4

2022年08月31日 20時34分53秒 | みりこんばばの時事
亡くなったことになっている祖父の話を聞いて

私が感動に打ち震え、すっかり信用したと思っているらしき偉い先生。

ご親切にも、私にぴったりの御守りを選んでくださると言い始めた。


余談になるが、私は洋子さんとおばさんに家族構成をたずねられた際

面倒くさいので、祖父がすでに他界していると答えた。

しかしこの教団、死んだと答えた方が面倒くさかった。

どんな状況で死んだのか…病気か事故か…本人はどんな人生を歩んだのか…

根掘り葉掘りの質問責め。

そして最終的には、何もかも因縁に繋げてしまう。


さらに面倒くさくなり、よくわからないと答えたら

これまた思うツボ。

子孫に関心を持ってもらえないことこそ、もっと悪い因縁だと言う。

いずれにしても、それらの因縁のせいで

死者はあの世で苦しんでいることになるのだ。

そして死者を苦しめる因縁を断ち切るためには入信、あるいは献金によって

全てを捧げる必要性を説くのである。

私は、安易に死んだと言ったことを後悔したものだ。



話を戻すが、偉い先生はおっしゃる。

「御守りを持つ人はたくさんいますが

自分に合った御守りでないと逆効果なんです。

自分に合った御守りを持てば、先祖の加護が得られます」


おもむろに広げたカタログには、木製のクルミ大の御守りが12個。

一つ一つに観音様やら薬師如来が彫刻されていて、赤いヒモが付いている。

その中から私に合う物は、物事の再生を司る弥勒菩薩だそうよ。

金額は12万円。

デザインはとってもダサいわ。


ついぞさっきまで苦しんでいた先祖が、12万の御守りを買った途端

サッと子孫の加護に回れるとは、なんとまあインスタント。

これって、次の壺だか献金だかの前の軽いジャブらしいけど

観音や弥勒って仏教のメンバーよね。

教会の宗派は、どちらかといえばキリスト系じゃなかったのけ?

だって献金って、キリスト系の呼び方じゃん。

節操、無さ過ぎとちがう?


いずれにしろ、そんなモンを買う気はさらさら無い。

「お金が無いので、いりません。

長居をし過ぎたようなので、これで失礼します」

そう言って二人分の食事代を置き、立ち上がった私に洋子さんは言った。

「またお会いできますよね」


「はは…無理でしょ、盗聴までしといて」

私は答えた。

おばさんは、その発言を何ら気にする様子もなく

「おうちに気兼ねでしたら、お友達と会うとでも言って

気軽にセンターへ遊びに来てくださいね」

しれっと言ったが、無視。

「信仰のための嘘は、嘘にはならないんですよ」

部屋を出る段になっても、まだ言ってやんの。


信仰のための嘘は、嘘にならない…

寝言は寝て言え。

それは自分たちにとっても免罪符になるだろうよ。

こうやって都合のよさげなことを言っては人を騙し、操り

お金を吸い上げてきたのだろう。


退屈な場所に次男を付き合わせてしまって、気の毒だった。

午前中にあの事務所を訪問して以降、じきに飽きてグズり出すだろうから

それを機に帰ろうと考え続けて数時間。

子供って静かにしてもらいたい所では騒ぐけど

騒いでもらいたい時は、なぜかおとなしいのよ。


後で思ったのだが、洋子さんたち3人は急ぎ過ぎた。

偉い先生とやらに会わせたり、御守りを買わせるのは

通常、何回か会って打ち解けてからにした方がいい。

もっと色々な話を聞き出して秘密の共有者となり

がんじがらめにした方がうまくいくはず…

などと、他人ごとのように考える私だった。


とはいえ、あの人たちが急いだ理由はわかっている。

事務所での人違いがあったからだ。

しばらくは楽しいサロンのフリをして通わせ

ジワジワ取り込むつもりだったのに

絵本を持って来てお金を渡すように言ったミスがあり

献金のことを先に知られてしまった。

ここは考える暇を与えず、押しの一手にした方が良いと判断したのだろう。


それにしても、ミスが起きればすぐさま方向転換…

人を増やし、盗聴器まで仕掛けて、そりゃあ見事な対応力だ。

私のように、生きている家族を面倒だから死んだと言うような

いい加減な人間でなく、きちんとした真面目な人であれば

うっかり騙されてのめり込むかもね。

あ、その前にきちんとした真面目な人は

人格や人生設計もきちんとしているはず。

姑の言いなりになって、代わりにノコノコと断りに行くような生活はしてないか。



さて、家に帰った私は、勝ち誇ってヨシコに報告。

「宗教だったよ」

日頃は学会だ池田先生だと口にしながら

自称占い師に騙されて変な宗教に近づいた、おのれの浅はかを思い知るがいい。


しかし、それを聞いたヨシコ

「え〜?行かなくて良かった!」

これで終わり。

腹立つわ〜。



その後、洋子さんからは、たまに電話があった。

連絡先を伝えた覚えは無かったが、占いをしてもらったヨシコが

あれこれとしゃべるついでに話したのかもしれない。

最初は、御守りの金額を聞いてそそくさと帰った私を

アフターフォローして繋ぎ止めるつもりかと思った。

けれどもそういう感じは無く、彼女の声を聞いても不思議と腹は立たなかった。


「お元気ですか?」

「ありがとう、元気です。

あなたは?」

こんな感じで月に一度ほど、私たちは短いおしゃべりをした。

宗教の話はこちらが質問した時以外、ほとんどしなかった。

洗脳されているとはいえ、彼女は理性的なタイプだったと思われる。


同じ時期、オウム真理教の集団生活や怪しげな活動が報道されるようになった。

ヨシコは、私が洋子さんに洗脳されていると思いたいようで

電話があるたび不機嫌になり

「嫁が心配」、「孫を連れて集団生活に行かれたら困る」

家の内外で、そう言うようになった。


自分が蒔いた種なのに、よう言うわ…

もしも私が孫を連れて家を出たら、あんたの息子は新しい嫁をもらえるから

好都合じゃないか…

ついぞ2年前、何もできない嫁より看護師の嫁の方がいいと言ってのけたのは

あんたじゃないか…

私は反抗心で、洋子さんとの電話をやめなかった。


ヨシコへの反抗心もあったが

洋子さんとの間には、最初から友情に似た暖かいものが通い合ってもいた。

それはおそらく、彼女が本来持っている人柄と

幼少期から厳しく躾られたであろう、美しい立ち居振る舞いによるものだ。

宗教にハマらなければ神社の娘として、しかるべき家に嫁ぎ

良き妻、良き母となっていたことだろう。

《続く》
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近時事・旧統一教会のことやら、あれこれ…3

2022年08月30日 13時38分48秒 | みりこんばばの時事
話は後先になるが、我々母子にメッコールを用意するため

洋子さんが席を外している間に、奇妙なことが起きる。

白いブラウスに、黒っぽい無地のスカートをはいた

事務所メンバーらしき若い女性が私の席に近づいてきた。


女性は手に大きめの絵本を持っていた。

硬い表紙の立派な物だったが、何の絵本かはわからない。

日本語じゃないからだ。

私はそれを見て、次男に絵本を貸してくれるのだと思う一方

宗教的内容であれば、ありがた迷惑だから断るつもりだった。


女性は笑顔で私に会釈して、失礼します…と向かい合わせに座る。

それからテーブルの上で絵本の真ん中あたりを開くと、自分の膝に置いた。

膝は当然、テーブルの下にある。

どうやら絵本を隠したいらしい。


彼女は自分の膝の上で開いた本と私を交互に見て、しきりに合図を送るが

私は意味がわからず、呆然と彼女の顔を見つめるばかり。

洋子さんより少し年上の、可愛らしい人だ。


察しの悪い私に焦ったのか、小声でささやく彼女。

「早く…封筒をここに…」

「封筒?」

ますます意味がわからん。

遠回しではラチがあかないと思ったのか、女性ははっきりと口にした。

「今日は、お金を持って来られる日ですよね?」


ここでようやく反応する私。

「あなたに借金した覚えはありませんけど?」

そこへ洋子さんがメッコールを運んで来たので

女性は相手を間違えたことがわかったようだ。

愛想笑いをしながら立ち上がり、絵本を閉じて立ち去った。


「ここはサラ金もやってんの?」

私は洋子さんに言った。

もちろん、ジョーク。

若く鈍感な私でも、さすがにわかる。

あれは寄付の集金。

本の大きさから推測すると、大金用だ。

小さい本では、札束の厚みではみ出してしまう。

この日に寄付をする約束をした人がいて、彼女は人違いをしたと思われる。

絵本は見る物だと思っていたが、密かにお金をやり取りするためにも使うらしい。


サラ金と言われて説明が必要と思ったのか

洋子さんは初対面の時と変わらぬ誠実な態度で話した。

「教会の教えに賛同してくださった方から、献金をいただくことがあります」

「大金でしょ」

「今の自分に用意できる精一杯のお金です。

お金持ちであればお金持ちなりに、貧しければ貧しいなりにで良いので

金額は関係ありません。

精一杯のマゴコロを示すことで、苦しんでいる先祖が救われて

献金した人には真実の幸福が訪れるんです」

「……」


バカバカしいので、帰ることにした。

「それじゃ、失礼します」

次男の手を引いて入り口の方へ向かおうとすると、洋子さんが言った。

「これから、予定がありますか?」


予定があろうと無かろうと、あんたに関係ないでしょ…今なら言う。

が、当時の私は今よりもっとバカだったので、真面目に答えた。

「もうお昼だから、この子と何か食べて帰ります」

すると洋子さん…

「私もご一緒していいですか?

いいお店を知っているので、ご案内します」

おぼこかった私は、彼女がそう嫌いなタイプではなく

二度と会うことは無いと思っていたので、うっかり承諾してしまった。


案内されたのは、近くにあるビジネスホテル。

ここのレストランの昼定食が、安くて美味しいのだと洋子さんは言う。

店内に入って案内されたのは、小人数の会食に使われる八畳ほどの個室だ。

そしてそこには、中年の優しそうなおばさんが待っていた。

「私の姉のような人です」

洋子さんは、そのおばさんを紹介した。


それはいい、それはかまわない…

だまし討ちみたいで嫌だけど、こうなってしまったからには良しとしよう。

で、食事を始めたら、おばさんが、後でもう一人来ると言い出す。

「忙しいかたで、今は別の場所で講演中ですけど

さっきお願いしたら、ここへも特別に顔を出してくださるそうです。

何でもわかる偉い先生なので、ぜひ会って帰ってください」

やられた…と思いましたよ、そりゃ。


それはそうと、部屋に入った時から気になったのが

時折かすかに聞こえる「プツ…プツ…」という音。

「何の音ですかね?」

私が言うと、おばさんは微笑みながら言った。

「よくあるんですよ。

私たちの出会いを天が喜んでいるんです」


イカれとるわ。

この音には聞き覚えがある。

多分、ワイヤレスマイク。

私は子供の学校役員の活動で、たまにワイヤレスマイクを使うことがあった。

30年余り昔は、電波の状態によってこういう音がしたものだ。

どこかに仕掛けてあるのかも。


食事をしながら、洋子さんとおばさんは代わる代わる

出身地、年令、家族構成など、私に様々な質問をする。

適当に答えているうちに、プツ…プツ…が止んだと思ったら

“何でもわかる偉い先生”が登場。

中年の、髪は薄いがなかなかイケメンだ。


私はここで彼のお話をうかがうことになるのだが

話し上手なこともあって、けっこう面白い内容だった。

かのやんごとなきあのお宅は、明治時代に血統が韓国人に変わっている…

だから韓国と日本は、兄弟として親しく行き来しなければならない…

そのために今、教会がリーダーとなって秘密裏に日韓トンネルを掘っている…

トンネル工事の費用は、心ある人々から集めた献金でまかなわれている…

そのトンネルは東北にあり、もう少しで完成する…

これが面白くなくて何であろう。

抱腹絶倒ものだ。


そして彼は言った。

「今お話ししたことは、絶対に人に言わないでください。

あなたは天から選ばれた人なので、特別にお話ししたのです。

教会とご縁ができたので、3年前に亡くなったお祖父様がとても喜ばれいます。

先祖の皆さんをたくさん連れて、さっき私の所へお礼を言いに来られました」


「えっ?祖父が…?」

驚くワタクシ。

すまん!質問に適当に答えて悪かった!

実はその頃、祖父はまだ生きていた。

面倒だから、3年前に死んだと答えたのだ。


偉い先生は別の個室で昼ごはんを食べながら

こっちの部屋の話をワイヤレスマイクで盗聴していたらしい。

これで情報を入手したら、偉い先生という役柄で登場し

カモの個人情報をズバリ言い当てる。

「なぜ知っているの?!」

バカなカモは、アッと驚く。

そして霊感に感動してひれ伏し、今後は言いなりになる段取り。

だけど裏って、こんなものなのよ。

《続く》
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近時事・旧統一教会のことやら、あれこれ…2

2022年08月29日 18時56分45秒 | みりこんばばの時事
占い師を名乗る二人の若い女性に誘われ、隣市にあるセンターへ出向くと決めた義母ヨシコ。

送迎はしてもらえないと聞いて、私が連れて行くことになった。


送迎に慣れている私に、抵抗は無かった。

出好きの彼女が行きたがる所へ連れて行くのは、私の仕事。

社交ダンスの教室やパーティー、友だちの家、服や宝石なんかの展示会…

行き先がどこであろうと、拒否権は無い。

彼女は創価学会の信者だったので、市の内外で開催される大小の集会にもよく行った。


そりゃ、しんどいわさ。

だけど断ったら最後、いつもそうするように電話で実家に抗議したり

いつまでも恨み辛みを言われて辟易する。

そうまでして家に居たって、女房が留守で機嫌の悪い義父アツシに怒鳴られたり

無茶な用事を言いつけられたりするだけじゃ。

アツシがいない日も義姉は居るので辛気臭くて、いいことなんかありゃせんのじゃ。


よって、遠かろうと近かろうと送迎し、終わるまで一緒に居るのが習慣だった。

しかし問題は、ヨシコの行きたがる場所が子供にとって魅力的でないこと。

私はグズる子供をどうあやし、耐えさせるかに苦慮したものである。


ともあれ、約束の日は訪れた。

しかしヨシコ、急に気が進まなくなった模様。

その心理はわからないでもない。

送迎をしてくれないのにホイホイと行く…

プライドの面で、引っかかる自分がいたと思われる。

「断ろうかと思うんだけど、連絡先を聞いてないから電話ができない。

あんた、行って断って来てちょうだい」


連絡先も知らずに、よくもまあ連日キャッキャとお友だちごっこをしていたものよ。

が、言い出したらきかないのがヨシコ、断ったらゴタゴタが待っている。

腹は立ったが気を取り直し、未就園の次男とドライブがてら行くことにした。

彼を家に置いても面倒は見てもらえない。

二人で何か食べて帰ろうと決めた。


それにしても、あの女の子たちは

駅からもバス停からも遠い我が家へ、どうやって訪れていたのだろう。

車しか無いじゃないか。

この辺りに来る怪しげなセールスは、何人かで車に乗り合わせ

適当な場所で降りて各家庭に散るのが常だったので

送迎ができないと聞いて、私はそっちの方面だと確信しつつ隣市に赴く。


センターは駅前のビルの二階にあり、わかりやすい所なので迷わず到達できた。

ヨシコを送迎することになった時、およその場所を二人から聞いてあったのだ。

ガラス窓に何やら団体名が書いてあったが、興味が無かったので忘れた。


ごく普通の板張りのドアをノックして中に入ると

そこは広く、壁が白く、大きな観葉植物が幾つか配置されて

おしゃれな事務所みたいな感じ。

が、入り口の左側に木製の簡易サウナが置いてあり、さっそく違和感。


10人ほど居た人間の半分は事務所側の人、もう半分はお客側の人みたい。

何でわかるかというと、事務所側はうちに来ていた二人組と同じように

上は白、下は地味色スカートの若い女性だからだ。

そしてもう半分の人は着る物がさまざま、男もいれば女もいて、いずれも中高年。

地味若女性たちは、それぞれ個別にお客側の人たちに付き

3〜4台あるカフェみたいな円形の白い小テーブルと白い椅子で

話を聞いたり、別室に案内している。


その別室はガラス張りで、事務所の3分の1のスペースを取っている。

中の白い机には3〜4台のテレビとビデオが横に並び

ヘッドフォンが置いてある。

そのヘッドフォンを付け、テレビを見ている男性が一人いた。

画面に映し出されているのは、眼鏡をかけたグルグルパーマの中年女性。

身振り手振りで、何やら一生懸命に話している。


私が来意を伝えると、例の二人のうちの一人が奥の控え室らしき部屋から出て来た。

彼女は私を見て喜び

「前からお話ししてみたいと思っていたので、嬉しいです」

とおっしゃる。

そりゃ嬉しかろう。

ヨシコの代わりに一人来たのだから、人数は変わらない。


「少し、おしゃべりして行かれませんか?」

彼女は言い、私も同意した。

彼女がいったい何者なのか、このセンターの目的は何なのか

まだ皆目わからないからだ。

ぜひともそれを知り、ヨシコがいかにアホかを確認したいではないか。


私も白テーブルと白椅子の人となり、彼女と向かい合って座る。

近くでまじまじ見ると、顔が大きいので美人とまではいかないが

色白で目の大きな、善良そうな娘だ。


「お子さんが退屈されるようでしたら、近くに専用の託児所がありますから

そちらへ預けられても大丈夫ですよ?」

彼女は言う。

子供がいると、都合が悪いような口ぶり。

長時間、引き留める前提と、他の客の気が散らないようにするためかも。

それにしても駅前の広い事務所のみならず、託児所まで用意してあるとは相当な経費だ。

何が目的か、ますます知りたくなるではないか。

しかし、子供を預けてしまったら帰りにくくなるので断った。


「ここは何をする所ですか?」

私は単刀直入にたずねる。

「天の教えを広くお伝えする所です」

彼女はサラッと言った。

「宗教ですか?」

「まあ、そういうことになります」

なかなか正直やないの。

ヨシコ、アホ決定。


それから彼女は、自分のことを少し話した。

名は洋子さんといって、県北にある神社の娘だそう。

神社の娘が別の宗教に入ったら、そりゃ大変だ。

お決まりの家庭紛争のあげく、親とは絶縁したと言う。


その時に話した内容をざっくりまとめると

韓国人の文鮮明という人が天の啓示を受けて布教を始めたもので

この教えは近いうちに世界の基本的な信仰になるから

自分たちはその日のために、共同生活をしながら頑張っているという。

ここで思い出したのが、近所の亡くなった娘さんの件。

韓国のキリスト教に共同生活…その意味がやっとわかった。


やがて洋子さんは立ち上がると、缶入りの飲み物を運んできて

私と次男に勧めた。

事務所には他に暇そうな女性が何人かいたが

客の応対はマンツーマンと決まっているらしい。


飲み物は、“メッコール”。

サウナの横に、売店にあるような縦型のガラス張りの冷蔵庫が置かれ

その中にぎっしり入っていた物だ。

側には手作りの募金箱みたいな小さい箱が置いてあり

金額は忘れたが、飲みたい人はここにお金を入れるシステムらしい。


私はその飲み物を知っていた。

大麦でこしらえていて、本物のコーラより身体に良いというコーラもどき。

高校生の頃、父が行きずりの人から買ったようで、ケースごと家にあった。

父は飲め飲めと勧めたが、マズいので飲まなかった。

メッコールもこの宗教に関係があるとしたら、教団はかなり前から

巷で活動していたようだ。

もちろん、マズいので飲まなかった。

《続く》
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近時事・旧統一教会のことやら、あれこれ…1

2022年08月28日 17時50分50秒 | みりこんばばの時事
安倍元総理が暗殺されて、一昨日が四十九日だったそう。

残念で悲しい気持ちは、今も続いている。


彼に対する感情は人それぞれだと思う。

私は選挙のウグイスという職業柄…

滅多にやらないので職業と言うのはおこがましいが…

政治家をことさらヒーロー視する気は無く

彼らに期待する気持ちも、おそらく他の人より少ない。

それでも、日本を取り戻すとはっきり明示して働いたことと

国内外の多くの人々から親しまれた面において、私は彼以上の人物を知らない。

信条と並び、他国の要人に見劣りしない見目形、威風堂々とした雰囲気は

他の人はどうだか知らないが、日本の誇る総理大臣だったと思っている。


古い白人系のマンガでは、日本人を猿と揶揄し

チ◯、ハ◯、出っ◯、メガネが、日本人の特徴として描かれていたものだ。

このイメージを払拭してくれただけでも、私個人としてはありがたい存在だった。

その人物が白昼堂々、そしてみすみす、人の手によって命を落とした…

このみすみすが、悔しい。




ほぼみんな、前方を見ている図。

一瞬たりとも気を抜かないのが警備じゃないのか…

左斜め前方でNHKのカメラが回っていたのもあって

「安倍ちゃん警護するオレ映せ」状態じゃなかったのか…

などと腹立ち紛れに思う私である。


四十九日に合わせたのか、警察の偉い人が二人、辞職するそうだが

警護にあたった専属SPと奈良県警の人たちはどうなったのだろう。

これといった処罰の対象になったのか、ならなかったのかは知らないが

出世の道は閉ざされたのではなかろうか。


というのも、かなり昔の話になるが、知り合いの親戚の警察官が

パトロール中にパトカーを盗まれた話を聞いた。

何らかの用でエンジンをかけたままパトカーを離れた隙に

通りすがりの人が乗り込んで走り去ったという。

パトカーは無事に取り戻されたが、その警察官は定年まで

へき地の交番を転々とする運命になったそうだ。


「あんた、ミスッたからずっと山奥ね」

改めてそう言われることはないが、移動のたびにへき地なんだから

パトカーのことが原因なのは明白で、本人も周囲も諦めているという。

たった一度のうっかりが一生に響くなんて、警察とは何と厳しいところよ…

うっかり者の私は震え上がったものである。


そんなことはともかく、国葬で賛否が分かれているそうだ。

私は国葬にするべきだと思う。

歴代最長の就任期間、秀でた外交手腕など、様々言われている理由に加え

新興宗教関連の政党と組んでいる与党ではあるが

新興宗教が危険だという事実を、身を以て世間に知らしめた。

これが功績でなくて何であろう。

政界に進出を目論む新興宗教はまだ複数、存在する。

ここにも注意喚起の大きな一石を投じたと思う。


一国の元総理が公衆の面前で、いとも簡単に◯される危険な国…

こんな印象を全世界に与えたままでは

観光や貿易、つまり国益に影響するんじゃないのか。

危険な国になってしまったのは、起きてしまったことだから仕方がない。

その後をどうするかは、最も大事だ。

日本と日本人に対する信用を失わないため

国葬という一つのケジメをつけることは必要だと思う。

それが日本の流儀である。


ともあれ何を隠したいのか、あるいは奈良県警の恥ずべき手落ちをウヤムヤにしたいのか

マスコミはこぞって、政治家と旧統一教会の関係を不自然なほど騒ぎ立て

その流れで国葬の是非を問うのが日課みたいになっている。

いい加減にしろ…と腹を立てるのはこれぐらいにして

私は今話題の旧統一教会とまんざら無縁でなかったので、そのことをお話ししてみよう。




私が20代前半の頃、近所…そうよ、時々話すデンジャラ・ストリートの住民の娘さんが

都会のビルから飛び降りて亡くなってしまった。

お葬式はデンジャラ・ストリートの実家で行われたが

亡くなった娘さんが私と同い年と聞いてショックだった。


やがて日が経つにつれ、娘さんの話がポツリポツリと聞こえてくる。

学生時代から、韓国のキリスト教に入信していたこと…

卒業後は都会のアパートで、信者仲間と共同生活を送っていたこと…

親が何度も連れ戻そうとしたけど言うことを聞かなかったこと…

中でも衝撃だったのは、下着に書いてあった名前から身元が判明した話。

共同生活とは、パンツに名前を書くことなんだ…

今にしてみればおかしな話だけど、当時の私はそう思った。


やがて20代後半になった私は夫の実家で暮らすようになったが

ある日、家に占い師と名乗る、私と同年代の娘さんが二人、訪れた。

お客の好きな義母ヨシコは大歓迎して招き入れ、茶菓にてもてなす。

無料キャンペーン中だとかで占いをしてもらい、楽しそうだった。


私は茶菓を出すだけで、参加はしない。

ヨシコは自分が先に知り合った人間に嫁が近づくことを嫌って、寄せつけないからである。

この習性は今も変わらない。

彼女としては自分の娘と一緒に笑いさざめきたいところだが

その頃の一時期、義父の会社には若い男性社員がけっこう入っていたので、義姉は大張り切り。

ミニスカートから枯れ木のような足を出し、会社に詰めていることが多かったため

昼下がりは留守だった。


二人はヨシコのお気に入りとなり、その後も何回か来た。

彼女らは清楚でしとやか、落ち着いている印象だ。

そして服装がひどく地味。

上はいつも白いブラウス、下は黒か紺、あるいは茶色のスカート。

双子が古い制服を引っ張り出して着ているみたいで、何やら異様な感じがした。


やがて何回目かの訪問で、ヨシコは隣市にある“センター”という場所に誘われた。

色々な人が集まって色々な勉強ができる、文化サロンのような所という話だ。

出たがりのヨシコだから、日時はすぐに決まった。

けれども一つだけ、問題が。

送迎付きでないこと。

「嫁に連れて行ってもらうわ」

ヨシコは言い、問題は解決された。

《続く》
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フェイスパウダー

2022年08月26日 10時01分37秒 | みりこんぐらし
最近、同級生マミちゃんの店で買った資生堂のフェイスパウダー。



入れ物のデザインを毎年変えて、限定販売される物らしい。

昼間のメイクの仕上げだけでなく、夜のスキンケアの仕上げにも使えるらしい。

寝ている間も乾燥を防いで、美白効果があるんだってさ。


マミちゃんはそれを「おやすみメイク」と可愛く呼んでいたけど、夜は使ったことない。

いつも忘れる。

おやすみメイクをご披露したいオトコがいないからかも。

とりあえず、粒子が細かいところが気に入っている。

価格は税込7,150円。



ところで私は長年、行くドラッグストアは一ヶ所に決めていた。

自分の使う化粧品やサプリメント、それからコーヒーを沸かすアルコールなんかが

全て常備された店だからである。

仕入れの都合だろう、店によって必要な品物が置いてあったり無かったりするので

ハシゴしなくていいのは大きい。


特にサイフォンに使う工業用アルコール、置いてないドラッグストアもあるんじゃよ。

1本300円前後と安く、必要とする人はまれで

そのわりに重くて場所を取り、可燃性となると何げに気も使うしで儲けにならないため

ずっと欠品ということになっている所もある。

このアルコールがあるばっかりに、私はその店と決めていたのだ。


けれども近年、この店に関所が設けられた。

化粧品売り場のパート店員、ミナ子だ。

年の頃は50代前半、美人で愛想のいい彼女は

おそらく誰にでもそうするのだろう、私にもすぐ懐いた。

店に行くと私に張り付き、買い物の手助けをしてくれる商売熱心な子である。


というのも、その店は常にどこかのメーカーと提携した販促商品があり

店員に売り上げを競わせていて、販促商品を売ると成績が上がる仕組みらしい。

彼女もそれを売って成績を伸ばそうと燃えているのだ。

大きな二重の目に、負けず嫌いが滲み出ている。


そんなわけでミナ子は、やたらと販促商品を売りたがる。

そしてその商品は、無駄に高いと決まっている。

ここ数年、店が販売促進に燃えているのはハンドクリーム、日焼け止め

保湿クリーム、ヘアケア商品の類いで、ミナ子もそれらの販促に余念がない。


勧められるままに幾つか購入したこともあるが

肌に合わなかったり、香りが好みでなかったりでヒット作は皆無。

そりゃそうだろう。

店が売りたいのは利益の高い商品であり

客にとって本当に良い商品かどうかは関係ない。

それが薄利多売を前提とするドラッグストアの闇の部分なのはさておき

販促商品には詳しいが、他の商品の知識は浅くておざなりのミナ子が

親切に張り付いてくれても、こっちは無駄遣いが増える一方で

あんまりメリットが無いわけよ。


この状況は義母ヨシコも同じ。

優柔不断なヨシコは私のように断ることができず

ミナ子の販促商品を買わされて帰ることが多い。

いつも使っているヘアクリームを買うために行っても

ミナ子に販促のヘアケア商品を買わされ、肩を落として帰って来る。


しかしヨシコの場合、自業自得のフシもある。

通販の電話でも同じことをやるが、息子は会社経営、自分は先代の社長夫人

あとはライオンズクラブ自慢に海外旅行自慢と、いらんことをしゃべりまくり

個人情報をダダ漏らしにして金持ちぶるからだ。

金持ちという間違った情報を与えてしまうと

向こうは何でも買ってくれると思い込んでしまう。

罪なことである。


ともあれ、うちら嫁姑はどちらかがその店に行くたびに

「おった?」

と、ミナ子の所在をたずね合っては一喜一憂するのがナラワシとなっていた。

私は一人で、ヨシコは娘と行くことが多いので、ここへ行くのはいつも別々なのだ。


やがて我々にも知恵がつき、彼女がいないと思われる午前中か夕方に行くようになった。

しかしパートなので、いつ店にいるかわからない。

時間をずらした努力もむなしく、遭遇することもままある。

ほとんど博打。


そのうち私はお気に入りのコーセーのマスカラ以外

ほとんどの化粧品を同級生マミちゃんの店で買うようになり

ドラッグストアへは滅多に行かなくなった。

ふらりとドラッグストアへ入って面白そうな商品を物色するのも楽しいけど

近頃はコロナじゃん。

店はサンプルの使用を推奨しておらず

アイカラーやリップカラーのサンプル置き場は荒れ果てている。

こっちも試すのはスリルがあるため、物色どころではない。

だったらミナ子に付かれて断るのに神経を使うより

マミちゃんを喜ばせた方がよっぽどいいではないか。

決して無理強いをしない、彼女の優雅な商業スタイルはホッとする。

アルコールとサプリメントは、夫が買いに行ってくれるようになった。


マミちゃんという逃亡先のある私と違って、ヨシコの場合

尿漏れパッドと入れ歯洗浄剤という老人にとって無くてはならない物を購入するため

その店に行く頻度は相変わらず高い。

だからミナ子に会ってしまう回数が多い。


しかし、ヨシコの優柔不断をあざ笑ってばかりはいられない。

私は毎年、ミナ子イチ押しのフェイスパウダーを買っていた。

某有名メーカーが毎年12月に限定販売する物で、1個1万2千円ぐらいする。

ノルマがあるので、ミナ子は盆が明けると予約をねだり

行かない時は電話してくる。

使わない物ではないため、つい買っていた。


その高いパウダーの使用感は…良いのかどうか、私にはわからない。

おお!という気持ちになったことは無い。

粒子が粗いのはわかる。

それは老いた肌を輝かせる成分によるものかもしれないが

老いた肌は別段、輝かない。

ただ、毎年変わる趣向を凝らしたデザインの入れ物だけは

キンキラと豪華絢爛に輝く。

製造予算の大半は、そっちに注がれているのではないかと思ってしまう。


よって今年から買わないことに決め、代わりにマミちゃんの店に置いてあったのを買った。

発売日はドラッグストアの物を意識しているのか、早めの7月。

マミちゃんはとても喜んだ。

いずれのメーカーも限定販売と銘打ってはいるが、日にちが過ぎると有り余って

ネットで買えば安いのは知っている。

が、欲の無い友だちから買うのは、こちらも嬉しいものだ。

満足な買い物だった。
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催眠術に洗脳に魔力

2022年08月22日 14時17分20秒 | みりこんぐらし
ブログに手抜き料理のカテゴリーを設け

主に同級生ユリちゃんのお寺で作る料理のことを綴るようになって数年が経つ。

私がブーブー言いながら、どうしてお寺料理を続けるのか

疑問に思われる方は多いと思う。


私も他人の話だったら、ブーブーを聞くのが面倒くさいから迷わず言うだろう。

「そんなに腹が立つなら、やめてしまえ」

それでもやめないとなると、しおやさんやReiさんがおっしゃるように

催眠術や魔力、あるいは洗脳を疑い

「あんた、おかしいんじゃないの?」

と言う。

絶対言う。


ともあれ、この催眠術、魔力、洗脳。

お寺料理に携わるマミちゃん、モンちゃん、私という

お人好しトリオの会話の中に、たびたび登場するフレーズ。

ひょっとして、これらが原因でホイホイと寺へ赴き

家に帰ると覚醒してブーブーの繰り返しかも?なんて言って笑う。

しおやさんとReiさんの素直なご意見が、あまりに的を得ていたので

記事にすることにした。



言い訳がましくなるが、元々お寺料理を始めたきっかけは

同級生5人で結成する通称5人会のメンバー、けいちゃんがいたから。

加齢や病気で料理をしてくれる人がいなくなった…

ユリちゃんの窮状を聞いて、けいちゃんと私が引き受けたのだ。


けいちゃんが生まれ持つ奉仕の精神と、長年の調理師生活で鍛えた手際の良さは

我々とは比較にならない。

横着な私は、けいちゃんの助手をやってチャラチャラしてればいいわ〜

と軽く考え、最初の何回かは楽にやり過ごしていた。

合間で、けいちゃんや他の子が仕事で来られない時に一人でやることもあったが

それはそれで誰にも遠慮せず、自由に献立を決めて調理ができる喜びも感じた。


ところが一昨年、けいちゃんが東京に引っ越すという、まさかの事態が発生。

やめるとしたらこのタイミングだったと思うが、当時、その選択肢は無かった。

なぜなら2年前の私たちは、まだ若くて体力があった。

姑や家事と離れ、仕事のゴタゴタからも解放されて

マミちゃんやモンちゃんと一日中、一緒にいるのも楽しかった。

そしてうちの冷凍庫にひしめく息子たちの釣果を

まとめて始末するためにも、お寺料理は都合が良かった。

釣りを趣味と表現したところで、彼らのやっていることは殺生。

繰り返す殺生で誰かが喜んでくれれば、そこがお寺でなくてもいい。

何やら彼らの罪が昇華されるような気がするわけよ。



以来、月ごとに衰退する体力を実感しながら、だましだまし続けてきたが

やがて、大人数でしんどい時は我々…

わずかな身内で美食を味わう時は公務員OGの料理上手、梶田さんと

ユリちゃんが料理番を使い分けていたことが判明し、やる気のバロメーターはだだ下がり。

しかし我々は一応、大人だ。

「じゃあ全部、梶田さんに頼めばいいじゃん!」

と叫んで喧嘩別れするような子供っぽいことは、絶対にできない。

何の罪も無い善人、梶田さんを悲しませることになるからだ。

我々は気づかないフリをして、お寺料理を続けるしかなかった。


その時、ユリ寺がなぜ人材不足に悩まされているかを理解した。

時の流れによる人材の老朽化だけではなく、人の使い方が間違っているというものだ。

使い方を知らないから、人が離れていく。

しかも給料が発生しない奉仕の場なので、人の離れようは容赦ない。

この現象、ちょこっとはいえど経営に携わる者として、非常に興味深い。


何でまともに人を使えないのかは、わかっている。

ユリちゃん夫婦と兄嫁さんは、よそで働いたことが一度も無いからだ。

仕事は楽しいこともあるけど、人に使われる身は日々、理不尽との戦い。

受ける理不尽をお金と引き換えに耐えるのが、仕事というものだ。

それを知らない人々が、無料で人を使うのは無理である。


そこでユリちゃんが何で繫ぎ止めるかというと、苦労話。

身内に、檀家さんに、こんなひどいことを言われた、された…

あれもこれも一人でしなくちゃいけない…

誰もわかってくれないし、感謝されることもない…

友だちが涙ながらに訴えれば、そりゃ最初は同情もした。

うちらで役に立つなら、できるだけのことをしたいと思ってしまう。

それが、催眠術である。



旦那のモクネン君が冷たいのにも、最初は同情しましたとも。

人前であからさまにユリちゃんを無視するのを何度も目の当たりにして

何て男だ!それでも仏の道を説く宗教人か!と憤慨した。

ユリちゃんは自分に子供ができず、後継ぎがいないために辛く当たられると主張し

お寺に出入りする人も皆、それを信じて気の毒がっている。

それが、洗脳である。


しかしこの洗脳は、意外にも我が夫によって解かれた。

年に一度とはいえ、私と一緒に正月のお雑煮会に参加する彼は

お寺の様子を把握するにつれ、私にこう言うようになった。

「あの女房じゃあ、モクネン君もやっとられんじゃろ」

ユリちゃんは、旦那を立ててないと言うのだ。


言われてみれば、確かにそれらしき出来事はあった。

いつぞやの正月勤行が終わり、モクネン君が皆に講話をした時のことである。

「今日は本当に、よくお参りくださいました。

この後は皆さんで、楽しくお雑煮をいただきましょう」

講話は、このように結ばれた。

そこへすかさずユリちゃん、一同にしたり顔で言い添える。

「まだ鬼子母神さんとお稲荷さんのお参りがあります。

それを済ませてから、お雑煮になります」


この時のモクネン君の、仏どころか鬼のような表情ときたら。

ただでさえ寒いというのに、凍りつく本堂の空気!

こんなのを日常的に見せられたら、善良な檀家さんはいたたまれないだろう。


ユリちゃんは、モクネン君の言い間違いを訂正したつもりなのだ。

それが彼女にとっての正しい行いである。

しかしモクネン君にしたら

食事の前に境内の鬼子母神と稲荷の参拝をするのは毎年の決定事項。

シモジモの前で亭主に恥をかかせ

講話の余韻を台無しにしてまで訂正するほどのことではない。

どっちが正しいかではなく、ここが男と女の違いなんだと思う。

女は生真面目なので、正確な情報の伝達を一番の重要事項と思って尊ぶが

男は自分を立てるか立てないかが、一番大事なことなのだ。


夫のユリちゃん評は辛口。

「男を立てることを知らん、料理はできん、一升酒は飲む…

そんな女房、ワシでもいらん。

モクネン君は、よう我慢しとるわ」

だってよ。

キビシ〜!


夫を立ててきたかどうかは自信無いけど、料理は一応、一升酒は飲まない私を

何度も他の女と取り替えようとした昔のことは、忘れているらしい。

勝手なもんだけど、夫の言うことに一理あるのは認める。

あの夫婦の間にある深いミゾは、子供という物理的な理由ではなく

真実はこの辺、つまり男女の考え方の隔たりにあるのかもしれない。


夫婦間のことは他人が何をしても無駄骨なので、どうにかする気など無い。

我々の興味はこの夫婦が、そしてお寺が、この先どうなるか。

怖いもの見たさというやつよ。


それでも根底に存在するのは幼馴染みの友情と、好きな料理で誰かの笑顔が見られる喜び。

勘違いした人々に都合よく使われているとしても、全てが嫌なことばかりではない。

笑ったり、誰かの配慮でふと心が温かくなったりと、小さなことが輝く瞬間は必ずある。

暑かったり寒かったりハードワークだったりと環境が厳しいだけに

その輝きは貴重に感じる。


今回のハムカツの件もそうだ。

モクネン君が我々3人にハムカツの屋台を強要する様子を見た、いつもの芸術家の兄貴。

モクネン君がいなくなった後で、サラリとこう言った。

「知り合いに、美味しいフルーツのアイスキャンデーを作る若者がいるんだよ。

来年の祭りには、東京から呼んで作らせよう」


モクネン君は今まで、お祭りのたびに地元の青年団や店に屋台を出させていた。

しかし商売を知らずに無茶ばかり言うため、すっかり嫌われて

屋台をやる者はいなくなった。

そこへコロナで、祭りの中止が続く。

コロナが明けたって、もう屋台をやると言い出す物好きは現れないだろう。

彼は屋台がゼロという事態に焦り、我々に出店させようとしていたのはわかっていた。


兄貴もそのことに気づいていたらしく、助け舟を出してくれたのだった。

6月だし、ハムカツよりもカラフルなアイスの方が断然いいに決まっている。

このようにさりげない、しかし現実的なフォローが嬉しいではないか。

たまにこういうことがあるから、我々はお寺料理を続けるのかもしれない。

いわばこれが、お寺の魔力。

そういうわけで、お寺料理はまだしばらく続きそう。
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手抜き料理・いつもの寺

2022年08月18日 15時36分29秒 | 手抜き料理
16日は、またまた同級生ユリちゃんの実家のお寺で料理をした。

この日は毎年恒例のお盆行事、施餓鬼供養(せがきくよう)。

行事の時は、いつもは来ない檀家さんも参加するので、普段より人数が増える。

去年は20人超えの大盛況だったが、今年はコロナの影響がひどいため

帰省した家族を伴って参加する檀家はいないと踏み、15〜6人と予想。


お寺料理のメンバー、モンちゃんは仕事で来られない。

洗い場担当のモンちゃんが欠席するのは痛いが、甲状腺に緑内障、高血圧に骨粗相症…

持病のデパートのような彼女をクーラーの無い台所で働かせるのは酷なので

むしろ休んでもらった方が安心だ。


よって今年はマミちゃんと私、そして公務員OGの梶田さん

この3人でやることになった。

彼女のタコ飯が食べたいと言ったら手伝ってくれることになり、幸運だった。


当日は曇りで思ったほど暑くなかったが

去年、コメント欄で教えていただいた空調ベストと

アイス首巻き(保冷剤を仕込むタオルみたいなの)

それから、今年発売されたアイス首輪(首に装着するリングみたいなの)

さらに首かけ扇風機を用意して臨んだ。


ちなみにアイス首輪は3千円ぐらいしたけど、あんまり役に立たない。

ひんやりするのは付けた時だけで、すぐに生温くなる。

温度差によって生じる水滴が出ないだけが売りの、邪魔な首輪だ。


とにかく暑い台所で暑い目に遭いたくない一心の私は

この日のために秘策を用意していた。

巻き寿司よ。

14日に家で作った巻き寿司は、家族に喜ばれた。

それをお寺料理でも作るのだ。

アレらが喜ぼうが喜ぶまいが、関係ない。

家で作って持って行き、昼に出して、さらに持ち帰りの土産にできる。

朝、作ったら最後、それっきり主食の心配をしなくていいではないか。


家で作るとなると、米は我が家の持ち出しになるが、かまうもんか。

お寺のお供えの米は、長く放置されているので美味しくない。

その米を研いで、炊いて、暑い所で熱いおむすびを握るなんてゴメンだね。

炊飯で室温が上がるし、時間の無駄だ。


あとは長男の釣った鯛を裏庭で炭火焼きにして鯛そうめんを作り

次男の釣った鮎も同じく炭火焼きにして、鮎の塩焼き。

私の担当はこれで終わり。



さて当日、私は朝4時から米を1升と3合炊き

卵を焼いて巻き寿司を18本巻いた。



私にとって巻き寿司は、料理ではなく工作なので苦にならない。

炭火を起こすのに時間がかかるので、この日はマミちゃんと一緒に行かず

朝9時過ぎに単独でお寺に赴いた。


10時半になると、マミちゃんと梶田さんが到着。

梶田さんは約束通り、タコ飯を作って来てくれた。


そしてこの日、我々はユリちゃんのご主人モクネン君から、厄介な使命を受けていた。

その使命とは、ハムカツを作れというものだ。

彼は来年6月に開催するお寺の祭りに、我々の屋台を出したいと目論んでいた。

そして販売するメニューをなぜかハムカツと勝手に決め、祭りの名物に…

引いては町の名物にして、町興しのひとつにしたいとおっしゃる。

来年までにその試食を何度かやって味を決めたいということで

今回から始めてもらいたいと言われていた。


ざけんなよ…

我々だけでなく、ユリちゃんも密かに憤慨した。

うちらの町は今では過疎の田舎だが、昔は港を拠点に栄えていて

旅館や料亭、飲食店がひしめいていた。

芸者の置屋や検番もあり、うちらが小さい頃はまだ芸者さんが存在していて

夜になると、あちこちの旅館の座敷から三味線の音色が聞こえたものだ。

町には芸者OGの教える三味線、小唄、長唄などの教室があって

華道、茶道、日舞も盛んだった。


つまり町民は豊かで味にうるさく、粋を好む。

そういう土地柄でハムカツは、トンカツが買えない人の代用品であり

不粋な食品という扱い。

そんなモンで町興しなんざ、ヘソが茶ぁ沸かすわ。

モクネン君は市外の人なので、うちら地元民の変なプライドなんか知らないのだ。


そのヘソが茶ぁ沸かすモンを揚げて屋台で売りながら

もちろん例年通り、祭りを手伝う人々の昼食、夕食、打ち上げの夜食も作れって

3人でできるわけなかろうが。


私はその時…つまり前回のお寺料理の時に言った。

「屋台か料理のどっちかしか、できません」

しかしモクネン君は納得しない。

「不可能を可能にしていただきたい。

前は屋台でカツ丼をやってもいいと言ってたじゃないですか」

「あの頃は檀家のおばちゃんたちが配膳や洗い場を手伝ってくれてましたし

こちらには、けいちゃんがいました。

今はどっちもいなくなって、3人だけです。

ふがいない私らに見切りをつけて

両方できる人材を探されることをお勧めします」

険悪な雰囲気にならないよう、私はやんわりと言ったが

モクネン君は一笑に伏す。

「ハハハ!そんな人、いるわけありませんよ」

自分は不可能を可能にする気が無いらしい。


ともあれ言い出したら聞かないモクネン君のため

ハムカツは一応、用意することになった。

とりあえず周りが素直にやれば、満足するのだ。

自分の気まぐれな命令で、人が動くところを見たいだけである。

そのうち彼のやる気はしぼんでいき

やがて「ハムカツ?何のこと?」になる予定。

この思考回路、亡き義父アツシや取り巻きのおじさんたちと同じだからわかる。

み〜んな店や会社を失い、一人ぼっちになって死んで行った。

オ〜ッホッホッホ。


この話を聞いた梶田さんが、名乗りを上げてくれた。

「冷凍のハムカツ買って、うちで揚げてくるわ。

おいしくないから諦めるでしょ」

さすがは元公務員、市民の扱いに慣れている。


というわけで、この日は15人の会食となった。

午前中にお寺で親の初盆の法要をした夫婦がいて、喪服のまま初参加。

食事の豪華さに目を見張り、大変喜んでくれたので

モクネン君もご満悦だった。


『みりこん作・惰性の巻き寿司』

「まさか巻き寿司が出るとは…」

「ここで巻き寿司をよばれられるなんて…」

一同は口々に言った。

巻き寿司=ご馳走

この先入観は、すごいと思った。


『みりこん作・惰性の鮎の塩焼き』



『みりこん作・惰性の鯛そうめん』



『マミちゃん作・メンタイフィーレのフライ タルタルソース』

私が好きなので作ったそう。

嬉しい。


『マミちゃん作・そうめん瓜のマヨネーズサラダ』

炒り卵とシーチキンが入っていて、コクがあり美味しかった。

この子の野菜料理は、組み合わせが天才的とすら思う。


『マミちゃん作・カボチャの煮物』

1ヶ月前にもらったカボチャで作ったという。

そう言えば先月の始めに、そのようなことを言っていた。

カボチャ、まだ無事だったのね。


『梶田さん作・ハムカツ』


「まだ改良の余地がありますね」

激安スーパーの冷凍食品とは知らずに食べたモクネン君が言い

梶田さんは「そうですね」と軽くいなしていた。

さすがだ…プププ。


あと、梶田さん作のタコ飯があったが、撮影し忘れた。

熱中症で倒れることもなく、無事に済んでホッとした。
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手抜き料理・盆メシPart2

2022年08月17日 10時50分30秒 | 手抜き料理
最近、料理ブログと化しているような気がする。

ま、いいか。


さて、お盆に作って好評だったもの…

どこが手抜き料理じゃ!と叱られそうだけど

『巻き寿司』



暑いので、買い物に行きたくなかった。

家で高校野球が見たかった。

そして夫のバドミントン仲間がくれた、豊洲土産の良さげな海苔があった。

さらに冷蔵庫には卵が並び、近所でもらったキュウリもある。

常備しているタクアンとカニカマ、ゴマもある。

で、巻き寿司。


巻き寿司って、大変な料理と思い込んでいる人もいると思う。

ノー!

あれはカンピョウやら干しシイタケを戻してグツグツ煮たり

アナゴを焼いて具にするから大変なんじゃ。

家にある材料で手軽に作れ、一見豪華という先入観で家族に喜ばれ

自身も料理というより工作として楽しめる巻き寿司は

まことに優秀な献立である。


家で作る巻き寿司の良さは、何といっても酸味が控えめなこと。

買ったやつは、腐らないように酢飯の酸味を強くしてあるので

好きな人はいいけど嫌いな人は巻き寿司を敬遠する…特に男や子供。

干しシイタケの香りが嫌で、巻き寿司が苦手な人もいる…特に男や子供。

カンピョウの存在価値を理解できず、巻き寿司を嫌がる人もいる…特に男や子供。

アナゴで蛇を連想し、巻き寿司を警戒する人もいる…特にうちの義母ヨシコ。


余談になるが、アナゴに関しては絶対的な否定者がたまにいる。

それは主に潜水士。

彼らは普段、大きな貨物船や客船の船底についた貝なんかを取り除く仕事をしているが

水死体を探すのも仕事の一つだ。

海底で水死体を発見した時、遺体からアナゴがコンニチハする確率がかなり高いという。

それでアナゴが食べられなくなった人々が、本当にいる。

うちの夫のようにアナゴが好きな人もいるけど、海辺に住んでいると

恐怖の体験によってアンチアナゴとなるケースもままあるのだ。


しかし家で作れば酢飯の味も好きに調節でき、中に入れる具も自由自在。

カニカマが無ければハムでもいいし、タクアンが無ければ無いままでいい。

尻尾を取った海老フライ、あるいは焼肉のタレで味付けした肉類に

レタスを合わせてサラダ巻きにしても楽しい。


とにかくホームセンターで巻き寿司用の巻き簀(す)を何百円かで買っておけば

巻き寿司は誰でもできる。

先ほど言ったように、一見豪華の先入観によって、賞賛は欲しいままだ。

困った時のために覚えておいて損は無い、便利な一品である。

うちは人数が多いので材料が大量になってしまうが

驚かずに話半分、あるいは話3分の1で聞いてほしい。



★ご飯は昆布を入れて炊きながら、以下の作業を進める

『まず、卵を焼く』


①ボールに卵を割り入れ

砂糖たんまり、塩と薄口醤油少々、マヨネーズをテキトーにブチュ〜したら

箸でしっかり混ぜて卵液を作る

(うちの場合、卵はこれで12個)

②大さじ1杯の油を敷いた小さめのテフロンのフライパンを熱し

卵液をフライパンの半分くらいまで流し入れる

(卵液を流し入れたらジュワ〜ッと音が出る程度の熱さ)

③箸でオムレツを作るつもりでかき混ぜながら、焦げ目をつけて両面を焼く。

④焼けたらまな板に置き、冷ましてから縦1.5センチくらいの太さに切る。


火を使うのは、この卵のみ。

相当甘くしないと全体の味がぼやけてしまうので

砂糖は思い切って卵の3分の1くらいの量を投入。

毎日だと体に悪いが、たまのご馳走扱いなので、同じ作るなら美味しく作りたい。

砂糖が多いのでボールの底に溜まりやすいため

卵液を焼く時は、箸でよくかき混ぜてからフライパンに流し入れるようにする。


小さめのテフロンのフライパンとは

一人暮らしの人が使うような直径17センチぐらいの物。

大きいフライパンだと火が均一に通りにくく、裏返すのも難しくなる。


『他の具たち』


キュウリ
①縦二つに切り、真ん中の種の部分をスプーンでこそげ落として取り除く

(種の周りは水分が多いので、水が出やすく傷みやすいのと

種を除けばカリカリと歯ざわりが良くなる)

②縦1センチに切り分け、全体に軽く塩をまぶしておき

巻く時にキッチンペーパーで、軽く水気を拭き取る

(キュウリに染み込んだ塩分が、甘い卵とマッチして美味しい)


タクアン
①薄切りにした物を千切り

カニカマ
①パックから出しただけ〜

カマボコでも美味しい

ゴマ
①あっても無くてもよく、そのまま使ってもいいし、フライパンで軽く炒ってもいい



★ご飯が炊けたら好きな量をボールに移し、寿司酢を混ぜる

うちは人数が多いので木製の寿司桶を使うが、少人数のご家族ならボールで十分。

病院の厨房でも、ボールでやっていた。

寿司酢の量は、米1合に対して大さじ2杯、つまり30CC。

米3合なら90CCになる。


ちなみに病院には昆布、つまりカリウムNGの患者がいるので

昆布の出汁はもちろん、ご飯に昆布を入れて炊くことは無い。

出汁はイリコ中心、料理によって時々、カツオ節もどきのアジ節とサバ節の混合を使う。

だから寿司飯も、普通の白ごはん。

保温ジャーにある残りごはんから使う。

私が寿司を気軽に考えるようになったのは、この経験からである。


話は戻って、寿司酢を混ぜる時ご飯粒をつぶさないよう

手早く切るように、しかしダマが残らないように混ぜる。

今の時期はクーラーや扇風機があるので、大げさにウチワを使わずとも

ご飯は自力で冷め、ツヤも良くなる便利な季節だ。


『いよいよ巻きに入る』


緊張しなくていい。

病院の厨房で何も知らない新人と二人で組んだ時

初めて巻き寿司を作った当時の私の緊張に比べればたいしたことない。

作ったことの無い巻き寿司をいきなり患者に出すのは、相当恐ろしいぞ。


しかしそれ以前に、病院食は寿司酢の調味料の配合は

病状によって細かく分かれており、具そのものや具の味付けもそれぞれ違う。

さらに失敗したら闇に葬れるのならいいが

病院食はロスを避けるため、その日に使う分ギリギリの材料しか用意されていない。

つまり失敗は絶対に許されない。

それが初心者にとって、どんなにプレッシャーか、やってみなければわからないだろう。


巻き簀に海苔を縦に乗っけたら、寿司飯を真ん中に盛り

下の海苔が露出しない程度に薄く伸ばしていく。

私も下手なので、人様に教えるほどではない。

上手な人が聞いたら笑っちゃうだろうけど

私のように下手っぴが何とか格好をつけるためには、端や角が大事みたい。

海苔の四つの端ギリギリまで寿司飯を伸ばしきらず、ほんの少し残しながら

角が丸くならないよう、きっちり寿司飯を置くと綺麗に巻けるようだ。


『具を置く』


①広げた寿司飯全体にゴマをふり、半分より手前に、まず卵を置く

(焼いた卵はしっかりして角張っているのでズレにくいため

先に置くと他の具を受け止めてベースになってくれる)

②キュウリ、カニカマ、タクアンを並べ、また卵、キュウリを置く


★手前から巻き簀ごと持ち上げ、ゆっくりと締めながら巻いていく

これ、お見せできたらいいんだけど、動画じゃないと無理。

緊張すると急いでしまうけど、少し巻き込んでは両手で全体を締め

また少し巻き込んでは締め…を繰り返していると、一周回る。

一周回って円筒形になった寿司を仕上げに締めて終了。




中身がはみ出そうがバラバラになろうが、どんどんやっていたら慣れるので

果敢にチャレンジしていただきたい。

慣れないうちは具を単品か少なめにして、細めの巻き寿司ならぬ

渦巻き寿司を目指すと上達が早いと思います。
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手抜き料理・盆メシ

2022年08月15日 12時49分13秒 | 手抜き料理
前回、出汁の取り方に触れた記事のコメント欄で

しおやさんが話してくださった。

>なんかだしを取った昆布とカツオぶしの始末がめんどくて粉末だしにしていました。


私も同じ気持ち。

特に出汁を取った後の昆布…

このフニャフニャの残骸が、我が家では厄介な問題を引き起こす。

姑と暮らすとは、そういうことでなのある。


昔の女の人の中には、当時貴重品だった昆布を崇め奉る、昆布信者がいるものだ。

義母ヨシコも、その一人。

出汁を取った後の昆布を捨てるなんて絶対に許されず、再利用を強く促す。

捨ててあるのを発見しようものなら怒り狂い、ひと悶着あるので

捨てる時は見つからないよう他の生ゴミと混ぜるなど、細心の注意が必要だ。


再利用の方法は、佃煮一択。

私に佃煮を作れと言うのだ。

が、私は佃煮を作るのが好きではない。

真っ当な佃煮として製造された物ならいざ知らず

砂糖、醤油、ミリンを大量に使い

長い時間とガスを浪費して作るリサイクルの佃煮は

さして美味しいわけでも身体に良いわけでもなく、無駄の多い食品だと思っている。


しかもヨシコ、佃煮を作らせただけで満足してしまい

ほとんど食べないときた。

私の努力は何だったんだ。


味の方は問題無いと思う。

どうせ作るのならと研究を重ね、リサイクルにしては

そこそこの水準になったと自負している。

以前も記事にしたが、味付けをする前、水と昆布だけを入れた下煮の段階で

少量の酢を入れ、20分ほどかけてしっかり煮るのが柔らかく仕上げるコツだ。

その後、砂糖や醤油、ミリンで味付けをしてコトコト煮詰めると

味の染み込みも良く、ツヤツヤした甘辛い佃煮が出来上がる。


ただし、これを夏に作るとなると、暑いのひと言。

昆布を使うたびにこれでは、やってられない。

やがて私はひらめいた。

「そうじゃ!ヨシコが昆布を見るけん、いけんのじゃ!

昆布を使わんかったらええんじゃ!」


以後、夏は寿司を作る時以外、本物の昆布を使わなくなった。

私が顆粒や液体の昆布ダシと本物のカツオ節で出汁を取るのは

昆布には強い反応を示しながら、カツオ節にはなぜかノーマークという

ヨシコの習性を考慮した苦肉の策である。


ちなみに出汁を取った後のカツオ節、しおやさんがおっしゃるように

醤油で味付けしてフリカケとして食べるのは良いアイデア。

他にはチリメンジャコ、あるいは大根の葉っぱがあれば

一緒に炒めて味付けしたり

キュウリやナスなどで浅漬けを作る時、一緒に入れてもいい仕事をする。


ついでに話すが、私は調理師なので食中毒の恐ろしさは知っている。

それは「もったいない」から始まることが多い。

もったいないからと再利用を考えるのは、大事なことだ。

そして一方、捨てることは食中毒の予防になる。


もったいないは、日本がまだ涼しかった頃の美徳である。

調理師は、食べ物を粗末にした罪で天罰を受けることを恐れない。

迷わず食中毒のリスクを避ける方を選ぶ。

罪悪感にさいなまれた時は、自分を調理師だと思うのもいいかもしれない。


さらについでに話すが、老人の孤独死は食中毒が原因であることも少なくない。

アレらの中には、一度食べ物に被せたラップを

未練がましく取っておきたがる人がいる。

再びラップが必要になった時、前回使ったラップを再利用するためだ。

ラップは再利用した時点で、アレらの頭の中で新品に立ち戻る。

ラップ・タイムマシンだ。


しかしラップには、たとえわずかでも前回使用した時の食品が付着しており

取っておいた数時間のうちに菌が増殖している。

それを再利用することで結果的にお腹を壊し、脱水症状で生命を落とすこともある。

原因は持病、あるいは熱中症で片付けられ

誰も真相を知らないことだってあるかもしれない。

ラップ・ミステリーだ。

使用済みのラップを取っておくお年寄りがいたら、気をつけてあげてほしい。



さて、お盆もそろそろ終わり。

家族がまとまった休みに入ると、朝バタバタしなくていいのは嬉しいが

早くから遊びに出かける者と家に居る者とに分かれ

普段にも増して食事の時間が不規則になる。


こんな時、以前はカレーを作り置きしていた。

たいていの人は盆正月にご馳走を食べると思うが

それとは別に、いつでも食べられる物としてカレーのある安心感は大きい。


しかし近年、私にとってカレーは頼みの綱でなくなった。

焦げつきやすいので温める際は気をつける必要があるし

ヨシコがカレーを食べなくなって久しいので、別メニューになる。

かえって忙しいではないか。

盆カレー、戦力外通告。


そこで今年のお盆、我ながらヒットだと満足した料理をご紹介したいと思う。

各ご家庭の好みや家族構成によって向き不向きはあると思うので

参考までに聞いていただきたい。


『ちゃんこスープ』

どこが盆メシじゃ!暑苦しい!

と言われそうだけど、我が家では大好評だった。


①豚ミンチ1キロに、ネギ2束分の小口切り、片栗粉大さじ2杯、卵2個

おろしショウガをそのまんま、酒、醤油、塩コショウをテキトーに入れ

タコ焼き大の団子に丸める



②大きい鍋に昆布とカツオ節で出汁をたっぷり取り、沸騰した出汁に片っ端から団子を投入

③団子が浮いてきたらアクを取り、大きめに刻んだ白菜と油揚げを入れる

④薄口醤油と塩で好みの味にして、戻した春雨を入れたら出来上がり


前にもご紹介したことがあるけど、これ、我が家の冬の定番。

冬にはスープだけでなく、鍋でもよく食べている。

たまたま豚のミンチがたくさん買えたので、気を良くして作った。

田舎のスーパーじゃあ、豚ミンチは少家族用に小さいパックでしか売られてないのよ。

肉屋へ注文するほどでもないし、作るつもりは全然無かったけど

珍しく500グラム入りのパックがあったので、2つ買って作ることにした。


団子は豚ミンチだけでなく、3分の1程度の量の鶏ミンチを混ぜると

フワフワに仕上がって、なおいいんだけど

うちには鶏を食べないヨシコがいるので入れられない。

入れてもわからないと思うけど、食べ物で人をあざむきたくないから。

鶏が大丈夫なご家庭は、ぜひ鶏ミンチをプラスしていただきたい。


出汁はわざわざ取らなくても、顆粒の鶏ガラスープの素で中華風にしても美味しい。

キムチを入れたら韓国風、コンソメで洋風と応用もできる。

もちろん、いつものヒガシマル・ラーメンスープの素や

同じくうどんスープの素、あるいはおでんの素でも十分いける。

春雨の代わりに、戻さずそのまま鍋に入れられるマロニーでもいい。


夏に白菜って、アホかと思われるだろうが

冬は肉厚や薄手、柔らかいのや硬いの、甘いのや苦みのある物など

様々な品種が出回って品質にバラつきが出るため、選別が必要。

しかし夏の白菜は、冷蔵保存に適した肉厚で甘みのある品種なので

味が安定していて意外に美味しい。

また、白菜の代わりにチンゲン菜や人参など、他の野菜を入れてもいい。


ともあれ、このちゃんこスープ…

夏場に元気の出る栄養面、家族の喜びよう、おかずとしてのボリューム

いつでも食べられる気軽さ、盛り付けの手軽さ

カレーと違って鍋を洗うのが苦にならない…など、数々あるメリットの合計から

作る手間、室温上昇というデメリットを差し引いても、かなりの高得点。

カレーの交代要員としてかなり優秀だと実感した。


もう一つ、ご紹介したかったけど

長くなってしまったので次の回にします。

《続く》
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手抜き料理・夏メシpart2

2022年08月12日 08時29分43秒 | 手抜き料理
前の記事のコメント欄で、しおやさんが私の料理を

「健康的な家庭料理」と言ってくださったのに気を良くしていたら

まえこさん、Reiさんも楽しんでくださっているご様子で

優しいお褒めの言葉をいただいた。

そこで、夏メシ第二弾をご披露したい。


とはいえ私の言うところの夏メシは

旬の食材を使った、いかにも夏らしいものではない。

暑い時期、作り手にあんまり負担のかからない料理のことだ。


そりゃ夏だもの、オクラ、大葉、トマト、キュウリなど

旬の夏野菜も使うし、ソウメンも茹でる。

冷たい物ばっかりじゃあナンだから、餃子も作るし肉も焼く。

近所でよく頂くズッキーニも、パスタやスープ、アヒージョに入れたり

縦半分に切って中身をくり抜き、本体ごとグラタンにする。


だけどズッキーニ、敵。

近年、夏野菜としてポピュラーになったこいつの料理には

常に熱地獄が付きまとう。


しかし、汗をかこうが時間をかけようが

保守派の家族はズッキーニの料理をメインと認めない。

夏野菜の新顔を怪しんでいるのだ。

生でもいいだの、サッとレンジや湯通しでいいとも言うけど

ただでさえ怪しいヤツに生々しく自己主張されたんじゃあ

ますます食べん。

つまり別の料理を作る必要が生じるため

努力に見合う成果は得られない、私にとっては徒労の食材だ。


しかし憎んでばかりはいられない。

家庭菜園でズッキーニを作るのは簡単らしく、さりとて植えた張本人も

そんなにたくさんは食べられなくて持て余すようで

夏になると必ずもらうから、料理はしなきゃならない。

だから、一番簡単に作れて食べやすいズッキーニ料理をご紹介しておこう。


『ズッキーニのカナッペ』

今はズッキーニが無いので写真を載せられないが

実物をお目にかけるまでもないほど簡単。

けっこう美味しいので、ズッキーニの始末に困った時は

トライしてほしい。


①小皿にマヨネーズをモッコリ絞り出し、醤油を少し垂らして混ぜておく

(醤油が多いとマヨネーズが緩くなるので少しでいい)

②生のズッキーニを厚さ5ミリ前後にスライスし

1枚ずつマヨネーズ醤油を塗る

③魚焼き用グリルか

アルミホイルを敷いたオーブントースターに1枚ずつ並べ

マヨネーズ醤油に焦げ目がつく程度に焼く

以上。



ズッキーニの話はこれぐらいにして

作り手の負担が少なく、家族が喜ぶ夏メシといえば

うちの場合、昼ごはんによく作る『ニンニクめし』



①バターをたっぷりめに落としたフライパンに

スライスしたニンニクを3〜4かけ入れ、軽く炒める

②そこにごはんを入れ、たっぷりめに塩コショウして炒めながら混ぜ合わせる

③仕上げに醤油を回しかけ、あればパセリのみじん切りを振って出来上がり。


ごはん炒める系は、確かに暑い。

が、材料が少ないため、準備に費やす時間と炒める時間はかなり短くなる。

男は単純だから、ニンニクが入っていればスタミナがつくと思い込んでいるので

これを作ると喜び、コツやひと手間といった面倒くさそうなことにも無縁。

保温した白いごはんが長持ちしない夏は、残りごはんの処理にも便利だ。

これらの長所を取り揃えながら、けっこう美味しいとなれば

少しの我慢で大きな成果が得られる一品であることは間違いない。


このニンニクめしに顆粒の鶏ガラスープかヒガシマル・ラーメンスープの素

あるいはワンタンスープの素に

チンゲン菜やモヤシなんかの野菜をテキトーに入れて味を決め

溶き卵を加えたスープを添える。

他にあればモズク酢や冷奴など、適当な副菜を足せば

一食としての役目を立派にはたす。

匂いが気になれば、夜にどうぞ。


このニンニクめし、元は夫家の伝統料理。

ステーキを焼いた後、フライパンに残った脂に牛脂を足して作っていた。

ステーキハウスでよく出るやつよ。

が、ステーキの脂を待つよりバターでいいじゃん、と思い

今はバターで気軽に作っている。



『ひじき煮』


これも夏メシと呼ぶには、あまりにも平凡。

が、私の持つ夏メシの概念には、ちゃんと添っている。

なぜなら常備菜としてレギュラー的地位を確立しているひじき煮だが

前にご紹介した高野豆腐の煮物と同様

冷蔵庫から出した時の温め直しがいらない。

むしろ温め直すと海藻の匂いが出て、まずくなる。


つまり酢の物などとは違って火を通した料理でありながら

冷たいままに美味しく食せる数少ない一品であり

夏にぴったりではないか、というのが私の主張。

さらに温め直しのいらない常備菜は、家族の人数が多く

各自の食事時間がまちまちの家庭で台所を預かる私にとって

けっこう大きい手抜きとなる。


①乾燥ひじき1袋(うちは2袋だけど)をたっぷりの水に浸し

10分ほどして膨らんだらザルで2〜3回こして洗い、水を切っておく

②戻している間に人参半分(うちは1本だけど)を細切りにする

③炒め物ができる鍋か深めのフライパンにゴマ油を少々と

細切りにした人参を入れて点火、サッと炒める

★材料を入れてから点火する調理法は

近年『コールドスタート』と呼ばれて話題になっている。

中華と違い、和食はコールドスタートに適しているものが多い。

何でもかんでも鍋をわざわざ熱々にしてから材料を入れる従来のやり方では

ガス供給会社の思うツボ。

カラ鍋を不必要に熱してガスを浪費する行為もさることながら

室温の上昇にも繋がるため、クーラーはフルパワーとなり

電力供給会社の思うツボ。

結果的に光熱費は、ダブル無駄遣いになる。


④人参を炒めたら、水切りしたひじきを入れ、サッと炒める

(炒め過ぎたらひじきがくちゃくちゃになるので、人参となじませる程度)

⑤出汁、あるいは水と顆粒ダシをひじきが隠れきらない程度に少し入れる

(ひじき1袋なら80CCぐらい、2袋なら倍じゃないよ、120CCぐらい。

たいていの料理は、材料が倍だから水も倍と考えたら失敗する。

材料が倍ということは、材料から出る水分も倍だから)

⑥砂糖、醤油、ミリンで好みの味付けをしたら

汁気がわずかに残るまで煮詰める

以上。


今回は油揚げも少し入っている。

人参の赤があるのだから、インゲンかアスパラで緑を添えたいところだが

ここに緑を入れたら、家族はなぜか食べる量が減る。

うちの男どもは、黒と緑の組み合わせが苦手らしい。

一度、人参が無い時にインゲンだけ入れたら、手をつけなかった。


ところで、ひじき煮を美味しく作りたければ

昆布とカツオ節で、出汁をちゃんと出すのが一番てっとり早い。

私は朝の味噌汁を作る時、出汁を多めに作って取り置きしておく。

他の料理にも使えて、かなり便利。


ただし翌日まで置くと冷蔵庫に入れても味が落ちるので、その日に使い切る。

使い切ろうとしたら、つい料理の品数…

特に野菜を使ったヘルシー系の料理が増えるという逆転の発想で

料理の苦労が多少減る現象も時に起こる。


昆布とカツオ節なんて大変じゃん…と思わなくて大丈夫。

だって、私がするのよ?

手抜きに決まっとるじゃんか。

①鍋にポットの熱湯をザ〜

②顆粒の昆布ダシ、または液体の昆布ダシをテキトーに入れる

③味噌こし(味噌をこす、網に持ち手が付いたやつ)を鍋に突っ込み

カツオ節をひとつかみ入れて1分放置

④味噌こしの中のカツオ節をカレースプーンで絞りながら鍋の外に出し、捨てる

以上。


これで十分、香り高くて美味しい出汁が取れる。

急に出汁が必要になった時も、すぐ取れる。

火を使わないので、台所は暑くならない。

料理屋じゃないんだから、クッキングペーパーでこさなくていい。

カツオ節から出汁が出るのを待つ1分は、味噌汁の豆腐なんかを切るのに使う。

忙しければ1分待たなくても、スプーンでクルクル混ぜて絞るだけでもいい。

出汁取りに使った味噌こしとスプーンは洗わずに

そのまま味噌汁の味噌を溶くために使う。

けっこう利点があると思わない?


出汁に凝ったらお金かかるだろうって?ハハハ!

7袋で合計56グラム・108円の顆粒昆布ダシを月に2パック

一袋80グラム入り・298円のカツオ節を月に3パックよ。

これで料理が格段に美味しくなれば、幸せじゃん。

スーパーで普通に売ってるカツオ風味のダシの素も、けっこう高いよ。


他に使うのは1リットル・780円の液体昆布ダシだけど

ちょっとずつ、もう何ヶ月使ってるかしらん。

もちろん、本物の出し昆布を使うこともある。

出汁を使い分ける暮らし、私にはわりと楽しい。


え?出汁のことはもういいから、他の手抜き料理をしゃべれって?

じゃあ、究極のを紹介するわよ。

『とろろ昆布の吸い物』



①汁わんに市販のとろろ昆布とカツオ節を入れ、熱湯をかける


②醤油、または市販のダシ醤油や麺つゆで好みの味を付け、混ぜて食べる

以上。


今回はネギなんぞ置いてみたが、ミョウガや三つ葉でもいいし

もちろん何も散らさなくてもいい。

とろろ昆布とカツオ節から良い出汁が出て、意外に美味しい。


実はこれ、義母ヨシコの得意料理…?

彼女、昔からしょっちゅうやってる。

私も加齢と共に好きになった。


ごはん作りたくない時って、疲れてる時なの。

やる気が起きなくてだるい時…

お腹空いてるのに食欲が無い時…

クーラーで身体が冷えてる時…

熱々のこれ、飲んでみ。

ミネラルや食物繊維と共に、ヨシコの生命力と私の図々しさが

たちどころに注入されるわよ。

暑い夏を一緒に乗り切りましょうね!

あ、とろろ昆布は味噌汁に入れても美味しいです。
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首問題

2022年08月09日 09時25分54秒 | みりこんぐらし
最近、痩せたと評判のワタクシ。

5キロ減った。


きっかけは、4月に起きた洗濯機の故障。

このことは記事にしたけど、完全に壊れたわけじゃなくて

回ったり止まったり、さりとて脱水は大丈夫という中途半端な壊れ方なので

つい使い続けていた。


うちの洗濯機は裏の納屋にある。

昔はどこの家もそうだったけど、うちの洗濯機も風呂場にあった。

しかし長い年月の間に洗濯機がゼンマイからマイコンに進化すると

湿気の多い風呂場に置くのは無理になり、納屋に移動してはや何十年。

物干し場には近いけど、屋内からは距離があるという

いびつな洗濯ライフを送るようになったわけよ。


調子悪い洗濯機がちゃんと仕事をしてるかどうか、しょっちゅう見に行ってたら

その往復で運動量が増えたらしい。

3キロの減量となり、大いに気を良くする私であった。


新しい洗濯機に変えた後も、リバウンドしたくない一心で

ごはんの量を減らすことにした。

ごはんとは食事全般じゃなくて、白いごはんのこと。

お茶碗に軽く一杯食べていたのを半分にするのよ。

努力と継続が苦手な私にできそうなことといったら、それぐらいしか無い。


他は今まで通りで現在に至るが、体重は緩やかに減った。

ごはんがあんまり食べられないとなると

ごはんの進むガッツリ甘辛系のおかずを食べても面白くない。

家族には作っても、自分は薄味の野菜料理を好むようになるものだ。


そのうち、ダイエットがうまく回り始めた確信を持つようになった。

体調もいい…前からいいが、さらにいい。

いつもの同級生5人会の面々は、私の変化を発見して口々に言う。

「みりこんちゃん、モデルみたい!」

細身で小柄な人の5キロならすごいだろうけど

私のような大柄組合の5キロなんて、たいしたことないのが実情であるにもかかわらず

友だちとはありがたいものだ。


やがて夏を迎えると、服の襟ぐりの開きが去年より大きいことに気づいた。

襟ぐりがしっかり開いていると、涼しいもんじゃね。

ほんの数ミリで、この違い。

肩周りの肉も少し落ちたので、袖ぐりにも余裕が出た。

袖がスカスカしていると、涼しいもんじゃね。


しかし良いことばっかりではない。

この年で痩せると、貧相な喉元があらわになる。

羽をむしられたニワトリみたいに、筋ばった首にガクゼンよ。

手と首に年齢が出るって、本当ね。


そういうわけで、手遅れと知りつつ首のマッサージに励む。

マッサージといっても、簡単よ。

朝晩、顔に化粧水とか美容液とか乳液とか、基礎化粧品を順番につけるじゃん。

それらを顔だけで終わらずに、いちいち喉までのばす。

そしたら顔と同じように、喉からデコルテまでヌルヌルしてるわね。

それを両手で下に向かって、ヌルヌルが無くなるまで数回

優しく撫でつけるだけ。


同じやるなら喉の正面だけでなく、リンパの流れも良くしたいので

耳の下から肩に向かっての横…

日焼けしたらみっともない後ろの襟足など、首の全方向もカバー。

そんなに一生懸命やらなくていいのよ。

ほんの1〜2回、基礎化粧品のヌルヌルが無くなったら終わる。

でないと摩擦が刺激になって肌が黒ずんだり荒れたり、逆効果だからね。

手を当てるだけでもいいくらい。


これだけで、見た目がかなり違う。

シボシボだった細胞が、潤いを含んでふっくらする感じ。

昔はやっていたけど、いつの間にかやらなくなっていた。

反省、反省。



で、先日、夫の友人の誘いで市内某所のビアガーデンに出かけた。

これは毎年恒例の行事。

我々を含む3組の夫婦で構成された、60代の集まりだ。

一番年かさの兄貴分的な夫婦が年に一度

我々と、もうひと組の子分的な夫婦を招待してくれるのである。


このクソ暑い時に、何が嬉しゅうて集まらにゃならん…

本心ではそう思っているため、できればパスしたい私よ。

しかし夫婦はセットが常識という善良なメンバーの手前

私が同行しなければ夫の顔が立たないらしい。

頼むから来てくれと言うので、今年も行くことにした。


まだ自信の無い首には、この間買ったスカーフを巻いて行った。



市外のスーパーで、立体的な飾りが気に入って買った。

千円也。

マネキンの首にぶら下げてあったので、飾りが折れている。

安物なので、巻くとものすごく暑い。


場所がカジュアルなので、このスカーフに上衣は白のシャツ

下はジーンズ、靴は前に記事にした蛇皮ふうのスニーカー。

彩りが淋しいので、バッグは赤の花柄にした。


さて、この夜招かれたもうひと組の夫婦。

奥さんのほうはエッちゃんといって、私より3才年上。

子供が幼稚園の時の役員仲間だ。

私が会長、彼女が副会長で、当時はそりゃもう楽しかった。

あれから何十年、普段会うことは無くなったが

年に一度の七夕のように、この集いで会う。


エッちゃん夫婦は昔から、とても仲が良い。

二人の間には、うっすらとハートマークが飛んでいるような睦まじさ。

ご主人は紳士的で優しく、エッちゃんはポワ〜ンとした天然…

この組み合わせが良かったのだろう。

横柄なご主人やキーキー言う奥さんだったら、こうはいかない。

子供たちが独立した現在、平日はそれぞれ仕事をして

週末になると二人で温泉や外食に出かけるのが楽しみなんだそう。


この夜、エッちゃんは出かける前に、洋服を着てご主人に見せた。

「これでいいかしら?」

お出かけ前に旦那様のファッションチェック…

私にとって、そんなことすら新鮮であるのはともかく

ご主人は真顔で言ったそう。

「首…何か巻いて行った方がいいよ」


エッちゃんはすごく痩せている。

身長は私と同じ166センチでも、体重は40キロ台後半。

この日のために気合いを入れて買ったワンピースは

襟元が大きく開いていて、彼女の首のスジスジを強調していたらしい。

私が羽をむしられたニワトリなら、この子は羽をむしられたツルだね。


「ショックだったわ〜…」

レースのスカーフを巻いたエッちゃんがあまりにも残念そうに言うので

爆笑してしまった。

来年、また会うまで笑えそうだ。


が、笑ってばかりでは申し訳ないので、さっきの首のマッサージを教えた。

自分もスカーフで首を隠しながら、他人に偉そうにマッサージを教えるとは

我ながらいい度胸だ。

エッちゃんはやってみると言っていたが、あの細い首にも効果があるかどうかは不明。
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手抜き料理・夏メシ

2022年08月06日 07時55分41秒 | 手抜き料理
夏メシといえば…

は〜い、ゴーヤーチャンプルー


頂きものを仕方なく。

味付けは伝家の宝刀、ヒガシマル・ラーメンスープの素。


《肉じゃが》


全然夏メシって感じじゃないけど、ジャガイモって夏と冬が収穫期。

農家の方からよく頂くので、一応は夏の味。

ザラメ糖を使って作ります。

これは製作途中。


え?そんな暑苦しいのは嫌だって?

わかっとるって。

私にとっての夏メシとは、作る人が苦しまない料理。

夏だからって、スタミナ、スタミナとうわごとみたいに言いながら

ガッツリやピリ辛ばっかりに取り組まなくていいと思う。

実のところ、それらが本当にスタミナをくださるのか、私には疑問なのよ。

たまに作るか、お外でどうぞ。



ということで

《とろろ汁》


簡単でっせ〜。

とろろ芋をすって麺つゆで味付けし、冷たく冷やす。

ごはんにかけて、細切りの海苔を飾れば食欲増進よ。


私は昆布とカツオ節で出汁を取るけど、麺つゆで十分。

芋のとろみが強ければ、出汁か湯冷ましで薄めてちょ。

すぐ食べてしまうなら水でもいいんだけど、時間が経つと匂いが出るような気がします。


それから夏のとろろ芋は、季節的なものか手が痒くならない。

すぐ痒くなる私には、これが嬉しい。

万一、手が痒くなったら、酢で洗うと痒みが止まります。



《高野豆腐の煮物》


どこが夏メシじゃ。

いや〜、買い置きしておけるし、冷やして食べると美味しいから。


高野豆腐を煮る時の鉄則は、出汁に砂糖、醤油、ミリンを合わせて

最初に味付けを済ませてから、戻して水分をしっかり絞った高野豆腐を入れること。

砂糖やミリンが直接当たると、溶けることがあるから。

いまどきは水で戻さなくても、カチカチのままで

いきなり煮られるらしいけど、私は昔人間だから戻す派。


そりゃあね、煮てる時は暑いわよ。

でもあれは出汁をジャブジャブ入れて

そのジャブジャブが無くなるまで煮つめようとするから暑いんじゃ。

鍋に入れる出汁をできるだけ少なくしたら、煮詰まるのも早い。

出汁は、高野豆腐が隠れるほど入れんでいいの。

高野豆腐が出汁からはみ出してるぐらいでいいの。


こうすれば、熱地獄から早めに解放される。

早めに解放されるということは、台所の気温がそれほど上がらないってこと。

クーラーも効いたままだし、ひどく汗をかくこともない。

常備菜の扱いなので、一度に一箱を使う私だと

一回作れば2〜3回は食卓に出せるため

いっときの努力に報いる成果の大きさを考えた場合、効率もいい。

冷やすのが前提なので、味付けは砂糖多めの甘口。


少なめの出汁で、最初に味付けを済ませてから具材を入れるやり方は

カボチャを煮る時にもいいから、やってみて。

美しく、おいしく仕上がります。

出汁が多いとカボチャが動いて型崩れするし

出汁を張った鍋に、先にカボチャを入れて煮ながら

酒だの砂糖だの醤油だのをチンタラ順番に入れてると

皮の渋みが出るのよね。



《甘辛えのき》


これの、どこが夏メシじゃ。

えのき茸なんて、年中あるじゃないか。

まあまあ…

安い、早い、美味いってことで。


早いって大事。

特に夏は。

加熱時間の少ない、つまり早く終われる料理を選ぶのは大事よ。


それに、買い物に行きたくない時もあるじゃん。

特に夏は。

冷蔵庫に眠る食材で作る、副菜としてどうぞ。


えのき茸を適当な長さに切ってフライパンで炒め

シナッとしたらミリンと醤油を同量入れて軽く煮たら終わり。

ミリンと醤油は、えのき茸ひと袋に小さじ2杯ずつくらいかしら。

上に乗ってるのは、梅干し。

味のアクセントのつもり。

あっても無くてもいいです。



《番外…粉飾チャーハン》



これね、冷凍チャーハンに白いごはんを混ぜて炒めたもの。

うちは大人ばっかりの家族5人。

その中の3人は男。

そいつらは毎日、昼ごはんも家に帰って来て食べる。

料理が嫌いじゃない私だって、楽したい時があるわよ。

たまには冷凍チャーハンで簡単に済ませたいわよ。


だけど食欲旺盛なアレらに、冷凍チャーハンを与えてごらんなさいよ。

一人ひと袋じゃ足りんよ。

チャーハンに限らず冷凍食品って、一人か二人暮らしの少食さんにはいいけど

人数が多いと高くつくし、レンジでチンの時間もかかるしで

意外に厄介なのよ。


そこで冷凍チャーハンをチンするなり、フライパンで炒めるなりで

軽く解凍したら白ごはんを混ぜて、さらに少し炒める。

白ごはんが少しだったら、炒めずに混ぜるだけでも全然大丈夫。

味付けも必要なし。

冷凍チャーハンって、かなり味が濃いのよ。

あれをそのまま食べるとなると、何だか抵抗があるのよ。


うちみたいに冷凍チャーハン2袋に

白ごはんを2合ぐらい足して3人ないし4人に与えるなら

塩こしょうを適当に振って、冷凍チャーハンと白ごはんが混ざる程度に炒める。

やってみ。

バレないから。


チンしただけじゃなく、一応は手を加えたわけだから良心も傷まない。

この粉飾チャーハンに、スープか汁

あとはサラダでも添えれば、立派な昼ごはんよ。


これを教えてくれたのは、次男。

食べ盛りの頃に会得した秘策ですって。

今も食べ盛りのような気がするのはともかく

火を使う時間が短いところが、私にとって救いだったわ。
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暑中お見舞い

2022年08月04日 10時40分38秒 | みりこんぐらし
このところ、記事のアップが早いねって?

暑いからよ。

暑中お見舞いのつもりで、しょっちゅうお見舞いしたいわけよ。

うちのおかずですけど、冷えた夏野菜の揚げ浸しでもどうぞ。



全品、頂き物の野菜で作ったところが気に入っています。


作るのは簡単。

材料が半分浸かる程度の麺つゆに、揚げた野菜を片っ端からドボン。

あら熱が取れたら、冷蔵庫で冷やすだけ。

注意点は、当たり前だけど野菜の水分をよく拭き取るのと

揚げたらはじけやすいオクラやミニトマトは

あらかじめ包丁の先で小さい切れ目を入れておくことぐらいかしら。


暑いから揚げ物は嫌だって?

私も嫌だし、家族も喜びゃしないわよ。

夏野菜をたくさん頂いた時の処分方法として、仕方なくよ。

朝の涼しいうちに、または前日に作っておけば

一品は楽ができるので、それをヨスガにしてます。



ところで昨日は夫の誕生日でした。

彼も、はや65才。

あと何回、誕生日を迎えられるかな…

10回?15回?…

20回は多分、無理…

そんなことを話して、しみじみしちゃった。


彼と私は戦友。

二人で、いろんなことと戦ってきた。

これからも戦う。

それが私たち夫婦の形だと思ってる。


こうして余裕かましてるのは、達観じゃないの。

私が病院の厨房を辞めたのは、48才の時。

それから3〜4年ぐらい、けっこう暇だった。

日曜の朝は二人でモーニングサービスを食べに行ったり

買い物に観光と、いろんな所へ出かけた。

途中から義父母の晩ごはんと朝ごはんを作って届けるようになって

遠出はできなくなったけど、そこそこ面白おかしく過ごしたものよ。


もちろん近い将来、それどころじゃない事態になるのはわかってた。

夫は会社の窮状を私に勘づかれまいと、懸命に努力していたわ。

心配させたくないからとか、巻き込みたくないからじゃなくて、意地。

血を分けた自分たち親子が困ってる事実を、他人の私に知られたくない意地。

「ほれごらん、愛人を会社に入れた所はみんな潰れるんだ」

と言われたくない意地。


私は夫の努力に免じて、会社のことには触れないようにしてた。

だけど、こういうことを最後まで隠し通して

その間に危機を脱出できるような彼らであれば

会社がにっちもさっちもいかない状況にはならないものよ。

だから夫が望んだ時には手や口を出しながら

私たちは表面的な平和の名残を惜しむように、できるだけ楽しもうとした。


今度はどこへ行こう…

また来ようね…

そんな日々は楽しかったけど、そのうち飽きた。

もうけっこうです、と思うようになった頃…

50を過ぎた途端に義父母の世話や会社の倒産騒ぎで

急に忙しくなったわ。

モーニングもドライブも、一夜にして終了。

息つく暇も無い大車輪の日々が、いきなり始まった。


何年も経過してから思ったんだけど

あのゆったりした数年は、老後の前倒しだったんじゃないかしら。

私たちはその時に、もう老後を済ませたんじゃないかって。


楽しくも飽き飽きした日々が、世に認識されている夫婦の老後だとしたら

もう、いいわ。

一回やってるから、二人で穏やかな日々を過ごしたいなんて憧れは無い。

働き、戦う…

私たちには、それが合ってるみたい。



ところで昨日は、ケーキを買ってお祝いするつもりだったけど

夫は暑いから甘い物はいらないって。

「代わりに焼きそば作って」

ですって。

安上がりだわ。

男って焼きそば、好きなのよね。

海の家で食べるような焼きそばが、特に好き。


だけど年取った親と暮らしていると、焼きそばはあんまり作らない。

おばあちゃんって、刺激的なソース味を嫌がるものなのよ。

別メニューにするのが面倒だから、男どもが大好きと知っていながらも

昼ごはんの時、たまに作る程度だった。

その憧れの焼きそばが食べたいなんて、いじらしいじゃないの。


で、作ったわよ。



義母には別メニュー、男どもには焼きそば。


夫はすごく喜んだわ。

食べ終わってから思ったんだけど、誕生日らしく飾ってやりゃよかった。

ロウソクなんか立ててさ。

後の祭りね。


焼きそばは、生麺を電子レンジで1分ぐらい温めてから炒めるのがコツ。

麺が切れなくて、ベチャッとしません。
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桃の恨み

2022年08月02日 17時15分50秒 | みりこんぐらし
はぁい、皆さま、暑中お見舞い申し上げます。

ぼく、リュウです。

こう見えても、まだ1才なんです。

5月に去勢手術をして、宦官犬になりました。

穏やかになったと評判です。



さて、先日のある夜、同級生のユリちゃんに誘われて

市外にあるカフェに行ったの。

ずっと前から何度も誘われていたけど、なにせ遠いから行くのが大変だし

道楽でやっているので月に一度か二度しか開かないしで

行くチャンスがなかったのよね。


今回、思い切って行くことになったのは

マミちゃんが車を出すと言ってくれたのが大きかったわ。

近頃の彼女、よく言うのよ。

「老い先短いんだから、みんなといろんな所へ行っておきたい!」


というわけで、いつものメンバー、ユリちゃん、マミちゃん、モンちゃんに私

そしてお寺料理の仲間に入った梶田さんの5人は

ほの暗くてムード満点の店に足を踏み入れたの。

素敵な夜になりそうよ。


まず、レモンのスライスに生ハムを1枚乗せたのが

一人1個、出てきたけど撮り忘れちゃった。

お腹空いてるから、一瞬で食べたわよ。


それから、かつお節のピザ。

これ、5人で分ける。

え?…。


次はスモークサーモンのピザ。

これも5人で分ける。

……。


どっちもシンプルだけど、こだわりの食材が使われてて

香りが良く、すごく美味しかった。

だけど、一人ひとかけらじゃあ、足らん。

まあ、これは前菜代わりよね…ホホホ…

気を取り直して、次は何かしら?



予期せぬデザートの登場にガクゼン。


このデザートは、こだわりの店のこだわりのパティシエに

特別に作らせたテイクアウトだそう。

つまりオリジナルでなく、買って来たものってことよ。


お腹空かせて来たばってん

なんだかお食事は終わったみたい。

どうやらここは、お食事に取り組む所じゃなくて

ワインとかシャンパンとか年代ものの洋酒とか

上品にお酒を楽しむバーだったらしいわ。


それにしても、デザートだけはやたらと大きいのよ。

仕方ないから、これで腹を満たすしかないわ。


私は後方にある、大きな桃まるごと1個のが食べたかった。

桃の中にはクリームチーズで作った何かが入ってるらしい。

私だけじゃない、みんな桃が食べたかった。

果物で飾ったカップ入りのババロアなんて

どこにでもあるじゃんか。


だけど、桃のデザートは2個しか無い。

このデザートを作るための特別な桃が

その日は2個しか手に入らなかったという話よ。


一同まんじりともせず辞退者を待つけど、誰も名乗り出ない。

けっこう長い時間が経過したわ。


見かねた店主の勧めにより、まず予約したユリちゃんが食べることになった。

この日は店主と親しい彼女が、珍しく予約してくれたのよ。

知り合いのお店に、お客を引き連れて行きたかったというやつよ。


もう1個はユリちゃんの指名で、梶田さんに回された。

梶田さんは、ユリちゃんのお気に入りだもんね。

日頃は謙虚で遠慮しぃの梶田さんでも、この指名は辞退しなかったわ。


結果、マミちゃん、モンちゃん、私の3人がババロア担当。

掘っても掘っても無くならない、ありきたりなお味よ。

お寺の下女にお似合いだわ。


なんだか、一気に暑くなっちゃった。

桃差別に腹が立ったからかしら?

マミちゃんなんて、猫毛の髪が汗で張り付いて

海坊主みたいになってるわ。

あ、そうだわ、ここはクーラーが無くて扇風機だけだったわ。

こう暑くちゃ、やっとられん!帰るべ!

ということで、さっさと帰ったわよ。


あ、料金?

3,500円。

カフェじゃなくて、バーだもんね。

価格設定が高めなのはしょうがないわ。

車を出してくれたマミちゃんに申し訳なくて

ほとんど飲んでないけど。


というわけで、とっても楽しい夜でした。

もう行くことは無いでしょう。
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現場はいま…転職騒動記・続報

2022年08月01日 08時35分51秒 | シリーズ・現場はいま…
気がつけば8月。

早いものだ。

年を取ると日が経つのが早い。

早く大人になりたくて、指折り数えていた子供の頃とは

時間の流れるスピードが全然違う。


この現象は、遠足の行きと帰りみたいなものかと思う。

「行き」は、期待と不安で遠く感じた。

バスに酔う子はたいてい、「行き」で吐いていたものだ。


逆に、帰りの早いこと。

行く時に通った道、目にした建物を辿っていたら

あっという間に帰り着いてしまう。

未知のもの…つまり期待と不安が無いからだと思う。

となると私は今、帰りのバスに乗ってんのか。



さて、このところ何かと話題の田辺君。

いや、私が話題にしてるだけなんだけどさ…

早めにお話ししておかないと忘れてしまうので、ついでに続けさせていただく。


そもそも彼がいとも簡単に現在の会社に見切りをつけ

夫の誘いに乗って本社に入ろうとしたのは、友情だけではない。

永井営業部長、藤村、松木氏という営業部所属の腐敗トリオに対する義憤でもない。

彼の働いている会社が面白くないからだ。


田辺君の会社が、どう面白くないか。

我々は何年も前から、彼にその様子を聞いていた。

内容がちょっと変わっているので、先にお話ししよう。


我々だけでなく彼もまた、今の会社で新興宗教の勧誘被害に遭っていた。

彼が今の会社に転職してほどなく、40代の二代目社長が新興宗教にハマったのだ。

神戸に本拠地のある仏教系だそうで、メジャーな部類ではない。

田辺君ごひいきの私としては、カリスマ営業マンの彼が入ったために

会社の売り上げが上がったと思いたいところだが

社長の方は、宗教に入ったら急にうまく行きだしたと捉えたようだ。


顔と名前程度だが、我々夫婦はこの社長の幼児時代を知っていた。

何かの宴会だったか、両親と一緒にうちへ何度か来たことがある。

幼い彼のカジュアルな名前を聞いて、若かった私はなぜか思ったものだ。

一人息子で跡継ぎと決まっているのに、もったいない…

将来、この子の名前を名刺に印刷したら、軽くて貫禄無さそう…

もちろんこの直感に根拠は無く、私の偏見と取られても仕方がない。

成長してからは会ってないが、本人の資質もあったのか

業界で彼の名前は呼び捨てにされ、あまり尊重されている様子ではない。



社長が宗教にハマって以来、会社の社員旅行は行き先が神戸になった。

神戸に泊まり、宗教の会館で教祖の話を聞いたり修行をするのである。

次の年、田辺君が社員旅行を欠席したら、ボーナスが減った。

もちろん旅行を欠席したペナルティーではなく、規定の変更と説明された。

それでも彼は社員旅行に行かなかったので、ボーナスは減り続けた。


やがて二代目社長は信仰の時間が欲しいと言い出し、社長職を退いて会長になった。

代わりに社長に就任したのは、二代目社長に迎合して新興宗教に入信した古参の社員。

田辺君に言わせると、先代から勤めていることだけが自慢の

何もできない田舎のおじさんだそう。


取締役も入信した人々で固められ

宗教に入らない者には何かと厳しい対応が取られるようになった。

そんな逆風が吹き始めたが、S物産の元専務に言われて就職した会社なので

簡単に辞めるわけにはいかない。

彼は5年という年季明けを待った。


その5年が過ぎてしばらくした頃、彼の会社では

営業マンの車にGPSを取り付ける話になった。

今、営業の車がどこに居るのかを、会社の中に居ながら把握できる機械だ。

これは近年、どこの会社もやっていることなので珍しくはない。

取り付けられるほうは、たまったもんじゃなかろうが

営業だと言って会社を出れば、おサボリのし放題という時代は終わったのだ。


ちなみに本社の営業車にも設置してある。

ただし永井営業部長の車には、取締役特権で取り付けてない。

GPSが付いたら競輪、競馬、ボートの場外車券売り場に入り浸っていることが

バレてしまうではないか。


それから松木氏の車にも無い。

62才だかで嘱託パートになった際、彼に与えられていた営業車プリウスは

一旦取り上げられたが、藤村の暴挙が目立ってきたため、再び戻された。

こっちはそのうち辞める人として、営業部の人数に数えられてないので放置されている。


ともあれ田辺君の車にも、GPSが付いた。

しかし付いたのは田辺君の車だけで、もう一人いる営業職の同僚には付かない。

それについては会社の方から、機械がまだ届かないとか

転属予定という言い訳があったが、本当の理由はわかっていた。

その同僚は、新興宗教に入信しているのだった。


以後、田辺君の行動は、暇な社長に監視されるようになり

顧客と喫茶店で会ってもサボったかのように言われるようになった。

入信しない彼への嫌がらせだと受け止めるしか、ないではないか。


しかし、ここが彼らしいところで、仕事に自分の車を使い始めた。

が、それもじきにバカバカしくなる。

入信しない自分に嫌がらせをする会社に

身銭を切ってまで仕事を取ってくる価値があるはずはない。

無敵に見える田辺君だが、彼は彼で、そのような逆境と戦ってきたのだ。

げに宗教とは、迷惑な趣味であることよ。


「仕事は好きだし、続けたい。

だけどバカにちょっかい出されるのが、ほとほと嫌になった」

その気持ちは、夫と完全に一致していた。

だったら、こっちで面白いことしようぜ…

二人の話がそうなるのは時間の問題で、転職騒動はここから始まった。



GPSが原因で、田辺君が本社営業部に転職する気になったのが7月26日。

面接が28日。

社長の反対で失敗したのが29日。

そして翌日の30日には、早くも転職先が決まった。


引く手あまたの会社から、田辺君が選んだのはやはり建設関係。

広島市内では中堅どころの会社だ。

今の所をまだ辞めてないので、転職はもう少し先になるだろう。


それはいいとして、新しい会社の所在地を聞いた私は絶句した。

なぜって、本社の向かい。

厳密に言えば真向かいではないが、大通りを挟んだ反対側にある会社だ。

偶然ではないのが、彼の彼たる所以である。


人里離れた今の会社とは違って、本社とはご町内。

テリトリーが同じなので、永井営業部長や腰巾着の藤村と

入札、あるいは工事で顔を合わせる機会も増えるだろうから

田辺君は楽しみにしているそうだ。
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