フリンジといっても、プレスリーの袖で揺れていたやつではない。
昔いたお相撲さんはキリンジ。
人妻の不倫愛好家を、私はひそかに不倫児と呼ぶのだ。
深い意味は無い。
“児”はゴロ合わせだけど、幼いさまを表現。
響きがかわいいでしょ。
なにゆえ人妻限定か。
人の旦那とくっついたら、厄介なのは独身のほうである。
なにせヒマだもんで、そのことばっかり考えて
どんな行動に出るかわからない。
しかし、別れに向かって煮詰まる過程が似ており
観察対象としては、いまひとつ面白みに欠ける。
悲哀を込めて不倫児と呼べるのは、やはり既婚女性であろう。
いずれ口をぬぐって旦那や子供の元へ帰れる保険を持つからだ。
やれ旦那が冷たい、それ姑がきつい、生い立ちが、運命が…
万一に備えて、罪の軽減につなげようとする魂胆のあさましさは
なかなか見応えがある。
ただし困るのは、自作自演のスペシャルドラマの端役として
他人を勝手にキャスティングするところである。
お人好しを選んでは、相談だの話があるだのとまとわりつき
同性の時間を平気で盗む。
盗むのは、人の旦那だけにしてもらいたい。
話を聞く役は、端役なので本当は誰でもいい。
うわごとを気がすむまで聞いてくれて、適度な反応を示してくれれば満足。
独り言じゃパッとしないので、誰かに聞かせたいだけ。
こっちはなんだか、ゴミ箱になったような気分だ。
ヒロインだから、何をしても許されるらしい。
この話がまた、面白くないのなんのって!
端役をしてやってるんだから、せめて話術で楽しませてくれればいいものを
稚拙な話で、時間だけ長引かせる。
「愛してるんだって…キャッ」などと言われても、どうすりゃいいのさ。
こっちもキャッと言えばいいのだろうか。
さて先日、身近な不倫児の一人が混ざった同年代の四婆で
ドライブに出かけた。
噂の店を探したり、温泉に入ったり、気ままで小さな日帰りの旅だ。
誘ったわけではない。
仲間の1人から、このお出かけ話を耳にした不倫児は、来なきゃならんのだ。
時には彼氏に「あんただけ追っかけてるわけじゃないのよ」
というのを知らせたい。
男に「誰と行くの?」なんて聞かれて、妬かれたり束縛してもらいたい。
我々は、媚薬のダシなのさ。
こういう女はデートの時のみ、全力で万障繰り合わせるので
ザコとの外出時には、手落ちが多い。
彼氏とのやりとりに加え、家族や職場などのバックヤードから
連絡や問い合わせが頻繁だ。
わけありらしきストラップを自慢げにブラブラさせ
それについて、触れてもらいたがっているそぶりもいまいましい。
何が何でも気づかないフリをしたくなる。
不倫児は、いたずらに体力がある。
携帯でメールを打ち打ち、スタスタと歩く速さといったら!
競歩か。
元々体力がある上に、ヒマさえあれば、おデート…
行く先々で床運動…鍛え方が違うってもんだ。
万年運動不足の私なんぞ、こんなのにペースを合わせたら、倒れそう。
不倫児は、ミヤゲ物選びが長い。
携帯ストラップやキーホルダー、ライターなどのガラクタ…
いや、小物雑貨に異様な興味を示す。
彼氏へのミヤゲだ。
「ねえ、これどう思う?え~?誰のって~…ウフフ」
気味の悪い笑みを浮かべながら、人のいいのをつかまえて
さんざんつきあわせ、そこら中の売り物をつつき回す。
そのくせ人のすすめる物は買わん。
次に、子供へのミヤゲを物色。
「あの子はこういうのが好きだから…」
さも子供のことを思っているそぶりを見せたがる。
どんなミヤゲより、母親が身辺を浄めるほうが、よっぽど喜ぶと思う。
合間で、亭主を含む身内や、職場への菓子を一瞬で決める。
早々と大荷物だ。
普段、まっとうに暮らしていれば
ささやかな外出で、ミヤゲの心配などしなくてよいものを。
不倫児は、景色に感動しない。
「きれいね~」と、皆に一応合わせはするが
本当は景色なんか、ちゃんと見えてやしないのだ。
この世で最も美しいのは、自分のやってる特別な恋だと思い込んでいるから
他のものが、とりわけ心に沁みることが無い。
不倫児は、食事のセンスが無い。
ハンバーグ、トンカツ、ドリアに酢豚…何もこんな所へ来てまで
食べなくていいだろうというような、こってりしたものを食べたがる。
あれはダメ、これは嫌い…偏食が多く、旬のものや名物どころではない。
「あ、アタシ、生ものは苦手~」などと言う。
誰がおまえの言うとおりにするかい。
何が生ものは苦手じゃ…生々しいことは好きなくせに。
優しい!私は、強引にスシ屋へ入る。
大きな顔をして、ウナギのスシを食べる不倫児。
帰りに寄った温泉で、彼女の肉体を目の当たりにして絶句。
カタギの傷みようとは、あきらかに違う。
全体的に、黒ずんでいると言ったらいいのかしら。
細胞に元気が無いと言ったらいいのかしら。
偏見の目で見るのはよそう…
決して人の体のことなんか言えない身の上だもの…一応は私だって思う。
それでも表面に色々にじみ出るのは、男より女のほうが
若いより年増のほうが、顕著で早いのを実感せざるを得ない。
やってきたことは、年と共に、顔だけじゃなく体にも出るのねえ…。
受け身の恐怖を改めて確信する。
しかもお派手な下着で、痛々しさ倍増。
これを男に見せられる勇気を、賞賛しようではないか。
いや~、あっぱれ、あっぱれ。
昔いたお相撲さんはキリンジ。
人妻の不倫愛好家を、私はひそかに不倫児と呼ぶのだ。
深い意味は無い。
“児”はゴロ合わせだけど、幼いさまを表現。
響きがかわいいでしょ。
なにゆえ人妻限定か。
人の旦那とくっついたら、厄介なのは独身のほうである。
なにせヒマだもんで、そのことばっかり考えて
どんな行動に出るかわからない。
しかし、別れに向かって煮詰まる過程が似ており
観察対象としては、いまひとつ面白みに欠ける。
悲哀を込めて不倫児と呼べるのは、やはり既婚女性であろう。
いずれ口をぬぐって旦那や子供の元へ帰れる保険を持つからだ。
やれ旦那が冷たい、それ姑がきつい、生い立ちが、運命が…
万一に備えて、罪の軽減につなげようとする魂胆のあさましさは
なかなか見応えがある。
ただし困るのは、自作自演のスペシャルドラマの端役として
他人を勝手にキャスティングするところである。
お人好しを選んでは、相談だの話があるだのとまとわりつき
同性の時間を平気で盗む。
盗むのは、人の旦那だけにしてもらいたい。
話を聞く役は、端役なので本当は誰でもいい。
うわごとを気がすむまで聞いてくれて、適度な反応を示してくれれば満足。
独り言じゃパッとしないので、誰かに聞かせたいだけ。
こっちはなんだか、ゴミ箱になったような気分だ。
ヒロインだから、何をしても許されるらしい。
この話がまた、面白くないのなんのって!
端役をしてやってるんだから、せめて話術で楽しませてくれればいいものを
稚拙な話で、時間だけ長引かせる。
「愛してるんだって…キャッ」などと言われても、どうすりゃいいのさ。
こっちもキャッと言えばいいのだろうか。
さて先日、身近な不倫児の一人が混ざった同年代の四婆で
ドライブに出かけた。
噂の店を探したり、温泉に入ったり、気ままで小さな日帰りの旅だ。
誘ったわけではない。
仲間の1人から、このお出かけ話を耳にした不倫児は、来なきゃならんのだ。
時には彼氏に「あんただけ追っかけてるわけじゃないのよ」
というのを知らせたい。
男に「誰と行くの?」なんて聞かれて、妬かれたり束縛してもらいたい。
我々は、媚薬のダシなのさ。
こういう女はデートの時のみ、全力で万障繰り合わせるので
ザコとの外出時には、手落ちが多い。
彼氏とのやりとりに加え、家族や職場などのバックヤードから
連絡や問い合わせが頻繁だ。
わけありらしきストラップを自慢げにブラブラさせ
それについて、触れてもらいたがっているそぶりもいまいましい。
何が何でも気づかないフリをしたくなる。
不倫児は、いたずらに体力がある。
携帯でメールを打ち打ち、スタスタと歩く速さといったら!
競歩か。
元々体力がある上に、ヒマさえあれば、おデート…
行く先々で床運動…鍛え方が違うってもんだ。
万年運動不足の私なんぞ、こんなのにペースを合わせたら、倒れそう。
不倫児は、ミヤゲ物選びが長い。
携帯ストラップやキーホルダー、ライターなどのガラクタ…
いや、小物雑貨に異様な興味を示す。
彼氏へのミヤゲだ。
「ねえ、これどう思う?え~?誰のって~…ウフフ」
気味の悪い笑みを浮かべながら、人のいいのをつかまえて
さんざんつきあわせ、そこら中の売り物をつつき回す。
そのくせ人のすすめる物は買わん。
次に、子供へのミヤゲを物色。
「あの子はこういうのが好きだから…」
さも子供のことを思っているそぶりを見せたがる。
どんなミヤゲより、母親が身辺を浄めるほうが、よっぽど喜ぶと思う。
合間で、亭主を含む身内や、職場への菓子を一瞬で決める。
早々と大荷物だ。
普段、まっとうに暮らしていれば
ささやかな外出で、ミヤゲの心配などしなくてよいものを。
不倫児は、景色に感動しない。
「きれいね~」と、皆に一応合わせはするが
本当は景色なんか、ちゃんと見えてやしないのだ。
この世で最も美しいのは、自分のやってる特別な恋だと思い込んでいるから
他のものが、とりわけ心に沁みることが無い。
不倫児は、食事のセンスが無い。
ハンバーグ、トンカツ、ドリアに酢豚…何もこんな所へ来てまで
食べなくていいだろうというような、こってりしたものを食べたがる。
あれはダメ、これは嫌い…偏食が多く、旬のものや名物どころではない。
「あ、アタシ、生ものは苦手~」などと言う。
誰がおまえの言うとおりにするかい。
何が生ものは苦手じゃ…生々しいことは好きなくせに。
優しい!私は、強引にスシ屋へ入る。
大きな顔をして、ウナギのスシを食べる不倫児。
帰りに寄った温泉で、彼女の肉体を目の当たりにして絶句。
カタギの傷みようとは、あきらかに違う。
全体的に、黒ずんでいると言ったらいいのかしら。
細胞に元気が無いと言ったらいいのかしら。
偏見の目で見るのはよそう…
決して人の体のことなんか言えない身の上だもの…一応は私だって思う。
それでも表面に色々にじみ出るのは、男より女のほうが
若いより年増のほうが、顕著で早いのを実感せざるを得ない。
やってきたことは、年と共に、顔だけじゃなく体にも出るのねえ…。
受け身の恐怖を改めて確信する。
しかもお派手な下着で、痛々しさ倍増。
これを男に見せられる勇気を、賞賛しようではないか。
いや~、あっぱれ、あっぱれ。