「うちも買うたで」
4月の選挙で仲良くなった中高年女子で、毎月食事会をしている。
最初は1回こっきりの慰労会のはずだった。
しかし別れ際には、来月の日取りが決まっていた。
メンバーは、40代、50代、60代、70代がそれぞれ1人ずつ。
うまく並んだもんだ…と思っていたら
一緒にうぐいすをやったラン子が、この話を聞きつけて参加したので
50代は私と2人になり、総勢5人となった。
2回目までは、町内の飲食店でこじんまりとすんだ。
しかし3回目になると、変化を望み始め
永六輔じゃあるまいし「遠くへ行きたい…」なんぞと言い出した。
私の脳裏に暗雲が立ちこめる。
運転免許の無い70代とラン子…
「私、軽だから」と、早々に運転を回避した40代と60代…
出遅れた私は、必然的に♪運転手は君だ♪の事態になってしまったじゃないか。
私だって、運転はいやだわよ。
人様をお乗せしてドライブできる技術も責任感も、持ち合わせていない。
こんな行きずり同士の集まりは、短時間の気軽さがあってこそ
長続きするのだと主張するが、聞きやしない。
皆「死ぬまで続けましょうね」と言いながら、つい欲を出して
反対方向へ向かってしまう。
舌切り雀のお婆さんみたいだ。
まあ、月に1回だからいいか…と自分を納得させ
隣市にある三流ホテルのバイキングへ。
バイキングは、ハズレであった。
銀ギラの気取った器具の中に鎮座するのは、主に冷凍食品。
1500円で、おいしいものを好きなだけ食べようというのが
大間違いだったと言いながら、早めに退散する。
と…駐車場まで歩く間に「次はショッピング!」と言い出しておるではないか。
4対1の、なんだか不公平な多数決により、大型スーパーへ行くことになった。
ホテルからスーパーまでは、遠くはないけど道がよくわからない。
「私が案内するわ…このあたりは詳しいから」
この町へ月に1度、病院通いをしているラン子と60代が口々に言う。
しかし頼みの2人、お得意の病気と孫の話で盛り上がり
ナビ役をすっかり忘れている。
三叉路の手前で「右折?左折?」と聞いたら
「右折、右折」と言うので右側のレーンに入る。
そこで急に「あ、左だった」。
左に入り直して曲がると「あ、右だった」。
「右折、左折って言われても、急にわからないわよねえ」
私の聞き方が悪かったらしい。
反省し、次の交差点では「右?左?まっすぐ?」と聞く。
「右かまっすぐ…」
「どっちがいい?」
「う~ん…どっちでもいい…」
で、直進する。
「右のほうが、よかったかも」
「そうよ、右に行ったら道なりだったのに」
キー!
たどり着いたスーパーで、中高年向けの洋服屋に行った。
さっさと黒のサブリナパンツを買い、手持ちぶさたになった私は
あれこれ試着をしている4人に、アクセサリーまで全身コーディネートをしてやる。
そんなセンスが私にあるもんかい…右折の恨みじゃ。
が、皆たいそう喜んで、このまま着て帰ると言い出した。
各自、嬉々として値札を取ってもらい、ゾロゾロと店を出る。
さすがにここで、良心の呵責を感じる。
しかし、元々おしゃれな40代と70代はともかく
いつもウンコ色の刺し子や、泥棒の風呂敷みたいな染め物を好むラン子と
古着のカスリなんかを洋服に作り替えるのが趣味で
なぜか常に桜田淳子的キャスケット帽の60代は、たいした変身ぶりではあった。
峠の茶店で団子でも丸めているなら、刺し子やカスリも良かろうが
巨乳のラン子と、私より長身の60代には、違和感満載だ。
衣装部門が残念さんの2名は、あきらかに改善された。
もちろんそれは、コーディネイトの成果ではなく
問題の衣類を脱ぎ捨てたからに過ぎない。
今度は洋服に合わせた靴が欲しいと言い出したので
靴売り場に行き、選んでやる。
そんな能力が、私にあるもんかい。
適当だよ、適当。
皆、それに履き替えて、やっと帰れることになった。
帰りの車では、運転手の意向など無視で
「次は県外へ観光に行きたい!」
「いや、都会に行って、また服を選んでもらうのよ!」
などと盛り上がっている。
自分で行ってくれぃ。
とは言いながら、いそいそと次回の予定を考える私。
何とかして、近場でごまかせるプランを立てるのじゃ!
それに、次回は重要な議題がある。
選挙中に邪恋をはぐくんだ、妻帯者と未亡人のカップルを覚えておいでだろうか。
そうよ…私が偶然目撃したあの2人よ。
なんと、まだ続いているというではないか!
男の奧さんは、悩んでいるというが、相手をまだ知らない。
選挙以来、旦那は金遣いが荒くなり、夜の外出が増えた…
相手は選挙の関係者らしい…と、人に相談している段階。
実際に、イチャイチャを何度も見ている我々5人としては
これについて、話し合わねば気がすまない。
奧さんから相談されたのは、心清らかな教養人だ。
浮世の下世話を知らないその女性は当惑し
選挙中の様子を聞くために、同級生のラン子の元を訪れたという。
ラン子は大喜びで、すぐさま私に電話してきた。
「絶対、相手の名前を言ったらだめよ。
どうせ元のさやに収まるんだから。
そしたら余計なこと言った者がうらまれるんだからねっ!ウフフ」
「わかってるって!ウフフ」
噂って、こうして広がっていくのね。
4月の選挙で仲良くなった中高年女子で、毎月食事会をしている。
最初は1回こっきりの慰労会のはずだった。
しかし別れ際には、来月の日取りが決まっていた。
メンバーは、40代、50代、60代、70代がそれぞれ1人ずつ。
うまく並んだもんだ…と思っていたら
一緒にうぐいすをやったラン子が、この話を聞きつけて参加したので
50代は私と2人になり、総勢5人となった。
2回目までは、町内の飲食店でこじんまりとすんだ。
しかし3回目になると、変化を望み始め
永六輔じゃあるまいし「遠くへ行きたい…」なんぞと言い出した。
私の脳裏に暗雲が立ちこめる。
運転免許の無い70代とラン子…
「私、軽だから」と、早々に運転を回避した40代と60代…
出遅れた私は、必然的に♪運転手は君だ♪の事態になってしまったじゃないか。
私だって、運転はいやだわよ。
人様をお乗せしてドライブできる技術も責任感も、持ち合わせていない。
こんな行きずり同士の集まりは、短時間の気軽さがあってこそ
長続きするのだと主張するが、聞きやしない。
皆「死ぬまで続けましょうね」と言いながら、つい欲を出して
反対方向へ向かってしまう。
舌切り雀のお婆さんみたいだ。
まあ、月に1回だからいいか…と自分を納得させ
隣市にある三流ホテルのバイキングへ。
バイキングは、ハズレであった。
銀ギラの気取った器具の中に鎮座するのは、主に冷凍食品。
1500円で、おいしいものを好きなだけ食べようというのが
大間違いだったと言いながら、早めに退散する。
と…駐車場まで歩く間に「次はショッピング!」と言い出しておるではないか。
4対1の、なんだか不公平な多数決により、大型スーパーへ行くことになった。
ホテルからスーパーまでは、遠くはないけど道がよくわからない。
「私が案内するわ…このあたりは詳しいから」
この町へ月に1度、病院通いをしているラン子と60代が口々に言う。
しかし頼みの2人、お得意の病気と孫の話で盛り上がり
ナビ役をすっかり忘れている。
三叉路の手前で「右折?左折?」と聞いたら
「右折、右折」と言うので右側のレーンに入る。
そこで急に「あ、左だった」。
左に入り直して曲がると「あ、右だった」。
「右折、左折って言われても、急にわからないわよねえ」
私の聞き方が悪かったらしい。
反省し、次の交差点では「右?左?まっすぐ?」と聞く。
「右かまっすぐ…」
「どっちがいい?」
「う~ん…どっちでもいい…」
で、直進する。
「右のほうが、よかったかも」
「そうよ、右に行ったら道なりだったのに」
キー!
たどり着いたスーパーで、中高年向けの洋服屋に行った。
さっさと黒のサブリナパンツを買い、手持ちぶさたになった私は
あれこれ試着をしている4人に、アクセサリーまで全身コーディネートをしてやる。
そんなセンスが私にあるもんかい…右折の恨みじゃ。
が、皆たいそう喜んで、このまま着て帰ると言い出した。
各自、嬉々として値札を取ってもらい、ゾロゾロと店を出る。
さすがにここで、良心の呵責を感じる。
しかし、元々おしゃれな40代と70代はともかく
いつもウンコ色の刺し子や、泥棒の風呂敷みたいな染め物を好むラン子と
古着のカスリなんかを洋服に作り替えるのが趣味で
なぜか常に桜田淳子的キャスケット帽の60代は、たいした変身ぶりではあった。
峠の茶店で団子でも丸めているなら、刺し子やカスリも良かろうが
巨乳のラン子と、私より長身の60代には、違和感満載だ。
衣装部門が残念さんの2名は、あきらかに改善された。
もちろんそれは、コーディネイトの成果ではなく
問題の衣類を脱ぎ捨てたからに過ぎない。
今度は洋服に合わせた靴が欲しいと言い出したので
靴売り場に行き、選んでやる。
そんな能力が、私にあるもんかい。
適当だよ、適当。
皆、それに履き替えて、やっと帰れることになった。
帰りの車では、運転手の意向など無視で
「次は県外へ観光に行きたい!」
「いや、都会に行って、また服を選んでもらうのよ!」
などと盛り上がっている。
自分で行ってくれぃ。
とは言いながら、いそいそと次回の予定を考える私。
何とかして、近場でごまかせるプランを立てるのじゃ!
それに、次回は重要な議題がある。
選挙中に邪恋をはぐくんだ、妻帯者と未亡人のカップルを覚えておいでだろうか。
そうよ…私が偶然目撃したあの2人よ。
なんと、まだ続いているというではないか!
男の奧さんは、悩んでいるというが、相手をまだ知らない。
選挙以来、旦那は金遣いが荒くなり、夜の外出が増えた…
相手は選挙の関係者らしい…と、人に相談している段階。
実際に、イチャイチャを何度も見ている我々5人としては
これについて、話し合わねば気がすまない。
奧さんから相談されたのは、心清らかな教養人だ。
浮世の下世話を知らないその女性は当惑し
選挙中の様子を聞くために、同級生のラン子の元を訪れたという。
ラン子は大喜びで、すぐさま私に電話してきた。
「絶対、相手の名前を言ったらだめよ。
どうせ元のさやに収まるんだから。
そしたら余計なこと言った者がうらまれるんだからねっ!ウフフ」
「わかってるって!ウフフ」
噂って、こうして広がっていくのね。