殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

月例会・Ⅱ

2011年06月25日 19時47分36秒 | みりこんぐらし
              「うちも買うたで」


4月の選挙で仲良くなった中高年女子で、毎月食事会をしている。

最初は1回こっきりの慰労会のはずだった。

しかし別れ際には、来月の日取りが決まっていた。


メンバーは、40代、50代、60代、70代がそれぞれ1人ずつ。

うまく並んだもんだ…と思っていたら

一緒にうぐいすをやったラン子が、この話を聞きつけて参加したので

50代は私と2人になり、総勢5人となった。


2回目までは、町内の飲食店でこじんまりとすんだ。

しかし3回目になると、変化を望み始め

永六輔じゃあるまいし「遠くへ行きたい…」なんぞと言い出した。


私の脳裏に暗雲が立ちこめる。

運転免許の無い70代とラン子…

「私、軽だから」と、早々に運転を回避した40代と60代…

出遅れた私は、必然的に♪運転手は君だ♪の事態になってしまったじゃないか。


私だって、運転はいやだわよ。

人様をお乗せしてドライブできる技術も責任感も、持ち合わせていない。

こんな行きずり同士の集まりは、短時間の気軽さがあってこそ

長続きするのだと主張するが、聞きやしない。

皆「死ぬまで続けましょうね」と言いながら、つい欲を出して

反対方向へ向かってしまう。

舌切り雀のお婆さんみたいだ。

まあ、月に1回だからいいか…と自分を納得させ

隣市にある三流ホテルのバイキングへ。


バイキングは、ハズレであった。

銀ギラの気取った器具の中に鎮座するのは、主に冷凍食品。

1500円で、おいしいものを好きなだけ食べようというのが

大間違いだったと言いながら、早めに退散する。

と…駐車場まで歩く間に「次はショッピング!」と言い出しておるではないか。

4対1の、なんだか不公平な多数決により、大型スーパーへ行くことになった。


ホテルからスーパーまでは、遠くはないけど道がよくわからない。

「私が案内するわ…このあたりは詳しいから」

この町へ月に1度、病院通いをしているラン子と60代が口々に言う。

しかし頼みの2人、お得意の病気と孫の話で盛り上がり

ナビ役をすっかり忘れている。


三叉路の手前で「右折?左折?」と聞いたら

「右折、右折」と言うので右側のレーンに入る。

そこで急に「あ、左だった」。

左に入り直して曲がると「あ、右だった」。

「右折、左折って言われても、急にわからないわよねえ」

私の聞き方が悪かったらしい。


反省し、次の交差点では「右?左?まっすぐ?」と聞く。

「右かまっすぐ…」

   「どっちがいい?」

「う~ん…どっちでもいい…」

で、直進する。

「右のほうが、よかったかも」  

「そうよ、右に行ったら道なりだったのに」

キー!


たどり着いたスーパーで、中高年向けの洋服屋に行った。

さっさと黒のサブリナパンツを買い、手持ちぶさたになった私は

あれこれ試着をしている4人に、アクセサリーまで全身コーディネートをしてやる。

そんなセンスが私にあるもんかい…右折の恨みじゃ。


が、皆たいそう喜んで、このまま着て帰ると言い出した。

各自、嬉々として値札を取ってもらい、ゾロゾロと店を出る。

さすがにここで、良心の呵責を感じる。


しかし、元々おしゃれな40代と70代はともかく

いつもウンコ色の刺し子や、泥棒の風呂敷みたいな染め物を好むラン子と

古着のカスリなんかを洋服に作り替えるのが趣味で

なぜか常に桜田淳子的キャスケット帽の60代は、たいした変身ぶりではあった。


峠の茶店で団子でも丸めているなら、刺し子やカスリも良かろうが

巨乳のラン子と、私より長身の60代には、違和感満載だ。

衣装部門が残念さんの2名は、あきらかに改善された。

もちろんそれは、コーディネイトの成果ではなく

問題の衣類を脱ぎ捨てたからに過ぎない。


今度は洋服に合わせた靴が欲しいと言い出したので

靴売り場に行き、選んでやる。

そんな能力が、私にあるもんかい。

適当だよ、適当。

皆、それに履き替えて、やっと帰れることになった。


帰りの車では、運転手の意向など無視で

「次は県外へ観光に行きたい!」

「いや、都会に行って、また服を選んでもらうのよ!」

などと盛り上がっている。

自分で行ってくれぃ。


とは言いながら、いそいそと次回の予定を考える私。

何とかして、近場でごまかせるプランを立てるのじゃ!

それに、次回は重要な議題がある。

選挙中に邪恋をはぐくんだ、妻帯者と未亡人のカップルを覚えておいでだろうか。

そうよ…私が偶然目撃したあの2人よ。

なんと、まだ続いているというではないか!


男の奧さんは、悩んでいるというが、相手をまだ知らない。

選挙以来、旦那は金遣いが荒くなり、夜の外出が増えた…

相手は選挙の関係者らしい…と、人に相談している段階。

実際に、イチャイチャを何度も見ている我々5人としては

これについて、話し合わねば気がすまない。


奧さんから相談されたのは、心清らかな教養人だ。

浮世の下世話を知らないその女性は当惑し

選挙中の様子を聞くために、同級生のラン子の元を訪れたという。

ラン子は大喜びで、すぐさま私に電話してきた。


   「絶対、相手の名前を言ったらだめよ。

    どうせ元のさやに収まるんだから。

    そしたら余計なこと言った者がうらまれるんだからねっ!ウフフ」    

「わかってるって!ウフフ」

噂って、こうして広がっていくのね。
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みりこんの部屋

2011年06月20日 15時29分28秒 | みりこんぐらし
           ♪ル~ルル ルルル ル~ルル…♪

みなさまこんにちは。

みりこんの部屋でございます。

今日は、趣味の不倫でご活躍中の土建屋ヒロシさんをお迎えして

楽しいお話をうかがいたいと思います。


  「ヒロシさん、こんにちは。

   ようこそお越しくださいました」

「こんにちは」

   「今日は2度目のご登場ですが

    前回の放送で、とても反響がございました」

「そうですか…光栄です」

  「わたくし先ほど、ご活躍中と申しましたけれど

   最近は体調を考慮して、少しセーブしておられるそうですね」

「ヒザを傷めて、まだ治ってないもんですから」

  「まあ、それは大変ですね。

   どうぞお大事に。

   さっそくなんですけれど、今回も質問が届いてございます。

   聞いてくださいませね。

  “不倫中の女性にとって、相手の奥様はどんな存在でしょうか?
     
   2番手にいる者は、1番手を意識して追い越そうとする気持ちなのか

   それとも、もう追い越したと思いながらも、半信半疑で気になっているのか”

   こんなご質問ですが、いかがですか?」 

「それは僕じゃなくて、不倫経験者の女性に聞いたほうがいいのでは…」

  「オ~ホホホ!

   それはそうですけど、愛人のかたがたをつかまえて、おたずねしても

   正直にはおっしゃいませんでしょ。

   ご自分のことが、まったくおわかりになっていらっしゃらないかたも

   多ございますしね。 

   奥様と愛人の間に立たれる機会の多いヒロシさんのほうが

   わたくし、公平で正確なような気がするんですけれども」

「そういうことでしたら、僕でよければお答えしますよ」

  「ぜひお願いします。

   相手の女性にとって、奥様はどんな存在なんでしょうかしら」

「本人に聞いたことは無いですが

 一言で言えば、気になる存在でしょうね。

 多少は気にしないと、わざわざ不倫する意味が無いじゃないですか。

 人それぞれで、程度は違いますけど」

  「人それぞれで違うとおっしゃいますと?」

「亭主持ちの女なんかは、たちまちの暮らしに困らないから

 あんまり気にしません。

 だけど生活がかかってる崖っぷちの女だと

 女房と入れ替わりたいんだから、気になるでしょう」

  「なるほど…目的によって、気になる度合いが違うわけですね。

   気になるというのは、具体的にどういった感じなんでしょう。

   奥様、お元気かしら?みたいなことをおっしゃるのかしら」

「ハハ…まさか…悪口ですよ」

  「奥様の悪口ですか?どんな悪口なんでしょう」

「それが、見事に記憶が無いんです」

  「オホホホ!本当ですか?

   奥様には内緒にしますから、ちょっとだけでもお願いしますよ…クックック」

「いや、本当に覚えてないんです。

 それだけ適当だったということでしょう」

  「ちょっと小耳にはさんだところによりますと

   ヒロシさんのご両親に嫌われてるからダメとか、性格がきついとか…」

「ああ、そんなことでしょうね。

 悪口ったって、誰にでも共通するようなことしかありませんよ。

 その後、必ず付け加えるんですよ…これは覚えてます。

 私だったら気に入られるとか、自分と結婚したほうが得だとか

 自己アピールを聞かされる。

 実家で作ってる米をもらえるなんて言うヤツもいました」

  「オホホホ!米!

   そんなのもアピールなんですのね。

   じゃ、自己アピールの前座が悪口というわけですか?」

「そうですね。

 先に人を落として、自分を上のように見せるってやつですよ。

 下心ありありってのは、ウザいもんでね…聞くのは面倒臭いです。

 どんな女房でも、いったんは自分が選んだんですからね。

 女房をかばうんじゃなくて、自分が過去で行った選択に

 ケチをつけられるのは、いい気持ちじゃないんですよ」

  「なるほど…内容はともかく、選択そのものを否定されるのが

   お嫌というわけですね」

「もしその女と結婚したら、一生それですよ。

 いくら僕がバカだって、それくらいのことはわかります」

  「2番手心理とか、1番のつもりだけど半信半疑で

   気になっちゃうというのは、感じられたこと、おありですか?」 

「よくわかりませんが、そんな上品なもんじゃないと思いますよ。

 僕が思うには、みんな最初から1番のつもりだし

 妻帯者とつきあうのは、1番を確認する作業みたいな感じ。

 おまえ、何様だ?って思うこと、よくありますよ」

  「オホホホ!」

「最初のうちは、どんな人か聞いたり、奧さんに悪いとか、しおらしいですけど

 離婚だ結婚だと盛り上がるにつれて、だんだん悪口になっていきますね。

 妄想で、憎しみを育てている感じです。

 悪い女房から救ってあげるという

 正義のところまで、持って行きたいんじゃないでしょうか」

  「中には、奥様殺害計画を練られた方もいらしたそうですね。

   車のブレーキオイルを抜くとか、毒を飲ませるとか」

「うちの女房が、そんなもんに引っかかるわけないじゃないですか。

 逆襲のほうが恐いですよ。

 何も知らないから、そういうことが言える。

 その浅はかが、いっときはかわいく見えるんですがね」

  「浅はかって、なんだか憐れでかわいらしいですものね」

「ずっとだったらウンザリしますよ」

  「ホホホ…相変わらず腐ってらっしゃる。
  
   あ、もうお時間?

   ヒロシさん、今日はどうもありがとうございました」

「ありがとうございました」

           ♪ル~ルル ルルル ル~ルル♪   
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作品?

2011年06月14日 12時50分26秒 | みりこんぐらし
                  「椅子」



右手の中指が、久しぶりに逆むけになっている。

痛いったら、ありゃしない。

なんでこんなことに…老化か…と考えていたが

ある日突然、解明された。

買物をし、レジでポイントカードを出そうと財布をまさぐっていたら

逆むけの箇所が出血したのだ。

買物のし過ぎであった。


うちは今、電化製品や、ちょっとした家具などの模様替えをしている。

そこで家具店、電気店、ホームセンターなどで

財布に手を出し入れする回数が急に増えた。

いつになく多めの諭吉さんや、幾重にも重なったレシート

カード類に接触し続けて、中指が悲鳴をあげたのである。


私の中指は、金を湯水のごとく使うにようには

形成されていないのであった。

消費の訓練がされていない、ヤワな中指だったのだ。

ああ、かわいそうな中指…いとおしや。


さて今回、パソコンデスクも変えたいと思っていた。

今まで使っていた三階建てみたいなのや

今どき風の軽めのデザインではなく

大きめで平たい、茶系の重厚なものが欲しかった。


なかなか気に入るのが無かったが

数日考えて、はたとひらめいた。

開かずの間に押し込んだまま幾年月…子供の学習机である。


長時間お勉強する時、体が冷えないように…

そう主張して、夫の両親にフンパツさせた木製の学習机は

当時のまま、ピッカピカ。

座っているのを見たこともないのだから、当たり前だ。

何が「体が冷えないように」だ。

そんな野心を持ったオノレが恥ずかしいわい。


上にくっついている蛍光灯や本立てをもぎ取れば

なんと、望みどおりの机ではないか。

しめしめ…さっそくリビングに引きずり出して

パソコンやらプリンターやら乗せてみる。

どれも余裕で置けて、引き出しが便利だこと!

下のほうに“くろがね学習机”と書かれたプレートが埋め込んであるけど

な~に、見なければいいのだ。


気を良くして、遠いニトリまではるばる出かけ

9900円の椅子を買う。

学習机は綺麗なままでも、椅子のほうは、とっくの昔に壊れていた。

私が踏み台がわりにして、さんざん使ったからだ。


ニトリの椅子は、自力で組み立てるそうなので

なんとなく簡単そうに思えるのを選んだつもり。

ところが、家で箱を開けて、がく然とする。

バラバラじゃないかっ!

組み立て式とは書いてあったけど、少しは形になっていると思っていた。

ここまで徹底的にバラバラとは、知らなんだ。


我が夫、破壊は得意だが制作には向いておらず

頼みの息子達は留守。

長時間かけ、半泣きで組み立てた。

二度とやりたくない。
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イ・サン

2011年06月07日 12時40分58秒 | みりこんぐらし
夫はこのところ『イ・サン』というドラマにハマッている。

毎週日曜日の夜遅くに放送している韓国の時代劇である。

私は韓流はあんまり好きじゃないけど

昔の髪型や衣装が好きなので、時代劇は見る。


日曜日の夕方になると、夫はソワソワし始める。

大好きな『サザエさん』『イッテQ』を前座に

もっと大好きな『仁』があり、最高に大好きな『イ・サン』がトリを務める。


『イ・サン』は、逆境で頑張りながら王様を目指す王子様の話。

最初は、子役があんまりうまくて可愛らしいので見ていた。

だがある晩、イ・サン少年は、突然大人になった。

途端に興味を失い、後は豪華絢爛だけが頼みの綱となった私であるが

夫は、いっそう夢中になった。


このドラマには、悪~い叔母ちゃんが出てくる。

若く、華やかな美貌の持ち主であるが

甥のイ・サンを王位継承者から失脚させようと、あの手この手で悪さをするのだ。

根性の腐った叔母ちゃんに陥れられるたび

夫は「頑張れ…」とイ・サン青年を応援する。

夫には、弟をしいたげるお姉ちゃん…カンジワ・ルイーゼがいる。

身につまさるのだろう。


ルイーゼとは、しばらく会ってない。

どこか別の所で、週の半分くらい、3時間ほどのアルバイトをしているらしい。

「頼まれて、しかたなくよ」

義母ヨシコは言うが、わざわざルイーゼを雇いたがる会社が

この世にあるとは思えない。

その物好きは一体誰なのか、我々は興味津々だが

両親の口はいつになく固く、いまだに不明である。

言わないということは、自慢が困難な仕事なのだろう。

ルイーゼの旦那は銀行を定年退職し、今は病院の精算窓口に出向中で

その関係と思われる。

すでに3ヶ月、この状態である。


なぜ3ヶ月前からこうなのか。

実は3ヶ月前、長男が会社に戻った。

ある日、気がついたらそうなっていた。


長男は3年ほど前、ルイーゼとの喧嘩が発端で転職したが

それ以来、なんの因果か社員が定着しなかった。

困った夫と次男は結託し、ひそかに長男を説得して呼び戻していたのだ。

その数日後に起きた震災の影響で、長男の勤めていた工場は

中途就職者の大がかりなリストラが始まったという。

結局、長男は退職することになっただろう。


兄弟に同じ仕事をさせたくない私だが

通勤所要時間1時間と5分の差は、主婦には大きかった。

なにしろ楽なもんで、とりあえず今はそういう時期なのだ…と思うことにする。


その途端、ルイーゼのアルバイトが始まった。

親が弱ってからも、毎日実家へ帰り続けると

家事や送迎など、余計な労働が待っている。

長男の帰還に、潮時を感じたと思って相違ない。

さすがルイーゼ、逃げ方が鮮やかだ。


会社の仕事もあまりしなくなった。

給料計算や支払いなど、金に関わることは相変わらず離さないが

請求書や各方面への提出書類などの面倒臭いことは

「少しは自分でやったら?」と夫に丸投げする。


ろくに口をきかない姉弟なので、説明は無い。

夫が間違えると、大喜びで父親に言いつける。

これに燃えた義父アツシが、執拗に小言を言う。

夫は、こういうところでイ・サンに共感するようだ。


彼も近頃は知恵がつき、ルイーゼに仕事を押しつけられると

私に協力を求める。

急に言われたって、私にもわからない。

夫のサポートめいたことはしてきたつもりだが

帳面のほうは滅多にやらなかった。


ガテンって、どの品物を何個売るという仕事じゃないし

未知の書類もあるので、OL時代の経験があんまり通用しない。

わからんちん同士、ああでもないこうでもないと言いながらの共同作業。

30年間握っておいて、急に渡されたって

目も脳みそも、ついて行けやしない。


そのうち私にも知恵がつき、取引先や提出先に行って

直接教えてもらうようになった。

足を運んで「教えてください」と頭を下げれば、皆親切だ。

この業界、どこも暇なのだ。

そのまま仕上げてくれる所もある。

お茶やお菓子も出る。


しかしその日々は、夫のか弱い胃袋にこたえたようで、病院行きとなった。

どうでもいいところでは大胆でふてぶてしく、肝心なところで気弱なのは

昔から変わらない。

幸いたいしたことはなく、胃酸が多いそうだ。


私は悪い叔母ちゃんを真似て言う。

    「よかったではないか。そなたの大好きなイ・サンであろう」

「フン」

    「ウケると思ったスミダ!」

「ちっとも面白くないスミダ!」

    「残念スミダ!」
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