殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

普通が一番

2009年08月29日 14時41分39秒 | みりこんぐらし
先日見舞いに行った夫の叔父が亡くなり

一昨日が通夜、昨日が葬儀だった。


暑い季節柄、一族でただ一人の調理師というのが思わぬ威力を発揮し

遺族の食事や来客のお茶出しに采配を振るう。

微力ながら、少しは役に立てたのであれば

病院勤めの艱難辛苦も報われたというものだ。


この夫婦は義父の身内には珍しく、ずっと忙しい共働きだったので

私という新参者に意地の悪い興味を持つヒマが無かった。

だから私に対して、他の親戚のように

「夫を浮気に走らせてしまう悪い嫁」として異質の扱いをしなかった。


時々家庭菜園の野菜をくれた。

親族の集まる席でも遠巻きにせず、普通に話しかけてくれた。

普通…それがどれほどにありがたいことか。

私にしてみれば、大恩人である。

自分のことは棚に上げ、人の池に石を投げて波紋を楽しみたいのは

いつもヒマな人間だ。


そんな普通の人の葬儀は、多くの参列者に見送られる

普通のしめやかなものだ。

夫家特有の私好みの事件は起らない。


しかし、ここ数年で親族の関係も大きく変化し

面倒臭いメンバーは、冠婚葬祭に参加しなくなった。

「来る嫁で家が決まるといいます。ご心痛お察しします…」

夫の浮気で我が家がもめるたびに、義父宛にそんな年賀状をよこし

火に油を注いで喜んでいた義父の姪たち。

数年前に祖母が他界した時、無い遺産を巡って骨肉の争いとなり

今では絶縁状態となった。


スジだ、常識だと騒いでいたが

一番うるさかった姪の香典袋はカラだった。

もっと厄介だった彼女たちの両親も、それぞれ他界した。


ヒマにあかせて一族の間を走り回り

あること無いこと尾ひれをつけて報道して歩くのが生き甲斐で

私がひそかに新華社通信と呼んでいた叔父夫婦は離婚し

その直後、叔父は浮気者がたどる孤独な死を迎えた。

別れた妻は、祖母の他界時の“骨肉”に参戦し

「私には無くても孫には権利がある」と主張していたが

分け前になりそうなものが何も無いと知ると、それきり姿を見せなくなった。


面倒臭い人間が何人も減ると、俄然過ごしやすくなる。

気にしないとはいえ、一挙一動を観察されてあれこれ言われるのは

気持ちのいいものではない。

ああ、安気、安気。


今では一族の最長老となり、人が多く集まると興奮する義父アツシも

最近は出歩かなくなったので

「誰が太っている、誰が痩せている」くらいの話題しか無い。


精進落としの会食の席で

「おまえは太りすぎだ。もうちょっと痩せろ」

と手当たり次第に忠告するが

持病で幽霊のように痩せこけた義父に言われても

皆、へへへ…と適当に苦笑いを返すしかない。

内心では肥満した我が夫を横目に

「おまえの息子はどうなんだ…」と思っているにちがいない。


「うちの娘を見ろ!痩せているほうが働き者だ!」

夫の姉カンジワ・ルイーゼは、しわくちゃのウメボシみたいな顔で

満足そうにうなづいている。


痩せた姪たちを指さし

「見ろ!痩せているほうが上品だ」「親の躾がいい」

「女は旦那にかわいがられるように、いつも気を付けていなくては」

などと演説して悦に入っていたが

そのうち「上品」なはずの姪たちが、いっせいにタバコに火を付ける。


アツシ…目をむいて沈黙。

タバコがいい悪いではなく、席を外して吸うとか

人の集まる場所では控えるという配慮が欲しいものだ。

女性の喫煙は、老人にはまだ刺激が強い。


「兄さん、あれが上品かい」

今回未亡人になった叔母が鋭く指摘する。

さっき「旦那の看病してたのに、痩せ方が足りない」と言われた

報復であろう。


長身でがっちりした体型の私は、いつもデブ組に入れられるため

ヒヒヒ…と喜ぶ。

しょっちゅうデブ、デブとののしられる義母ヨシコも

ククク…と笑う。


ゴタゴタを起こす者は去り、目と目を見合わせて笑い合える者が残った。

年月の優しさをかみしめ、年を取るのも悪くない…と思う私だった。
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老後の計画

2009年08月26日 11時39分43秒 | みりこんぐらし
夫の叔父…正しくは義父の妹の配偶者が、今、病気で死にそうだ。

気さくな叔母とは仲良くしているが、この人とはあまり馴染みが無い。

なぜなら彼も叔母もちゃんと仕事をし、子供たちも立派に育ったので

小商いをする兄弟に依存する必要がなかったからである。


「もう危ない」と言われながら、夫の両親が先に見舞うまで

我々夫婦の見舞いは止められていた。

だったら早く行けばいいのに、義母が「その気になれない」と言う。

伯母…つまり小姑には、大昔、まだ新妻だった頃に

ナンカきついことを言われたつらい記憶があるので

なかなか足が向かないそうだ。


何を甘ったれたことを言っておるのだ…

だったら、あんたの生んだ小姑はどうなるんだ…

私が「その気になれない…」なんてグズグズしてたら

あんたたちは腐乱死体かミイラだぞ…とも思うが

なにしろ義母は繊細?だから仕方がない。


やっと許しが出て、日曜日に夫と病院へ行ったが

叔父はすでに意識不明で寝ていた。

   「あ~ん!やっぱり!もう話が出来ないじゃんっ!」


為す術(すべ)もなく立ち去り

お見舞いを渡すために、その妻である叔母の家に向かう。

車でしくしく泣いて、夫にうるさがられる。


叔母の家のドアを開けると

劇的にかわいいトイ・プードルが顔を出した。

涙…瞬時に引っ込む。


間近で見るのは初めてだ。

友達の家に一匹いるが、土佐犬みたいに大きくて怖い。

友達はそいつをトイ・プードルだと言い張るが、私はかなり疑っている。


「息子が会社の人からもらって来たのよ~」

瀕死の叔父のことも忘れ、3人、犬の話でしばらく盛り上がる。


叔父の話になると

「みんな一回は通らないと、死ねないもんね~。

 あ、あんたたち、こんな犬が欲しいなら、頼んでみてあげるよ」

現実逃避ではなく、サバサバした性格なのだ。


残される叔母さんのことは任してください…

自分の身の丈も考えず、死にゆく叔父にそう誓う。


そういえば、別の親戚にも同じこと言ったな…

老後を不安がるあの人にも言った…この人にも一緒に住もうと言った…

数え直すと、夫の親戚だけで4人くらい口走っている。

友達にも5~6人。

親を加え、自分も入れると、総勢10数人の大所帯だ。

今のところは、幸いみんな持ちこたえている。


何人かはそのうちに欠けるとして…などと醜く算段。

それまでに私が先に死んでおくという手もあるが

こればっかりはどうにもならない。

もし生き延びたら、ウソ言ったみたいで嫌だしな…。


いっちょドカ~ンと老人ホームみたいなのを作るか…段ボールで。

場所は、以前から目を付けておいた橋の下。

もちろん私もそこで暮らす。

みんな、嫌だって言うだろうな~…ひひひ…


本当は、誰も人の世話になろうなんて思ってやしない。

でも、そんなことを考えていると、楽しくなる。
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ウケ狙い

2009年08月24日 21時40分32秒 | みりこんぐらし
今度長いマラソンをするという眉毛を太く描いた女の子。

あの子は…

A・ただのお調子者

B・本当はすごく賢いのに、あえてそうでないフリをしている

どっちなのか、以前から疑問であった。


もしも賢いのを表に出さないのであれば、かっこいいではないか。

性格のいい子には違いないんだけど

本当のところはどっちなのか、いつも気になっていた。


先日、彼女が出ている番組に

津軽三味線のうまい高校生の男の子も出演していた。


成り行きで、彼女がその津軽三味線を借りて弾いてみることに。

バチの持ち方を教えてもらうと

いきなり大きなアクションで、力任せにたたきつける彼女。


男の子は、慌ててバチを彼女から取り上げようとする。

その手をふりほどいて、再び「ベェェ~ン」と

今度は弦を下から引っ掻き上げる。

バチの角が、三味線の腹の部分を強打したのを見た。


男の子は、今度は本気でバチを奪い返した。

命の次に大事であろう楽器を

ウケ狙いのために傷付けられたら、たまったもんではない。

弁償ですむ問題ではないのだ。


結論…A。

あおってやらせた人間も悪いが

自分しか見えていない、単なるお調子者だというのはわかった。


だからといって、嫌いになっただのゲンメツしただのと

ブツブツ言うほどのものではない。

相変わらずかわいらしい。

ただ、マラソンの応援に心を奪われるのはよそうと決めた。


ちょっと最近楽器をいじるようになると

こういうことに変に神経質になる。

私の悪い癖だ。
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ものは言いよう

2009年08月21日 20時17分15秒 | みりこんぐらし
「仕事、仕事で出会いが無くて、彼女を作るヒマもないのよ…。

 息子がこっちへ帰省した時に、二人を会わせて食事でもどうかしら…

 お願いしてみてくださらない?」 

少し前の話になるが、知人の息子さんに女の子を紹介することになった。


乗り気でやったのではない。

たまたまその前に、年ごろのかわいいお嬢さん…リサちゃんの話をしていたら

ぜひ紹介してくれと言われたのだ。


昔から、私が紹介なんてすると必ずうまくいかない。

確か自分の縁結びにも失敗したが、他人となるとなおさらダメらしい。

ま、人のことだからいいか。


リサちゃんに聞いてみたら、喜んで会うと言う。

息子本人のことはよく知らないが

万一お互い気が合ってしまっても、金持ちだからいいか…と思った。


ほどなく父親が初めて選挙に出ることになり

息子が手伝いに数日帰省するという。

その時に二人を会わせることに決まった。

紹介なんてたいそうなものではない。

日時と待ち合わせの店を伝えただけである。


    「どうだった?」

翌日、リサちゃんに聞いてみる。

リサちゃん、言いにくそうに

「あの…私にはちょっと…」


待ち合わせた喫茶店で紅茶を飲みながら

少しおしゃべりして、帰ったという。

     「あれ?食事は?」

「いえ…食事はしなかったです」


私は悪い予感がした。

     「…リサちゃん、喫茶店のお茶代はどうしたの?」

「割り勘です」

     「な…なんですとっ?」

「あの…お父さんが選挙に出られるので

 おごることはできないと…」

     「そ…それで、リサちゃん、自分の分を払ったのっ?」

「はい…あの…紅茶のお金を払ったからというのではないんですよ。

 会話がはずまないというか…

 自分は議員の息子になるんだとかいうお話ばかりで…」

     
お~の~れ~!こわっぱ~!

彼女が出来ないのは、仕事じゃなくて性格が悪いんじゃ~!


私はすぐさま母親に電話をかける。

これこれこういうことだったので、一応ご報告しますわ…

とイヤミたっぷりに伝える。


「まあ~!あの子がそんなことを?」

母親がびっくりしたので、ちょっとスカッとする。

     「そうなんです。私もびっくりしましたよ」


ところがおっかさん…

「それほどまでに父親の選挙を大事に思ってくれていたなんて…」

と涙声になる。

あれ…?

    「いえ、そうじゃなくて…誘っておいて割り勘なんてですね…」

「本当に…割り勘だなんて、とっさによく気がついたこと…」

    「いや、あの…そういう行動はあまりにも…」

「ええ、ええ、男の子って

 普段は父親の前でそんな素振りも見せませんものねぇ…」

    「いえ、紹介した私も恥ずかしいと思いましてね…」

「そんな…うまくいかなくても恥じることはありませんわ。

 こういうことは、相性ですもの」

ああ…家族愛のために犠牲になる他人。


先日、娘にいい人がいないか聞かれた。

もちろん、いないと即答する。

この娘は、私も見たことがある。


母親は遠い目をして言う。

「サチコは“月”のような娘なの。

 相性の合う人…太陽さんの前だと、パッと輝くのよ」


    「つ…月…」

暗くて愛想が悪い…女の子の風上(かざかみ)にも置けない娘は

月と言えばいいらしいぞ。

太陽さんが現われるかどうかは知らないが、ものは言いようである。
     
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ロマンスセット

2009年08月19日 11時45分20秒 | みりこんぐらし
このところ、私はアルトサックスの練習に余念が無い。

同級生で結成したばかりのバンドで、初めて挑戦することになったからだ。


得意のフルートとは違い、なかなか難しい。

指使いは似たようなもんだが、息が続かないのだ。

年を取ってから何かを始めるって、こんなにも大変だったのか…と改めて思い

何気なく吹いていたブラスバンド時代の仲間を今さらながら尊敬する。


練習は夜、周囲に民家の無い夫の会社でやる。

私の“妙(たえ)なる調べ”は

家族から「家畜殺害現場」と呼ばれているからだ。

否定できないところがつらい。


先日、盆休みでヒマだった長男もついてきた。

この子もヤマハ音楽教室出身で、まあまあの音楽好き。

やっぱり血は争えないわ~…と思っていたら

自分が会社にいた頃、置いたままにしていた車の部品を探す目的であった。


ガサゴソやってるうちに、ヤツは見てはならぬものを発見してしまった。

夫のへそくりを入れた通帳である。

倉庫の片隅に押し込まれた、小さな袋の中にあったと言う。

私が事務所で練習するようになったので、やむなくそこに隠したと思われる。

申し訳ないことをした。


赤い布製の袋には、通帳と共に

どこかの鍵やら、ホテルの割引券やら

あの一世を風靡した懐かしいお薬…バイアグラのボトルもあった。

夫にすれば、秘密を詰めたロマンの袋なのであろう。


「こんなモン飲んでまで、頑張らんでも…」

二人で大笑いする。

色々種類があるのかもしれないが、バイアグラは青い錠剤だと初めて知った。


    「早く元どおりにしときなさいよ、そのロマンスセットを…」

「ロマンスセット!ギャハハハ!」


しかし、長男は通帳を見て、まだゲタゲタ笑っている。

「だって…これ、見てみ」

記帳されている名前である。

“○○ツルコ”

この名前で、毎月末に1万円ずつ入金されていた。


先月、夫が長男の古い軽自動車を与え

その車で川に転落して骨折したあの女性である。

その名前を知った時は「ウソだろ?!」と叫び、思わず吹き出した。

修理工場の人から直接聞いた長男も、改めて目にして

可笑しさもひとしおらしい。


ツルコ(実名)という名前は、年配には珍しくないかもしれないが

名字と合わせてフルネームで呼んだら、困ったことになる。

こうしてカタカナで書いてあると、ますます強烈。

結婚してこんな事態になったんだろうが

ナンカ吊っちゃう…という意味になってしまう。


不可抗力とはいえ、どこへ行っても苦笑され続けた半生であろうよ。

結婚し直して、名字を変えたいと思ったところで無理もないと思われる。

苦節何十年…やっとこさ物好きが現われて希望の光射す…

おケガをなさらなかったら、もしや面白いことになっていたかも…

少々惜しい気がする。


夫は付き合う女性を「姫」と呼んで持ち上げる習慣がある。

相手がザンネンであればあるほど、その効果は絶大らしい。

では、さしずめこのお方は「ツル姫さま」か。

昔“少女フレンド”だったか、土田ヨシコという人が描いた

「つる姫じゃ~!」というマンガがあったっけ…と懐かしく思い出す。


数ヶ月に渡り、1万円ずつ入金があるからには

金を貸したのであろう。

振り込みが始まる前月に、10万の引き出しがある。


この7月の入金は無かった。

入院中なので、振り込みが出来なかったのであろう。

お気の毒にのぅ…合掌。


会った時に渡せばいいのに、わざわざ手数料払ってまで

律儀に通帳へ振り込むなんて、さすが年寄り。

10万を男に借りなければならないお暮らしをなさっているのだなぁ…

名実ともに、ザンネンの王道を行くお方なのだわ…

いや、無利息だからいいのか…

大金でなく、10万というところがかわいらしいではないか…

私ならもっと…へっへっへ…などと余計なことを考える。


とりあえず出した結論…

残高がまだあるので、当分小遣いは減らすべ。
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純粋女房

2009年08月17日 11時08分57秒 | 女房シリーズ
ふたつ年上の知り合い…ウラさん。

ふくよかで色白の、ごく普通の奥さんなんだけど、とても純粋な人だ。

毒のかたまりのような私には、いつも新鮮な驚きがあって楽しい。


数年前、まだ顔見知りというだけだった頃

共通の用が出来て、一緒に新幹線で出かけることになった。

窓口で回数券を求め、振り返ると

ウラさんは不安そうに言う。

「…私は…どこに連れて行かれるとですか?」

     「え…○○市じゃん?」


ウラさんの大きな目に、見る見る涙が溜まってくる。

「自動販売機でなくて、なんで窓口で買うとですか…

 それ、切符じゃなかとよ…」

     「いや…これは…」

「あの…私には主人も子供もいるし…知らない所へ行くわけには…」

ウラさんの白い頬を大粒の涙がつたう。

私にも一応主人と子供がいるので

ウラさんと知らない所へ行くわけにはいかんのだが…。


「帰らしてください…お願いします…」

     「ウ…ウラさん…ちょ…ちょっと待って…」

“安寿と厨子王”に出てくる“人買い”になった気分。

しかもウラさん、あんまり売り物になりそうでは…。


…二人分なら切符を往復で2枚買うより、回数券を4枚買えば安くなる…

回数券を見せて、噛んで含めるように説明すると

やっと納得してくれた。

新幹線に乗ったのは修学旅行以来だと言う。

事前の説明が必要であったと深く反省。


以来、人買いと安寿は親しくなり

時折会って、おしゃべりをするようになった。

優しくて穏やかなウラさんだが

たま~にぽつりとビックリするようなことを言うので面白い。


パート先でさんざん仕事を教えた新人が、3ヶ月で辞めたと言う。

ウラさんはその人の家を探し出し、文句を言いに行った…とさらりと言う。

     「なんで?!」

「腹が立ったとですよ」

     「どうして腹が?!」

「人の世話になっといて、途中で辞めたらいけんです」

     「…」

とまあ、こんな感じ…笑うしかねぇだろ。


ウラさんはご主人に愛され、守られて生きてきた。

ご主人を心から尊敬し、優秀で親思いの子供たちと

絵に描いたような「まっとうな結婚生活」を営んでいる。

つまり私と正反対。


時々、ズレみたいなものは確かに感じる。

家庭が安らかだと、外がより困難に感じるのかもしれない。

ズレ加減がちょっとなら、たぶんムッとするんだろうけど

大幅だと、いっそ刺激になって楽しい。


ある日の朝早く、突然ウラさんがやって来る。

「遊びに来たとです」

饅頭を2つ差し出す。


礼を言うと

「人様の家へお邪魔する時は手ぶらで行ってはならんと

 親からしつけられとります」

と胸を張って言う。

朝から人の家に行くな…とは、教わらなかったらしい。


昼になったが帰る気配もないので

     「昼ごはん、どうする?何か食べに行きましょうか」

と聞くと、ウラさんは大きなバッグから

おもむろに惣菜のパックをひとつ取り出した。

       「わ…わぁ…用意がいい…」


ウラさん、誇らしげにのたまう。

「よその家に行くときは自分の食いぶち用意して行けと

 親に厳しく言われて育ちましたけん」

ウラさんはラップをはがしながら言う。

食事どきになったら帰れ…とは教わらなかったらしい。


夕方になっても帰らないので、一緒に晩ご飯を食べた。

時計が夜7時を回ると

ウラさん、いきなり「じゃあ帰ります」と立ち上がる。

「今日は社宅の修理があって、朝から7時まで家におられんかったとです」

     「それを早く言ってよ。二人でどこかへ遊びに行けば良かったね」

「暑いから、よかとです」

ウラさんは、さっさと帰って行った。


そのうちウラさんは、ご主人の転勤でどこかへ行ってしまった。

時々刺激が欲しくなり、とても会いたくなる。   
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ユウジとアケミ

2009年08月15日 02時32分35秒 | みりこんぐらし
お盆になると思い出す。

ユウジとアケミのことを…。


男っぽいユウジと、控えめでおとなしいアケミ。

お似合いの若夫婦はいつも仲が良く

見ていて微笑ましかった。


ある年のお盆のこと…幸せな彼らを悲劇が襲う。

突然ユウジが亡くなったのだ。


未亡人となったアケミは、残された子供達を一生懸命育てた。

そのけなげな姿に、胸をしめつけられる。


やがてある朝…

アケミもユウジの後を追うようにひっそりと息絶えていた。


ユウジを死に追いやったのは私だ。

彼が倉庫に入っているのに気づかず

鍵をかけて遊びに出かけてしまった。


暑い日だった。

翌日、変わり果てたユウジの姿を発見した私は

ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

アケミは、恨み言ひとつ口にしなかった。


ごめんなさい…ユウジ。

ごめんなさい…アケミ。

フタリはニワトリ。
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不倫をした夫の行く末

2009年08月13日 12時31分17秒 | 前向き論
『不倫をした夫の行く末』…検索キーワードにこれを見つけ

先日コメントで話したこともあって、気にかかる。


検索の主は、ご主人に浮気された奥さん…と勝手に決める。

「不倫をした」と過去形なので、すでに終わったことかもしれない。

しかしいまだ苦しみの底におられると、これまた勝手に想像する。


一口に不倫と言っても、その形態はさまざまだ。

一生に1~2度、隠れてコソコソすずめの交尾(すずめさん、ゴメン)

みたいなのもあれば、どこかの旦那のようなのもいる。

ここでは、俗に言う浮気性の男性にスポットを当ててみたい。


類は友を呼ぶ…の言葉どおり、周囲を見回せばサンプルには事欠かない。

結婚して30年近くにもなれば、彼らの生き死にをまざまざと眺めることになる。

以下は、私の周囲だけで観察できる

限定事項であることを事前にお断わりしておく。


年を取るにつれ、まずたいてい病気になる。

人間、死ぬ時は病死が多いだろうから、なにも特別なことではないが

長年に渡る不規則で気ままなライフスタイルにより

なるべくしてなったものであることは確かだ。


体に不調を感じても、それを信じたくないのか

嫌なことを後回しにする性格が多いのか、おしなべて発見が遅れる。

どうにもならなくなって、ようよう病院に行くが

その時にはすでに手遅れか

または悪化して長い闘病生活が始まるか…のケースが多い。


しかし、本人はわりとケロリひょうひょうとしているのだ。

それは、やりたいことをやってきた満足感によるものかもしれないし

人の気持ちを思いやったり、自分を顧みる能力が

元々欠落しているのかもしれない。


色々な最期を見たが、中でもわかりやすい実例を紹介しよう。

女性の次にゴルフが大好きな男がいた。

ある日のゴルフ中、一人で乗った彼のカートが転倒。

ヒザを複雑骨折し、二度とゴルフの出来ない体になってしまった。


彼に残された楽しみは食べ歩き。

いつまでもよその女性が気になる男性は、食をも愛する傾向が強く

皆さんまことによく召し上がる。

ゴルフに費やしていた時間を

あの町、この店…と食べ歩きに使うようになった矢先、胃に深刻な病が発症。

手術を受け、好きなものが食べられない体になる。


様々な女性と一戦交えてみたい男性は、元々明るくて人なつっこい人が多い。

彼もそのタイプで、いつもゴルフや食べ歩きの仲間に囲まれていたが

この時点で交流は途絶え、愛人も逃げ出した。


浮気者の取り巻きなど、その程度のものである。

一緒にいると刺激的で楽しいので、表向きの友達は多いが

いったん光を失うと、虫たちは寄りつかない。


しかし、彼はめげない。

これからは、苦労をかけっぱなしだった妻と静かに余生を送ろう…

食事療法もやってもらわないといけないし…とあくまで前向きだ。

前向きむなしく、ほどなく妻が急死。

子供達とは、これまでの放蕩がたたって絶縁状態…孤独な死を待つ身となる。


華やかな浮き名を流した昔を知る人々は、それを見て言う。

「ああなったらおしまいだね…」

しかし幸せなことに、本人はそれをおしまいとは夢にも思ってない。

身だしなみも行き届かない年配の病人など、もう誰も振り向きもしないのに

長年の自信と習慣で、本人はまだ女性を物色できるつもりでいる。

そうなったら、ただのスケベじじいだ。

知らないのは本人だけ。


病気やケガでない場合は経済を封鎖されて、やはり安寧な老後は遠のく。

また、体とフトコロ両方の場合もある。

この場合はどちらも生かさず殺さずで、長生きが多い。

真綿で首を絞められるような晩年が延々と続く。

加齢により心身衰えた頃に、次々と「精算」が訪れる法則のようなものが

あるのかもしれない…と思っている。


ただし重ねて言うが、本人はあまり気にしていない。

問題は妻である。

夫がそんなことになったら、一緒に暮らす妻も当然同じ運命になる。

貧乏か看病…時には自分が先に弱って死ぬ…あんまりだ。


これは、妻の感情が鍵なのではないか…と思う。

もし亭主の秘密を知ってしまったなら

泥棒に入られたか、犬に噛まれたような事故と思ったほうがいい。

なぜ隣の家でなく我が家に起こったのか…そんなことを考える必要はない。

たまたま魅入られたのだ。


…妻は、試されているのではないだろうか…

この試験に、どんな解答を出すかを…。

離婚、別居、継続…どの道を選んだとしても

赦(ゆる)し、忘れることが正解なんだろうと思う。

もし妻にそれが出来たとしたら

つらい記憶にこだわればこだわるほど険しくなるいばらの道が

多少なだらかになるようなイメージを持っている。


正解を実行するまで、この試験は繰り返される。

これは、我慢や忍耐より難しい。

キツい、プライドが高い、根に持つ…3拍子揃っている私なんざ

連続トリプルアクセルくらいの難易度だ。

よって、赦す、忘れるはいまだ会得していない。


だが、ダメ子にも救いの手はさしのべられる。

「麻痺」じゃ。

何回も繰り返すうちに、麻痺してくる。


時間がかかるのが欠点ではあるが

麻痺によって楽になり、赦しがたく忘れがたいはずのことが

さほど大変な出来事ではなくなる。


この麻痺が、はたして赦す、忘れるに代替え出来るものなのか

残された人生にどのような結果をもたらすのか、などの疑問は

今後、我が身をもって検証していきたいと思う。


行く末が気になるのは、まだ愛があるからだとお察しする。

どうかその愛で、すべてを溶かして頂きたい…

自分のことはタナに上げつつ、そう願ってやまない。
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聞いてはいけない

2009年08月11日 13時20分25秒 | みりこんぐらし
2ヶ月ほど前、用があって夫と一緒に取引先へ出向いた。

私までくっついて行くことはないのだが

そこは都会で、私はその街にある楽器店が目当てだった。

地元の同級生でバンドを結成することになり

担当するアルトサックスを見たかったのだ。


取引先といっても遠いので、仕事上のつきあいは少ないのだが

その会社の2代目社長と、夫とは同い年で昔から仲がいい。

とても歓迎してくれ、初対面の私は

自社ビルの中を案内してもらうことになった。

終始レディファーストで、優しく誠実な感じ。


「すごいですね~」の社交辞令にも

「親が建てたものだから…ボクはそこへ居させてもらってるだけです」

と謙虚で、これまたいい感じ。


そのうち子供の話になる。

うちに生息するのは、うれしげにしゃべるほどの作品でもないので

早めに切り上げて質問などしてみる。


       「社長さんのお子さんはおいくつですの?」

「高校2年です」

       「まあ、お一人?」

「いえ…二人です」

       「双子さん!男の子?女の子?」

「…両方です…」

       「いっぺんに両方?ステキですね!」


短い沈黙が流れた後

誠実な彼は、たいへん言いにくそうに言う。

「いや…あの…連れ子同士です…」

       「…ま…まあ~!ステキ!」

うう…どうやら聞いてはいけないことを聞いてしまったらしい。


「…2年前に再婚しまして…」

       「わ…わぁ~…ステキ…」

「学校行事で知り合ったもんですから、嫁さんの子供も同い年で…」

       「…あ…らぁ…ステキ…」


何がステキなのか、私もようわからん。

が、ステキを連発してテンションを保つしかないっ!

途中でやめたら、それこそドツボだ。


ちょっと前にも初対面の人に「お子さんは?」と聞いてしまい

「旅立ちました…」と答えられて

アチャ~!と思ったばかりだというのに。

バカバカ!みりこんのバカ!


    「じ…じゃあ、これから受験が大変ですね」

「そうなんですよ~。ダブルですからね~」

やっと脱出。

ふぅ~!


夫は帰り道に、笑いながら言う。

「おまえ、よくあんなこと聞いたな。 

 途中で話を切ろうとしたけど、あの雰囲気にオレの実力じゃあ

 入れなかったよ」

ズキッ…。


「バツイチの女とデキて、不倫がばれて離婚したんだぞ。

 子供は3人いて、跡取りの男の子だけ置くことになったけど

 大モメしたんだ。

 子供の学校で知り合ったのは、オレも初耳だったね」


       「知らねぇわっ!」

余計なことを聞いて自分のオバタリアンぶりを恥じた私は

頑固に開き直る。


誠実なのは態度だけで、心は不実だったのねっ!

金持ちだから相手も離れやしないわっ!

将軍様じゃあるまいし、な~にが跡取りじゃ!

子供を裂いてまで続けるほどの会社か!

勘違いもたいがいにせいっ!


    「聞かれたくなければ、言えないことをしなければええんじゃ!

     不倫の末に再婚しましたから聞かないでくださいって

     首からぶら下げときゃええんじゃ!」

勢いはおさまらず

    「あんな会社、つぶれるわいっ!」

と、さんざん毒づきながら帰った。


…先日、本当に倒産してしまった。

大きいだけに、融資が止まるといきなりであった。

後味悪っ!

先妻の実家が裕福なので

離婚していなければ保証の面で活路があっただろう…という業界の噂に

意地の悪い私は少々胸がすいた。
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皆勤賞

2009年08月08日 10時54分39秒 | 選挙うぐいす日記
この冬、とある小さい選挙があり、今のところ参加の予定だ。

今回で3期目…そこはぜひ行きたい現場である。

小規模な選挙は、私好みの

“オモシロメンドクサ”な出来事がたくさんあるからだ。


この陣営では午前と午後や、曜日で分けたりして

できるだけ多人数の初心者うぐいすやお手振り係を用意する。


小さい町なので、一週間べったり関われる元気なヒマ人の数も少ないのだが

私は違う意味で、その方針を推奨している。

体験ツアーみたいなもんだ。


うぐいすのうまい下手で、票が変化することはほとんど無い。

経験があろうと無かろうと、参加する人数が多ければ

本人はもとより家族や親戚友人などの票が増える。

小さい町なら、なおさらだ。


しかし、リスクもある。

内部事情が漏れやすいし

出たがりというのは、おしなべて口が達者。

しかも気位が高く、負けず嫌いである。

もちろん、私もその一人だ。

そんな女たちが集結するのだから、もめないわけがない。


前回私は働いていたので、間で2日休んで仕事に出た。

復帰した朝、出発してすぐに50代始めの女性カツコが

「ここで降ろしてほしい」と泣き出した。

この人とご一緒するのは、前回に続き2回目だ。

はて…こんな人だったっけ?


体調が悪いのか?と聞くと、そうではないと言う。

選挙事務所に歩いて帰れる距離だったので、そのまま降ろした。


昼に戻ってから、事情があきらかになる。

「私は一昨日と昨日、みりこんの留守を守って頑張った。

 でも今朝、みりこんの第一声を聞いて

 候補が私の時と違って、ホッとしたのがわかった。

 この選挙のために仕事まで辞めて、ずっと参加しているのに

 候補に誠意が届かないことが残念で、いたたまれなかった」


…どうやら私が悪いらしい。

おまえはアホか…と言いたいところだが、そうはいかない。

わだかまりを残したままだと、票が減る。


しかたがないので謝る。

「ごめんなさいね、勝手をして…大変でしたね」


しかし、それで終わりではない。

味方が欲しかったのか、翌日から娘を連れて来る。

母親似で気性が激しいらしく

「母が理不尽な扱いを受けたらいけないので、監視に来ました!」

な~んて、すっかり戦闘モード。

理不尽なのは、あんたの母親だってば。


「実家の前でさせてくれなかった…親に見せたかったのに…」

と母子でふてくされる。

なにしろしろうと集団なので、心構えや覚悟など皆無である。

ツアコンとしては、出来るだけそういう希望に沿うようにはしているが

タイミングもあり、通る度に…というわけにはいかない。


そうかと思えば、他の子に

「もっとハキハキ言えないのっ?」

「ダメダメ!そんなんじゃあ!」

などと厳しく演技指導。

娘の前で、いい所を見せたいらしい。

運転手にルートの指示まで始めたので、これはさすがに止める。


初めてでおとなしかった前回と打って変わり

2回目の今回は、すっかりベテランのつもりなのだ。

慣れた頃にありがちな勘違いである。

うぐいすで一番重要なのは、マイクでワーワー言うことではなく

和を保ち、候補や運転手のさまざまな負担を軽減することだ。


私のいない2日間、最年長を武器に

かなりの“個性”を発揮できたのが、よっぽど楽しかったのだと思う。

いったん自由を知った後で、再び管理されるのはつらいものだ。

そりゃ、涙も出よう。

ここまで増長させたのは、休んだ私のせいだ…と反省。


「下手なくせに…」「何様だと思って…」「おのれを知らん」

他の子からもカツコに対する苦情が出て、かしましい。

疲れが出る頃、不満も吹き出すものだ。


さて、無事当選し、祝勝会の席で

候補が私に花束を用意してくれていた。

もらって悪い予感がし、振り返ると…

ゲッ…やっぱり泣いてやがる。


自分は頑張ったのに、花ももらえない…仕事まで辞めたのに…

と、娘や側にいる人に訴えている。

「はい、皆勤賞」と花束をカツコに渡し、早々に帰路につく。


毎回人の入れ替わりもあるが、カツコは今回も絶対いると確信している。

3回目ともなると、さらにバージョンアップしていること必至。

気が重い反面、また面白いことがありそうな予感もしている。
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総選挙

2009年08月04日 17時17分08秒 | 選挙うぐいす日記
総選挙が近付いてきた。

今回も早くから盛り上がっており、結果が楽しみだ。

作り物のドラマより、よっぽど面白い。


この数年で、政治家も良い人、悪い人、やってるだけの人の

3種類にはっきり分かれたような気がする。

国家国民のためにちゃんと働くという当たり前のことをする人を

「良い人」と言わなければならないのは、はなはだ残念である。



以前、代議士(故人)の選挙戦に参加した時の話。

悪人ではない…というのが、長所といえば長所。


急に寒くなった頃で

先生、地元の店に飛び込み、コートをご所望。

「いいのが無い!」

とご機嫌が悪い。

カシミヤ100%をお望みなのだが

そんなハイカラなモンは売ってなかった。


「だから田舎はダメなんだっ!」

ウール混で妥協した先生はおっしゃる。

その田舎の票で、あんた国会に行ってるんじゃなかったっけ?

とも思うが、坊ちゃんなんてそんなもんなんだろう。


この選挙は、違う意味で地獄だった。

奥様の香水である。


先生が演説会などで不在の時は、奥様が選挙カーに乗る。

初老の奥様は、何期も当選している代議士の妻にふさわしく

とてもさっぱりした気性。

しかし香水は、さっぱりしてないのをお好みだ。


シャネルの濃い~のを

車の中でしょっちゅうシュッシュとふりかけるので

つらいなんてもんじゃない。

戦うのは選挙ではなく、吐き気だ。


一日の終わりには、運転手やうぐいす仲間と

「傷は浅いぞ!」

などと、何度もうがいをしながら励まし合う。


香りで印象付ける作戦もあるのか…と最初は思ったが、違った。

この奥様、見た目はとても上品なのだが

それは世を忍ぶ仮の姿…

実はヘビースモーカーで、タバコのニオイを消すために

香水をふりかけているのだった。


未成年じゃないから構わないが

この人も政治家の娘でお嬢様だろうに、どこで覚えたんだか…。

若い頃はヤンキーだったんじゃないのけ?…な~んて

おひなさまのような横顔を見ながら、楽しい想像をめぐらせる。


次の朝、選挙カーに乗った先生は

車内にしみついたニオイに顔をしかめる。

「くさいな~…誰?香水がきついの」

…あんたの嫁じゃ…。


さらに困るのは、頻繁なオナラ。

「わはは!出ちゃった!」くらい言ってくれれば楽だが

“こいた”奥様自身が何ごともなかったかのようにすましているので

こちらも反応に困って硬直。


車内に漂う何ともいえない雰囲気…

一瞬の沈黙が怖くて、そりゃもう気を使ったが、そのうち慣れた。

気にするこっちがコモノに思えてくる。

香水が必需品なのは、このためでもあった。


年を取って長時間車に揺られると、あちこちゆるむのかもしれない。

出物腫れ物、いちいち気にしていては

政治家の妻など務まらんのじゃ。

この人、外見はなよなよしてるけど

中味は百戦錬磨の男なのだ。

香水は、一応女としての気配りらしい。


ブリッとやらかしといて、車が支持者に近付くと

「どうか、主人を助けてやってくださいましね…」

なんて涙声で言ってる。


すっげぇ…。

さすがだ…。

香水さえ無かったら、弟子入りしたいくらいだ。


ごくたまにだが、選挙カーの中では

こんなことが起こっているのである。


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ローカルCM

2009年08月02日 14時53分30秒 | みりこんぐらし
大事なことはろくに考えないのに

どうでもいいことを真剣に考えるのは、私の悪い癖。

ここ数年、私の住む地方で流れるCM。

とある分譲地のものだ。

しょっちゅうやっているのだが、つい凝視してしまう。


郊外の邸宅に住む一人の女性が

身支度を調え、都会へ出勤する過程を描く。

離れているようでも、街へは案外近いんですよ…と言いたいらしい。


キャリアで(…のつもりらしい)

セレブな(…のつもりらしい)

美女(…のつもりらしい)が化粧をするところから始まる。

出演のローカルモデルも「そのつもり」で精一杯頑張っている。


そのおネエちゃん、すましてマスカラをつけるのだが

その時、ちょっと白目をむくのだ。

見苦しいというほどではないが、あまり美しい光景とは思えない。


上まつ毛のマスカラをつける時は

根元から引っ張り上げるようにして塗るので

ライトな“貞子”状態になるのはわかる。

化粧の中で、一番見られたくない行程かもしれない。


「リング」に出て来る貞子の、あの目が怖いのは

普段あんまり見ることのない

黒目の上限を惜しげもなくさらしているからではないかと思う。


もちろん、あそこまで激しく露出しているわけではない。

ちょびっとだ…ちょびっと。

別にかまわんが、なぜにそれをわざわざアップで流す必要がっ?

いつも、考えてしまうのじゃ。

同じ県のよしみで、ウケ狙いと思いたいが

そういうわけでもなさそうである。


ここが地方と全国版の差だろうか。

車の前でポーズを決めたり、キリッとした表情で改札を抜けたり

一生懸命「都会的なイメージ」を出そうとしているのはわかるんだけど

そこはやっぱり地方都市。

予算やセンスがあと一歩…無理や背伸びが痛々しい。


しかし、少なくともインパクトという面では成功したのではなかろうか。

その対象者が、遠方の分譲地を買う予定0%の

私であったところは申し訳ないと思っている。


何年も流しているところを見ると

いまだ完売には至ってないようだ。

早く完売してCMを終了してほしいような

ずっと見たいような、不思議な気分である。
コメント (4)
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