殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

ドク子

2009年05月30日 14時42分09秒 | みりこんぐらし
このところ、病み上がりの義母のために

両親の食事作りに通っているのはご存知であろう。


夕方から夜までいるので、実家の近所に住む人々と会う機会も多くなる。

昨夜も「ピンポ~ン」と来客。

出て見ると、あれ懐かしや…

こちらで暮らしていた頃、同じ子供会だったママ友

“ドク子”ではないか!


       「久しぶり~!」

「元気だった~?」


ドク子の末っ子と、うちの長男が同級生なのだ。

少なくとも、私より10才以上年上には違いないのだが

年齢を絶対に言わないので、はっきりしたことはわからない。

小柄なのをいいことに(小柄には不必要に反応する私よ…)

若作りしているので、一応おなさけで年齢不詳ということにしておいてやる。


ドク子は昔からアクティブだ。

今は非常勤として教育機関の雑用をしながら

地域のいろんな役員をこなし

スポーツや趣味の会などを主宰している。


今日は婦人会…今は女性会というらしい…の行事の案内を持って来た。

が、用件もそこそこに、姑の悪口や近所の噂などを

機関銃のようにしゃべる。


      「お姑さん、まだ…生きてらしたの?」

「生きてるわよ~!死ぬもんですか!ずっと生きるつもりよっ!」

この人、女だけど言葉がオネェなのだ。


老眼が進んじゃって…方面の話になったので、私もお上手を言う。

      「あら、外見はちっとも変わらないよ。

       若くなったんじゃないの?」

「えぇ~?そう~?」

ドク子は頬に手を当て、嬉しそうだ。

年寄りにこれくらいは言って喜ばせてやらないと。


「あなたも変わってない…」

ドク子は、剃りすぎて辰吉○一郎みたいな眉毛をクイッと上げて

私の顔をしげしげとのぞき込む。


「…とお返しに言ってあげたいけど、さすがに小ジワが出たみたいね!」

ちょうど門まで出て来た義父が、プッと吹き出す。


じゃあね~!会えてうれしかったわ~!

ドク子はちっちゃい体でひらりと自転車にまたがり

手を振りながら帰って行った。


これがドク子なのだ。

本名はトク子なのだが、ひそかにドク子と呼んでいる。

発言に毒があることでは、ちょっとした有名人である。

しかし、悪気は無いので腹は立たない。


嫁姑関係が壮絶を極めることでも、昔から有名人である。

一見そんな姑さんには見えないので、真偽のほどはわからないが

家にいたくないのでいろんな役を進んで引き受けるのだと

公言してはばからない。


いつも忙しそうに、西へ東へ走り回り

地元の活性化に余念がない。

少々まき散らす毒よりも、地域貢献のほうがまさっているのだ。

まったく、いさぎよい。

その後、ひさびさの毒にしびれつつ

顔のマッサージに励んだ私である。
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通販生活

2009年05月27日 13時53分29秒 | みりこんぐらし
通販サプリメントのテレビCM。

「家事で一日中立ちっぱなし…48才…主婦」

さもしんどそうに額に手を当て

これ見よがしにため息をつく主婦。


そりゃ、たいへんではないか!

経験豊かな専業主婦が、一日中立ちっぱなしで家事をし続けるなんて。


ごはんも立って食べるのか?

14時間労働くらいしているのか?

これは、相当な嘘つきか

よっぽど要領の悪い女にちがいない…。


私は彼女の半生がとても心配になり、思わずつぶやく…

あんた、○酢ニン○ク飲む前に

嘘つきを直すか、ばあやを雇うかしたほうがいいぞ。


いやいや…もしかしたら、子だくさんかもしれない…

と、一応考えを巡らせる。

愚痴が出るほどしんどいなら、生まなきゃよかったのだ。

サプリより避妊だな。


あ、旦那や姑が厳しいのかも…

だったら、サプリより先に離婚だな。

この年になって、口答えひとつできずに働かされるだけなら

無理して一緒に暮らしても、恨みが残るだけじゃん…。


とまあ、テレビショッピングには比較的冷ややかな私だが

これは本来の姿ではない。

女に生まれた以上、通販・店販かかわらず

決して買物が嫌いなわけではないのだ。


しかし、身近にモニターがいて

たいていの商品を網羅していたとしたらどうか。

良い、悪い、宣伝文句ほどではなかった…

そんな情報をいち早くキャッチでき

お試しまで可能な環境ならどうだろう。


わざわざ電話して買い求めるまでもない…と事前にわかるので

いきおい通販とは無縁になってくる。

そのモニターとは誰か…義母である。


よくCMしている、泡立ちのよさそうな石鹸。

「あれ、どうだった?」

「ダメダメ!あんなに立派な泡なんか立ちゃせん」


これもしょっちゅう流れている

初回に限り優待価格で買えるというサプリメント。

「効果あった?」

「はん!どこも!なんとも!」


30代から使うという、これもたびたびたび流れている某化粧品だけは

いっときお気に入りだった。

効能効果の方面…ではない。


「いつも担当の先生が電話してくれて、注文聞いてくれて

 いろいろ相談にのってくれる…」

「何の先生?」

「薬の先生」

「薬学博士?薬剤師?」

「なんかよくわからんけど、資格のあるえらい先生らしい。

 化粧品でも医薬部外なんとかだから、詳しくないといけないんだって。 

 若い娘さんなのに、人は見かけによらないわねぇ」

…見かけって…見たんか…?


博士や薬剤師が、通販の営業電話なんてするものか…と言ってやりたいが

先生、先生とすっかり信頼して、顔のみならず病気のことまで相談し

「私には先生がついてる」とまで得意げに豪語するのだから

関わらないに限る。


罪なことをするものだ…とも思うが

このように御(ぎょ)しやすい消費者がいるから

経営が成り立つのであろう。

ま、そのうち「先生」にも飽きて、別の化粧品に乗り換え現在に至る。


各種健康食品、健康器具、衣類に魚焼き器…

テレビで再三目にし、耳にしたあげく

どうなのかな?と思い始めた頃には、とっくに手に入れ

飽きてそこらへんに放置してある。

よって、一度使ってみたいものはいただくことにしている。


そこまで宣伝するからには

商品代金には、原価を大きく上回る広告宣伝費がたっぷりと含まれているのだ。

お好きな人はせっせと買って、せいぜい宣伝費を出資してやるがいい。


代金は確かに安いが、送料が変に高いのもある。

ごく小さな品物なのに、送料が900円なんて

小さい字で下の方にこっそり書いてある。


指定宅配業者が、こんなに高い見積もりを出すわけがない。

人間の頭というのは、項目が異なると別物…と認識してしまうので

大変都合がよろしいようである。


冷たい私は、今日もテレビCMに一人突っ込む。

「そんなもん飲むより、病院行けよ…」

そして、病院行きながらそんなもん飲む人のお下がりを待つ。
  
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ちょっとお出かけ?

2009年05月25日 17時03分07秒 | みりこんぐらし
昔、ちょこっと死にかけたことがある。

なぜそうなったかを話すのは非常に恥ずかしい。

いつもはだらしないくせに

ふすまの鴨居の上を掃除しようと思い立ったことから始まる。


私の背が低かったら、あっさり脚立を使っただろう。

届きそうで届かない部分を拭くために

取りいだしましたるはお子様イス。

低いお子様イスの上に立ち、バランスをとるために

夫のベルトをぶら下げてつかまったまではよかった。





どうしてそうなったのかはわからないのだが

とにかくイスは転がり、私はベルトで首つり状態になった。

そのまま意識を失う。





気がついたら、私はゴツゴツした粗い岩肌の

山らしき場所を群衆に混じって歩いていた。

一人じゃないことに安堵しながら、無言で進む。

周囲は日本人だけだったと思うが、圧倒的に老人多数。


ぽっかりと大きな洞窟…鍾乳洞の入り口みたいな所へ着くと

みんなゾロゾロと穴の中に入って行く。


穴の中はやはり岩々していたが、意外にハイテクなのだ。

目に前に大きなスクリーンがあって

映画みたいなものが見られる。

やはり岩で出来たお立ち台みたいなのに立つと

自動的に上映される仕組みらしい。


お立ち台に立つ人は次々に代わり

今は、さっきまで並んで歩いていたおじいさんだ。

映画は一瞬の上映時間で、お立ち台に立った人の生涯をたどる。

目にも止まらぬ早さなのに、なぜか内容は一同に理解される。

おじいさんは、生まれたり、結婚したり、戦争に行ったりしている。


それを眺めているのは、我々岩山ツアーの面々だけではない。

見えないのだが、それが元々岩山ハイテクアジトを

所有する方々であることだけはわかるのだ。





あっという間に順番が来て、私がお立ち台に立つ。

誰に促されたのでもない…ただ自分の順番だとわかるのだが

これが相当恥ずかしい。


まず真っ赤な、母の産道を明るいほうへ向かって進むところから始まる。

いいことも、悪いことも、思ったことも、全部上映される。

しかも、いいことは早回し

悪いこと、恥ずかしいことはスローになる。


近所のおばさんの愛読書「婦人倶楽部」を盗み読みしている私。

猫に無理矢理首輪をつけて、犬として扱おうとしている私。

子供の夜泣きがうるさくて、殺意を感じる私。

しきりに誰かの悪口を言っている私。


ストーリーはどんどん進んで

お子様イスに立ち、ベルトにつかまったところまで来た。

イスが傾き、ベルトの輪っかに顔を突っ込んだところで終了だ。


わ~!と思ったら意識が遠のき、今度はお花畑。

見渡す限り、足首くらいの高さの花が一面に咲き乱れ

とてもいいにおいがする。

私はひとりぼっちになっていた。





少し先に赤い小さなタイコ橋がかかっている。

とってもラブリ~。


橋の向こう側も、やはり美しい花がいっぱい咲いている。

花の地平線だ。

橋に近づいてみると、その下を浅い川が流れていた。

水は澄んでおり、川面から丸い小石が見える。


橋を渡って向こう岸へ行ってみてもいいのだが

私はどこかでわかっている。

それが迎えが来ないと渡れない橋だということを。


待てど暮らせど誰も来ない。

しかたがないので、花の中に寝転んだ。


目が覚めたら自分の家のユカだった。

首がしまったからなのか、落下して打ったからなのか

すごく頭が痛い。

牛革の太いベルトが、刃物で切ったように真っ二つになって

鴨居からぶら下がっていた。

そのまま起きて、風呂に入って寝た。


もしも「あの世」みたいな所があり、そこへ行ったら

戸惑わなくても大丈夫。

そこでのスケジュールは、自分のどこかにセットされているみたい。

それだけ。ははは~。
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女帝

2009年05月23日 13時19分45秒 | みりこんぐらし
昨日、義母が退院した。

おまえんとこのバアさんの話なんかどうでもええわい…

と言われそうだが、まあ、まあ…。


癌と言われていたのに、手術に臨んだら違っていた。

軽い手術ですみ、図らずも早期の退院となった。


「早く帰れてよかった」

と言いながら、義母はなんとなく残念そう。

病状の軽重は、そのまま彼女の地位に直結するからだ。


そんなはずはない…病気とはどんなものでもつらいはずだ…

と普通は思うだろうが、義母に限っては違う。

昭和初期には珍しかったであろう一人っ子の義母は

みんなが心配して優しくしてくれる病気が大好き

病気が友達なのだ。


「体が弱くて…」と言いながら

数年ぶりの“友達”の訪れに顔は輝き

病気なんだから優しくしろオーラを体中から発する。

いつもの娘の侍女役から、つかの間のナンバーワンに返り咲く

この瞬間が大好きなのだ。


「誰にもナイショで入院するから、みんなもそのつもりでね…」

と言いながら、入院直前まで電話にかじりついて

知り合いという知り合いにふれ回る行事もいつもどおり。


入院前、遠方から見舞ってくれた親戚に

「私の形見…」と称して、涙ながらに渡した自作の押し花の額は

次回作を贈呈することになるだろう。


入院中は例のごとく、いつも周囲を笑わせて

同室の患者からも、医師からも看護師からも人気者だったと強調。

自分だけ「特別に」主治医の人数が多かった…

自分だけ「特別に」回診の回数が多かった…

これも恒例。


退院のその足で義父と寿司屋へ行き

病院食には出てこなかった菓子パンや惣菜を

しこたま買って帰宅するのも恒例。

食事療法をする気などさらさら無い。

健康になったらただのヒト…それでは都合が悪いらしい。


術後の痛みが消えぬ間に、すませておきたい心残りはただひとつ。

うちの長男との和解だ。

昨日も涙ぐんで色々言っていた。

「私もムシャクシャして、つい当たってしまって…」

そこまではしおらしいのだが、以後いきなり逆上する。


「だって、しょうがないでしょ?!」

しょうがなくない…。

一応長男に伝えると

「はっはっは。死んだと思ってもらおうか」


まさか

「あんたの変な娘が無茶するから、とりあえず絶縁ということにしている」

なんて真実を言えようはずもない。


娘のこととなったら異様に興奮するので

とどめをさす結果となる恐れ濃厚。

つつくのはおもしろそうだが、人殺しにはなりたくない。


しかもこの人、妙に刺激すると、昔から私の実家に文句言うのだ。

もちろん、尾ひれどころか胴体まで付け替える。

「いいっ?実家に電話するわよっ!」

と、一応良心的に予告する。

その表情や態度を眺めるのは、かなり消耗する。


すでに実家で過ごした年月より

嫁いでからのほうが圧倒的に長い。

製造元としても

いつまでもアフターサービスを続けるわけにはいかないのだが

万年少女の義母には理解できないようだ。

そこがまた、かわらしい部分でもある。


食欲旺盛、明日から娘とどこへ買物に行こうかと

楽しみにしている義母。

元気に帰って来たのはうれしい。

めでたしめでたし。

このぶんだと、あと20年はカタい。

おそらく私のほうが先に死ぬと思われる。
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便利屋みりこん

2009年05月21日 11時08分12秒 | みりこんぐらし
知りたくもないだろうが

義母が入院中の、私の一日をお話ししよう。


5時半…老化現象なのか、夫が早起きなので、しかたなく起床。

     夫と長男の朝食の準備をしつつ、次男の弁当作りに励む。

     持病のある義父を一人にしておけないので

     次男は夫の実家へ寝泊まりさせているため

     夫に弁当を預ける必要がある。

     よって朝が忙しい。    


6時半…夫、出勤。

7時 …長男出勤後、洗濯機を回しながら自分の朝食。

    その後、顔とか服とか、どうにかする…たいした変化は無し。

8時15分…“ラジオの精”はいらない…などと思いながら

       NHKの「つばさ」を視聴。

    ~以後、昼までは家事をしたり、どっか行ったり

     ブログ書いたりでチャラチャラする~

12時… 夫、いったん帰宅し夫婦で昼食。

     ついでに弁当を作り、会社ですませてもらいたいところだが

     昼休みに従業員をリラックスさせるために

     席をはずす目的が大きい。

13時 …夫、再び出勤。

  ~以後、16時までチャラチャラする~

16時 …夕食の下ごしらえ。

     義父の糖尿食、夫と子供の普通食。

17時 …おおまかに作った夕食を持ち、夫の実家へ移動。車で3分。

     実家へ行かない長男の夕食は、自宅に準備。        
     
     移動後、本格的に夕食の準備をしながら     

     明るいうちに庭の掃除や水まきをすませる。

18時 …義父、夕食。

     決まった時間に食事を摂る必要があるため、必ずこの時間。

   ~この間、義父の朝食準備。

    その他、義父が静かにテレビ鑑賞ができうる家事をする~

19時半…夫、実家へ帰宅、夕食。

     その後、夫と義父はサウナへ。

     ここで初めて掃除機登場。誰もいない間に掃除をすませる。

21時 …次男、実家へ帰宅、夕食。     

     仕事で遅くなるのではない。

     今はイカのシーズンなので、仕事帰りに釣り三昧。     

     後片付けをしていると、夫と義父帰宅。

21時半…ゴミと洗濯物を持って自宅に帰る。

22時 …入浴後、朝食と弁当の下ごしらえをして就寝。


とまあ、このようなサイクルである。

表にするとめまぐるしいようだが

仕事に行ってることを思えば、そうでもない。


しかし、昨日はちょっと疲れてフラフラした。

そこで、夫が早く帰って義父と一緒に夕食を摂ってくれれば

ひと行程はぶけると思い、提案してみる。

次男の釣りのほうが問題だとは承知だが

ここが血の汚さ…それは負担にならない。


夫の仕事は5時に終わる。

帰りに整体へ行くから遅くなるのだ。

毎日行かないと、腰が痛くて眠れないと言う。

では週に2日の休診日はどうなのか…と思うところだが

その点は、武士の情けで不問にしてきた。


「整体に行かないなんて、絶対に出来ない!」

夫は強く言い、機嫌が悪くなったので

私もカチンときて、口がすべった。

「無駄よ。何べん通ったって○美ちゃんは、なびきゃしないわよ」


かなり前から、夫は整体の受付け嬢、○美ちゃんを狙っているのだ。

これをなぜ知ったかというと

知り合いである○美ちゃんの姉から聞いたのだ。

苦情というほどではないが

「えらく熱心なようだけど、キズモノになったら困る」

と冗談ぽく言われた。


もちろん、このことは夫に言ってない。

こんな男にいい顔する○美ちゃんがいけないのだ。

夫も悪いが、患者にアドレスを教えた○美ちゃんも悪い。

キズモノでもハンパモノでも、なりゃあええんじゃ。

へっへっへ。

とがめたと思われては不本意なので、そのまま整体の話は終わる。


不特定多数の「見込み客」を持ち

情熱や駆け引き、接待など、思いつく限りの作戦を繰り出しながら

全員同時進行で「商談」を進めていく…

この天性の営業能力を本業で生かしていれば

今ごろは蔵が建っていただろうに…と思うと、はなはだ残念である。

しかしながら、才能を駆使して取引先を増やしていたら

昨今の不況で連鎖倒産していた可能性が大きいのも事実だ。

まこと、天の配剤というのは粋である。


では、朝をもう少しゆっくり出かけてもらえないだろうか…と提案してみる。

これも絶対ダメと言う。

早く出勤するのは、命の次に大事な朝のメールタイムのためだ。

このところ、夫は携帯を会社に置いて帰るので

一刻も早く出社して対応する必要がある。


ちっ、どれもダメか…と思っているうちに、体力が回復してきた。

夫はそんな私を気遣って、毎日おみやげをくれる。

グリコ「アイスの実」。

特売98円で喜ぶ、便利な女…それが私である。  
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初恋か~?

2009年05月20日 10時10分58秒 | みりこんぐらし
中2の春だった。

3年生の男女が十人ほど教室にやって来て

私を呼び出した。

すわ!リンチか?!


緊張する私に3年生代表は言う。

「Fと交際してもらえないか?」

誰のことかわかりゃせん。


彼らが口々に説明するには

野球部のエースで4番、しかも勉強ができる大切な友達だと…。

そのFが初めて恋をした相手が私だと言う。

私服の姿をひと目見た瞬間から

部活も勉強も手につかなくなってしまった…。

このままでは、高校受験もままならない…。

助けると思って、交際してやってほしい…。


今思えば、かなり身勝手な要望であるが

「受験に落ちたら、あんたのせいよ」

と言われてビビり、つい首をタテに振ってしまった。

「Fは、君が小林麻美(知らんだろうな~)にそっくりだと言ってる」

というのに、ちょいと気をよくしたという部分もあった。


当時の私は、初潮すら迎えていなかった。

背も小さく、体も細く

中学の制服を着た児童…といったあんばいだったので

何が何やらよくわからないうちに

「男女交際」なるものはスタートした。


しかし、何をどうすれば男女交際になるのか

いっこうにわからないので放置していた。

やり手ババアの任務を終えた3年生たちは

「マフラーを編め」

「誕生日が近いからプレゼントを」

などと、今度はうるさい姑みたいにあれこれ言ってくる。


昼休みはバックネットの横に集合を義務づけられ

二人、無言のまま立ちつくし

鐘が鳴ったら解散。

それを遠巻きに見守る3年生…。

こんなことより、同級生と長縄跳びがしたい私…。


業を煮やした3年生のボス格、野球部のキャッチャーからの提案で

交換日記なるものを始めることとなった。

運び屋は3年生がつとめてくれると言う。

しかし、これが面白くないのなんの!

天気がどうの、部活がすんでから塾へ行っただの…ばっかり。

苦痛なので、いつも「頑張ってください」と書いて返す。


すると今度は

「自分のことをどう思っているのかわからないとFが言ってる…」

いちいちやかましいんじゃ!


夏休み…3年生のはからいにより

3組のカップルで近くの海へおもむく。

こういうの、ちょっと男女交際っぽいじゃん…と

水遊びの好きな私は、うれしく参加。


集合場所に現われたF…。

青いリボンのついた、お子様用麦わら帽子をかぶって登場。

ごていねいに、あごヒモまできっちり結んでやんの。


制服と野球のユニフォーム姿はまあまあだったが

私服が痛い男の子だったのだ。

海といえば、麦わら帽子

しかも肩には緑色の水筒…。

それが彼のおしゃれアイテム…。


麦わら帽子のツバには

「ふじたゆ○のり(仮名)」とヒラガナで大きく書いてある!

私は目の前が真っ暗になった。


以後、もう彼とは会わなかった…と言いたいが

バカ正直だった私は、受験が終わるまで…という期限をよすがに

ひたすら耐え忍んだ。


家族に知られて怒られても

先生に「早すぎる」と注意されても、我慢した。

彼が念願の難関校に合格した時の喜びは

麦わら帽子に名前を書いたお母さんより大きかったと思う。


そして今…彼は国立大を経て地元の教師になり

小林麻美は泉ピン子と化した。


時々町で出くわすことがある。

結局自分は3年生たちの青春の1ページとして

オモチャにされただけだったのだ…とやっと気付いた私は

高校進学後も引き続き交際を熱望する彼をさっさと捨てた。

よって、お互い言葉は交わさない。


でも、見かけるたびにつぶやく。

「私の青春を返せ!!」
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スランプ

2009年05月18日 13時18分56秒 | みりこんぐらし
私の平凡でつまらぬ日常より

パパさんの「恋」はどうなっているんだ…

そうお思いのおかたもおられよう。


実は彼、最近スランプなのだ。

正確に言えば先月までは

毎回ケーキをくれるあのミキとたまに会いながら

S生命の保険外交員、ヨシエとネチョリンコンだった。


ことの起こりは2月…だったと思う…

養老保険の証書がうちに届いたことから始まる。

立て続けに生命保険の証書も届く。

書留で来るので、当然家にいる私が受け取る。


夫は何食わぬ顔で、取引先の親会社がS生命を吸収した話をし

「つきあいで入った」

そう説明した。

しかし、事前に言わず、発覚して問われてから初めて話すのは

ウソということになっている。

この男とも長いつきあいだから、わかるのだ。


私の問題は、そんなしょうもないことではない。

この保険料は誰が払うのだ?という疑問のみである。


つきあいなら、支払いは当然会社の経費である。

しかし、あの夫の姉ルイーゼが

息も絶え絶えな財政難の中

夫名義の保険料をすんなり経費から出すわけがない。


「払わないからね」

私は言う。

初老男性の保険料2口は太いぞ。


夫のさらなる説明が続く。

「取引先の建設会社に保険契約のノルマが生じ

 保険料はこっちで払うから、名前だけ貸してくれと言われた。

 だから保険料は向こう持ち…」


つきあいで入った…の次は、名義貸し。

供述が変わったことに気づきもしない。

しかし、うちの家庭は警察ではない。

細かいことを責め立てて一本取ろうなんて

若葉マークすることだ。


バカな…私は笑い飛ばす。

そんな危険な手段をいまどき使うものか。

昔は確かにあった。

私も断わりはしたが、名義貸しを頼まれたことが何度かあった。

今もあるのかもしれないが、そんな割に合わないバカなことをする

人間や会社とつきあう必要はないのだ。


しかし、夫にはそんなことは言わない。

金の出どころがうちではないとわかれば、それでいい。

改めて書類を見てみると、契約の相手は二つとも○○ヨシエになっている。

取引先ではなく、保険外交員との契約だ。


引き落とし口座は夫名義の知らない通帳。

よし。

夫の隠し口座だろうと、名義貸しのために向こうが作った口座だろうと

私には関係ない。


それをきっかけに

夫がパリッとした服装で出かけることが多くなった。

飲めないくせに急に飲み会が増える。

ゴルフも増える。

年を取って疲れるのか、家に居る時は寸暇を惜しんで

ひたすら眠っている。

いつもの恋愛ペースだ。


その後、夫の車にヨシエらしき人物が同乗しているのを2回ほど見た。

いまどきは政治家のおばちゃんくらいしか着ない

ピンク色のスーツをお召しだったので、すぐにわかった。


名前から察するに、あまり若くないだろうと思っていたら

どっこい30代半ばで、なかなかの美人である。

あの色香じゃあ、地味なミキなど吹っ飛んでしまうわい。

枕営業、いまだ健在。


以前D生命の人とつきあっていたのと同じく

また知り合いを紹介し尽くしたらポイだろうが

家にいないのは、けっこうなことである。


そして今月になった。

ミキからのケーキは4月上旬を最後に来なくなっていた。

惜しい!非常に惜しい!

ミキとだけは長く続いて欲しかったのに!

ミキ派だった私は、ちょっと残念。


ヨシエさんともうまくいかなくなったのか

用がすんで捨てられたのか

今月になった途端、これまた急に飲み会もゴルフも無くなった。

せっかく気候が良くなったのに。


前の保険外交員との恋や、数々の女性問題で

友達や知り合いと呼べる者はすでに激減しており

用は早くすんだようだ。


夫がフリーになって2週間になる。

どことなく元気がない。

相変わらず携帯を隠し歩くのを見ると

メール相手には不自由してないようだが

会ってパンツを脱いでくれる相手は、まだ出現していないようだ。

これほど長く「断れずにしかたなく…」行く飲み会や

「どうしてもと誘われ、シブシブ…」行くゴルフが無いのは初めてである。


ま、心配せずとも、気温の上昇と共に

また生き生きと復活するであろう。

私は「若々しく見えるよ…」

と、夏物のシャツなど新調してやる。

これを着て、若々しい恋に燃えるがいい。


「若々しい」が日常語として使われ始めたら

もうじいさんの証拠である。

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組長・5

2009年05月16日 16時11分55秒 | 組長
あれは去年の今頃だったろうか。

近所の掲示板に汚い字で貼り紙がしてあるのを見つけた。


“Y山Y美について

 この女はある男性をだまして500万円の金を巻き上げた上

 自殺に追いやった恐ろしい女。

 この町から出て行け!”


一緒に見つけた隣の若妻と二人

「ドラマではよくあるが、実際にこんなものを見ようとは…」

と狂喜乱舞。


Y美さん…近所に住む、セクシーな年増である。

自慢の足を惜しげもなく出して

長い髪をなびかせ、スナックへご出勤あそばされるお姿は…

とっても後ろべっぴん。


あまり話したことはないが、会えばいつもにっこりと挨拶する

気さくな人だ。

彼女からはいつも香ぐわしいコロンの香りが漂い

私はいつもうっとりと

鼻の穴をいっぱい広げてクンクンしてしまう。


「派手だとは思ったけど、そんなに怖い人だったなんて…」

若妻はつぶやく。
 
私は叫ぶ。

     「何を言う!ちょろっとだまして500万!

      すばらしい!ぜひ弟子入りさせていただきたいっ!」  
 
後ろだろうが前だろうが、わたしゃ美しいものには寛大なんじゃ。


弟子入り志願しようにも、それ以来ぱったり姿を見かけなくなった。

そしてこの春…自治会の掃除の日に知った

会費持ち逃げ事件へと続くのであった。


Y美さんは、貼り紙がされる少し前から

いけないお薬にハマッていたというのが、もっぱらの噂である。

家の郵便受けにタバコの空き箱を入れる自由業の男性の姿が

何度も目撃されている。

家に閉じこもることが多くなり

急激に痩せて、うつろになったのも噂になっていた。

支払いが滞ったので、貼り紙で嫌がらせをされたらしい。


そういえば深夜、ご主人が家の前で

自由業の男性に強い口調で何か言われていたのを見たことがある。

すれ違った時、甘酸っぱいような

動物の体臭のような複雑なニオイがして

「コロンをワイルドなやつに変えたのかな?」

と思ったこともある。

あれが、いけないお薬のニオイだったのかも?


とにかく、Y山夫妻は姿を消した。

先日ご主人の姿を見たので、無事でいることは確かだ。

少なくともご主人は…。


会費は持ち逃げしたんじゃない…人聞きの悪い…

集金したまま通帳に入れずに引っ越しただけ…。

美しいものに甘い私は、よその金なので

痛くもかゆくもないゆえ、そう思うことにする。



さてさて、前回のSじじい一味の伝言。

「総会を開け。Sを自治会長にしろ」


2~3日のうちに返事をする…言いたいことがあれば直接来い…

という内容だけ、月番夫人に託したまではお話しした。


月番夫人、私の返答をSじじいの子分、Cに伝えたところ

「そんなことを聞いてるんじゃない!」

とわめき、もう一回行って来いと言われた…と再びやってきた。


「何か答えを持って行かないと、どうも納得しないみたいで…」

なるほど…と私は彼女に二つだけ覚えて伝えるように…と言った。

我々一味で出した結論である。

総会は開かない、自治会長は順番、これを変えるつもりは無い。

異存があれば、必ずみりこん宅へ来るように。


「いいんですか?そんなことを伝えたら…大変なことになるんじゃ…」

奴らが正当に自治会のためを思っており

やましい考えが無いなら、総会を開く効用を説明しに来るはずである。        

私が直接Cのところへ出向いて伝えてもいいようなもんだが

「こちらから行った」と「来られた」では

万一もめた時に大きな差が出てくる。

ことをうまく転がすには「怒鳴り込んだ」より

「怒鳴り込まれた」のほうが、人聞きが悪くて都合が良いものだ。


私の伝言を再度伝えに帰った月番夫人が

それきり来ないところをみると、今度こそ伝書鳩から解放されたようだ。


しかしである!

SじじいやCが何か言ってくるのを

手ぐすね引いて待っているのに!

夜遅くまで化粧も落とさず待っているのに!

いっこうに来ないではないか!
   
あ~あ、とても残念だ。
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置き手紙

2009年05月14日 14時45分00秒 | みりこんぐらし
一昨日、義母が入院した。

「お父さんのこと、頼むわね…。

 何も出来ないから、ほんとに困るのよ…。

 せめてごはん炊くのと洗濯くらいは覚えてほしいのに…」


私は、何も出来ないほうがいい!と断言する。

   「気まぐれにチョコチョコやられたら、かえって腹が立つ」

「そう?ならいいんだけど…」


自分の体が弱いとわかっているのに

結婚以来半世紀余り、いったい何をしていたのだ。

羽振りのいい時は、下へも置かぬもてなしぶり…

私には奴隷にしか見えなかったが

それを「尽くす」と表現しておいて

年取って貧乏になったからといって

急にあれこれ言っても無理ってもんだ。

というわけで、一昨日から夕方になると夫の実家に通っている。


年取ったせいもあるが、妻や娘がいない時の義父は

けっこうかわいいのだ。

誰も義父の本当の姿を知らない。

一緒に相撲を見て、朝青龍は悪い子じゃないが態度が憎らしいと言い合う。

二人でエンドウ豆のサヤをむきながら、自民党と民主党について語る。


昨日の夕方行ったら、義父がダイニングキッチンにぽつんと座っていた。

入り口の床には、山盛りの洗濯物。

テーブルの上には大きな紙が一枚。


「アツシ(仮名)様

 洗濯物をたたんでください。

 風呂も自分でやってください」

チラシの裏に太いマジックで書きなぐられた

カナクギ文字のそれは、夫の姉…カンジワ・ルイーゼの手紙だ。

義母の病院へ見舞いに行っていた義父と

入れ違いに帰ったのだろう。


こいつの考えていることはわかっている。

この機会に、父親に家事を仕込むフリをしているのだ。

きれい事で言えば、心を鬼にした娘の愛情…ととらえることは出来る。

しかし、この女とのつきあいも、はや30年近い。

善意の顔の裏にあるのは、いつも残酷と横着だ。


ハシひとつ、お茶ひとつ自分でどうにかしたことのない80近いじいさんが

どうやって洗濯物をたたむのだ。

やらせるならもっと早くに、そして徹底的に教えるべきだった。

今、急にそんなことを言ったって

妻を失うことに怯える老人を傷付け、当惑させるだけである。

遅いんじゃ!

いつも遊んでいるくせに、おまえがたたんで帰ればええんじゃ!


ルイーゼの魂胆はわかっている。

「私はお父様に練習させようと思っているのに

 みりこんのやつが甘やかして邪魔をする…」

そういう状況を作りたいのだ。

ちょこっと置き手紙したからって、どうせ出来やしないのは

娘が一番よくわかっている。

しかし、父親に宿題を与えるけなげな娘を演じて満足しているのだ。

この安易な計算高さこそ、ルイーゼがルイーゼである由縁だ。


足並みを揃えるのが嫌で、ヒョイと「あっち側」…

「私はもっと本人に為になることを考えてます」の側へ身をかわす。

出来ないことをさせようとして

「やらない、やらない」と嘆いていれば

何か良いことに参加している気がして安心なのだ。


うわべしか知らない他人が聞いたら

皆ルイーゼが正しいと言うだろう。

しかし、義父という剛の者の生き方を

よそのこまめな老人と一緒くたにはできない。

好きなら…向いているなら、回りが止めてもとっくにやっている。


尾羽打ち枯らしている今はともかく

昔は父親の恩恵をかさに着て、娘でござい…と威張り散らし

母親と共に我が世の春を満喫していたではないか。

義父にだって、生涯譲りたくない尊厳はあるのだ。

最期の時まで、そのプライドを守ってやるのが真の愛情ではないのか。


甘やかしましょう、甘やかしましょう。

もはや、これから家事をさせる段階ではない。

欲が出て料理まで覚えられたら

家事どころか、火事の心配までしないといけない。


義父を散歩に行かせ、その間にあれこれすませる。

慣れぬ家事を仕込んでみじめな気持ちに追い込むより

足腰を鍛えさせるほうがよっぽどいい。


義父とはいろいろあったが、過去は過去。

いろいろあったからこそ生まれる戦友のような感情すらおぼえる。


義父がもっと弱ったら、一緒に散歩に行くのだ。

動けなくなったら、今は毎日自分で打っているインスリン注射を

私が打ってやるのだ。

ブスリ!…ワクワク。

おしめだって替えてやる。

さあ!来い!介護!

私は逃げない。

 
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バンド結成

2009年05月13日 10時56分01秒 | みりこんぐらし
先日、同窓会の集まりがあった。

日曜祝日の無い仕事に就いていたため

しばらくご無沙汰だったが、今回久しぶりに参加。


そこで部活の話になる。

参加者20数名のうち、数えたら半数以上がブラスバンドの仲間だった。

「これは異常だ!」

ということになる。


田舎なら当然だが、就職や結婚で故郷を離れた者のほうが多い。

その中で残った地元や近隣在住組に

ブラスバンドがこんなに多いのは、普通ではない。


部員に自営業の後継者が多かったこと

都会に出ても出世できそうにない者が多かったこと

などの理由が挙げられるが

それにしても珍しいことではないか…。


「これは、バンドを結成しろという啓示だ!」

「そうだ!そうだ!」

いつもながら、我が同窓会はノリがいい。


さっそく事務局を設置。

飲食店経営の女子の店。

会長…建設業の男子。

副会長…ヒマな私。


ついでだから…と部員でなかった者も巻き込むことにする。

「え~?無理だよ~!ボク、無線部だぞ」

あんた、確かヤマハに行ってたよねっ!ネタはあがってんだ!で決定。


「私、楽器なんてやったことないし~!」

あんた、保母じゃんっ!必須でピアノがあったはず!で決定。

ガタガタ言う者は、鈴、カスタネット、トライアングルでお茶をにごす。


ブラスバンドの頃、私のパートはフルートだった。

高校の時は、個人のバンドでギターなど弾いていたが

下手なのでほとんど格好だけ。

たまに「ア~♪ウ~♪」とあいの手を入れる。

ま、にぎやかし…というやつだ。


他にもスリー・ディグリーズ(知らんだろうな~)を夢見て

コーラスグループを結成。

歌のうまい子にほとんどを任せ、やっぱり「ア~♪ウ~♪」。


今回も、できれば慣れたフルートをやりたいが

そんなもん、バンドでやるのは

ブルー・コメッツ(知らんだろうな~)くらいしか知らない。

フルート担当のおじさまは、バトントワリングみたいに

ソロが終わると、フルートをクルッと回して脇に収めるのが

かっこよかった…。


吹奏楽のバンドは、私の夢であった。

このさいアルトサックスにチャレンジしてみようかと思っている。

演奏になるならないは別にして、みんなで何かをやる…

楽器に触れる日常を送る…

というのにあこがれていた。

それが気心の知れた仲間で出来るなんて最高じゃ~ん。


打ち合わせは粛々と進行する。

楽器は各自で調達。

練習場所は、サティアンと呼ばれる同級生の隠れ家。

まだ「たら」「れば」の段階なのに

話しているだけで興奮してしまう。


夏祭りに出よう…などという大胆な意見もあるが

まずは3年に一度の同窓会で披露…が目標。

次の目標である、老人ホームの慰問が出来るようになる頃には

自分たちも入所しているのではないかと思われるが

一同、できるだけ持ちこたえることを決意。


「じゃあ、これから携帯に連絡が増えると思うのでよろしく!」

会長が言う。

我々が揃って最初にした活動は、携帯文字の拡大であった。
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組長・4

2009年05月11日 13時38分41秒 | 組長
昨日、月番の女性が我が家に来た。

「あの、Cさんからの伝言なんですが…」

Cというのは、我が自治会の平和をかき乱すあのじじい、Sの一味である。


「自治会長さんがまだ入院中でしょう。

 ご本人も辞めたいと言われてるので

 新しい自治会長を決める必要があるそうなんです」


それは私も聞いていた。

聞いていたが、めんどくさいので保留にしていた。

老会長はダミーで置いておき、実質的な仕事は我々でこなそうと思っていたのだ。


「それでCさんがおっしゃるには、まず総会を開けと…」

また総会かよ…。

「その席で“みんなのために”CさんがSさんを推薦するそうです。

 そして、今後は毎年Sさんに会長をやってもらうように

 話を持っていくから、同意してほしいとおっしゃってました。

 それが“みんなのため”だと…」


この月番夫人は、Cの隣に越して来て年月が浅い。

仕事が忙しくて事情を何も知らないので

それはいい話だと思ってうちに来たらしい。

「熱心な方がいてくださると、助かりますわねぇ」


私は月番夫人に、奴らの悪行三昧を話してやった。

「まあ!そんなこと、ちっとも知らなくて!」

    「やりたい人にやらせてあげたいのはやまやまだけど

     そうはいきません」


直接言って却下されたら元も子もないので

何も知らない他人を月番だからと理由をつけて使い

こちらの出方を見るつもりであろう。

いかにも肝が小さく、セコい手だこと…。


前年度の決算にしつこく異議を唱えているのも

その口実で総会を開き、Sじじいを推薦して会長に据えることが目的なのだ。

推薦され、頭を下げられ、しぶしぶ引き受けるの図を夢見て…。


CとSの間で、話はすでに出来上がっていたらしい。

バカどもの考えそうなことだ。

うまいこと老会長を葬ったまではよかったが

我々役員が言われるままに総会を開き

Sじじいをすんなり承認するとでも思っているのだろうか。


自治会費の集金や決算が公正でないといちゃもんをつけておきながら

同じ人間を半永久的に会長に据えるのはOKという

主張そのものに無理がある。

そうはいくかい…。


「じゃあ私、Cさんになんてお返事したらいいんでしょうか…

 隣だし、もめるのは怖いです…」

    「2~3日待ってと言っておいてください。

     必ずCさんに直接お返事します。     

     それから、次回から言いたいことがあれば

     又聞きではわからないのでうちへ直接来てくださいと。

     それだけ伝えてください」   


じゃかましい!寝言言うな!と伝えたいところだが

あまり過激な内容をだと、図らずも伝令となった月番夫人に

被害が及ぶ恐れがある。


「あの…私…ガキの使いと思われませんかね?」

   「Cさんから頼まれた伝言自体、ガキの伝言ですから

    バランスがとれてちょうどいいでしょう」

それとも、私が今話したことを全部Cさんに伝えてもいいですよ…

「いえ!役立たずと思われて本望ですっ!」


私は前年度の三役と、今年一緒にやる会計の子に招集をかけた。

…絶対に総会は開かない。

…会長は現行のまま、または来年の順番で。

という即決の結論と共に

万一奴らが予期せぬ強行策に出た場合の対策も検討。


なにしろ普通の考えが通用しない者どもが相手なので

各自に個人的な攻撃が来ても同じ返答ができるように

打ち合わせをしておく。


しかし実際に表立って攻撃を受けるのは、おそらく今年度の役員である

私と会計の子であろう。

出産したばかりだし、出来ればこういうことには巻き込みたくなかったのだが

こうなってはいたしかたない。

つまらぬことでガタガタするのは、あほらしくてみっともないが

そのつまらぬことに心血を注いでこだわる者がいる限り

いつまで経ってもこのままなのだ。


この女の子は、偶然にも長男の友達の妹である。

小さい時からよく知っていて我が子同然、しかも威勢がいい。


「おばちゃん!戦おう!あいつら、常識がないんじゃ!」

彼女は言う。

ヤンキーな彼女から常識という言葉が出るとは思わず

我々おじさんおばさんは大ウケ。


さらに

「…追い込んでやる…」

なんとたのもしい!

我々は、固い絆を確かめ合って解散した。


家に帰ると、夫が言う。

「さっき誰か来て、何か用事があると言ってたぞ~」

    「誰?」

「知らん。また来るって」

    「男?女?」

「どっかのおばさん」

    「名前くらい聞いてくれればよかったのに…」

「知らんわいっ!なんでオレがそこまでせにゃならんのじゃっ!」

と逆ギレして大声で叫ぶ。

ガキの使いとは、こういうことを言うのだ…。

この役立たずめが…!
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駅前薄情商店街

2009年05月09日 15時09分35秒 | 前向き論
我が町の商店街の衰退ぶりは素晴らしい。

平日はおろか、週末でもほとんど人通りがない。

人の代わりに閑古鳥(かんこどり)という鳥が

買物カゴをぶら下げて闊歩している。


用事があってどうしても通らなければならない時は

買い物客より圧倒的に多い店員の、熱い視線を浴びる覚悟が必要だ。

注目されたい人にはおすすめの商店街である。


これでも10年ほど前までは、なんとか形を保っていた。

洋服ならここ、お菓子ならここ…そんな店がたくさんあり

地元はもちろん、近隣の町からも人が押し寄せた。


もっともらしい理由はいくつかある。

車中心の世の中になり、駅を利用する人が減った。

不況に加え、郊外に大型ショッピングセンターができて人の流れが変わった。


しかし、私は考える。

人間が一番の原因ではないかと。

時代もあろう、後継者問題もあろう

それでもこれを言っちゃあおしまいだが、そもそも欲が深い。


以前は毎年暑くなり始めると、毎週土曜日の夜には露店が出た。

夕涼みがてら買物…というわけで、家族連れを呼び込んだ。

そのアイデアは当たり、2年ほどは盛況であった。


しかし、商店街の人々はそれで満足しなかった。

毎週露天商を呼ぶより、自分たちでやったほうが儲かるのではないか…。


翌年から、小さい金魚しかいない金魚すくい

同じ模様しかない水風船などがこじんまりと並んだ。

こうこうと灯った白熱灯のもと

露天商の運んでくるどこか退廃的な雰囲気の魅力は失なわれたが

それでも、娯楽の少ない田舎町の人々は喜んだ。


そこで商店街は、翌年もっと大胆な案を打ち出した。

商店街で物を買う人だけ、優遇しよう…。

買わないと参加しにくい雰囲気にして、店の売り上げを伸ばそう…。

露店には来ても、店で買ってくれないと意味がない…。


買物の金額に応じて、金魚すくいや風船釣りのタダ券を配布。

券を持ってない人は実費。

これが、微妙に民衆の自尊心を揺さぶることに

恵まれて育った彼らは気付かなかった。


誇らしげに券を出す人は気分がよかろうが

毎週金魚ばかりすくっているわけにもいかず

券の無い人は、露店にも店にも二度と来ない。


芋を洗うような人混みだからこその勢いや活気を

主催者自らの手で握りつぶした。

人は、こういう器量の狭さには敏感なのだ。


このあたりから迷走が始まった。

さらに翌年から、同じ手間なら商店街で間に合う品物だけで

露店を運営しようということになる。

生ビールや焼き鳥など、商店街にある飲食店のメニューが主力となり

売れ残りの文房具やTシャツが並んだ。

もはや物好き、出好きしか寄りつかなくなってきた。


そこで商店街は、この行事をすっぱりやめた。

その頃には、各店の売り上げもかなり落ち込んでいた。

今度は各店が競い合うように、本業以外の商売に手を染め始めた。


本業の品物が欲しくて来店した客に

カツラ、宝石、毛皮…単価が高くて利益の太い、畑違いの商品を売りつける。

「行くととんでもない物をすすめられる…」

人々はそう言い合った。


飲食店のほうはどうかというと、こぞってゴルフを始めた。

料理屋の大将もスナックのママもみんなゴルフへ行き

帰りに自分の店に誘う。

少なくとも自分以外の3人は引っ張れる計算になる。

しかし店は当然ゴルフ仲間のたまり場と化し、一般客は来なくなる。


そうこうしているうちに、店主の高齢化で閉じられる店も増えてきた。

商店街は、なんとか活気を取り戻したいと

さまざまなイベントを企画してみたり

店の奥さんたちで作ったクッキーや

農家直送の野菜を販売したりと大奮闘。

しかし、いったん下り坂を転がり始めたものを

元に戻すのは容易ではない。


そこへ救世主現る。

シャッター通りを食い止めるべく、店舗を何軒か借りてくれた。

大がかりな改装もなく出来た店は

語尾にマッサージやデリバリーという単語のつく、よくわからない業種。

経営者…某組の方々。


こうして素晴らしい商店街は出来上がった。

しかしながら、一途に一筋に頑張ってきた店ももちろん存在する。

細々とではあるがしっかりと継続しているのは

なぜか商店街の振興活動に熱心でなかった店が多い。

数々の迷走ぶりは、焦りが生んだものなのかもしれない。


新しく出来た行列の出来るケーキ屋を横目に

クリスマスと誕生日くらいは、せめて商店街の店でケーキを買う。

闇にまぎれて、昔ながらの天丼を食べに行く。

どこで買っても同じ本なら、そこの書店に注文する。

今度は専門店でバッグを買ってみようかとも思う。

こうして協力しているつもりだが

私ごときが頑張ってみても、何の役にも立たない。


ここはいっそ、金の卵を生むニワトリのお腹を

欲にかられて開いてしまったモデル商店街として

「閑古鳥祭」など行ってみてはどうかと

また余計なことを考えては、一人ほくそ笑んでいる。
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どケチ道

2009年05月07日 20時13分53秒 | みりこんぐらし
病院の厨房で同僚だったはるちゃんは、筋金入りの節約家だ。

節約家というより、ケチや吝嗇(りんしょく)に近いかもしれない。

しかし、彼女から多くのことを学んだのは確かである。


私は夫が金銭的援助の必要な女性と交際していた数年間

自分の収入だけで食べ盛りの男の子を二人育てた経験があるので

節約に関しては、少々自信を持っていた。

しかし、はるちゃんには、とうていかなわない。


はるちゃんの家の食費は、毎月2万。

何があろうと絶対にこれは守る。

子供達は独立しているので、姑さんとご主人との3人暮らしだ。

米と野菜を作る農家なので、この金額でいける。


爪に火をともすような生活は、姑さん直伝らしい。

おかずの量や品数が多いと、小言を言われるそうだ。

はるちゃんもご主人も元々節約好きなので、問題は起こらない。


はるちゃんの家では、シイタケのジクは炒め物に

ニンジンや大根の皮はキンピラになる。

納豆は、1パックを3人で分ける。

焼きそばは、ひと玉で3人分作る。

肉は原則として食するためでなく「ダシ」の扱い。


家に野菜が豊富なはるちゃんだから出来るのだが

お金を出さないと手に入らない物

値の張る物の分量を少なくするのは

なかなかのコツといえよう。


さらに究極の技が…。

ご主人の月給を全て貯蓄に回して自宅を新築したが

この時代にあえて、トイレはくみ取り式にした。

水と下水道料金がもったいないからだと言う。

真似をしようとは思わないが、このいさぎよさが私の好みではある。


節約術なんかテレビでよくやっているが

トイレのタンクにペットボトルだの

安い卵を買うために2度並ぶだのよりも

同じやるなら、これくらいの覚悟はしてからテレビに出てもらいたい。

へん!やれるもんなら、やってみぃ!と

自分のことでもないのに鼻の穴をふくらませる私である。


ついでに私の節約術…と言えるものかどうかわからないが

食費部門を公開しておこう。

それは、買物の回数を極力減らすというものだ。


電気を消して歩いたり

風呂の湯張り温度を気にしたりというのは

性に合わないのでやらない。

暗闇で転んだり、湯船でしっかり温まれずに

風邪をこじらせたりしては、元も子もないからである。


特売を求めてスーパーをハシゴ…なんてよく聞くが

ガソリン代やオイル代、果ては長い目で見て

走行距離で査定が下がることを考えたら、まったく節約ではない。

食費を浮かせるために車の経費を高めるなど

本末転倒もいいとこだ。


徒歩や自転車だとハシゴしてもいいのではないか…そうではない。

お金では買えない貴重なもの…時間を浪費している。

目先のお金のために、大切なことを見失ってはならない。


そもそも、誘惑の巣窟とも呼べるスーパーへ頻繁に出入りすること自体

忍耐力の無駄遣いである。

あまたの商品を目にしながらおのれに強いる我慢は

気付かないうちに自分の心を痛めつけ

そのほこ先は、罪のない子供や亭主の収入に向けられる。


度々買物に行って無意味な自己抑制を繰り返すよりも

行く回数を減らしてしっかり買うほうが

財布にも心にも優しいと私は考える。


チリも積もれば山…と節約の大家はおっしゃるが

私を含め節約に向かない多くの人間がそれに習うと

ストレスも山と積もっていくものだ。


家族の一挙手一投足に目を光らせ、家庭を殺伐とさせながら

無理をして浮かせたお金は

必ずどこかで、しかも不本意な形で吐き出す運命となる。


お金を大切に思うならば、まず店に近づかない。

冷蔵庫にあるもので、家族の喜ぶ食事を作る頭と腕を磨く。

それが真の節約である。


しかし最も効率がいいのは、偏食の無い子供に育てることだ。

よくいるのだ。

さっきまで、生活が大変…とぼやいていたその口で

「子供の牛乳が切れたから、買わなくちゃ」

しかし買いに行くと、絶対牛乳だけでは終わらない。


菓子パンや牛乳など、消費期限の短い特定の食品を好物にしてしまうと

補充のために買物の回数が多くなる。    

野菜を食べない子供にしてしまうと、食費どころか医療費までかさむ。

米は安くて保存のきく、節約には優良な食品である。    

おいしいおかずを作って、ごはん好きの

何でも喜んで食べる子供に仕向ける。


何が、牛乳が無いと機嫌が悪い…だ。

何が、朝パンじゃないと食べない…だ。

子供をのさばらせることはないんじゃ。


ということで、はなはだ乱暴ではあるが

あくまで我が家のやり方なので、あしからず。


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はるちゃん

2009年05月06日 20時19分22秒 | みりこんぐらし
病院の厨房で働いていた時の同僚、はるちゃん。

入って来た時、なんて派手な人だろうと思った。

コーディネートがすごいのだ。




年も近く、そのうち親しくなったので聞いてみた。

「原色が好きなの?」


はるちゃん、服は基本的に買わない主義だと言う。

もらい物ばかりなので、組み合わせとか

似合う似合わないを考えていたら着られないそうだ。


人からもらう服というのは、たいてい派手で

着回しが困難なものと相場が決まっている。

それに合わせてアクセサリーをつけ

バランスをとるのが、はるちゃん流の「おしゃれ」なのだそうだ。


そして、元気に言う。

「大丈夫です!車に乗れば、首から上しか見えません」




はるちゃんの生き甲斐はママさんバレー。

遅番の時は、そのままユニフォームに着替えて直行だ。

ふと足元を見ると、ソックスから指先とカカトが丸出し。


      「どうしたの?」

「破れました。もう4年くらいこれ一足なので」

     「ソ…ソックスの役割りは…?」


はるちゃん、こともなげに言う。

「大丈夫です!靴をはいたら見えません」


はるちゃんの趣味は貯金。

自分のパート代で家族の生活費をまかない

ご主人の給料は全額貯金すると言う。

厨房いち、リッチなのだ。





厨房のメンバーで食事に行き、その日は私が立て替えたので

翌日みんながそれぞれ割り勘の分をくれる。

はるちゃん、重そうなきんちゃくを抱えて出勤してきた。

う…悪い予感…。


きんちゃくをドサリと置き

「はい、これ、昨日の分です!」

     「ええっ?」

中には硬貨がいっぱい。

     「いやだよ~!こんなの!」


はるちゃん、厳しく言う。

「あら、お金はお金でしょ?」

お札は農協へ、硬貨はこういう時のために家で貯めていると言う。


はるちゃんの家は兼業農家だ。

ケチなはるちゃんが

いつになく段ボール箱いっぱいのじゃがいもを持って来た。

「うちにあったものですけど、皆さんで分けてください」


はるちゃんにしては珍しいので、みんなで中をのぞいた。

そこには、シワシワにひからびた

元じゃがいもさんたちがコンニチハ。

 
    「はるちゃん…これ…」

「芽が伸びてましたけど、私が全部むしりました」

     「食べられないじゃん…」

家でいらなくなったのを持って来たのだ。


はるちゃん、涼しい顔で

「あら、イモはイモでしょ?」




しばらく、そんなはるちゃんが嫌いだった。

やがて、年に一度の草刈りデーがやってきた。

各部署から一人ずつ出て、病院の裏庭の草を刈らなければならない。

例年は押しつけ合いだが、今回ははるちゃんが名乗り出てくれた。


当日はるちゃんは、野良着姿もいさましく

愛車の軽トラをかっとばしてやって来た。

愛用の草刈り機の音もかろやかに、慣れた手つきで草を刈る。

めちゃ、かっこえ~!


一同の賞賛に、はるちゃんはさらりと答える。

「プロですから」

その日から、私ははるちゃんを尊敬するようになった。


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組長・3

2009年05月05日 13時23分34秒 | 組長
昨日は、我が自治会にとって

運命の日となるはずであった。


先日、自治会をあげての掃除の日に

前年度会計報告への異議をとなえた

例のじじい率いる一部住民は

その後、水面下で暗躍していた。


あの時、やつらを置き去りにして

隣の組の会費持ち逃げ事件に心奪われた私であったが

やつらはターゲットを自治会長に移していた。


会長は、私が何も知らずのんきに家で遊んでいる間

やつらの抗議に一人苦しんでいたらしい。


そして昨日…

会長から、やつらの要求を飲んだ旨の連絡があった。

緊急会議を開けという要求だ。

「すまんね…わしがもう少ししっかりしていればいいんだけど

 あんまりしつこいので、一回やっておけば静かになるだろうと思って…」


三役以外に住民の招集権は無い。

そこで一人暮らしの老会長を責めて

自治会の人々を集めたいのだ。

そしてそこでまた、ワーワー言いたいに違いない。

理由は何でもいい。

自分たちが三役だった時に味わった

人前ですごむ快感をたまに反芻したいのである。


会長が連休の最中を選んだのは

不愉快を感じる人数をできるだけ少なくしたい配慮だ。


「人生最後のご奉公」と言って引き受けた会長職を

一生懸命やっていた優しいじいちゃんを

やつらは陰でいじめていたのだ。

おのれ、どうしてくれよう…。


会議は夜7時から。

私は断固戦うつもりだった。


そして夕方…ごく近所で救急車が止まる。

物見高い私としては、当然のぞいてみる。


「ああっ!会長さん!」

倒れたじいちゃん会長が、運ばれるところだった。


じいちゃんには持病がある。

次に倒れたら危ないと言っていた。


そこで初めて、近所の人々の口から

じいちゃん会長が心底悩んでいたことを知る。

じいちゃんは、私や会計の子がかよわい女だと信じて疑わなかった。

自分一人でやつらの矢面に立って、耐えていたのだ。

やつらを刺激しておいて

すっかり忘れていた私は、少々心が痛む。


「あいつらのせいだ…」

私達は口々に言いながら、救急車を見送った。


とりあえず時間になったので、集会所へ行ってみると

じじい派と、反じじい派の戦いがすでに始まっていた。


「会長さんが倒れたのはあんたたちのせいだ!」

「いや、たまたまだ!」

「あんた達が責めたからだ!」

「俺たちはただ、説明が聞きたかっただけだ!」

の言い合いである。


面白いので、しばらく聞いていたが

説明する立場にある前年度の三役は欠席しており

現会長も病院送りとなれば、話し合っても仕方がない。

元気になるまでこの問題は保留し

今夜はひとまず解散しようということになった。


私はかわいく質問する。

「あの~、会長さんは大丈夫なんでしょうか?」

「う~ん…それはなんとも…病状がはっきりするまでは…」

長老は、難しい顔で答える。


やつらは心なしかおとなしくなっていた。

バカとはいえ、多少は良心の呵責を感じているようだ。

じいちゃん会長は、結果的に身を挺して我々住民を守ってくれたのだ。


私は大きな声で独り言を言う。

「もしものことになったら、一種の殺人ですよね~。

 どうやってつぐなうのかしら~。

 怖いわ~!病人を責めるなんて」

皆、口々に怖い、怖い…と言いながら解散した。
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