殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

ノー・ルイーゼ

2019年04月23日 10時46分20秒 | みりこんぐらし

結婚以来39年、毎日実家に来ていた夫の姉カンジワ・ルイーゼ。

よく来るとか、時々来るといった生易しいものではない。

厳密に言えば毎年の元日と

年に一度か二度、よっぽどの用事がある時は休む日もある。

それ以外は、本当に毎日だ。

 

雨の日も風の日も、病める時も健やかなる時も

ルイーゼは実家に通い続け、ねっとりと親のかたわらにはべる。

義父母は、娘が来ると一層強気になる。

その強気は、最初から高下駄を履かせた娘との比較や心ない暴言

無体な命令となって、家族で唯一の他人である私に向けられた。

それが血の作用というもので、どうしようもないのはわかっていても

嫌なものは嫌だった。

 

♩しゅうと小姑    賢くこなせ

たやすいことだ     愛すればいい♩

『関白宣言』で、さだまさしは歌った。

男の身勝手もはなはだしい。

私と同じ立場になったとしたら、彼はこう歌うだろう。

♩しゅうと小姑     近くに寄るな

たやすいことだ    逃げ切ればいい♩

 

「艱難、汝を珠にす」

そんな言葉もあるけれど、この艱難だけは

煮ても焼いても食いようがない。

納得も理解も、無理なのだ。

どうあがいても、そこに愛が生まれることは無いからである。

私の結婚生活が厳しいものだったとしたら

それはルイーゼの影響無しには語れない。

 

そのルイーゼが、今月からあまり来なくなった。

理由は、仕事である。

 

彼女は7年前まで義父の会社で経理を担当していたので

「家のため」という理由のもとに、実家通いを続けた。

しかし会社が倒産の危機に陥ると、素早く老人ホームの給食係に転職した。

 社長である父親が重病だったため

グズグズしていたら、責任は経理担当者に及ぶからだ。

ことは急を要していたので、転職先を選り好みする余裕は無く

彼女は万年募集中の老人ホームへ駆け込んだのだった。

 

何もかも放って逃亡したルイーゼの代わりに

どえらい目に遭ったのが我々夫婦なのはともかく

ルイーゼは転職後も相変わらず実家を訪れた。

老人ホームの水はルイーゼに合っていたらしく

彼女は早朝から昼までのシフト専門で働き続けた。

昼に仕事を終えると、その足で実家を訪れるのがルーティーン。

 

けれどもここにきて、職場の人手不足が深刻化。

募集しても誰も来ないので、シフトを変更するしかなくなり

ルイーゼは昼間の勤務に変わった。

日中は仕事なので、実家へ来るのは週2日の休日だけ。

39年に渡る連日の里帰りは、ついに途絶えたのである。

 

これは私にとって、驚くべき出来事。

ノー・ルイーゼが、こんなに快適とは知らなかった。

毎度のことながら、忍者のごとく黙って家に侵入される不快や

彼女の訪れによって発生する接待の手間が無くなったのもあるが

 何より義母が違う。

「娘前、娘中、娘後」

私は密かにそう呼んでいるが、娘が訪れる時間が近づくにつれて興奮し

娘が来るとさらに興奮し、娘が帰ると不安になってますます興奮‥

この三段階興奮が無いので、静か。

 

けれどもそれは、私が原因とも言える。

結婚した時期は、ルイーゼより我々の方が10ヶ月早かった。

ルイーゼは自分の挙式が近づいた頃

突然「結婚をやめる」と言い出した。

相手の家が兼業農家だったのが、主な理由である。

嫁と一緒に農作業ができるのを楽しみにしている‥

相手の親にそう言われ、ルイーゼは破談を望んだのだった。

 

慌てた義父母は、結婚を機に父親の会社へ就職することを提案した。

日中こっちで働けば、農作業をさせられる恐れは無く

給料を持って帰れば文句は出まいという意図であった。

 

義父母からこの経緯を伝えられ

「娘を就職させようと思うけど、かまわないだろうか?」

そうたずねられた。

ハタチの新妻に、異議が唱えられようか。

その問いかけがどんな意味を持つのかもわからなかった私は

二つ返事で承諾した。

 

ルイーゼは新婚旅行の終わった翌日から、出勤を開始した。

就職と言うから、会社に通うと思い込んでいたら

朝から晩まで実家で過ごし、金曜と土曜の夜は泊まった。

「かまわないかと聞いたら、あんたはかまわないと言った。

こっちはスジを通したんじゃ」

義父母はうそぶいた。

言質を取られたのだ。

私はだまされたことを知った。

 

私の心中には、このだまされ感がずっとあった。

これは詐欺だと思い続けた。

だから両親やルイーゼに対して、素直になれなかった。

義母はその気持ちを敏感に感じ取り

ソワソワと落ち着かないのかもしれなかった。

ルイーゼが来ないことで義母が変わったとしたら

それは私が変わったとも言えるのではなかろうか。

人間、いくつになっても新しい発見があるものだ。

  

ルイーゼのシフトは再び変更されるかもしれないし

彼女もこの夏で65才、年金を満額受け取るようになったら

退職するかもしれないので油断はできない。

しかし、ノー・ルイーゼの快適を知ってしまった。

再び連続ルイーゼになったら、文句を言いそうな自分が怖い。

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人手不足

2019年04月08日 09時45分58秒 | 選挙うぐいす日記

亥年は、選挙が多い年として知られている。

4年に一度の衆議院選があり

同じく4年任期の知事選、県議選、市長選、市議選が行われる所が多く

任期が6年の参議院選も巡ってくる。

12年に一度、選挙が集中するのだ。

 よって選挙に必要なウグイス業界にも、12年ぶりの繁忙期が訪れている。

今はまさにその只中で、ウグイスは引っ張りダコ。

 

けれども近年、ウグイス人口はめっきり減少したようである。

人一倍の体力と、人二倍の気遣い

そして人三倍の機転を求められる仕事ではあるものの

しょせんは短期で不安定なバイトに過ぎない。

4年に一度の市議選しかやらない私にまでオファーが来るぐらいだから

よっぽど人手不足なんだと思う。

 

が、行かない。

だって、しんどいんだもん。

昨年やった市議選で、痛感した。

加齢による気力、体力の衰えもそうだが

5人家族で姑仕えの主婦がウグイスをやるって

どんなに工夫しても厳しさは変わらない。

 

お断りした依頼の中に

私が専属でウグイスをやっている市議君からのものがあった。

少し離れた土地の市議選だ。

その市の中心部からは離れているが、出馬する市議の地盤はド田舎で

地図上では私の住む町からわりと近く、30分ほどで行ける。

 

市議君の話によると、彼はその市議と親しいらしい。

専属だったウグイスさんが病気になり、来週から選挙戦だというのに

どこをあたってもウグイスは予約でいっぱい。

どうしても見つからないので、私に頼んでみることにしたそうだ。

 

どうしてもウグイスが見つからない理由、私にはわかる。

その市議の地盤は、ひなびた田舎。

しかも長年、専属のウグイスが付いていた。

ということは、万象繰り合わせて駆けつけたとしても

次に繋がらない可能性大。

ウグイスが集まらないのは当然なのだ。

 

なぜなら田舎って、当然ながら人口が少ないので

出陣式や激励に大物は来ない。

大物は、有権者の多い都会の選挙に顔を出すからだ。

よって、大物とお近づきになるチャンスは無く

多くの人に顔を売ることも無いため、仕事の発展が望めないのだ。

つまり、同じやるなら都会がいい。

 

さらに、専属ウグイスというのも良し悪し。

病気になった専属が元気になれば、一回こっきりの使い捨てだ。

しかも何につけ専属と比較されたり、わけわからん田舎爺やに口出しされたり

ストレスが多い可能性もある。

 

それに、右も左もわからない初出馬ならいざ知らず

複数期の経験がありながらウグイスを捕まえ損ねたとあらば

脇の甘さは否めない。

町の未来を考えるのが議員の仕事である。

自分の未来‥つまり万一のことが起きた場合を想定していないようでは

候補の能力も陣営の質も推して知るべし。

他を断ってでも馳せ参じるほどの価値は見あたらず

避けた方が無難といえよう。

 

これらの打算が一瞬で頭に浮かぶのが、ウグイスという生物である。

だから土壇場で、ウグイスのなり手が無いのだ。

 

一方の私は次に繋げる気ゼロで、田舎好き。

暑くも寒くもない季節、近場で短期も好き。

私の好みを知っているから連絡したと、市議君は言う。

市議君に専属するもう一人のウグイス、ナミちゃんは

すでに都市部の選挙戦に駆り出されて体が空かないそうだ。

 

困っている人がいて、私でどうにかなるものなら

お役に立ちたい。

どこよりも高値で私を雇ってくれる市議君の顔も立てたい。

が、やっぱり断った。

しんどいんだもん。

 

「ナミちゃんがダメなら、美香子さんは?」

私はせめて別のウグイスを紹介しようと考え

8年前の県議選で一緒だった子の名前を出した。

マトモなのは出払って、この子しか残っていない。

 

住まいが市議君の近所なので、二人は顔見知りである。

美香子はウグイスの仕事が大好き。

旦那は単身赴任、二人の女の子は中学生と高校生ぐらいのはずなので

声がかかれば飛んで行くに違いない。

 

ただ問題は、ウグイスとしての長所が見当たらないことだ。

声がしゃがれていて、長持ちしない。

外見は地味で暗く、華やかという位置の対極にいる。

性格だけでも適合していれば、どうにかなったかもしれないが

これが生意気で興奮しやすく、謙虚のカケラも無い。

8年前の県議選では、自分の選挙ができないと言い出して

選挙カーから降ろしてくれと泣きわめき、勘違いぶりを披露した猛者である。

 

要するに向かないのでお呼びがかからないため、経験が積めない。

いつまでも初心者のまま

自分は誰よりもうまいと思い込んで年を重ねている。

 

けれども彼女は、私が持っていないものを持っている。

やる気というやつである。

市議君の選挙で、幾度となく美香子の家の前を通った。

その度に直立不動で我々一行を出迎え、最敬礼で見送る。

「使ってください」のアピールだと思う。

あのキラキラしたやる気には、かなわない。

 

「姐さん、美香子さんは勘弁してください」

「あ、やっぱり?」

「他人の選挙だから誰でもいいってわけにはいきませんよ」

「まあねえ‥」

「じゃあ姐さん、今回は諦めますから

3年後の僕の選挙は必ずやってくださいよ!

絶対ですよ!約束しましたからね!」

 

市議君の次の選挙には美香子を押し付け、私は引退しようと目論んでいたが

市議君、美香子のことをわかっている様子。

ついでに私が足を洗おうとしていることも、見抜かれていたようだ。

3年後のために、体力作りでも始めるしかなさそう。

トホホ。

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新元号

2019年04月02日 07時42分17秒 | みりこんばばの時事

gooブログがリニューアル中で、戸惑うことが多い。

今までさんざん楽しませてもらっておいてナンだが

特に入力機能が過敏になったのがこたえている。

 

ひとたび文字を打ち間違えたら最後、変換予測として記事に祟り続け

執拗に追いかけられる。

それを解消するために、せっせと一文字ずつ消す作業が必要になる。

手間が増えただけならまだしも、iPadとの相性が良くないのか

指の接触の仕方がちょっと気に入らないと、すぐ画面が真っ白になり

「問題が起きたため、このWebページを再度読み込みます」

の一文が登場。

 

さっき書いた記事は煙のごとくかき消えており

「自動保存されたデータが存在します」という文が出てくる。

復元してやってもいいような口ぶり。

ええ、復元していただけるなら、そりゃありがたいですよ‥

お願いしますよ‥

で、さらに一手間。

この機能は以前からあったが

こんなにしょっちゅう起きることは無かった。

親切なのか意地悪なのか、わからん。

 

ということで、記事がものすごく書きづらくなった。

そこで練習のつもりで、触れるつもりの無かった元号について

書いてみようと思う。

 

 

何で触れるつもりが無かったって?

天皇陛下が崩御された悲しみの中で、国民が最初に触れる新たな希望‥

私にとって元号は、そんな印象が強い。

よって生前退位となると、茫洋と霧がかかっているような感じがして

今ひとつピンとこないからだ。

 

それでも昨日の午前11時半、義母ヨシコと二人でテレビの前に座り

元号が発表される瞬間を見届けることにした。

次に元号が変わる時、おそらくヨシコはいない。

いないと思いたい‥いたら怖い。

そこで「前回の元号発表の時はヨシコと見たっけ‥」

と思い出す予定にしておきたいではないか。

 

やがて発表された元号は、『令和』。

拍子抜けするくらいさっぱりして、今ふうな響き。

日本人はRの発音を好む。

Rが付いていれば、何やら素敵に感じる性質がある。

ずっと以前にも書いたが、車の名前にはR、つまりラ行がよく使われる。

ラ行の字が入った車は売れ行きがいいという統計が、ちゃんとあるのだ。

 

日本人の好きなラ行を使って、すんなりと受け入れられるよう

配慮したのかな?と深読みを楽しむ。

すんなりと受け入れてもらいたいのは元号だけでなく

生前退位というイレギュラーも含まれていることだろう。

 

この元号は、日本の万葉集にある序文を参考にしたという。

元号は今までに285個あるそうだが、全て中国の古書からの出典。

日本独自の文献から出典されたのは、今回が初めてだそうだ。

日本が、やっと一人歩きを始めたような気持ちがした。

日本人が好む新感覚のラ行を使い

平和と似た、れいわという発音にし

昭和と平成の掛け合わせを連想させるニュアンスを取り入れて

あんまり評判のよろしくない次代のお二方を

少しでも盛り上げようとする努力も感じた。

 

余談になるが、約30年前。

昭和から平成に変わった翌年のことである。

平成の元号を印刷した年賀状を送ったところ

“見えるおかた”が手紙をくれた。

「霊が見える」などと吹聴して、周りの気を引こうとする類いではない。

本業は別にあるが、テレビ番組などのネーミングを考えたりもする人なので

インスピレーションにそこそこの信用性はあると思う。

 

「平成というのは、大変縁起の悪い元号です。

信じ難いような災いが次々と起こるのを危惧しています。

あなたも気をつけて、年賀状を始め書類などにも

極力使わないように心がけてください」

手紙には、そう書いてあった。

 

私は平成という元号に、穏やかで良さげな印象を持っていたので

「大変縁起の悪い元号」と断言してあったのに驚いたものだ。

しかし30年を振り返って、その通りだったな‥と思う。

今度の元号はどうなのか、その人にたずねたいけど

もう亡くなってしまった。

 

令和が皆さまにとって良い時代となりますように!

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする