みつばやま小零庵だより

宇宙の塵、その影のような私ですが、生きている今、言葉にしたいことがあります。

信田さよ子著 「家族と国家は共謀する」

2021-06-26 14:20:31 | 
「最も身近な家族ほど、暴力的な存在はない」

冒頭の言葉に私たちが衝撃を受けるのは、「家族は愛情で結ばれた共同体」という思い込みがあるからだろう。本書を読み進めると、そんな「常識」こそが被害者を苦しめてきた現実だと実感することになる。




東京新聞の読書欄に目が吸い寄せられた。このことこそ、長年にわたって私に鬱屈した心情を強いた元凶を告発する言辞だから。

それでも「家族は良いもの」という固定観念は社会にはびこる。だからDVや虐待の被害者の多くは訴えを信じてもらえず、今も口を封じられる状態が続く。

そんな実態が「国家の暴力と似ている」と信田さんは思った。きっかけは、戦時中に軍内部のリンチなどで心を病み、送還された日本軍兵士の調査研究書を読んだことだった。兵士らの存在は国によって隠された。「死をも恐れぬ」という軍隊イデオロギーに反したからだ。


もちろん、家族は愛情によって結ばれているという面もあり得る。しかしそれは、あくまでも一面に過ぎない。「その構成員に労働を強いる暴力装置」という面も大いにある。児童虐待も介護虐待もある。性犯罪もある。

家庭内の弱者にとって、家庭とは「逃れられない日常的な暴力装置」だということを、多くの人々に気付いてほしいと思う。


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