みつばやま小零庵だより

宇宙の塵、その影のような私ですが、生きている今、言葉にしたいことがあります。

それなりに歳末らしい日々

2022-12-29 14:50:46 | 暮らし
1年365日、独居老人には同じような日々だが、この時期になるとそれなりに歳末らしくなる。
昨日は御近所から搗きたてのお餅と新鮮なレンコンを貰った。レンコンは早速2節を酢レンコンに調理済み。
今日は当部落の区長さん宅へ御挨拶に伺ったら、奥様手作りの奈良漬を頂いた。地元の銘酒の酒粕の匂いが鼻をくすぐる。

御挨拶から帰庵後、右手に杖、左手に竹箒を持ち、2本杖のように使いながら、裏山のお社へ向かった。
雑木林の中にひっそりと佇むこのお社は、隣の部落の氏神様らしいのだが、当庵からは直近の距離で、今の私には10分位、健脚なら3分位の距離だ。
以前は、歳末になると隣部落の人がお社の周りや参道等を落葉掃きして綺麗にして下さっていた。しかしやがて、歳末になっても落葉だらけのまま放置されるようになったので、氏子でもない私が差し出がましいかも・・と躊らいながらも、掃くようになってから10年位経つだろうか。



最近は体の痛みと痺れが酷いので、今回は(小さいお社で参道も短いのに)2日がかりで掃除しようと思いながら、お社に着いた。着いてみて驚いた。なんと、もうすっかり綺麗に掃かれていたのだ!
ホッとした。嬉しかった。隣の部落のどなたかが、思い立って下さったのだろう。来年も次の年も、きっとやって下さることだろう。安心だ。

冬野菜たちに感謝!

2022-12-17 10:12:47 | 菜園
もうすっかり戦時のような気分が世間の人々の心にまで侵蝕していて、鉛を呑み込まされたようなこの頃だ。それでも当菜園の冬野菜たちは、例年以上に元気に育ってくれていて、私の気持を少し穏やかにしてくれる。

          

ほうれん草の栽培が下手な私だが、今年はまあまあの出来。
寒さに強いほうれん草よりももっと寒さに強いターサイは大輪のような葉を広げている。世間ではあまり見向きされない中国野菜だが、炒めると甘味も出て、食べ慣れてくるとなかなかの味わいだ。
やはり中国野菜のコウサイタイは、年明け頃から盛んに伸び出す赤紫色の花茎を食用にする。
真夏に種蒔きして発芽前後の管理に神経を使った人参の葉は、これから少しずつ枯れ気味になるが、掘り上げると色よく形よく美味の人参が採れる。来年の早春まで地中にそのままで大丈夫。
大根は晩夏から初秋が種蒔き時期だけれど、今年は虫害が酷そうな予想をして秋彼岸の頃に蒔いた。従って成長が遅く、例年より細身だけれど、虫害はほとんど無く、味はとびきり上等だ。
赤ネギも、かよわかった苗がいつしか立派に生長して、一株ずつ収穫し、重宝している。

野菜たちに感謝!
この地球上の全ての人々が、こんな野菜たちを栽培し食することが出来る、そんな平和が訪れてほしいのだけれど・・・

句集「無音の火」

2022-12-04 09:22:39 | 俳句
福島の俳人、大河原真青さん(1950~ 『桔槹』同人・『小熊座』同人)の句集「無音の火」(2021.7.21発行)との出会いを得た。
この句集の世界の大きさと奥深さに圧倒され、衝撃に近い感銘を受けた。たった五七五の言葉によって、こんなにも大きく深い世界が開かれるのだ。



高野ムツオ先生(『小熊座』主宰)は、序文でこの句集への大いなる賛辞を送られている。そして、「変化流動そのもののうちに事象の姿を捉えようとするところに真青俳句の独自性が存在する」「時空の向こう側を凝視しようとする意思のまなざしが確かである」等と評されている。

高野ムツオ先生による15句選を以下に引用する。

          荒星や日ごと崩るる火口壁
          被曝の星龍の玉より深き青
          手のひらの川蜷恋のうすみどり
          根の国の底を奔れる雪解水
          窓を打つ火蛾となりては戻り来る
          夏果ての海士のこぼせる雫なり
          七種や膨らみやまぬ銀河系
          沫雪や野生にもどる棄牛の眼
          水草生ふ被曝史のまだ一頁
          野鯉走る青水無月の底を博ち
          骨片の砂となりゆく晩夏かな
          わが町は人住めぬ町椋鳥うねる
          白鳥来タイガの色を眸に湛へ
          凍餅や第三の火の無音なる
          被曝して花の奈落を漂泊す

以上の15句以外も、どの句もどの句も私の心に確かな響きをもたらす。その中から敢えて、おこがましくも私なりに10句選を以下に挙げる。

          影のなき津波の跡も蝶の昼
          死者阿形生者吽形桃の花
          蛍の夜おのが未来に泣く赤子
          原子炉を囲ひて冬の闇無辺
          海鼠切るさびしき穴の次次に
          虚無の縁すれすれを飛ぶ冬の蝶
          影連れて幾人とほる春障子
          魂の寄りそふかたち夜の桃
          皓々と膝頭ある初湯かな
          眸なき石膏の像夏を追ふ