みつばやま小零庵だより

宇宙の塵、その影のような私ですが、生きている今、言葉にしたいことがあります。

トラツグミ&ハイタカ、そしてマスクの春

2020-03-27 19:10:46 | 俳句
真っ暗だった夜空が少し白みかける頃、雨戸を開けると、裏山からトラツグミの声が聞こえる。細くて寂しくて神秘的な声だ。あまりに寂しい声であるからか、不吉だとして妖怪を指す「鵺」(ヌエ 「鵼」とも書く)とも呼ばれている。しかし私はこの声が好きだ。

          春の夜の別れ惜しむや鵼の声

早朝、杖を突きながら犬の散歩をしていたら、傍らの木立から野鳥が飛び立った。鋭い声を発したと思うと、まっしぐらに田んぼの遥か向うへ飛んでゆく。キジバトぐらいの大きさだが、高速で滑空する姿は猛禽類。鷂(ハイタカ)に違いない。オオタカと共に鷹狩にも使われたそうだが、確かに納得させられる勇壮な飛翔だ。

          鷂の飛翔斬り込む峡の春

昼前に、キッチンペーパー製の手作りマスクをして病院へ行った。待合室の患者の(私を除く)ほぼ全員が市販のマスクをしていた。店の棚からマスクが消えているのに、皆さんはどうやって入手しているのだろう。入荷のタイミングを列を作って待って購入されているのだろうか?

          春陰や探り合ひたるマスクの目


大根の花

2020-03-20 14:35:44 | 菜園
春分の日。風は強いが空は青く、野には ナズナ、ホトケノザ、オオイヌノフグリ、タネツケバナ、ヒメオドリコソウ、ハコベ 等々の草花たちが一面に咲き、シジュウカラ、ウグイス、ホオジロ、アオジ、エナガ、等々が鳴き、フクロウも林の奥で ゴロスケホッホ と低い声を漏らす季節。

人類は今、新型コロナウィルスの脅威に晒されているが、非日常の脅威と日常の平和が共存している生活。

当菜園では、収穫し切れずに放置していた大根が花を咲かせてくれた。小さな白い花びらが微かな紫を帯びて、春風に震えている。

      

虚子

2020-03-19 10:51:01 | 俳句
高浜虚子(1875~1959)の句としてまず私が思い浮かべるのは、次の2句だ。

     遠山に日の当たりたる枯野かな
     去年今年貫く棒のやうなもの

どちらも大きな句だ。前句は空間的に大きく、後句は時間的に大きい。
前句は、日と枯色との対比と距離感が絶妙だし、後句は、目に見えない時間という抽象的なものを、ありふれた実在の棒に喩えてリアリティを与えていることに感服させられる。

しかし、どちらの句も大きいと言えば大きいのだが、どこか茫洋として捉えどころがないとも思う。

俳句を趣味としている癖に、私はこれまで近代俳句史上最高の巨人たる虚子の俳句作品を自ら積極的に鑑賞したいという気持も起こらず、ましてやその伝記の類に目を通そうとしたこともなかった。確かに俳句は上手いようだが、茫洋として得体の知れない怪物のようで、触手が伸びないという感じなのだ。

虚子へ、興味らしい興味を初めて覚えた過日、「高浜虚子・人と作品」(福田清人 編 前田登美 著 清水書院 発行)を公民館図書室に取り寄せてもらって借りた。その際、図書室の若い司書が虚子のことを全く知らないことが判明して驚いたが、そんな時代になったということなのだろう。

     

返却期限は2週間後なのだが、新型コロナウィルス感染拡大防止策ということで公民館が閉鎖され、図書室も利用できなくなり、返却は閉鎖が解除されてからでよい、という。そんなわけで、ゆっくり気儘に読んでいる。

多かれ少なかれ他の文学者たちが軍国政府のしぶとい弾圧に出会い、彼らの文学は停滞し、退歩し、息絶えだえにかろうじて生きていた時、虚子は実にのんびりと浅間の麓(小諸)で作句を続けていた。

(国から)強制されれば「ホトトギス」に軍国主義的な俳句を載せ、日本文学報国会の俳句部会長をつとめ、日本軍必勝を祈願する歌仙を巻き、明治神宮に奉献したりした。

しかもひとたび敗戦を迎えると、(中略)虚子は何食わぬ顔で平然と俳壇の大家たる地位を守り、ホトトギス派ではやはり神の如く崇拝されていた。


昭和21年、桑原武夫が「第二芸術」論を発表して俳壇は動揺し、騒然となったとき、虚子は「ほう、俳句が第二芸術にまで出世したのですか。」とか嘯いたらしいが、まともに反論しようとは一切しなかった。

虚子の隨縁隋境の生き方は、その母の生き方の影響が色濃い、と著者は指摘する。虚子の母は、厳格な姑にどんなに苛められても逆らわず、事なかれ主義を貫いたという。

俗世間に逆らわず随っている、とも言えるし、俗世間から超越している、とも言える。

虚子によって、山口青邨、富安風生、飯田蛇笏、高野素十、中村草田男 等々の一流の俳人たちが輩出した。虚子の告別式に参列した門弟は3千人に達したという。そうした数多の人々を星屑に喩えるならば、中心の存在たる虚子は太陽のようでもあり、ブラックホールのようでもある。

虚子という俳号は、本名の清にちなんで正岡子規が考案したという。その虚子という号が如何にも虚子に相応しく感じられるのだ。




ハンカチで簡単手作りマスク

2020-03-14 14:58:34 | 暮らし
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、当地の公民館も1週間前から閉鎖。俳句の会も出来なくなり、やむを得ないことながら寂しい。

暗く不安な日々だが、裏山の鶯は美しく囀るようになり、暫し聞き惚れて気持が和らぐ。

昨日はお天気も良くて、一昨日買った種イモ(キタアカリという品種の馬鈴薯)1キロ、数にして11個。二つ切りし、切り口に(腐敗防止のため)灰をまぶしてから、用意していた畝に埋めた。芽が出るのはいつ頃になるか、楽しみだ。 種イモと共に私も生きている実感がある。

今日は冷たい雨が降り続いて畑仕事も出来ない。



使い古しのハンカチを折りたたみ、使い古しのゴム紐を両側に通し、3辺を手縫いでかがって(残り1辺は輪になっている)、簡単手作りマスクの出来上がり。これは洗濯して繰り返し使える。
キッチンペーパー製の手作りマスクは(ゴム以外は)使い捨て。場面に応じて使い分けしていくつもり。

誤手

2020-03-09 08:49:02 | 社会
早期検査、早期発見、早期隔離、これが感染症対策の鉄則。当然のことだ。

まず一番大切な早期検査が阻まれている。

発熱して病院を幾つも回ったり、まさかコロナではないだろうと出勤したりしているうちに重症化し、ようやく検査を受けることが出来て陽性だと判明した頃は、既に不特定多数の人々と接触した後。こんな事例が次々と報じられている。氷山の一角だろう。

ウィルスだけが脅威なのではない。この国の無策、後手、そして誤手こそが最大の脅威だ。