みつばやま小零庵だより

宇宙の塵、その影のような私ですが、生きている今、言葉にしたいことがあります。

上曽の太子堂ー大楽寺の遺産

2020-10-31 08:42:59 | 俳句
昨日、俳句の会で上曽の太子堂周辺を吟行しました。

各季に1回、年4回の開催を目標に昨春スタートした小さな小さなマイクロミニ句会です。毎月開催の俳句の会ではお会い出来ない方も来て下さるし、限られた人数ならではの自由な活動も可能です。御多分に漏れずコロナ禍の影響で、この春と夏は休会しましたから、マスク着用顔ながら、久しぶりの再会を喜び合いました。



この太子堂については、八郷町民文化誌”ゆう”(終刊済)№8(1999年刊)P44~に、「匠の伝承ー上曽太子堂縁起ー」と題して、軽部豊という方が詳述されています。

この記事に拠れば、昔、上曽峠の8合目あたりに、身の丈3丈8尺5寸(約12m)の仏座像が安置されている「大楽寺」があった。この堂宇は、16世紀末に麓へ移され、明治初年、失火により焼失しましたが、唯一遺っているのが太子堂なのだそうです。等身大の聖徳太子像は鎌倉期、厨子と建物は江戸時代の制作、と推定されています。

格子の隙間から覗きましたが、中は暗い。暗闇に目が少し慣れてきたら、正面に、厨子の扉らしい模様が微かに見えてきました。

          堂闇に浮かぶ厨子扉や秋の声

太子堂を包むこんもりとした森の静寂の外には、穏やかな日差しが雲間から注いでいました。野には ミゾソバやイヌタデ等の花々が満ち、キンエノコロやチカラシバ等の穂が揺れています。空を見上げると、色とりどりのパラグライダーが遊泳し、夫婦らしい双鷹がゆったりと旋回しています。

          パラグライダー舞ひ鷹も舞ひ秋日和

コロナ禍や内戦や政争などで世界中が騒然としていますが、どこの国も、この八郷の風土のような穏やかな地であってほしい、と願わずにはいられません。



昼食は泰旬庵”風”でお蕎麦を戴きました。デッキの向うに足尾山の山並みが見える素晴らしい眺望でした。 






一瞬の影

2020-10-20 10:27:42 | 八郷の自然と風景
先日の朝のことである。

いつものように杖を突き、体の辛さに耐えながら犬の散歩をしていた。しとしとと小雨が降り、林の中の道は薄暗い。ふと犬の動きが変化して、私は脇道の方へ視線を移した。その時、暗い脇道を一瞬の間に横切った影が見えた。今まで見たことがない獣だ。かなり細長い体で、尾も長い。極端に短い脚で、地面スレスレを物凄い速さで駆け抜けた。

姿はイタチに似ているが、体も尾もイタチよりずっと長い。テンだ!

思い当たることがある。
当地に住むようになってから続いていることなのだが、時折(年に数回ぐらい)、夜が深まったころに ギャッ ギャーッ と異様な声が聞こえるのだ。その声は当庵のすぐ窓下にまで近づいてくる。どんな些細な異変でも直ぐに吠える愛犬が、この声の時だけは沈黙を守っているのも不思議だ。窓を開けてライトを照らしても姿は見えない。猫の声でもなく、イタチの声でもない。この声の主が分からないまま20年近くが過ぎた。

もしかして テンの声だったのか?
ネットでテンの声を聞いた。 ギャッ ギャーッ テンの威嚇の声だ!

テンの特徴の一つは、そのすばしこさ。確かに、あの駆け抜ける速さは並大抵ではなかった。肉食に偏った雑食性で、性格は獰猛。木登りも上手だという。

鶏舎や果樹園が無防備だと被害を受けるだろうし、獰猛だというから警戒は必要だが、テンも生息することが分かったこの環境をあらためて有難く思う。






歩崎

2020-10-14 10:05:42 | 俳句
俳句の会で歩崎を吟行しました。
昔むかし霞ヶ浦で船が難破しそうになったところ、観音様が湖面を歩いていって救助した、という伝説の歩崎観音が祀られています。
鐘付き堂の鐘を仲間が打ったら、その鐘の音が実に素晴らしい。長く深い余韻に聞き入ってしまいました。

          身に入むや鐘は余韻を何処までも

ささやかな展望台も設けられていて、霞ヶ浦の大景を眺望できます。



          秋風や水影淡き生簀小屋

展望台の手前脇の木陰に、映画「米」(今井正監督)の石碑がひっそりと立っていました。この辺りがロケ地だったそうです。石の形が変わっているので不思議に思っていたら、「これは米粒の形でしょ」と仲間が教えてくれました。なるほどね。
監督をはじめ、スタッフや出演者の名前がたくさん刻まれています。「望月優子」の名も! 
この映画を、私は残念ながら未だ見たことがありません。それなのに題名の「米」と「望月優子」の名を見ただけで胸が一杯になってしまいます。

       

          つくねんと映画「米」碑や鳥渡る


アオガエルの目線

2020-10-05 08:52:26 | 菜園
スパイのような目線の年号オジサンへ支持率70%越えを献上する人々・・・サスガだ! アンダーコントロールの国の面目躍如だ!



今頃になって咲き揃った当菜園脇の彼岸花たち。まさか、70%越えをお祝いして咲いたわけではないだろうけれど。
赤い花の楽園の中で、ちっちゃなアオガエルが音無しの構え。世の中をそおーと窺っている気弱そうな目線ですね。



大根は虫たちとの戦いで傷つきながらも、元気な葉を広げ始めました。毎朝の虫捕り作戦を遂行した甲斐があった気分です。



傍らのクチナシは、本来の開花時期は梅雨時ですが、今季は例年になく返り咲きが多いようです。この花の深くしっとりした白という色と香りには心惹かれますね。映画「旅情」のラストシーンを思い出します。