みつばやま小零庵だより

宇宙の塵、その影のような私ですが、生きている今、言葉にしたいことがあります。

「私」の一句

2022-09-20 06:12:26 | 俳句
毎年、松山で開催されている「俳句甲子園」(審査員長は、高野ムツオ・夏井いつき等の13名)、今年の最優秀句は次の一句だった。
  
          草いきれ吸って私は鬼の裔     阿部なつみ

作者の阿部なつみさんは、岩手県立水沢高校の生徒。高野ムツオの講評に依れば、「鬼」には「いじめられる者」「虐げられる者」など様々なイメージがあるという。

東京新聞の連載(毎月1回)「外山一機の『俳句のまなざし』、9/18付け記事は、「『私』の一句」というタイトルで、この「鬼の裔」の句を取り上げている。


俳句を「作る」意味、「読む」意味を考えさせられる貴重な内容だと思ったので、以下、抜粋引用する。

この句の「草いきれ」は鬼の国の「草いきれ」だ。虐げられた記憶を持つ者たちの一いまなお「中央」から見捨てられがちな者たちの一住まう国の「草いきれ」だ。だからこれは、その国に生きることを全身で引き受ける者一すなわち、誰でもない「私」の一句だ。

一句を読むとき、その句に書かれていること以外の情報を読みに織り込むことに異を唱える者もいる。しかし、作者など誰でもいいのだと言うときの、その「誰」とはそもそも誰なのだろう。俳句は「誰」でも書けるものであるという。けれど、自らの句がそうした言葉によって署名を奪われるとき、一般性だの普遍性だのと呼ばれるものと引き換えに、何か大切なものを明け渡してはいなかったか。


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