みつばやま小零庵だより

宇宙の塵、その影のような私ですが、生きている今、言葉にしたいことがあります。

コブシの花

2010-03-22 19:48:14 | 八郷の自然と風景

20日夜から21日朝にかけての風は恐ろしいほどだった。当庵は南からの風当たりが強い位置にあるから、台風よりも春の嵐の方が要注意だ。前日に庵周辺を見回って飛ばされそうなものを片付けておいたから被害は無かったが、付近の道路には木が倒れていたり折れ枝が落ちていたり・・

Dscn1516_3 今日の青天は、あの嵐が嘘だったよう。Sさん宅では、春Dscn1514光が注ぐ池の鯉たちが身を輝かせていた。Sさん御夫婦は生きものが大好き。御主人のtSさんは特にお魚類が好きで、お庭の池は自らの手で作られたものだ。まだ子供の鯉専用の池もある。

奥様のkSさん、そしてやはり近所のhKさんと共に週1回恒例の買物に愛車で行った。それなりの?年輪を重ねた女三人、愚痴をこぼし合い、慰め合い、励まし合い、冗談を飛ばし合いながらの買物だ。帰りの車窓に、薄桃色のコブシの花が美しく咲いていた。


ジジババ

2010-03-20 19:16:32 | 八郷の自然と風景

午前中は公民館で気功、心身ともに柔らかくなった。気功の合間にお喋りしたり情報交換したり、賑やかな同好会だ。今日はhSさんから「ビデオニュース ドットコム」という報道番組がインターネット上にあることを教えてもらった。視聴者からの受信料だけで運営し、スポンサーを付けないことにより報道の自主性を図っているそうだ。

マスコミの報道内容が様々の圧力によって偏向していることは、分かっているつもりだったが、それらの情報が何時のまにか脳裏に沁み込んで、私の思考の前提材料に化していたのだ。そのこDscn1505_2 とに具体的に気付いたのは、心ある方々がインターネット上で発信されている情報に親しむようになってからだ。マスコミ報道の少なからぬDscn1497 部分が、事実を意図的に隠したり曲げたり、時にはまるで反対の趣旨に変えられたりしている。恐ろしいことである。

Dscn1511 は「ジジババ」と呼ぶ。確かに、仲良く年老いた夫婦ならではDscn1509の奥床しさに似ているたたずまいだ。

Dscn1508 当菜園では3/8にチンゲンサイ・春菊・小松菜の種を蒔いた。まだまだ朝寒の日があるし種も古い残り物だから、発芽率は低いだろうと思って、密に蒔いたのだ。それが意外にもビッシリと芽が出てひしめいていたから、ピンセットで間引きした。けなげな芽たちの生命を感じながら・・


春を生きる

2010-03-17 19:01:03 | 八郷の自然と風景

Dscn1480 Dscn1484 庭の木瓜(ボケ)の花が開き始めた。貝母(バイモ、別名:編笠百合)もDscn1482_2 俯いて咲いた。詫助(ワビスケ)椿は花盛りだ。裏山の鶯は上手に囀り、雉は炎色の貌で野を横切る。

春の暮らしには豊かなイメージが合う、と私は思っていた。それが錯覚だと気付いたのは、当地へ移住し自ら土を耕して野菜を作るようになってからだ。露地栽培(ビニールハウス等ではない)の場合、春は収穫が途切れて食べ物が乏しくなる季節なのだ。寒さに強くて冬の畑で頑張っていた葱やホーレンソウや人参や大根なども、春になると腐ってきたり薹(トウ)が立ってきたりする。

Dscn1479 今日はヤーコンを掘り出した。昨秋収穫して土中深く貯蔵していたものだ。人参(先月、畑に残っていたのを収穫して冷蔵保存していたもの)と共にキンピラを作り置きした。貯蔵出来る食べ物は貴重だ。

長期貯蔵出来て栄養豊かで美味しいものの筆頭は何と言っても、米!だろう。米作りには僅かしか関与出来ていない私は、先日も近所のs0さん作の玄米を分けてもらった。それを自家用の小型精米機で少しずつ6分搗きにして炊く。とてもとても美味しいお米だ。

Dscn1486 当菜園で、この季節にも元気なのは菜の花だ。1~2輪咲き始めた花茎を沢山摘み取り、重曹入りの熱湯に通し冷水に晒してアク抜きしたのを、ラップに小分けして冷凍保存する。5月頃までの貴重な緑の食材として重宝する。

Dscn1496 夕食の支度を始めようとしていたら、番犬のジュンが吠えた。Naさんだ。新聞紙に無造作に包まれた長棹型の草餅をいきなりグイと差し出して私へ下さった。もち米はおそらくNaさんの田んぼ産で、ヨモギは奥様が土手などで摘まれたものだろう。先日は山路でNaさん御夫妻に偶然出会って、その時は大きなあられをたくさん鷲づかみのようにして、私のポケットに入れて下さった。その美味しかったこと! たぶん奥様が餅を切って揚げて作られたものだろう。

Dscn1492 鶏舎ではウコッケイのギン(写真向かって右側)が巣籠りを始めたので、久しぶりに卵を抱かせることにした。可愛いひよこの顔がどうしても見たくなったので・・ 順調ならば3週間で孵化する。

ヒロ(写真向かって左側)は数日前から巣籠りに入っていたけれど、ヒロの抱卵には不安がある。以前の抱卵の時、給餌時に出てきて存分に食べて遊んで?なかなか巣箱に戻らないことが多く、結局孵化に失敗した。ヒロは雄には一番人気なのだけれど ウコッケイたちにもそれぞれの個性がある。


漆黒

2010-03-14 19:55:47 | 芸術

昼下がりに「こんこんギャラリー」(創作家が共同で建設運営)へ行ったら、yNさんが当番で詰めていた。淹れて下さったお茶を戴きながらお喋りをひとしきり。

yNさんは陶芸家だが、茶道の御趣味もある。「大日本茶道学会」という流派で、「口伝」(文字で記録して伝えることが禁じられている)が無く、従ってテキストが揃っているそうだ。私が習っている裏千家では、テキストには書かれていない「口伝」の点前を教えてもらった時は、帰庵後忘れないうちに思い出しながらせっせとメモることになる。どちらの方が良いのか、私には分からない。たぶん、人により、場合により、だろう。

Dscn1472 桜井利男さんが戻ってこられた。ギャラリー周辺の林を廻って創作に使えそうな木を探していたらしい。木工漆器の創作家で、作品の企画展示の最終日だ。私が手に取ったのは欅の漆塗。節穴や不整形な切り口が生かされていて、漆の色も飴色から黒に近い色まで変化しているのに心引かれた。切り取られてからの年月が長い木部には漆が濃く沁み込んで漆黒色になっていく、と教えていただいた。


上曾

2010-03-11 20:04:24 | 俳句

午前10時、公民館前に俳句の「笹鳴会」が集合。晴れ上がった空に皆の顔は明るい。乗合タクシーに乗って上曾(うわそ)へ吟行に行った。

Dscn1461 筑波山系の峠へ続く旧街道で降りた。街道筋には堂々たる構えの屋敷がDscn1469_2 並んでいる。ひときわ立派な屋敷は、かっての旅籠だったという。2階の戸袋に恵比寿様が描かれて「楼」の字がある。以前は見事な茅葺屋根だったらしい。門内を覗いたら、端正な白壁の蔵が並んでいた。

Dscn1462_2 横道を暫く歩くと深い森に入った。木の間隠Dscn1464_2 「聖徳太子殿」という額が 掲げられていた。祀られている太子像は、室町時代に製作された等身大ほどの桧造りで、漆塗と金箔で仕上げられているそうだが、堂内の厨子(金箔模様が施されていた。江戸時代の製作)は閉ざされていた。近くの梢で鷹が甘い声で繰り返し鳴いた。

Dscn1467 麗かな日差を受けて古道を下りると、ゆるやかな棚田が続いていた。田の中の水溜りに生れたばかりのオタマジャクシがひしめいていた。転がすような声で蛙が鳴いた。たたずむ私たちの脇を黄蝶が舞い過ぎていった。初蛙(はつかわず)と初蝶だ。

  まづは黄に蝶々生まれ棚田村  小零


弄花香満衣

2010-03-10 18:41:52 | 茶道

Dscn1460 余寒厳しい中、愛車を30分ほど駆って茶道の稽古に行った。今月の床の間には、先生がお雛様を飾って下さっている。旧暦の3月3日はまだ先なのだ。美しきものを愛する大先生のお心の深さが伝わってくる。

掛軸は「弄花香満衣」(花を弄すれば香り衣に満つ)で、唐時代の「春山夜月」という詩の「掬水月在手(水を掬すれば月は手に在り)」に続く一節。詩は文学だろうが、この詩は禅語としても解釈されている、と聞く。花の香と衣の香との関係を、自他一如、或いは主客一体の例示と考えて良いのだろうか? 「花」の一字が花びらのような画で書かれている。前大徳の太通(だいどう)老師の筆だ。

炉には筒型の雲龍釜が、天井からの長い鎖に釣られて微かに揺れている。釣釜だから、五徳が無い炉中がいつもと違って見える。炭火が真っ赤に熾って湯気が渦巻くように上がってくると、釜の胴に描かれた龍も鎖を伝って天井へ登っていく連想が沸く。

稽古は炭付花月(すみつきかげつ)と「濃茶付花月」だった。花月では各人の役回りが次々に変わるから、ちょっと油断すると全体の流れを乱すことになってしまう。その役回りになり、その場面に会って初めて気付かされることが多い。ミスを見逃さない若先生の御指導に、背筋が正される思いがする。ミスが多い私だが、花月の緊張感とゲーム感覚の楽しさが好きだ。

帰庵して犬の散歩などを済ませた後、激しい雨と共に雷鳴が轟いた。この春雷が寒さにピリオドを打ってくれたかどうか?


春霙

2010-03-09 19:23:13 | 暮らし

愛車を30分弱走らせてNさん宅へ行った。私の八郷移住は、Nさんの御助言があったからこそ実現できたのだから、恩人の1人と言っていい。数年前から病弱の身になられたこともあり、どうしていらっしゃるかと気になりつつも、色々な事情でお訪ねする機会を逸していた。

久しぶりにNさんに会って、難しい病気が更に加わっていらっしゃるのを知った。そのことを知らなかった私・・罪悪感のようなものが私の背筋を流れた。でもNさんは、とても優しく応対して下さった。病気のこと、生死のこと・・ Nさんが淹れて下さった蕎麦茶を戴きながら、短い時間だったけれど、静かなひとときを共に過ごせた。Nさん宅の脇を流れる渓流の音に心を残しながら、冷たい霧雨の中を帰庵した。

Dscn1454_2午後から雪になり、霙(みぞれ)になり、そして雨になった。庭の馬酔木の花も、向うの畑もDscn1453 林も冷たく濡れている。ウコッケイ達は羽を膨らませてジッと寒さに耐えている。

犬のジュンは元気一杯で、霙の中、私と一緒に散歩し、餌を猛烈な勢いで食べ、そして番犬の任務を律儀に果たしてくれている。Nさん宅には犬が2頭いた。1頭はとても賢そう、もう1頭はとても可愛い犬だ。犬は、共に暮らす人間にとってかけがえのない存在だ、と最近の私は思うようになった。


また来てね!

2010-03-07 19:53:20 | 八郷の自然と風景

Dscn1446_sh01 冷たい雨の中、姉と姉の娘=姪の二人が1都2県境を越えて来庵してくれた。姪は、夫の海外赴任先への移住を目前にしている。姪はもちろん姉も心身ともに慌しい日々の筈だ。

姉と私は姉妹なのに容姿も性格も考え方もまるで違う。一緒にいると、直面する違いが何だか面白くてお互いに笑ってしまう。そんな二人を姪も面白そうに見る。時折ウコッケイがコッケコッコーッと鳴き、窓外には雨にけぶる野山を望む。シジュウカラがやってきて、ツピーツピーと囀った。姪はずっと都会のマンション暮らし。Dscn1448_sh01 海外旅行の経験は豊富だけれど、国内のこんな過疎地の小さな庵暮らしは物珍しかったかも? 

姉も姪も、私の拙い手料理を残さず食べてくれて、私は嬉しかった。食材の人参や葱やほうれん草などが当菜園産であることを告げると、姪は格別喜んでくれた。自分が作った料理を食べてもらう喜びを、私も遅まきながらしみじみ実感するようになった。「また来ます!」と言われ、「また来てね!」と言って別れた。


太陽の子

2010-03-06 17:12:38 | 八郷の自然と風景

朝食の後片付けをしていたら、裏山から鶯の囀りが聞こえた。今季の初音だ。ホッ、ケキョ、キョロッ、キョ、みたいな鳴き方だったが。

公民館での気功同好会へK子さんと一緒に行った。K子さんが初鶯を聞いたのは昨日だったそうだ。K子さんのお屋敷の白梅も、当地に多い野梅も散り始めてきた。

Dscn1445_2 気功会場の2階窓正面に見える筑波山の頭に雲が掛かっていた。帰庵した午後から雨は本降りになった。雨の日はどうしても気分が落ち込みがちになる。庭の侘助椿が沢山咲いたので、少しお皿に浮かべて庵内の飾りにした。

夕方、庵内が突然の日差しで明るくなった。雲の僅かな切れ間から太陽が覗いたのだ。途端に私の気分もパッ!と明るくなった。理屈ではない、身体が、神経が、太陽の光に反応したのだ。この老いた私も太陽の子なのだ、と感じた。ほんの1~2分の間だったが。


ふらの

2010-03-02 20:55:38 | 八郷の自然と風景

Dscn1440 雨は夜明けまでに上がったけれど、厚い雲が取れなくて肌寒い日だった。でも心はポカポカ温もった。首都圏の友人eTさんが来庵してくれたから

床の間には、小楢(コナラ)の芽吹きの小枝と藪椿の蕾と水仙の花を活け、貝殻に納まった小さなお雛様を飾ってeTさんを迎えた。私の着物はhKさんから、帯はaSさんから、帯締はkSさんから譲ってもらったもの。そして紺の毛糸の羽織はeTさんが編んで下さったもの。

Dscn1424 Dscn1428 お昼は愛車で10分のレストラン「ふらの」へ。店内の此処彼処に色々な花と様々なお雛様が飾られていた。

Dscn1432 お蕎麦とピザと飲み物 のセットで一人前が1,100円。eTさんのお膳にはマンサクの花枝が、私のお膳には白梅の小枝が添えてあった。箸袋には当地の風景がさらりと描かれている。

接客役の奥様の爽やかな気配りが嬉しい。コーヒーも紅茶も苦手な私のために林檎の香りのハーDscn1434_sh01 ブティーを淹れて下さった。厨房の御主人と共に都会から移住して開店された、と聞いている。店名は、風景が北海道の「富良野」に似ているから、という。

Dscn1437_2 「ふらの」から愛車で10分弱の「鳴滝」へ。人里から近いのに秘滝の風情があって、八郷六景の一つに数えられている。険しい岩段をeTさんはまたたく間に登っていって、滝不動尊が祀られている御堂へお参りしてこられた。

帰庵後、抹茶を点てた。eTさんから譲ってもらっていた茶箱を用いて「卯の花点前」(時季が少々早いけれど初心者の私向きなので)での薄茶をご一緒しながら、沢山のお喋りが出来た。eTさんの心の温かさを沢山もらった。