みつばやま小零庵だより

宇宙の塵、その影のような私ですが、生きている今、言葉にしたいことがあります。

赤い月

2021-01-04 10:59:31 | 
音痴だし、音楽鑑賞が趣味だなんて冗談でも言えないし、流行りの歌にもあまり関心のない私が、何故、なかにし礼(1938~2020.12/24)の訃に胸を突かれたのか・・・ 直木賞とかの文学賞にもほとんど関心が無い私だが、今更ながら なかにし礼 を知りたくて、年末の図書館から「赤い月」(なかにし礼著 2001)を借りた。



たちまちこの本の世界へ引き込まれた。若い時ならいざ知らず、年老いてからはなかなか得られない感覚だ。
凄惨で魅惑的で、歴史と個人が格闘し、熱情と怜悧と悲哀が交錯する世界だ。

物語としては、あの「風と共に去りぬ」に匹敵する、と思った。その満州版だと思った。しかし文学としては「風~」をはるかに凌いでいると思った。

「赤い月」の主人公を一人挙げよ、と言われれば「波子」ということになるのだろうが、エレナも氷室も草太郎も、その他の多くの登場人物も、それぞれが主人公と思える生々しい存在感を示している。

全体を覆っているのは、国家の欺瞞と戦争の悲惨。全体に通底しているのは、人間の醜悪を超えんとする意思。


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