みつばやま小零庵だより

宇宙の塵、その影のような私ですが、生きている今、言葉にしたいことがあります。

機場との別れ

2020-04-05 22:58:06 | 田んぼ
感染拡大で世の中は騒然とし、私自身も不安な日々だが、季節は巡る。村人は田起こしを済ませて、田植えシーズンの到来も間近だ。

2007年から13年間、田んぼ用水ポンプ機場(ポンプの運転管理)を担当してきた私は、足腰が覚束なくなってきたので、昨シーズンを以て引退することにした。新規就農の好漢が後任を引受けてくれたのでホッとしている。

4月5日の朝8時、機場に役員の皆さんが集まった。ポンプの試運転と田んぼへの送水状況の点検、そして取水口付近の泥さらいを行うのだ。事前に委員長から要請があったので、引き継ぎを兼ねて私も参加した。

役員の皆さんは元気で頼もしい人たちなのだけれど、機場に来る機会は少ないし、任期も短いので、作業手順等に不慣れな場合がある。私はヨソモノの婆だし、ましてや今回は引退した身でもあるので、出しゃばってはならないのだけれど、注意喚起しなければ後で皆さんが困るのが目に見える場面では、つい、口を挟んでしまった。

          堰浚へ指図の婆となりにけり

13年間、少々大変なこともあったけれど、ささやかな充実感を呉れた機場に別れを告げた日だった。皆さんの前で委員長から「有難うございました。」と言われて、胸に来るものがあった。歓送迎会は(感染拡大防止のため)中止ではなく延期です、と微笑まれた。風が冷たかったけれど、明るい春の光が雲間から射していた。

       水番を若きへ継ぎて野を帰る


大好きな風景

2019-05-12 15:11:04 | 田んぼ
村の田んぼの大半は連休期間中に田植えを終えて、平らかな水面に幼い苗が小紋模様のように並んでいます。この風景が私は大好き!

国の政策により、最近は飼料用のお米を作る人が増えています。当地でも、ところどころ未だ代田のままの田んぼが目に付きます。飼料用の場合は田植えが遅いんですね。





田植えの直後の苗は、本当にたよりなげで、田水におぼれそうな姿でしたが、もう活着しているからでしょう、可愛らしく元気に見えます。

代掻き期の朝

2019-04-28 13:03:31 | 田んぼ
10連休とやらが始まりました。この時期、田んぼでは水張り→代掻き→田植え と、村の風景が一新します。

霞ヶ浦から送られてきた農業用水を、各田んぼへ送る揚水機場の運転管理は4/21から始まりました。相棒と交代で、今日から1週間は私の担当、快い緊張感があります。

夜明け前の3時半ごろ起床。血圧を測り、軽い早朝食を摂り、犬の散歩。冬に戻ったような寒さで、冷え性の私は手袋を3枚重ね、北向きの畑土には微かながら霜が降りています。帰庵して犬と鶏へ給餌し、日が上り始めた道を愛車で機場へ向かいました。



代掻き期には、田んぼから沢山のゴミが発生し、排水と共に水路へ流入します。そのゴミがポンプの取水口のスクリーンに付着して、取水を妨げ、放置しているとポンプの運転が出来なくなります。

水路の中に降りて、ゴミの除去作業をしていたら、相棒が応援に来てくれました。有難い! 体も心も温かくなってきました。


大丈夫!

2019-04-07 18:41:39 | 田んぼ
今日は田んぼの機場関係の作業日。21日からの本格稼働を前に、委員長をはじめ各地区の担当者が集まって、配管の点検や水路の泥さらい等々。私は送水ポンプの運転等の担当だ。

脊柱管狭窄症と側弯症の進行で、立っているのも歩くのも辛くなり、その上、五十肩に見舞われている私・・・ それでも縁ある方々に励まされて、今季も機場を担当することにしたものの、今日の作業が無事に務まるか、不安で仕方がなかった。

なんとか大丈夫でした! 機場に来たら、まだ残っていた元気が出ます! 皆様とお会いしたら、辛さを忘れます!

集まった皆様の中に、初々しい若者が1人いました。

                 新入りへ気遣ふ男らや堰浚へ

五十肩

2019-02-22 14:21:26 | 田んぼ
早めの昼食の後、久しぶりに機場へ行った。近くの花卉ハウスで昼休憩中の御婦人と挨拶を交わす。私より3歳上だが体も心も元気、お顔もお人柄もチャーミングな人だ。

「機場はまだ始まらないよね?」と問われた。

以前からの背腰脚の辛さが増しているのに、更に昨年末から肩の痛みが加わり、4月からの機場担当の役割を果たすことが出来るかどうか、不安感にさいなまれている私・・・肩関節の炎症は(当人が70歳でも80歳でも)いわゆる五十肩らしい。ありふれた病名の五十肩が、こんなに痛くて大変な症状だとは、うかつにも私は知らなかった。

もし出来ないのであれば、今月中には委員長に申し出て、後継者を探してもらう必要がある。特に不安なのは、重たい門扉を開閉できるかどうか、用水路のタラップを昇り降りできるかどうか・・・ 





実際に試してみて判断しよう、と意を決して機場へ来たのだ。左腕の可動範囲に注意しつつおそるおそる試した。結果、なんとか出来ました! 

チャーミングな彼女は、「私もあちこち痛いけど(花卉ハウスの仕事を)やってるよ。やってないとボケちゃう。五十肩は、無理しなければ1年ぐらいで治る。必ず治るから心配いらないよ!」と笑って、私を励ましてくれた。


黄金の秋

2018-08-19 20:09:22 | 田んぼ
息もたえだえになった猛暑も、ようやく収まり始めた。村の田んぼはみるみる黄金色に染まっていく。揚水機場のポンプの運転は休みの日が増えて、今週は今日と水、金の3日間だけ。送水バルブを止めている田んぼも多い。収穫のときに田土がぬかるんでいると、重機(コンバイン)が入っていけないからだ。



早苗田も青田も、そして黄金田も、田んぼの風景は本当に美しいと思う。もしかしたら、村の人々は風景を美しくするために田んぼの仕事をしてらっしゃるのではないか、と思いそうになる。

燕たちの秋は早い。もうみんな南の国へ旅立ったらしく、田んぼの空を切るように飛び交っていた姿も見られなくなった。夜になると、虫の声が賑やかになってきた。私は脊柱管狭窄症等で歩くのも辛くなってきたけれど、この夏を乗り切れたようだ。有難いような、不思議なような。

嵐の前

2018-07-27 19:47:58 | 田んぼ
数日前までの「命に関わる危険な暑さ」が嘘のような、涼しいというか、普通の夏の日になってホッとしているけれど、台風が近付いている。しかも豪雨被害で惨憺たる事態が続いている西日本にも向かいそうだという。自然の猛威は容赦ない。そして現代文明都市においては、天災と人災が一体化している。

関東地方は台風の東側になるから、「雨台風」という予報だ。村の田んぼの用水路は細いから、雨が多いと直ぐに溢れてしまう。今夜から降り始めるというので、機場のゲートを最上端まで開けておいた。

          

異常高温が続いたためか、今期の稲は出穂が早い。開花・受粉・結実し、御辞儀し始めている稲は、大雨にもある程度堪えられそう。心配なのは、開花・受粉の真っ盛りの稲だ。稲の一生で一番大事といわれる時期だ。

当庵から望む夕空は、かすかに夕焼け色に染まっている。合歓の木の枝葉は微動だにしていない。嵐の前の静けさか・・・



頼もしい人

2018-05-19 12:42:11 | 田んぼ
今季は、村の田んぼの水利施設にトラブルが多い。老朽化した配水管からの水噴き出し事故が、12日に続き14日にも起きた。12日は地上部だったが、14日は埋設部。噴き出した水の勢いで周りの土が流れて、土手状の畦が1メートル余りの深さに窪んでしまったのだ。

水利施設関係の専門業者さんに急遽来てもらい、配管接手を修理してもらって、午前中は止めていた揚水機場のポンプも、昼から運転できるようになりホッとした。

しかし、大きく窪んだ畔を放置していると、後日の地震や大雨などで畔が決壊するのではないか・・と不安感に襲われた。畦が決壊したら、田んぼは大打撃を受けてしまう。この田んぼの主の真面目なお顔が脳裏をよぎる。村の役員さんに電話で相談し、了解を得てから、土建業者さんにお願いすることにした。

顔なじみの土建業者さんが、多忙な中、早速見に来てくれた。ひどい窪みなので、手作業では出来ない。現場は道路から少し離れていて、田んぼと用水路に挟まれた所。田んぼのシーズンが終わった後にやるしかない、との判断だった。この土建業者さんは、田んぼの主とも顔なじみなので、「話しておくよ」と言ってくださった。

それぞれの業者さんが、敏速に作業してくださったり、的確に判断してくださるのを目の当たりにして、「体を動かして仕事している人って、頼もしいなあ!」と、改めて感じ入りました。

鉄って・・・

2018-05-12 22:39:19 | 田んぼ
早めの昼食の準備を始めていたら、ポケットの携帯電話が鳴りました。近所の篤農家からです。茨城弁には慣れてきた、と自負?している私ですが、八十路の彼の話を聞き取るのには未だ苦労・・・神経を耳に集中させ、(恐縮でしたが)幾度か聞き直して分かったことは、田んぼの用水管にトラブルがあり、水が噴きだしている、修理してほしい、と。

急いで現場へ向かいました。



霞ヶ浦からの導水は土中埋設で配管されていますが、所々に地上部があります。空気弁と減圧弁の装置です。その鉄パイプが錆で腐食し、2センチぐらいの穴が開いて、そこから水が噴きだしているのでした。放置していると、噴き出す水の勢いで幼苗が傷んでしまいます。

この地区の維持管理の組合長さんに電話で状況報告した上で、修理業者さんに来てもらいました。若い人と年配者の二人でした。多忙な時間を割いて、急遽、来て下さったお二人に感謝! クイックテープという、包帯のようなもので応急措置してくださいました。



クイックテープは、水に濡れることによって接着力を発揮するそうです。作業用手袋をしていない年配者の手に接着剤が付着して、剥がれそうにないので、若い人が心配していました。私も心配しながらも、かなりの年齢差のあるお二人の間に心が通い合っている様子が嬉しかったです。

鉄錆による腐食は、この装置全体に進んでいるので、「今季いっぱいまで持たないだろう。地上部装置全体を早めに取り換えた方がいい。」とのアドバイスを受けました。確かに、ひどい錆です。



国営石岡台地農業水利事業が着手されたのが1970年、当地区に直結する第3揚水機場の通水開始が1984年といいますから、この鉄パイプは、30年以上経過しているのでしょう。年を経ると衰えるのは人間と同じ。鉄も生き物と同じ、と思う一方で、鉄って、見掛け倒しだなあ、とも。


デッキブラシに感謝!

2018-05-03 10:31:46 | 田んぼ
連休中の村は田植ラッシュだ。次々に田水が張られ、代掻機が行き来し、田植機が入っていく。鏡田から植田へ、村の風景が日毎に変っていく。 苗ケースを運ぶ家族の姿も見える。機械が入れない隅などに、手で補植している家族もいる。日頃の家族関係が何となく垣間見えるようで、大変だろうけれど、いいなあ・・と思う。



田んぼ用水機場のポンプ運転は4/21にスタートした。4/29から私の当番で、1週間交代する。今年は霞ヶ浦水系にアオコが大量発生したようだ。季節外れの高温の日が多いためか?

このアオコが取水口のゴミ除けスクリーンに付着して、代掻き等で発生するゴミと共にスクリーンを塞いでしまう。その結果、取水口内の水位が低下して、ポンプの運転が出来なくなる。大事な田植期に水が送れなくなったら一大事だ。

スクリーンにべったりと付着したアオコとゴミを取り除くには、デッキブラシが有効であることに気付いた。10年以上前に購入したものの、使う機会もなく、物置の奥に眠らせていたけれど、こんな出番があるとは思わなかった。おかげでスクリーン掃除が捗る。デッキブラシに感謝!

田んぼのバルブから水が勢いよく吐き出されているのを見ると、私は何だか嬉しくなるのだ。余り苗の束がバルブの周りに置かれているのは、吐出する水の勢いで幼苗が傷まないように・・との(田んぼの主の)細やかな心遣いだ。