みつばやま小零庵だより

宇宙の塵、その影のような私ですが、生きている今、言葉にしたいことがあります。

父の自転車の荷台

2022-11-21 13:35:37 | 自分史
3ヶ月ぶりに亡父の樹木葬地へお参りした。夜来の雨も上がり、空はまだどんよりと曇っているけれど、空気が洗われていて快い。



傍らの白木蓮はすっかり黄葉になって、散る前のひとときを惜しんでいるような気配がしていた。
仏花を供え、合掌して南無阿弥陀仏を唱え、そして心の中で「父さん!」と呼び掛けると、ちょっと臆病そうな小さい両目を少し輝かせながら私を見詰めてくれる父の顔が目の前にありありと浮かぶ。

先日の俳句の会で霞ヶ浦の湖岸を吟行したとき、二人連れの釣人が並んで糸を垂らしていた。「子供のとき、釣りに行く父の自転車の荷台に乗せてもらって海辺で遊んでいたのを思い出す」と、私が呟いたら、俳友から「自転車で行けるところに海があったなんて、羨ましいなあ」と言われた。そんな風に思ったことがなかったので、意外だったけれど、確かに当地は海まで遠くて、霞ヶ浦まででも乗用車で1時間以上を要する。

母の異常な性格に怯えていた子供の私にとって、父と二人で過ごす海辺の時間はとても貴重だったことに、今更ながら気が付く。


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