カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

深い絶望と罪の上塗り   検察側の証人

2021-06-13 | 映画

検察側の証人/ジュリアン・ジャロルド演出

 英国のドラマシリーズものを、BSでやっていたので見た。なので厳密には映画ではないが、この枠で紹介することにする。原作はアガサ・クリスティーで、このクリスティー作品をシリーズで紹介していたようだ。他のものは見逃したが、これは原作として映画「情婦」にもなった作品らしく、僕自身としては見比べてみるつもりがあったのだろうと思われる。ところがそんなことはすっかり忘れて、そういえばなんか録画されているゾ、と思って観ていて、途中で原案の作品だと気づき、アっと驚いた。なにしろ映画「情婦」とは、かなり違うからである。こっちの方が原作に近いのかどうかも知らないのだが、そうだとすると、映画ってかなり工夫されてたんだな、と改めて思った。
 時代設定が戦時中かその直後というもので、刑務所での囚人の扱い方など、現代人の目か見て問題のあるものが多い。そういう背景も容疑者に同情的になる感情を利用している。そういう演出も含めて、なかなかうまいのだけれど、この事件をめぐって立ち回る容疑者やその妻はもちろん重要なのだが、しかしこの弁護に当たっている病気がちの弁護士こそ、本当の主人公なのである。さらにこの弁護士の立ち位置というものが重要なうえ、この上ない悲劇という感じもする。罪のない人間が殺されることにもなるわけで、取り返しがつかない罪が上塗りされ、そうして深い絶望感に見舞われることになる。まったくそういう話だったのだな、と映画化された「情婦」を知っているからこそその比較に呆然とする気持ちになるのだった。ワイルダー監督というのは、改めて味付けの上手い人だったのだろう。もちろん原作が面白いからこそインスピレーションが働くわけで、それだけこの物語の着想は素晴らしいのである。
 ということで、関連作品にも目を配りながら見ることをお勧めいたします。気分はあんまりよくならないだろうけど……。
コメント
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