カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

自由な心を獲得する女の生き方   アイリス

2021-06-09 | 映画

アイリス/リチャード・エアー監督

 実在の作家だった人物の物語を映画化したもの。大学講師で童貞の青年は、新進の作家で自由奔放なアイリスという女性に惹かれる。しかし彼女の奔放さは、女性解放と相まって性的にも自由すぎ、数多くの男性と複数同時に性交渉をしまくるという変なものだった。恋心から愛に気持ちが変わっているジョンは、そういうアイリスの行動に深く傷付けられながらも、自らアイリスと関係を持ち、まさに身も心も奪われてしまうわけだ。
 時系列はとびとびになっていて、そういう過去があることは徐々に明かされるが、実のところ現在になると、聡明で自由に言葉を操る人気作家のアイリスは、年を取り、どうもアルツハイマー病に冒されているらしい。本人もその異常に悩むが、パートナーとなっているジョンは、心配はしながらも、作家として執筆しているアイリスこそ生きている証、と信じ込んでおり、なんとか自分のもとで、元のような作家生活が戻るものとして葛藤する。しかし病魔は進んでいくわけで、どんどん生活は荒れていくのだった……。
 若いころのアイリスは奔放すぎて、しかし魅力的過ぎてもおり、多くの男に言い寄られてしまう。そうして応じるままにセックスをしてしまうので、当然人間関係は複雑だ。戦争に行く男には花向けで寝てしまうなど、ちょっとでも好きになれば寝てしまう。そんなに好きでもないけど友達だから寝てしまうし、相手が大学教授だから寝てしまう。食事を誘われると寝て、会話が弾むと寝る、という感じもあるかもしれない。それは尻軽であるかもしれないが、いわゆるそういう好きものという意味なのではなく、そういう生き方こそが新しい女性としてふさわしいものであり、哲学的な自由を体現する女としての生き方そのものなのである。そうして生まれた体験や言葉をつづって執筆するタイプの作家らしく、そういう中でウブで冗談好きなジョンと知り合ったということらしい。しかしその変なことばかり言うくせに、純粋にまっすぐ自分に向き合ってくれるジョンに、アイリスは徐々に、本来はとても好きになるようなタイプではないはずなのに、心を許してくれるようになる。
 冒頭からでもあるが、若いころのアイリスを演じるのがケイト・ウィンスレットで、彼女のことだから、当然ながら頻繁にオールヌードになる。今回は川で泳いでいるわけだが、当然水着なんて着ていない。彼女は若くて演技派で清純さもありながら、どんどん肌をさらす女優さんで、まさに映画的に貴重な人だな、と思う。ま、日本にもそんな人がいないわけではないが、逆に年を取ると肌を隠す傾向にあるように思う。ケイトさんは、多少体形が崩れても脱いじゃうので、その変遷も分かって感慨深い思いがする。やっぱり素晴らしい人なのではなかろうか。そうしてそういう女性だからこそ、年をとっても夫から嫉妬され、しかし離れられない思いを抱かせるという印象を強く残すのである。やはり、彼女あっての作品なのではなかろうか。
 でもまあ、実際こんな人がパートナーだと、いろいろ困るよね。
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