カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

金持ちだって悲しいって、ふつうそうだろう   WAVES/ウェイブス

2021-06-25 | 映画

WAVES/ウェイブス/トレイ・エドワード・シュルツ監督

 裕福な黒人の家庭に育ちながら、保守的な父親の期待に応えるべく、レスリング選手として特別な学校で訓練しているらしい高校生の男がいる。何不自由ない生活であったが、肩の異常が見つかり、現役での選手生活を続けるべきではないと医者に告げられる。それと同じくして、付き合っている彼女の妊娠を知る。二人は話し合い、まだ学生であることなどから堕胎することになる。連れ添って病院に行くが、彼女は急に病院から飛び出し、やっぱり堕ろせないという。そのまま彼女は男の車にも乗らず、喧嘩別れしてしまう。そういう状態の中、男は酒やドラッグにおぼれ、精神的にもボロボロになっていくのだった。
 どうも二部構成になっているらしく、男の物語が一定の悲劇に終わると、その妹の話になる。妹の方も兄の事件後ふさぎ込むようになり、裕福でありながら暗い生活に変わっている。そういう中で白人の男に言い寄られ、つきあうようになる。白人の男は優しいが、彼にも問題があるようで、それは父親との確執だった。そうしてその父は病に倒れているというのだった。
 なんだか昔のラリッたニューシネマのような雰囲気と映像世界で、いちいちカメラレンズのピントがぼやけて、オレンジなどの色が画面いっぱいになる。格好をつけているわけで、そういう中で当時のヒットソング(黒人のヒップポップなんかが多い)が流れている。僕は日ごろ音楽を聴くので、改めてそういう歌詞の歌だったんだな、と知ることができた。また、この映画のために歌われた曲ではないのだろうが、いわゆるあたかもこの映画のサントラのように、場面にも合っているのだった。ひょっとすると、曲の雰囲気に合わせるように、映像が撮られていたのかもしれない。結果的にあまりまとまりの良くない作品になっていて、一応喪失と再生という物語なんだろうな、とは思うものの、そんなに成功していないのではないか。そんなに映画に詳しくない人が、映画を作ったような作品だった。もちろん、そういう雰囲気を楽しむ作品だろうし、そういう効果をあえて考えて作られているともおもえるのだが……。
 つまるところ大人の思惑に従えない思春期の子供たちがいて、そうではあるが、彼らも成長し、逆に大人たちを助けることになるのかもしれない。取り返しのつかないことにもなるが、そこまでいかないと、どん底までいかないと、そういうものが理解できないかのような印象も受けた。まあ、多かれ少なかれそのような葛藤は誰しもあったはずで、しかしそういうことがあることの方が当然なのではなかろうか。たとえいい暮らしをして、高価な車を乗り回すような高校生であろうとも、軋轢のある方が当然だ。まあしかし、あちらはドラッグがあるので、こんなに悲惨になってしまうのかもしれないが……。
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