カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

ダイナミックな生の米国社会を見る   ミルク

2016-07-01 | 映画

ミルク/ガス・ヴァン・サント監督

 これも実話がもとの作品。ゲイの政治家の伝記。ハーヴェイ・ミルクという人は、ゲイのみでなくいわゆるマイノリティといわれる人の権利擁護の活動家としても知られ、何より自らゲイと公言しながら米国で初めて市議会議員として当選を果たした人らしい。この作品は劇作であるが、ドキュメンタリーでも同様の映画はあるようだ。結果的に同僚議員に市長と共に射殺された事件でも著名で、さらにその犯人の刑が禁固7年という比較的軽いものだったから、不服としたマイノリティ達の暴動騒ぎに発展するなど、アメリカの政治史(そして恐らく今後の他国のマイノリティ差別史に残るということも含めてだが)の重要な人物として知られている人である。
 映画的には、私生活でもチンピラのようなマッチョで知られるショーン・ペンが、まさにゲイにしか見えない見事な演技をしたことでも知られている。観た感じは確かに評判通りで、しかしそれらしいというのは演技として本当に難しいものなのかどうか、僕は俳優ではないので分りかねるが、のちの多くの役者さんのノンケでありながらゲイっぽい演技というのはそれなりに数多いわけで、(比較的)パイオニアとして価値のあるということなのかもしれない。
 映画だから誇張もあるとは思うが、しかし一般的な反応として、やはりゲイの人がカミングアウトして、一般の人に混ざって生活するという困難はよく分かる。普通何も困ることは無いはずだが、困りそうな火種を抱えているような不安が、お互いに感じられるはずである。理解あるふりをするのも困ったことだし、しかしいつまでも不安なままでも、困るには困る。こういう言い方が適切かどうかは分からないが、しかし慣れないことにはどうしようもない。過渡期が長いのは、恐らくそういう理由だろう。理屈として理解されていくにしても、実際上がそれなりに浸透しないことには、その社会が受け入れるまで、どうしても困難な時間がかかってしまう。手っ取り早いのはどうしたものか。要するにこの映画のようなものを観るしかないのではなかろうか。
 不愉快なところも含めて、やはり啓蒙映画だと思う。しかしこれはゲイのための映画なのか。分野としては反戦映画というのがある。むしろそういうことに近いような気もする。社会の在り方と将来も含めての今の社会の在り方を考える。それは米国の過去であるし、恐らく日本の未来でもあるのだろうと思うのである。
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