確か政治家の麻生太郎だったと思うが、ポケットに小銭をいれない、というのがあった。ポリシーというか、ファッションというか。カップラーメンの値段を知らない人だったし(故人ではないが)、そもそも小銭という概念がいくらまでの人なのか謎なのだが、これが僕にはなかなか意味不明で分からなかった。それで、それとなく人に聞くと、やはりそういうカッコつけ方というか、ダンディの人にはそんな人もたまにいるんだということだった。まったくやっぱり意味不明だ。違う話だが、男が軽自動車に乗るべきでない、というのも聞いたことがあって、これもどういう感覚なのか分からない。誰か正確に教えてくれないだろうか。
僕がズボンを穿いている理由の一つは、ポケットがあるためかもしれない。ポケットがあると、中に小銭を入れることが出来る。昔はお札もそのまま入れていたが、最近は財布を持っている。財布に小銭入れがついていることをごく最近知ったが、財布は別名紙入れともいうし、お札以外ではカードを入れるくらいしか考え付かなかった。
ポケットには小銭以外も入れるが、とりあえず小銭だけの話を続ける。
右のポケットには百円玉と五百円を入れることにしている。左には十円玉、五十円玉、五円玉、一円玉を入れる。五円や一円は十円以下の数にするようにしている。増えると別にして、例えば封筒などに入れて保管しておく。まったくポケットから消える場合もあるし、時にはその封筒から補充することも稀にある。他の小銭はその場に任せる。ひたすら百円玉が溜まってポケットが重たくなることもあるが、我慢する。十円玉の場合は、あまりにたまりすぎるとイライラして自販機でジュースを買ったりする。無駄づかいである。
冬は上着にもポケットがあるので、精神衛生上とても快適だ。ところが夏になるとTシャツが多くなる。胸ポケットに入れていたボールペンはズボンの右に入れる。同じく胸ポケットに入れていたメモ帳は、ズボンの左後ろに入れたりする。ふだんは鞄も持ち歩くが、散歩など汗をかくかもしれない時は、メモ帳を一枚だけ破いて同じくズボンの後ろポケットに入れることがある。これを忘れると、メモをそのままズボンに書くことになるので(夏は汗ばむので腕にインクがのらない場合があるのだ)困る。
財布はズボンの右後ろに入れていることが多いが、これも手ぶらの時限定である。ズボンの後ろポケットに入れたまま椅子に座ったり車の運転をしたりすると、中のカードが破損する。これが嫌なのだが、飲み会のときなどは、我慢してポケットに入れたままの時が多いような気がする。酔っぱらって置き忘れる方が損失が大きい。カードは壊れてから考えたらいいだろう。
夏場は手ぶらが基本で、手帳をポケットに入れられなくて困ることがある。だから手ぶらの時は先の予定は基本的に相談しない。夏には安易に約束が出来ないのはその為で、電話に出ても約束はしない。夏には少し冷たい男になっている。しかしこれはクールではないのである。
時々新書や文庫本も後ろのポケットに入れて歩いている。夏場は日差しが強くて、本を読んでいると目がクラクラする。だから日陰にならないと読書はしない。散歩に疲れても本を読めないのは苦痛だから、とりあえずあんまり休まない。汗をかくのも不快だから、もともと暗くなってから外に出るようにする。すると読書もできないので、ポケットに本を入れる必要も無くなる。気分的にはそれでずいぶん楽になるように思える。