消された暗号-BLICK-ブリック/ライアン・ジョンソン監督
学生が撮ったような映画。良くできているが、メジャー作品ではないのだろう。観方によると、そういうチープなところも作品の味にはなっていて、例えば麻薬の黒幕の家に行くと、そのお母さんからジュースとクッキーをもらったりする場面があったりする。ジョークではあろうけれど、それは高校生としてのリアルであろうし、それが麻薬組織の親玉の日常であるという恐怖感もあるわけだ。
お話としては付き合っている彼女が死んでいて、その謎を追う一匹狼的な主人公のニヒルなハードボイルド的な謎解きミステリを軸に、高校にはびこる麻薬組織の暗躍と、さらなる犯罪の全貌が明らかになっていく物語である。いや、たぶんそうだったな、と今思い起こして思うのだけれど、断片断片が意図的にいろいろ繋がれていて、そういうことなんだろうけれど少し分かりにくく作られている。アクションもぶつぶつ要所が切れるようなところがあって、実際に誰が強いのかよく分かりにくい。そういうのも別の意味でいい緊張感にはなっているけれど、やはり学生さんなのに頑張って作ったんだな、というお話かもしれない。
僕には映画でしか知りえないことだけれど、米国の高校という社会は、バスケットとかフットボールとかやっている花形の人々の周りをチアリーダーのような人たちが囲んでいる一方で、オタクたちはつれだって家とかでくすぶっているような二極化した社会だとばかり思っていた。まあ、確かに大麻などを学校に一定量くらいは持って行ってもいいような社会であるから、当然麻薬組織のようなものもあるんだろうし(日本だって探せばあるかもしれないけど)、アニメ社会でなくとも、このようなニヒルでかっこつけた一匹狼の生徒さんがいた方が面白いかもしれない。何か日本の学園ヒーローともなんとなくつながるような造詣があって、そういうものをカッコいいと思ってこのような作品を作ってしまうようなアニメでない映画オタクがいるんだろうな、という微笑ましさも感じられるのだった。
その後この主演と監督は再びタッグを組んで「ルーパー」という映画も撮っているそうだ。ああ、あの映画もなんとなくこじゃれていて少し病んでいた。確かにこの系統の作品とはいえるだろう。そういう意味では彼らにとっても、ルーツとしての記念碑的な作品なのであろう。