アイディンティティ/ジェームズ・マンゴールド監督
豪雨の中、交通事故で出血多量の妻を伴った男が助けを求めにモーテルに駆け込んでくる。雨の所為で道路は分断され、何故か電話などの電波も使えない状態。様々な問題を抱えた泊り客が集まり、次々に人が死んでいくことになるのだが…。
ちょっとネタバレになるのだが、どうして題名がアイディンティティなのか、ということも途中で思い出すことになる。最初は安っぽいサスペンスものかと思っていたのだが、段々と事情が妙な具合に展開されていく。そうしてこれはちょっとあり得ない、と思えるところでお話は急展開して意外などんでん返しの連続となる。まさに連続するひっくり返り方が見事で、そういう考え方があるなんてちょっと反則かもしれないとさえ感じた。面白いですけど。
一人一人にそれぞれに意外な事実が隠されているところが最初は面白いわけだが、それが絡んで人が実際に死ぬようなことになってくると、誰が主人公なのかさえ不明瞭になる。生き残りゲームなのかというとそうでもない、というところがまたびっくりさせられるわけで、物語の作りの重層的なところは、やはり見事というしかないかもしれない。ちょっと舞台劇のような演技の雰囲気はあるものの、考えてみるとモーテル内の出来事がほとんどだから、実際に舞台としての脚本があるのかもしれない。
ちょっと古くなった映画だし、往年のスターめいた人たちの演技合戦というのがあって、これは予算の都合があるのか、かえって少し安っぽいが、そういうことも、映画の味になっている。まあ、そう感じる人が映画を製作したということなんだろうけど。
最終的には法制度についても考えさせられるが、実際のところこのような配慮をするような時代は、すでに終わっているとは思う。まあ、架空の話なんだからそれを言うと野暮かもしれないですけど…。