カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

成功したいのならこの映画を見よ   ダラス・バイヤーズクラブ

2016-06-17 | 映画

ダラス・バイヤーズクラブ/ジャン=マルク・バレ監督

 ロデオにまつわる賭け事のノミ行為などで金を巻き上げ、セックス・ドラッグ・アルコールにどっぷりつかった刹那的な生活をしているチンピラのロンという男がいた。実話をもとにした主人公なのだが、そのような危うい生活をしている男が、気分が悪くなって倒れてしまう。運ばれた病院で(おそらく血液検査などの結果)HIVに感染していることが発覚し、余命はわずか30日と宣告される。エイズがまだゲイなどに特有な病気であるという偏見を持っているマッチョなチンピラであるロンは、その自らの偏見のために医者を信用できないが(自分はゲイでないことを知っているので、それならばエイズであるはずが無いと思っている)、猛勉強してエイズの実態を知り、その上でジャンキー仲間と乱交をした折に(おそらく売春婦を媒介として)自らのエイズの感染をしたらしいことを悟る。さてしかし余命は後わずか、米国内でのエイズ・ワクチンでの治療は製薬会社と医者の癒着があって、さして効果のないまま(むしろ余命を縮めている様子だ)投与が続けられている。いろいろと裏ルートをたどり、お隣メキシコに医師免許を剥奪されながら医療行為を続け、一定の成果を上げているらしい元医者(もちろんメキシコでは現役)を訪ね、エイズは免疫力を低下させる病気なので、その治療自体を主とせず、自らの免疫力を高める治療(薬)を投与することで、かなりの成果が期待できることを知る。だが、その薬は米国では未承認(これは製薬会社の既得権を守る法律がある為らしい)なので国内に持ち込めない。自らの病気はこれで一時しのぎ出来る事実は分かったが、自分の飲んでいる薬の範囲であるという理由で大量に米国内に持ち込み商売をすることを思いつく。さらに薬を販売するとやはり薬事法に引っかかるので、会員制のクラブを組織し、その会員の会費を払うと会員特典として薬がついてくる(要するに販売ではない)というシステムを作り、商売を始めるのだった。そのクラブの名前がダラス・バイヤーズクラブなのだ。
 とにかくずる賢く機転が利く男だが、基本的にはジャンキーで馬鹿なのだが、自らの偏見で嫌っているが同じHIVに感染しているゲイの男との友情を中心に、薬を大量に販売し暴利を掴み、結果的に社会変革を起こすようなことを実行していくダイナミックな物語である。無茶で無茶苦茶で、さらに偏見の塊で感じが悪く、チンピラでだらしなく、法を破ることに良心の呵責さえ感じてない男なのだが、結果的にはそのおかげで、余命30日を七年あまりに伸ばして自由闊達に生命を謳歌しているように見える。自分のやれることはとことん前のめりになって実行していく。薬を求めて日本にも来たらしい。実際には法に触れているので度々摘発を受けるわけだが、法と癒着して妨害しているのは病院側の権力者で、実際に多くの患者を救っているのは他ならぬ無法者のジャンキーの方なのだ。
 まったく痛快でアメリカらしい屈折した正義の物語である。このような悪の権化のような最下流の男が、社会を変えうるのがアメリカなのだ。要するにアメリカ讃歌で、人間を救うのは、無謀だろうと自ら信じた行動力であることを教訓的に示しているハウツー映画でもある。自己啓発本を読んでいる暇があったら、この映画を観て成功のコツを掴むべきではないだろうか。
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