カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

記念碑にしていい作品 007  スカイフォール

2016-06-15 | 映画

007 スカイフォール/サム・メンデス監督

 BS放送を録画して見る。で、途中で観たことを思い出した。それも本当に中盤になってから気付いた。これだけの名作をいとも簡単に忘れられる自分の記憶力に呆れるばかりだ。おかげで楽しめたが。
 007は伝統的にもともと荒唐無稽なアクション映画なので、無理をしてもいいのである。しかしながら、いわゆるSFアクションやアメコミ作品というのとはかなり違う。生身の人間が戦っているので、考えてみると少しおかしいけれど、しかしリアルも要求される。そこのところのさじ加減が結構難しいわけで、あんまりやりすぎるとお笑いになるし、派手さが足りないとやはり物足りない。ぎりぎり頑張ってるな、というのが手に汗にって楽しいが、おいて行かれるとシラケる訳だ。今回の作品のいいところは、その勘所がなかなかキマッているのではないかと思われるところだろう。いや、かなり凄いことになっていて、本来的に人間ならば複数回は死んでいる。でもまあ、007だから仕方が無いな。結構痛そうだし。という感じだろうか。
 何を言っているのか分からないだろうが、それくらいアクション映画としての完成度は高いと思う。さらに完全にハードボイルドの会話なのに、そのクサさがあまり感じられないのだ。かっこいいけれど悲しさがあるというか。敵の裏をかいているが、同時に操られてもいる。何度も立場は反転し、そうして結構真面目に敵と対峙する。でも洒落は忘れていないのである。このような話の組み立てと脚本はそれなりに計算されていることは間違いなくて、その場で驚くことはもちろんだが、思い返しても二度おいしい訳だ。こういうものは、間違いなく文化といってもいいと思う。遊園地で遊んでいながら、ため息の出るような芳醇な香りのコーヒーだって楽しめたということになるんだろうか。普通なら詰め込み過ぎだが、それで成り立っていることの満足感が高いのである。
 過去の007シリーズを踏襲しているのはそうなのだが、しかし、これは子供の頃に見ていた007とはやはり別物という感じも少しする。それは時代の流れもあるけれど、そうして僕が大人になってしまったということもあるんだろうけれど、それよりもなお、007が新しい高い境地に立っているということなんだろうと思う。映画の賞というのは,価値としてはそんなに大切なものではないと僕は思っているが、しかしながら本来的に、このような娯楽作品というのは、実は結構芸術的といっていい価値があるのではないかと思っている。そんなことを考えずに楽しんで観て何の問題も無いが、傑作映画として観ておくべき教養がこの映画にはあると思う。アジア的にはいまだに勘違いはあるものの、後世に伝えられるべき記念碑的な名作であろう。
コメント
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