カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

歌がもっていった物語   くちびるに歌を

2016-03-22 | 映画

くちびるに歌を/三木孝浩監督

 アンジェラ・アキの「手紙」という歌に着想を得た中田永一の小説を原作に映画化したとされる。アンジェラの歌は僕にも子供がいるので、ずいぶん前に頻繁に聞いた。学校関係者が好きな歌なのだろうと思っていたが、ひょっとするとこの映画のようにコンクールなどで歌われるような曲なのかもしれない。小説の方は未読。
 出産代理の音楽の教員として、郷里の五島の中学で教鞭をとることになったピアニストの女性が、暗い過去を引きずりながら生徒たちをコンクールで歌わせる役をこなす物語。相当なことがあったらしいことは、最初の偏屈な態度からも察せられるが、これが主演の新垣結衣なので、単にワガママだけに見えるというのはある。結局ひどいことには違いなかったが、やはりワガママなだけだったような印象は消えなかった。可愛いのに損なことである。
 また、物語のもう一つの柱である歌の上手い障害ある兄を持つ少年の苦悩も描かれるが、こちらの方は、少年が良い人過ぎて、ちょっと泣けない感じだった。もう少し兄を恨むなど屈折してくれた方が、物語としてはリアルで良かったのではないか。結局才能のある人間が最後には勝つ、という物語ではないのだから。
 そうして最後にはどういう訳かアンジェラ・アキの歌の印象ばかりで、いったい何の話だったかよく分からなくなった。それなりに力のある曲であるというのは分かるのだけれど、みんなこれにやられて作ったから、これに執着しすぎてしまったのではないかとも思われた。僕には何の興味もない曲なので、印象としては混乱を覚えた。
 男の子どうしで友情を育む姿だとか、結局可愛いだけの先生のおかげで男子生徒の部員が増えて音楽に幅が出来たという仕組みなどは良かったと思うが、田舎の寄ってたかっての秘密の無さのようなものを、いくら東京で長く暮らしていたとはいえ、出身者の女性が無頓着に知らないというのは、ちょっと疑問に思えた。屈折している時間が長くて、歌の練習がドラマチックに発展しない。そういう頑張りのサクセスというのが、もう少し必要かもしれないと感じた。
 しかしながら今思い返してみると、逆にそれらがよくまとまっていたともいえるかもしれない。僕は長崎県の出身者だから、五島の風景も長崎市の公会堂も感じとしては知っている。五島も大きな学校のようで、不思議と田舎臭くない(まあ、田舎とはそんなものだが)。先生の授業中の方言だけが妙に田舎臭さを演出していて、ちょっと違和感があった。まあ、地方とはそんな場所ではあるんだけれど…。
コメント
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