列車の移動中に弁当を食べるのは旅の楽しみではあるが、そのようにして売られるご当地の駅弁をデパートの地下などでイベントとして売られるのも人気があるらしい。ご当地のさまざまな美味い弁当というのが一堂に会するということで、旅愁と食欲がそそられるということか。
行楽シーズンに外でお弁当を広げて食べるというのも楽しいことだが、デパートの地下などでご当地弁当を買うというのは、皆どこでそれを食べるのだろうか。デパートがあるような街中というのは、弁当を食べる場所も限られるという気もする。弁当を家まで持ち帰って食べるということなんだろうか。まあ、冷めてもおいしいのが弁当だろうし、温めて食べたかったら電子レンジもあるだろう。特に外に持っていって食べるということでは無いのかもしれない。さらに気分だけでも旅の雰囲気を味わって、ご当地の食べ物を食べるというのが楽しいということか。もしくは以前に旅行に行ったことがあって、そのような旅の気分を再び味わってみようという趣向があるのかもしれない。もしくは行ったことは無いけれど、せめて弁当だけでも、というような気分もあるのか。
ところでそのようなイベントのドキュメンタリーを見ただけのことなんだが、圧倒的に人気があったのは「イカめし」なのであった。期間中に何万食も売れていた。ものすごい行列で、それでも飛ぶように売れて、凄かった。あれだとひと財産築けますね。
弁当とはいえ熾烈な競争があって、さまざまな工夫をしているらしかった。作っている様子を客に見せ、照明の当たり方を工夫し、そうして食材の匂いが漂うようにも考えている。分かりやすいシンプルなデザインをして、ちょっとでも足を止めて興味を持ってもらえるように、実に緻密な計算をしているところが、やはり人気が高いのだった。
どの弁当も大変に魅力的に見えるのだが、しかし、やはりあまり人気の出ない弁当もある。地元の食材を厳選し、職人芸を磨いた自信作といえども、売れるにはやはり本当に客の注意を引く独自の工夫を凝らさなければならない。苦戦している高知の弁当を取り上げて紹介していたが、そこの弁当の担当者は、絶対に売れる自信も持って参戦している。食材も味も一級品である。間違いなく都会の人の口にも合うはずだという確信を持っているようだ。要は一口でも食べてもらえたら、絶対に美味しいと思ってもらえる筈なのである。そうではあるのだが、売れるということから考えると、なかなか上手くいかない。いろんな人からアドバイスをもらって、やっと工夫をするようになるのだが、時すでに遅し、期間中は目標販売数を大幅に下回ってしまうのだった。
そのような努力の姿を見て、地元の商工会だか何だかの偉い人が、「確かによく頑張った。彼なら20年くらいがんばったら、何とかモノになるかもしれない」というのだった。
ものを売るというのは厳しい世界なんである。自分のやりたいようにやったらいいのだが、結果がついてくるまで、そういうものが受け入れられるようになるまで、それだけの試行錯誤が必要だということなのかもしれない。ちょっと恐れ入った番組であった。