カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

呪いの連鎖の訳   最後の命

2016-03-06 | 映画

最後の命/松本准平監督

 原作は中村文則の小説。少年時代に強姦を目撃したことがトラウマになった二人の人間を中心とするドラマ。そういう設定はミステック・リバーみたいだけれど、こういう性嗜好というのは、あんがいそういうものなのかもしれない。もっとも悲惨な体験をしたから、自分も必ずそうなるとは限らないのが人間の面白いところではあるが…。親から叩かれて育った子供は、自分が親になったときについ手が出てしまうということも言われている。いわゆる暴力の連鎖である。霊感の強いといわれる人は、実は家庭内に暴力がある場合があるというのも、ごく普通の話だ。まあ、脱線なんだが、そういう恐ろしさがよく分かる映画ではある。
 いちおうミステリー仕立てで謎が解き明かされる展開だが、謎解きがメインという訳ではない。暴力の連鎖でさらに殺される人がいるというのは困ったことであるが、そういう体験をしたというのは稀有なことではあるだろう。事実も強姦であろうけれど、事実より大きな心の問題に発展するようなことがあるようにも感じられる演出だったのは、よかったと思う。異常な人々が異常なことをして、さらに子供まで巻き込んでしまうというのが、後になって考えるとよく分からないのだが、目撃されて子供を殺してしまわなかったことが、のちの犯罪の連鎖になったかもしれないと思うと、これは一種の呪いのようなものかもしれないとは感じた。邪悪なものはだから時を越えて連鎖を続ける。考えてみると中東問題なんかも、このことの拡大版みたいなことかもしれない。そういうことを言っている訳でもなかろうが、どこかで連鎖を断ち切る努力をしなければ、どうにもならない。
 この監督の渾身の演出ではあろうけれど、後半になってもの凄いテンポの鈍い展開になって、映画の方も恨めしくなった。物好きな人は観てもいいのではないでしょうか。
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