カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

色眼鏡のある僕が見ても面白い   博士と彼女のセオリー

2016-03-26 | 映画

博士と彼女のセオリー/ジェームズ・マーシュ監督

 車椅子の物理学者として著名なスティーブン・ホーキンス博士の半生を描いた作品。本人は生きている中でこのような伝記映画が作られたというのが、ちょっとした驚きかもしれない。それというのも基本的には恋愛映画なのだが、難病を抱えながら子供が生まれ、しかしお互いに浮気はするし結局離婚してしまう物語なのだ。観ながら、ええっと思う訳だが、それは実際のホーキング博士が、大変な難病に侵されており、ほとんど身動きのできない障害があるというのを、事前に多くの映像で知っている所為であると思われる。あんなに重い障害の人が、普通に子供をもうけて(3人も)、献身的に看護をしてくれる妻をさしおいて浮気もする(浮気もされるが)。人間はそれだけ自由でいいじゃないかと理屈では思うが、少なからず驚くのは当たり前ではないか。
 進行性の難病に侵されて余命2年とまで言われるところで結婚を決意し子供までもうけるということ自体が、実際には様々な困難と苦悩があったと思われる。もちろん映画でも、そのようなことは描かれるわけだが、本当に強い意志と、ある程度の楽観が備わっていることが何よりの救いかもしれない。さらにどんどん病気は進行していき、不自由さが増していく中で、研究も同時に怠らないし、実際に驚くような成果も出していく。正直に言って、日本などの別の国だったら、このようなことにはならないのではないかということも、考えないでは無かった。実際のホーキング博士はベストセラーの作家でもあるから生活が困窮したということは無いだろうが、やはり学校で勉学に励みながら、生活を立てていくことに不安が無かった訳は無かろう。そういう中で、どんどん自分は不自由になり、恐らく長くは生きられないだろうとも思いながら、恋愛も研究もできてしまうということが、本当に素晴らしいと思うのだった。苦難の少ない環境下であっても、人はなかなかこうは生きられない。どうしてもそういうことを重ねながら、物語を追って観た人が多いのではなかろうか。
 しかしながらこの映画がさらに素晴らしいのは、そういう苦難を、お涙ちょうだいの過剰な演出で描いている訳ではないことだろう。むしろ非常に客観的に、どちらかというと冷めた視点で、苦悩を淡々と描いている印象がある。それでもちゃんとそういう精神性は伝わるもので、妻がなんとなく介護自体につかれている様子だとか、ちょっとそういうことにひねてしまう感じなども、ちゃんと伝わってくるのである。結果的にそういう心の隙間のようなものがあって、浮気からそのまま別の恋愛に至ることも納得がいくようにも思った。倫理的にどうこうというより、人間的によく描かれている訳だ。
 基本的には明るい恋愛のハッピーな物語だ。研究内容を掘り下げた伝記ではなく、娯楽作として素晴らしい。ちょっとびっくりはしてしまったけど、いい映画ではなかろうか。
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