カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

変だけど名作   カルメン故郷へ帰る

2013-06-23 | 映画

カルメン故郷へ帰る/木下恵介監督

 この映画の興味というのは、はっきりってその当時はエロだったに違いないのだが、今見てみると、かえってこのおかしみというのは伝わりやすくなっているのではなかろうか。もちろん最初からコメディとして楽しい訳だけど、さらに時代が下ると、この面白みがかなり年季が入って増していくように思えた。
 田舎の風景と都会から帰って来た若いストリップ・ダンサーの踊り(半裸ではあるが裸では無い)のコントラストがなんとも言えないのだが、エロの興味で注目を集めているのに、頑なに芸術として踊っている彼女たちの行動が滑稽なのである。しかしやはりこの映画をずっと見ていると、最初は滑稽なだけだった彼女たちの踊りが、なんだか妙に滑稽さを通り越して、芸術的な感じさえしてくるのだから不思議である。変な踊りには違いなくて、そうして歌も踊りも奇声もやっぱり変だが、じわじわくるというか、可笑しくて崇高になっていく訳である。この感じは是非現物を観て頂きたいと思うのだけど、これは本来的な監督の狙いからも恐らく越えた効果なのではないかとも思われる。高峰秀子と小林トシ子の演技がそれだけ素晴らしいというか、上手くない上手さが良かったのだと思う。これは今こういうことになると誰も見ないかもしれないが、いや、かえって面白いと思ってくれるコアなファンは確実に少数でも出てくると思う。そしてやはり過去にこれだけぶっ飛んだ人々が普通の喜劇として楽しんだということに、驚きを覚えるのであった。
 田舎のまちではこの騒動が大事件である訳だが、しかしあんがいおおらかに認めているようなところがあって、そういう空気も面白い。しかし父親などの関係者は恥ずかしいやら悲しいやらの思いをする訳で、馬鹿騒動なのかどうなのかという筋立ても見事である。
 結果的に芸術振興に大いに役立つことにつながっていくのだが、やはりそれは興行で儲かるからなのである。芸術というのは不幸や貧乏が何となく似合うのだけれど、しかし結果的にお金がなければ文化として成り立たないとも言えて、妙に教訓的な事も考えてしまった。
 変な映画だけれど、やはりこれは面白い映画である。名作というのは、こういう残り方をする映画の事なんだと再確認した次第である。
コメント
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