先日珍しく二次会にスナックに入ったら、ママさんが生前の父を知っている人だった。地元ではご年配の人がよく行く老舗スナックで以前働いていたようだ。その後、まあ、独立したというか、何かあってこの店をやっているということなんだろう。
そういわれてみると、僕もなんとなく覚えがある。つまり父の仕事関係の業界人と行ったことがあるからだ。
まあ、僕のことはあんまり覚えてないだろうと高をくくって飲んでいたわけだが、時々そういえば、という感じで昔話をしたりする。そうしてこういうところだから当たり前だろうけど、やたらに父を褒めてくれたりする。
こういうのは人によるんだろうけど、それなりに落ち着かないというか、恥ずかしいというか、どうにもかえって居心地が悪い。地元密着型のスナックらしく、本当にご近所の老人会という感じの常連らしい客がカウンターに陣取ってカラオケを連続して歌っておられる。僕らグループ4人も、その合間合間にカラオケを歌う。なんだか思わず遠くに来てしまったような妙な感慨と、そうして時折父を褒められて恥ずかしくなるというような不思議な夜だった。
そうしていると、突然今度は僕のことを思い出したようなことを言い出した。本当かどうだかはよく分からないが、ひょっとすると僕の弟たちのことかもしれない。こうなるとさらに恥ずかしさが増して、酔ってるんだか、飲まれてるんだかよく分からなくなるのだった。
ちなみにこの店ではこのママさんの娘さんも一緒にカウンターの中いて、常連が帰ったらこちらにも寄ってきた。まずいことに目がきついことを除くと見られない顔というわけではないようだ。つまり一緒に居た連中が、どうも気に入ったらしい。
僕は眠くなったので帰ったのだけど、また行く機会がありそうな余韻が残ってしまった。ちょっと変わった地区にあるスナックなので、そんなに警戒することもないとは思うが、この恥ずかしさをまた味わうような、危険度の高い場所ができてしまったようである。