ドライブ/ニコラス・ウィンディング・レフン監督
名作「ドライバー」のリメイクだとばかり思っていた。確かに影響を受けていることは間違いなさそうだけれど、ちょっとばかりお話は違っていた。もう少しウェットなところがあってなお且つバイオレンスが過激になっているというか。良いお話が続いてほのぼのしていると、強烈に身を引きたくなるというか。この極端さが良い訳だが、やり過ぎっちゃやり過ぎだろう。人間は激しく損なわれはするだろうが、もう少し原型をとどめる場合だってありそうである。まあ、ホントのところは知らないんだけどさ。
好きになった女のために何かをしてやりたいという気持ちは理解できるのだけれど、その夫が出所して来て、彼にまつわるヤバい仕事を手伝おうという気分は今一つ分からないところではあった。もちろん協力できるのが自分の得意分野であるというのはあるのだろうけど、出来ればそういういざこざの当事者にはならないで仕事をするスタイルなんじゃなかったろうか。組織に属さない強さも、その恐ろしさも同時に理解できているように見えて、やはりこれは最初から踏み外した行為だ。もっともそういう人間臭さが先の「ドライバー」との大きな違いといえて、これを踏み外す動機としての疑似親子体験などは割合丁寧に描かれており、やっぱり人間として仕方なかったのかな、とはあとでは思った訳だが…。
最終的にはどうにもタダでは済まない、実にヤバい状況に陥ってしまうのだけれど、やはり愛する家族がいるので自分だけ逃亡する訳にはいかなくなってしまう。そこのあたりのジレンマと、解決に向かうバイオレンスも見物である。もうちょっと戦略的な仕掛けがたくさんあるとさらにいいようにも思うが、結末としての美しさはさすがという感じもする。そうしてこの男の背負ってしまった悲しいしあわせの形ということでも、最高の出来栄えではなかったろうか。
久しぶりに面白いものを観てしまったという感動に包まれた訳だが、こういう感じは、むしろ日本映画なんかにもあるようにも感じる。もう少し恥ずかしさを入れるのであれば、まるで無法松の一生だとか、男はつらいよ、である。こういう馬鹿な男というのが好かれるのは、やはりこの悲しさに共感できる人が多いからだろう。僕個人としてはまっぴらだけど、憧れというのはそういうもんである。そうしてやっぱり、いつまでも忘れて欲しくないのだろう。つまるところ、強がってるけどさびしがり屋なんだろうね。