殺人講義・刑事コロンボ/E・W・スワックハマー監督
試験問題を盗んだことがバレて退学になるのを防ぐために先生を殺すというとんでも無い展開の上に、我らがコロンボまで陰で馬鹿にしている金持ち大学生という、かなり憎むべき人物(二人)が犯人ということで、観るものを殺意に駆り立てる内容、という感じかもしれない。こいつらは絶対に許してはならない、という気分には少なくともなるはずだ。それは結果的には期待通りにならなくてはならないが、トリックの見破り方というのは、はっきり言ってあんまり上手いものではない。それにやはりこの若者たちは愚か過ぎて、自滅的に墓穴を掘る道を進んで行く。これもコロンボの力量から言って、やはり興味を削ぐものではなかろうか。新シリーズは残念なものが多いのだけれど、このような感情までも乱されると、なんだかちょっと気分が悪いままという感じが残ってしまう。突っ込んで楽しむ余裕さえ奪われるということかもしれない。
しかしながらトリックの仕掛けや、金持ちであることの特権や、彼らの持つネットワークの行使の仕方などをよく考えてみると、現代的な若者らしい賢さということは言えるのかもしれない。過去の若者だった自分の事を鏡みてみると、このような理由で年配の人から憎まれていた可能性はある。でもまあそれは多かれ少なかれ勘違いや妬みで、新しい仕掛けに抵抗なく、そうして自分では無力な癖に虚勢を張っているだけのことだから、むしろやはり若者はかわいそうな存在なのではなかろうか。
みんな大人が悪いとは思っていないが、原作者の中にそのような偏見があって、この若い犯人像に育てたのではなかろうか。犯人が悪い方がカタルシスは大きい。まるで水戸黄門だが、外国人だって、きっと水戸黄門が好きに違いない。そんなことを考えさせられる悪人創作の手法ではなかろうか。というか、ホントは知らんけどね。