ああ“日本狼”よ

2022-12-08 | 読書

 遠藤公男著/ニホンオオカミの最後/ヤマケイ文庫/2022年11月20日発行/900円
 ニホンオオカミに関する本を読んだのは、昨年、手にした「小倉美恵子著/オオカミの護符/新潮文庫/H26.12.1」以来だ。
 本屋の棚に、本書を見つけて、即座に入手した。奥付を開くと、文庫版として発行されたばかりのものだった。
 著者は、「人々が狼に素朴な信仰を捧げていたことは美しい。狼は恐ろしいものだったが、自然や田畑の守り神でもあった。」と語る。岩手県生まれで、自然を愛し、動物を愛し、ニホンオオカミを愛した著者は、岩手県の公文書に残るオオカミ捕殺の記録を執拗にまで、その事実を追跡調査している。
 そして、ニホンオオカミが、絶滅していくありさまが述べられている。
 それは、ニホンオオカミの絶滅を通し、明治以降の近代化のなかで、わたしたちが失ってきた大きな大切なものを気づかせてくれる。
 「素朴でけがれのないものとの共存を願ってきたご先祖さまたちの魂にふれる。」とも記されている。
 狼が人間に牙を剥き、恐ろしい存在となったのは、そんなに古い話ではなさそうだ。いにしえ、狼は、生態系のバランスを守るものとして信仰の対象ともなっている。三峯神社他の存在や日本武尊と狼との伝説が思い出される。
 狼という字は、犭ヘンに良と書かれる。オオカミは、大口真神とも言われた。
  狼たちは、自然のままに生きたが、人間が変わり、オオカミを恐がり、殺した。
 ニホンオオカミを絶滅させたのは、わたしたち日本人なのだ。
 土俗信仰に秘められたものをとらえ直さなくてはならないのでないか。
 今、人間に牙を剥いているものが何であるか、偏見なしに見つめ直さなくてはならないのでないか。


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