アストル・ピアソラの“ブエノスアイレスのマリア”は、これまでに、ギドン・クレーメルのTELDEC盤、Milon・BMG盤と聞いた。
それで、今回は三つ目となる。
VictorからのCD2枚組で、充実した解説が付いていた。
しばらく前から、手元にあったのだが、その解説をしっかり読んでから聞こうと思っていた。
スペイン語で歌われていて、聞いても意味がとれないからだ。
しかし、字が細かいこともあって、それがなかなか出来ない。
それで、とりあえず聞いてみることにした。
“ブエノスアイレスのマリア”は、アストル・ピアソラによる音楽、オラシオ・フェレールによる詩で、1968年に作られたオペリータ(小オペラ)。
2部構成で、全部で16トラック。
第1部には、小悪魔、マリア、アルゼンチンの吟遊詩人、“ブエノスアイレスっ子”、“バンドネオン”が登場する。
通常の人間たちがからみあう劇ではない。“バンドネオン”と言うのも登場〈人物〉のひとつなのだ。
第2部は、「葬送コントラミロンガ」と題するトラックで始まる。
夜の生き物たちが、マリアの葬送を執り行ったことを小悪魔が語る。
悲歌である。
「受胎告知のミロンガ」があって、ラストは、ミサ・レクイエムでの「アニュス・デイ」をもじっての「タングス・デイ(神のタンゴ)」との名のトラック。
僕たち人間の哀しさ、小ささ、愚かさ、そして、人間のいとおしさ・・・・、沈思をもたらす作品だ。
言葉はわからないが、曲調、音質は多くを語ってくれる。