【新古今和歌集 巻第四 秋歌 下】
秋歌の下より、なんとなくいいと思った九首をピックアップした。
風や夕暮れの空などに秋の到来を感じてのもの、荻や萩、女郎花、七夕の天の川、月・・・が詠み込まれている。
曽禰好忠 朝ぼらけ荻のうは葉の露みればややはださむし秋のはつかぜ
山部赤人 この夕べ降りくる雨は彦星のと渡る舟の櫂のしづくか
式子内親王 ながむればころもで涼しひさかたの天の河原の秋の夕暮れ
待賢門院掘河 たなばたの逢瀬絶えせぬ天の河いかなる秋か渡り初めくむ
寂蓮法師 さびしさはその色としもなかりけりまき立つ山の秋の夕暮れ
藤原定家朝臣 見渡せば花も紅葉もなかりけり浦のとまや秋の夕暮れ
和泉式部 秋来れば常磐の山の松風もうつるばかりに身にぞしみける
和泉式部 たのめたる人はなけれど秋の夜は月見て寝べき心地こそせね
左京太夫顕輔 秋風にたなびく雲の絶え間より漏れ出づる月の影のさやけさ
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和泉式部の「たのめける・・・」、特別いいとは思わないが、彼女らしい歌だと思った。
間違っているかも知れないが、以下のように解した。
秋の夜
訪ねてくれと頼みにしていた人はやって来ない
今夜はさみしくひとり寝かしら
頼りになるのは空のお月さん
わたしを訪ねてくれるのはお月さん
お月さんを見て
お月さんと一緒に寝よう