ホレス・パーランの“WADIN':ウェイディン”を聞いたせいだ。
「歩く」と言うことで思い浮かんだ。
マル・ウォルドロンの“CAT WALK : キャット・ウォーク”。
1959年の「レフト・アローン」(BETHLEHEM)にある。
これもベースの音ではじまり、ピアノが寄り添ってくる。
これには、ホーンは入ってこない。
スウィンギーで好きな曲だ。
一人歩きだね。
WAIDEN' = WADING : wadeから。
辞書を引いた。
wade:(水の中を)歩く。(川などを)歩いて渡る。
wading poolとなると、公園などの水遊び用のプール。
先日、ホレス・パーランがピアノを弾くトリオに、ジョー・バン・エンクハウゼンのテナー・サックスが加わった演奏で、“WADIN':ウェイディン”を聞いた。
夜道を歩く感じでとてもいいとの感想を書いたが、言葉の意味からいったら、水浸しのところを歩くと言うことになる。
そう言うところを歩くとなると、ゆっくり、慎重にとなる。
さて、この曲は、ホレス・パーラン自身の作、アルバム「アス・スリー」や「スピーキン・マイ・ピース」にも収められている。
「スピーキン・マイ・ピース」では、アルバムのトップにこの曲がある。
これを聞く。
ジョージ・タッカーの低く響くベースではじまる。
それはまさに歩む音。
そこに、パーランのピアノが乗っかる。
〈気をつけて行こうぜ〉
アル・ヘアウッドのドラムが、リズムをきざむ。
スタンリー・タレンタインのテナー・サックスがソロをとる。
トミー・タレンタインのトランペットが続く。
・・・そして、みんなで、ジャブジャブ、水を撥ねながら。
〈あまりカッコよくはいかないが、泥道の行進だ!〉
ジェリー・マリガンとポール・デスモンドの「ブルース・イン・タイム」(1957 Verve)。
ウエスト・コーストの香りただよう、いささか大人しげなジャズと言えるか。
息せき切った激しさはないが、二人のホーンがいきいきしていて、さすがと思わせる。
ジェリー・マリガンのゴージャスで豊かな音、ポール・デスモンドのさわやかな都会的な音が素晴らしい。
久し振りに、この二人の音を聞いて、こんなによかったかなと感じた次第だ。
二人の息は合い、美しい仕上がり。
ジェリー・マリガン(bs)
ポール・デスモンド(as)
ジョー・ベンヤミン(b)
デイブ・ベイリー(ds)
演奏は以上の4人、ピアノ・レスである。
曲目は以下の7つ。
1.ブルース・イン・タイム
2.ボディ&ソウル:身も心も
3.スタンド・スティル
4.ライン・フォー・リヨン
5.ウィンターソング
6.バトル・フム・オブ・ザ・パブリカン
7.フォール・アウト
前から気になっていたCD。
マル・ウォルドロンの「ERIC DOLPHY & BOOKER LITTLE REMEMBERED LIVE AT SWEET BASIL」(1986 KING)。
エリック・ドルフィーとブッカー・リトルの1961年のファイブ・スポットでの白熱の演奏を偲んでつくられたアルバム。
ニューヨーク、スイート・ベイジルでのライブである。
リズム・セクションは、往時と同じメンバーで、ピアノのマル・ウォルドロン、ベースのリチャード・デイビス、ドラムスのエド・ブラックウェルの三人。
そして、ブッカー・リトルにかわりトランペットを吹くのはテレス・ブランチャード、エリック・ドルフィーにかわりアルト・サックス、バス・クラリネットを奏するのはドナルド・ハリソンである
気迫のこもった演奏になっている。
マルのピアノもずしりと重い。
演奏されたのは3曲。
1.ザ・プロフェット ※ドルフィー
2.アグレッション ※リトル
3.ブッカーズ・ワルツ ※ドルフィー
もととなった3曲、「ブッカーズ・ワルツ」は、「AT THE FIVE SPOT vol.1,vol.2」ではなく、「ERIC DOLPHY MEMORIAL ALBUM / RECORDED LIVE THE FIVE SPOT」(1961 PRESTIGE)に収められている。
スイングジャーナル誌で、ゴールド・ディスクに選定されているアルバムである。
ジャケットの写真も、ファイブ・スポットの時を思い起こすものとなっている。
ホレス・パーランが、1060年から1963年の間に、ブルーノートにのこした7枚のアルバム。
1.ムーヴィン・アンド・グルーヴィン(1960.2)※
2.アス・スリー(1960.4.20)※
3.スピーキン・マイ・ピース(1960.7.14)※
4.ヘディン・サウス(1960.12.6)※
5.オン・ザ・スパー・オブ・ザ・モーメント(1961.3.18)※
6.アップ・アンド・ダウン:UP&DOWN(1961.6.18)※
7.ハッピー・フレイム・オブ・マインド(1963)
きっと、そのグルーヴィーなところが気に入ったのだろう。
ホレス・パーランのCDを棚に何枚も並べるにいたっている。
この中の「ムーヴィン・アンド・グルーヴィン:MOVIN'&GROOVIN'」を聞く。
これは、本格的な初リーダー盤で、演奏は、以下の三人。
ホレス・パーラン(p)
サム・ジョーンズ(b)
アル・ヘアウッド(ds)
収録曲は、以下の8曲。
1.C.ジャム・ブルース
2.オン・グリーン・ドルフィン・ストリート
3.アップ・イン・シンシアズ・ルーム
4.レディー・バード
5.バグス・グルーヴ
6.星影のステラ
7.ゼア・イズ・ノー・ゲレイター・ラヴ
8.イット・クッド・ハブン・トゥ・ユー
よく知られた曲がならぶ。
ホレス・パーランは、いつもながら、スウィンギーなジャズを愉しませてくれる。
彼がリーダーのアルバムは、どれもベースが重く響き、演奏にはっきりとした土台を築いているように思う。奏者が違っていても、そうである。
それが、スウィンギーな魅力をつくっている。
ハード・バップで、ファンキーでとなる。