古事記、若日下部王(ワカクサカベノミコ)への求愛の段。
大長谷若建命(オホハツセワカタケノミコト)は、山の上から国を眺め、堅魚木(かつをぎ)をあげている家を見つける。そして、天皇の家に似せて造っているのは許し難いことと焼き払おうとする。
すると、その家の主が出て来て、「私は卑しく愚かな者です。何も知らず誤って造ってしまいました。贈物を献げますので、お許し下さい」と言上した。
その贈物とは、白い布をかぶり鈴をつけた犬であった。それで、天皇は火をつけるのを止めた。
天皇は、若日下部王(ワカクサカベノミコ)のもとを訪ね、その犬を、珍しいものを手にいれたので求愛のしるしとしてと贈る。若日下部王は、天皇が「日を背にしてわたしのところへ来られたのはよくありません。今度はわたしがあなたのもとへ出向き、お仕えしましょう」と応えた。その帰り、天皇は坂の上で、若日下部王への歌を詠んでいる。
「後もくみ寝む その思ひ妻 あはれ」。抱き合って寝ようねと。