風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

絵、そして夢

2007-10-26 | 風屋日記
お袋と姪がイギリスから今日帰る。
留守中の実家には私が時々様子を見に、会社の帰りに寄っていた。
昨夜は最後の様子見訪問。

普段お袋がひとりで暮す家は家主不在で真っ暗だが
何しろ物心ついてから、大学時代を除き
結婚するまでずーっと住んでいた家だから勝手はわかる。
照明をつけ、郵便物や新聞を揃えて食卓の上に置き、
ぐるっと回って歩いて何も異常のないことを確認してから
ふと思いついて仏壇の前に座った。
私が生まれる前に亡くなった祖父母の写真、
親父の写真、そして亡くなった姪の写真を眺め、
不用心なので線香はつけずにチンとだけ鳴らした。

住宅街で幹線道路からも奥まっているために、
家の回りも、そしてもちろん家の中も異様なほど静か。
時計が時を刻むコチコチいう音だけが響く。
お袋はいつもこんな静かなところに、
たったひとりで亡くなった人達の写真とともに生きている。
確かに、たまにはどこかへ出掛けたくなるよな。
最後に居間をもう一度眺め回し、玄関で靴を履いた。

玄関の正面の壁に親父が描いたアジサイの油絵が飾ってある。
靴を履いたまましばらくその絵も眺める。
若い頃に結核を患い、何年も入院して手術で片肺を取った親父。
その後退院して教員に復帰してからも、家族を持った後も
病気や手術の後遺症でからだが弱く、
タバコも酒も、もちろん運動もやらなかった(できなかった)親父。
楽しみといえば本を読むことと、音楽を聴くことと、
そして絵を描くことぐらいだったろう。
青春時代も戦争に奪われ、自由な時代は病気に蝕まれ、
それでも人並みに仕事をし、家族を持つことができた親父。

親父の声が聞こえた。
「どうだ?仕事はうまくやってるか?」
「子ども達も大きくなっただろう。元気か?」
「幸せに生きているか?」
うん。とりあえず何の不満も不自由もない生活ができてる。
とりたてて名を挙げたり、金持ちになったりはしていないけれど
子ども達も自分の道を見つけようとしてくれているし、
3度の食事にはこと欠かない程度の収入も得ているし、
まぁささやかに幸せだよ。

私は静かに玄関を出、扉を閉めて鍵をかけた。

    ◇      ◇      ◇

ここのところ、もうこれは睡眠障害と言える状態が続いている。
妙な夢を見て1時間おきに目が覚める。
寝汗をかいているせいか布団も毛布も脇に退け
そのせいで体中が冷えてしまい、それで余計に目が冴える。
朝は時計で起きられず、
せっかく前日少し良くなった喉の痛みも鼻のグスグスもぶり返している。
昨夜の夢には親父が出てきた。
どんな展開だったのかは忘れたが、妙に懐かしい夢だった。

今朝の食卓で「寝汗をかいてて1時間おきに目が覚める」と言ったら
朝からモリモリ食っていた次男が
「あ、オレも暑くて寝汗かくからTシャツだけで寝てる」と・・・。
いやいや、暑くてかくのは寝汗とは言わないんだよ(笑)
屈託のない次男のボケのお陰で気持ちが楽になったな(^-^)

    ◇      ◇      ◇

さてお袋と姪は楽しい思い出をいっぱい抱えて帰ってきたかな?
コメント (9)
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