習慣的に外科結びしている獣医さんが居て、私はときどき注意する。
そう言うと、「エッ?じゃあ外科結びっていつやるんですか?」と訊かれる。
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Equine Surgery | |
Jorg A. Auer | |
W B Saunders Co |
1992年出版のEquine Surgery。1st ed. この版では結紮と縫合について、Tenessee大学のLee Ann W. Blackford先生がお書きになっている。
square knot (男結び、こま結び、かた結び)の最初の結びが、テンションが強くて傷を引き寄せたまま維持できないときは、最初の結びとして2回捻る外科結びを使うことがある。
しかし、他の場合は、外科結びは避けた方が良い。外科結びは結ぶのに時間がかかり、より多くの縫合材を傷に残すからである。
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この章の筆者、Lee Ann W. Blackford先生は小動物外科の臨床准教授、ということだ。
どうしてEquine Surgeryの外科の基本の章を小動物の先生に書かせたのかわからない。
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Equine Surgery, 4e | |
Jorg A. Auer Dr Med Vet MS,John A. Stick DVM | |
Saunders |
2012年に出たEquine Surgeryの4th ed. では、結紮と縫合の章はZurich大学のEquine Hospital のJan M. Kummerle先生がお書きになっている。
一般にsquare knots はもっとも信頼できる結紮法だと考えられている。
1回目の結びで傷の端を寄せたのを維持できないときは、外科結びするかもしれない。
しかし、必要があるとき以外は外科結びは避けるべきである。それは傷の中により多くの縫合材を残し、ある縫合糸では結紮の強さを弱めることがあるからである。
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それから、
血管の結紮には、外科結びではなくsquare knot を使うべきである。
とも書かれている。
つまり、外科結びは2回糸を巻くので滑りにくいが、必要なとき以外は使わない方が良い。
糸が余計に創内に残るし、結び難い、というのが理由に挙げられているが、一番の欠点はほどけ易いことだ。
とくに血管の結紮のように、小さいものを結紮すると、結び目が大きい分、ほどけ易い。
そのことを指摘している人の消化器外科のお医者さんもいる。
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金沢で、小動物の外科医たちが手術している動画を観ていたら、外科結びはしていなかった。
ちゃんと基本が守られている。
大動物の獣医師あるいは外科医が基本を守らなかったり、知らなかったら残念じゃないか。
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今日は暖かかった。
春の陽気だった。
生産地の馬の獣医師になって30年余り、春にウキウキしたことはない。