馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

臍ヘルニア

2006-10-03 | その他外科

Photo_141 そろそろ季節かなと思うので・・・・

臍ヘルニア、いわゆる出べそ。

どのくらいの率でいるのだろうか?

どのくらいの率で処置されているのだろうか?

処置されているのも、ほとんどはゴムをかけられて後は自然に壊死すれば終わりという方法だろうと思う。

 しかし、以下のような馬は手術している。

・ヘルニア輪が大きくて輪ゴム処置では腸管脱出の危険があると思われる症例。

・痛がって輪ゴムをしていられなかった症例。

・そのうち治ると思っていたら治らず、馬が大きくなって輪ゴムでは不安になった症例。

・輪ゴムでは治るまでに時間がかかり、馬が可愛そうだと考える牧場の馬。

                       -Photo_143

手術は全身麻酔だが、静脈麻酔でできる。

腹膜は切らないように、皮膚だけを剥がす。

腹膜(ヘルニア嚢)を切らないことで、もし傷が開いても致命的なことにならない。

Photo_144 腹壁どうしが癒合するように、切れ目をいれて腹壁(ヘルニア輪)をむき出す。

腹壁を縫い寄せるのではなく、重なるように縫合する。

この糸の通し方は簡単なようで難しい。

初めての人はわかっているつもりでもやってみると混乱するようだ。

Photo_145 あとは皮下織、皮膚を縫合しておしまい。

こういうふうに皮内縫合すれば抜糸もしなくてすむ。

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 臍ヘルニアは急いで処置する必要はないと考えていたが、今年臍の中に脱出した腸管が締め付けられて破裂してしまい、腹腔内まで糞汁がひろがっていて駄目になった子馬がいた。

実に稀なケースだとは思うが、「でべそ」も命取りになるとすれば大問題だ。

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Pa030016                                   日没。