goo blog サービス終了のお知らせ 

馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

篩骨血腫による鼻道閉塞

2009-07-26 | その他外科

P7150770 左の前頭部、頬が腫れてしまった重種の3ヶ月齢の仔馬。

呼吸も苦しい。

左右の鼻道の通りが悪くなっている。

馬は口を開けて呼吸することができない動物なので、

鼻で息できなくなると、やがて痩せてくるし、生きていけない。

           -

P7220787 左の鼻道を内視鏡で診ると、腫瘤が鼻道を閉塞させている。

篩骨血腫 Ethmoid Hematoma だろう。

悪性腫瘍ではないが、馬の副鼻腔や篩骨迷路の中に腫瘤ができて、

鼻血を繰り返したり、鼻道を閉塞させたり、副鼻腔炎を起こす。

P7220789 最近は、ホルマリン注入療法をすることが多い。

内視鏡下でethmoid hematoma の中にホルマリンを注入する。

1-2週間間隔で繰り返すと徐々に小さくなり症状も消える。

            -

P7220788 この馬は右の鼻道も狭くなってしまっている。

左の副鼻腔が鼻中隔を圧排して、右の鼻道も狭窄させたのだ。

            -

x線撮影では副鼻腔内が拡張してしまっているように見える。Ethmoidhematoma11

その副鼻腔の中にethmoid hematoma と思われるマス(塊)が見える。

副鼻腔の吻側には水平線が見える。

左の鼻孔からは膿性の鼻汁も出ているので、おそらく鼻道との交通を失った副鼻腔の中に膿性鼻汁が溜まっているのだろう。

ホルマリン注入療法でEthmoidhematoma12ethmoid hematomaが小さくなっても、副鼻腔と鼻道をつなげてやり、 副鼻腔を鼻道へドレナージし、洗浄してやらないと、感染や変形が良くなってこないだろう。

遠方からの来院だったこともあり、畜主の希望も、ホルマリン治療を繰り返すより外科手術を選択したい。とのことだった。

                          -

吸入麻酔下で右横臥にし、左前頭洞を骨開窓(Bone flap)した。

前頭洞と上顎洞の中には径5cmほどの塊があり、つかみ出した。

副鼻腔の壁もすっかり変形し、脆弱化しており、鉗子で容易につかみ出すことができた。

左鼻孔から膣鉗子を挿入し、鼻道内の塊をつかみ出した。

ストッキネットにガーゼを詰めたものを止血のためにパックし、端を鼻孔へ出しておいた。

額から前頭洞へ洗浄用のドレインを残し、開窓していた骨と傷を閉じた。

麻酔覚醒後には呼吸は術前より楽になっていた。

                       -

P7260791 北海道はこの7月、平年の3倍の雨が降ったそうだ。

北海道に梅雨はないんじゃなかったのか?

約束が違うじゃないか!

7月の日照権を返せ!


4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
鼻道側へのドレインも内視鏡で観察しながらできれ... (zebra)
2009-07-28 06:39:30
鼻道側へのドレインも内視鏡で観察しながらできれば確実な経路を作れたりするのでしょうか。

北海道に梅雨が入るようになると米の収量が上がるでしょう。
ブランド米なんて過去のものですし、
棚田なんてものも景観保全程度でしかなくなってくるかも知れません。
返信する
>zebraさん (hig)
2009-07-28 20:20:15
>zebraさん
 内視鏡で見て見ましたが、狭窄しているのでよく見えませんでした。

 8月もこの調子だと凶作でしょうね。

 平年並み、例年通り、の有難さを思います。
返信する
視野が限られてしまうと見えている所にドレインを... (zebra)
2009-08-02 20:02:55
視野が限られてしまうと見えている所にドレインを開けるのが適切とも限らない訳ですね。。

温暖化が進んでいるので適作地は北上するはずですが、不順はどうしようもないですね。
もう例年通りはあきらめてリスク分散型の作付をする必要がありそうです。
寒冷地には早生種をという指導の間違いも最近明らかになってきてますね。
返信する
>zebraさん (hig)
2009-08-02 21:11:52
>zebraさん
 先が読めない時代、気候も読めないのでしょうか。ITで変動を先読みすることだけが利益を生む仕組みは間違っている・・・・と言っても仕方ないのでしょうか。
返信する

コメントを投稿