馬の帝王切開について、このブログを書き始めた頃にも書いた。
ケンタッキーでの帝王切開の成績はこちら。
馬の帝王切開は、ヒトや牛ほど安全な手術ではない。
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1999年のEquine Veterinary Journalには、あのFreeman先生が馬の帝王切開では子宮切開創の止血のための縫合が必要だ、という論文を書いておられる。
An evaluation of the haemostatic suture in hysterotomy closure in the mare
繁殖雌馬の子宮切開閉鎖での止血縫合の評価
Equine Veterinary Journal 1999, 31, 3, 208-211
要約
帝王切開後の繁殖雌馬において、子宮切開創からの出血を防ぐ方法としての止血縫合を評価するためにこの研究は計画された。
1982-1994年に2つの大学病院で、48頭は難産で帝王切開され、10頭は予定して、8頭は疝痛手術で同時に帝王切開された。
止血縫合は66頭中31頭(47%)で用いられ、手術時間は止血縫合が行われなかったときには有意に短かった(P<0.05)。
貧血(PCV<30%)は疝痛群を除いた58頭中13頭(22%)の繁殖雌馬で記録されていた。
止血縫合は貧血を示した繁殖雌馬の比率に影響を与えていなかった。
貧血は、経膣分娩より帝王切開後に5倍起こりやすかった。これは馬では子宮切開創からの出血が重篤でよくある併発症であることの確証である。
重度の子宮出血は止血縫合されていた馬の3頭(10%)、止血縫合されていなかった馬の2頭(6%)で記録されていた。
止血縫合されておらず重度の出血を示した2頭は出血で死亡した。
これらのことから、止血縫合は術後の貧血と重度の子宮出血を防がなかった。
もし止血縫合を省くなら、子宮切開創は子宮壁の血管を圧迫するように充分に締める全層縫合で閉じるべきである。
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従来、馬の帝王切開では、子宮切開創はまず止血のために子宮壁をかがり縫合whipstitchしてから子宮切開創を閉じることが推奨されてきた。
しかし、この調査が行われた1980年代でも、止血のためだけの縫合は約半数の帝王切開でしか行われていなかった。
止血のための縫合が行われていなかった馬の89%では、子宮壁の血管を圧迫できる方法で子宮壁が閉じられていた。
その具体的な方法は、
レンベルト縫合の変法で、子宮壁全層を通し、矢印の方向に引張って子宮壁を圧迫する。
このことで、止血縫合と同様に子宮壁の血管を閉鎖することになる。
残る11%では、
カッシング縫合が行われていたが、この縫合では子宮壁の血管は圧迫されない。(と、Freeman先生は書いている)
Freeman先生の結論は、
かがり縫いなどの止血のためだけの縫合は、止血の目的にはさほど有効ではなく、必須ではない。かえって、手術時間が長くなる。
止血縫合が必要かどうかは、手術時に個々に判断してかまわない。
子宮切開創は全層縫合で、子宮壁の血管を圧迫するように行うことを推奨する。
ということのようだ。
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全層のレンベルト縫合をすると、子宮内腔に縫合糸が出てしまうので、私はもっと丁寧で繊細な縫合をするようにしている。
1層目は、漿膜から針を入れて、筋層と内膜下織をひろって、子宮切開創の断面に針を出す。そして、内膜下織から針を入れて、筋層をひろって、漿膜面に針を出す。これを糸をしっかり締めながら連続縫合していく。
大きな血管の断端が見えている部分では、とくに細かく縫合する。
そして、漿膜面にも糸が出ないように、ユトレヒト縫合で2層目を縫う。
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この論文では、胎盤が子宮縫合部に入ってこないように、断端から5-10cmは剥がした。と書かれている。
私は、胎盤はほとんど剥がさない。胎盤と内膜の境は出血のせいもあってわかりにくいが、良く観れば判別できる。
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去年は8頭も帝王切開してしまった。ひどい難産が多かったのだ。
今年は、まだ1頭? 例年なみかな。
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自覚はないけど
ごちそう食べた
4歳になった
誕生日をお祝いしてもらえるんですね。いいなぁ~。
青空がとってもきれいですね。
まだまだ出産シーズンでしょうけど、安産、母子健康がいいです。
折り曲げた切開創は、その後どうなるのですか?
リスク覚悟で帝王切開するのでしょうから、次の出産も無事なほうがいいのですよね。
記事とは関係ないですが、高酸素オイルって関節に効くのかなぁ、なんて考えた1日でした。
オラ君、4歳のお誕生日、おめでとー!長生きして何回もごちそう食べられますように。ボールはほーごーではなく新しいのがもらえるのでしょか?
折り曲げた切開部はしぜんに正常になるんでしょうね。
ボールは新しいのを探しているんですが、丈夫で、良く飛ぶのってなかなか売ってないんですよね。