馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

おもちゃのボールで馬の麻酔覚醒を

2006-11-04 | 麻酔学

高齢馬、全身状態が悪い馬、重症の骨折馬などでは、全身麻酔からの覚醒時の起立に危険があることを、いままで何度か書いてきた。

少しでも安全に起立させるために、床の柔らかさを工夫し、麻酔に注意を払い、頭と尻尾にロープをつけて起立を介助し、必要だと思われたときには吊起帯を使っている。

ひとつの理想的な方法は、Barbaro が入院しているNew Bolton Center のようにプールに浮かべて覚醒させる方法なのだろうが、これには数千万かかる施設が必要だ。

子供を連れて行ったスーパーマーケットのゲームセンターの遊具に、柔らかいプラスチック製のボールを厚く敷き詰めて、その中で転がりまわって遊ぶものがあった。

馬を覚醒させる部屋も、そういう柔らかいボールを敷き詰めたらどうだろうかと考えたことがある。

しかし、馬がびっくりしないかとか、どのくらいの柔らかさのボールが適当で、どのくらいの量が必要で、血液、糞、尿で汚れたボールを洗うのはどうすれば良いか、片付けるのにどのくらい手間がかかるか、そして費用は? などと考えただけで、実現は難しいだろうとあきらめた。

            Pb030026               -

が、なんとやっているところがあった。

Equine Veterinary Education 2006, 8(5), p356 に写真がでている。

著者はオハイオ州立大の A.Ishihara 先生(日系人だろうか?)。

馬に体重をかけさせないように、プールに浮かべておくと、約75%の負重を減らすことができるが、骨量の減少、呼吸障害などの問題が起きるとされている。

しかし、この柔らかいプラスチックボールを使えば、それらの問題を避けることができる。そうだ。

もとは人医療でリハビリ用に考え出されたらしい。

一度経験してみたい。子供と一緒に・・・・・・