馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

緊張感とセレナーデ

2006-11-06 | How to 馬医者修行

 今日は午前中「のどなり」の手術。Tieback and Ventriculo-Cordectomy.

 午後は中足骨の縦骨折のスクリュー固定手術。

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お医者さんのブログhttp://blog.so-net.ne.jp/medi_rmk_ems/archive/c199290の医療事故に関する記載からの引用の引用だが、

 ギリシャの昔から「人間はミスを犯しやすい動物だ」と言われてきた。ではどういうときにミスを犯すのか?大脳生理学では脳波のパターンからミスを及ぼす潜在的可能性を0から4までの5段階に分類する。フェイズ0:寝ている状態、フェイズ1:ぼんやりして疲れ切って思考能力がほとんど停止している状態。居眠り運転やぼんやりミスを犯す。フェイズ2:単純な仕事をしている状態で心はリラックスしているので事態を分析したりする能力は発揮されない。うっかりミスを犯しやすい。フェイズ3:大脳の活動がかなり活発で、適度な緊張と注意力が働いている。事態の分析力や予測能力が最もよく発揮される。従って、余りミスを生じない。フェイズ4:極度に緊張したり興奮したりしている状態。注意力が一点のみに集中し、心理的にいわゆる視野狭窄になっている状態で冷静な分析や判断が出来なくなる、臨機応変の対応が出来ず返ってミスを犯しやすい、その極点がパニック状態である。                  (フェイズ3の眼 株式会社講談社 著者柳田国男p10~p11引用)

 フェイズ3を維持して仕事をすることが望ましくてもそれは難しい。緊張し、注意力を払うことは疲れるからだ。

それで、人はフェイズ2の状態にリラックスしようとする。そしてそれさえも疲れてくると、フェイズ1に落ちようとする。

そしてまた、「テンションの高さ」は人によってまったく異なることも良く感じることだ。

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 ウィルスや細菌に感染すると体の免疫作用は活性化される。白血球が増え、抗体価が上昇する。別な言い方をすれば、細胞性免疫も液性免疫も賦活化される。サイトカインが産生され、全身的に炎症が起こる。

多くの場合には発熱も起こる。平熱であるより、発熱状態である方が貪食細胞の活動も盛んで、感染防御に都合が良いことが調べられている。

しかし、感染が治まれば、体は臨戦態勢を解く。

それは、いつまでも免疫を賦活化させた状態でいることはエネルギーを余分に消費し、また他の問題も起こすからだ。

意識レベルの緊張感をいつまでも高めていられない、高めていない方が良いことと似ているかもしれない。

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 「外科医と「盲腸」」の著者大鐘稔彦先生は現役の外科医である。劇画「メスよ輝け」の原作者高山路爛と同Photo_150一人物である。http://www12.plala.or.jp/takayama-roran/

 この先生の若い頃に書かれた本は、自信とやる気にあふれている。「外科医と「盲腸」」などはその当時の外科医療への告発の書と言っても良いかもしれない。

しかし、後に書かれた「外科医とセレナーデ」ではすっかり丸くなられた印象を受ける。

今はセレナーデを奏でるように診療をしていきたいと書いておられる。

激しく厳しい実践の中で修練をつめば、いつか緊張せずとも最高の能力を発揮できるようになるのかもしれない。

私は、まだまだ、だ。