馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

喉嚢鼓張 guttural pouch tympany

2006-11-07 | その他外科

P9140022 P9140021 耳下腺の部分が腫れていると相談された子馬。

見たことがある人には一目瞭然で、喉嚢鼓張である。

喉の両側にある喉嚢には空気が出入りしているが、入り口は開けっ放しではなく、スリット状になっていて、フラップのようなもので塞がれている。

空気が入るばかりで出て行かなくなると、このように膨らんでしまう。

 この子馬は右の喉嚢に内視鏡を入れると、喉嚢から空気が抜けて左右ともにへこんだ。右の喉嚢だけが膨らんで、左まで膨らませているようだった。

つまり左の喉嚢の入り口の機能には問題がないようだった。

それなら、左右の喉嚢の間の壁(中隔)に孔を開けて、右の空気を左の喉嚢から逃がしてやれば治る。

全身麻酔で、右の喉嚢にヴィデオスコープを入れて、そのヴィデオスコープから高周波焼烙器のスネアを出して、喉嚢中隔に切れ込みを入れた。さらに、左の喉嚢からもヴィデオスコープを入れて、中隔に孔が開いていることを確認し、さらに切れ込みを拡大した。

術後は、喉が腫れることもなくなり順調だとのことだ。

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 もし両側の喉嚢の入り口が機能しなくなっていると、やはり入り口を何とか治療しなくてはいけない。

その方法についてはまだ方法は確立されていない。

喉嚢を完全に開けっ放しにしてしまうことの弊害についてもまだわかっていない。

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 喉嚢鼓張をおこしていると、喉が外へ腫れているだけではなく、喉頭も膨らんで狭くなっている。いびきをかいているくらいならいいが、ひどくなると呼吸が苦しくなり、誤嚥するようになって肺炎をおこしたりする。

生後数ヶ月の子馬におきる病気なのだが、ほうっておいてはいけない。

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 今日は大荒れの天気だった。昼間は暗く、雷が鳴り、バラバラとミゾレ混じりの雨が降り、風が強くなって・・・・

佐呂間町で竜巻で9人もの方が亡くなった。

言葉もない。

ご冥福をお祈りする。