馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

すばやく膨らます・しぼませる空気枕の上で

2006-11-14 | 麻酔学

 アメリカ獣医師会雑誌、これは獣医学分野で十二分に評価の高い学術誌として認められ、合衆国のみならず世界中に多数の読者を持っているのだが、その雑誌に、Kansas州立大学からの馬の麻酔についての論文が載っている。JAVMA 229(5) 2006

Comparison of recoveries from anesthesia of horses placed on a rapidly inflating-deflating air pillow or the floor of a padded stall.

素早く膨らます・しぼませる空気枕か、パッドを張った部屋の床の上においた馬の麻酔からの覚醒の比較。

 409頭の1歳以上の馬の麻酔の覚醒をランダムに、以前から使われているパッドを張った覚醒室と、素早く膨らませたり、しぼませたりすることができる空気マットの上で行って、最初に動き出すまで、最初に体を起こそうとするまで、最初に立とうとするまで、立ち上がるまでの時間を記録した。

空気マットの上に寝かすと、体を起こしたり、立とうとするまでより長い時間寝ていた。マットをしぼませると、馬はあきらかにより少ない回数の立とうとする試みで立ち上がり、立ち上がり方はより良好だった。

空気マットもパッドを張った床も麻酔の覚醒に同様に安全だった。

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Pb070022 Pb090047 この16×14フィート(4.27×4.8m)のマットと膨らませるためのファンは、$3,500だそうだ。

このマット(pillow;枕って書いてあるけど)は、カーニバルのアトラクションとか、消防のレスキューに使われるのと同じ物。

馬は膨らませたマットの上で沈み込んで、体を起こしPb070024 にくい。そして、馬が安全に立てると判断したら、マットを素早くしぼませる。馬は体を起こすことができ、しっかりした床の上で立つことができる。

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左写真。

マットはダクトのついたファンで膨らませる(上)。

このようなジッパーが二つ付いている。開けると素早くしぼませることができる(下)。

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われわれの背骨である臨床獣医学は、机上で観念論をこねくりまわすものでも、数式だけで計算できるものでもない。

患者のそばに、ベッドサイドにいない者に、実践しない者にはその価値がわからない。

著者の一人Dr.Hodgsonの言葉。

”Recovery quality is a very important aspect of equine anesthesia.”

「覚醒の質は、馬の麻酔の非常に重要な局面である。」